美しい眼

美しい眼

少女はその美しい眼で何を想っているのですか。
あなた、私を頼らないで下さい。御自分で生きていきなさい。
あなたが好きです。あなたの眼が好きです。これが愛の告白だとしたのなら、あなたは嫉妬するのですか。あなたは嫉妬深い女なのですか。そして、あなたの人生を口述筆記するのです。
あなたはどんな人生を生きてこられたのですか。どんな音楽でこの世を満たして奏でられたのですか。あなたの人生をあなた自身で語ってくれませんか。せめて私にだけでも、せめてものお願いです。
私を孤独な詩人にしたのは一体誰なのですか。私の心に灯火を灯したのは誰なのですか。私は私自身を語ることによって、私になっていく。その真理のユニヴァースがほらっ、そこにちゃんとあるのですから。
そうして人は日々同じものはなく変わっていき、新たに変身したい願望を満たしていった。私は誰に変身してきたのですか。
人生は私の可憐な変身で満たされて、誰も見たことのない魑魅魍魎の夢の幻となっていく。あなたの存在を知らされて乙女になっていくのだとしたら、私の人生が美しく結晶化されて凝縮したエッセンスで、ただ一滴の雫のようにシンプルに生きてきたのです。
その時あなたの眼は美しく神だけをじっと見つめていた。あなたの眼の中には神がいるのです。それはプロビデンスの眼。神の眼となってふと人生を語る時、あなたは極楽鳥へと変身する。その夢の物語に翔ける可憐な鳥になって、あなたは青春してきたのだわ。若々しく頑張ってきた青春を極楽鳥となって大きく羽を伸ばして、銀河の星々のように大らかにゆったりと公転している。ただただあなただけの道がそこにはあった。
神の眼となって青春を復活させた時、あなたは解り始める。あなたはあなた自身を語ることによって、あなたになっていく。そして私も私自身を語ることによって、私になったのです。
もうすでに天地はここにあって私は生まれてからずっと無の状態である事を。そして生命の意味は神の眼となること。
私の人生は何て美しい詩なのでしょうか。ああ、美しさに満ち溢れる感情が神の眼から溢れて創造されていく。人間の生命の生から死までの、この人生とはシンプルライフ。ただただ一滴の雫なのです。
さあ、あなたのシンプルは、何なのかをあててみましょうか。あなただけのシンプルを、ほらっ、こんなところに見つけた。まさにそれはあなただけにしかできない創造なのです。
私はゆるやかに背伸びをして、ふと可憐な手の指先を見つめる。ああ、そこにあなたがいたの。ひっそりと泣きます。生きていた、神の眼が。
その時神が私にふとしなやかな手を差し伸べた。ああ、神の手が見える。美しい、本当に美しいの。ああ、光に満ちて感動している。
私はそこにいた、あなたの手に委ねられて。いい人、それとなく感じる、天空の神々の風を、美しく澄んでいる世界を。あなたにそんな美しき静けさが、お似合いなのですね。それがこの世界に人生を委ねられた私の感嘆たる想いの解答なのです。
優しくなぞるその神様の手の中に、少女は自身の人生をぽつりぽつりと語り始めた。少女は自分の人生を語る時、無限の豊かな想像力で技の逞しさを実現している。何という凄い、凄すぎるのです。あっ、少女にもわかり始めました。
人生は見事に1つの完成に向かい、1つ1つ大事に積み上げられていく。美しく整然と丁寧に神への献身さによって。
あなたはあの世の可憐な微笑になっていく。あなたは知ったのですね。あなただけの人生の真理というものを。
私にもひとつだけ言えること。それは人生とはとても美しい詩であったと。人生は美しい詩でした。
私はほらっ、もう解決している。こうして人生の意味がわかった。ほらっ、聞こえますか神の声を。
あなたを祝福している。あなたは祝福されている。解り始めた。ねえ、人生の意味がわかったんだよ。私とあなたは本当にそこにいた。そこには神の可憐な道が用意されていた。

美しい眼

美しい眼

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-25

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