鳥

少女は私にそっと恥ずかしげに言った「私はなぜ生きているの。私に教えて下さい。」
その静謐な世界観は信じられない程美しかった。あなたを美しくさせたいのです。私はやはり現実を現実として生きたくないのです。
後ろから2人の少女が優しくこの世界を何も知らないあどけなくうつろな表情で、私をうっとりとして見ている。
そして、神に選ばれし鳥が上空から私達を見つめている。私達に何かしら興味があるのかしら。
上空を飛翔して浜辺で砂遊びをする2人の少女を観察する鳥は、私の前世の姿なのかもしれない。
鳥の世界を懐かしむその少し先の未来に、美しい夢のときめきがあるということを。
鳥は堂々と優雅に近寄り、2人の少女の頭上に飛翔して大きく舞っている。少女達はその鳥に愛の告白を行うのでしょうか。鳥は少女達から構ってもらえるのが嬉しいのかしら。
2人の少女が鳥を追い掛けて走るその姿は儚く美しい青春なのです。
青春の美しい時空が、この世に存在が薄く儚くいとおしく、そして限りなく細くなっていく。
もしかしてその鳥が前世の私の伴侶なのではないかしらと思うのです。2人の少女から好きですと告白され、鳥はただただ感動しほんのり優しくなっていく。
そして無邪気にあどけなく照れながら天空に、そう広大深遠な宇宙に、そう神の世界にただただ1つの真理になっていく。
そう人生の真理への解答のように。解答とはたかがそんなこと。ただそれだけの事でした。この世界から転生していくこの新しい世界はいかがでしたか。
そして、鳥は1人の優美なこの世界の真理を表現した女になっていく。可憐な御姿で晴れ渡る、どこまでも美しく澄んで清らかな表情で2人の少女を見つめる。その大きな美しい瞳でこの世界を澄み渡らせ、人生に1つの生命のビィーナスを再生させる細胞の分子が、ぴくぴくと神の動きをし始めた。
その女は少女に手を優しく指しのべる。すらっと伸びたか細い手を、少女のあどけない小さな手にそっとのせる。
そして女はこの世に限られたものしか許されない天使の微笑をうっすらと奏でた。少女が優しく体を寄せる、心は天空の園の未知なる愛のやすらぎ。女は少女を高く高く抱き上げて、逸していくこの世の一線の超越を迎えた。
私はその女に「やっと戻ってきたね」と声を掛けたのです。
あなたは鳥になった少女。あなたはずっと鳥に憧れていた。そして本当に鳥となった少女。鳥となりあなたは青春そのものになったのです。

そして鳥になった一人の少女は、また人間の少女に憧れて私のもとに帰ってきたのです。私の事がずっと好きだったと言えるかもしれません。
さあ、これで私とあなたは前世の姉妹の間柄になるのです。
また一緒に鳥になって大空を飛翔しようね。
私、わかっていたのです。あなたの気持ち、そして私嬉しくて感動して泣くの。そしてこの世界が明けていく。二人はそうなっていたのです。あなたはそれに気づいていた。そして手をつないで浜辺を一直線に飛翔するこの未来はときめき。
みんな好き、みんな私は大好き。そして家族ってこういうものかしら。こんな人生を期待していたの。私の期待通りに、確かにそうなる事をわかっていた。

上空を我々は見上げていた。そこには神鳥が大きく羽根を広げて飛んでいた。偉大な神の御姿は宇宙の創造主で現世は超越されていく。私達の感覚は、神の超越した新しい感覚へとワープする。この現世が神の世界になっていく。そして身も心もこの世界から全て忘れて解脱していく。この全世界が統一されていく。
そして、新しい世界の伝説が始まっていく。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-25

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