島

青い海を一人で泳いでいる。なぜ私は生きているか意味を深っているのかもしれませんわ。
海は穏やかにそこにただただ生命の太古のそのままの原始状態を、優しく生まれたままに暖かく、いとおしく、やわらかく。
後ろをみるとイルカが私を母親の視点で暖かく見守ってくれていますわ。イルカは私が無事に目標の島にたどり着くことを期待しているのです。イルカが私に体をみっちりと寄せあい、心を想像性豊かにぐんと持ち上げるそのいとおしさに夢は高鳴る。
イルカは私に人懐っこく優しく語り掛ける、その懐かしい遠く彼方の青い地球の憧憬。私にふと青春を教ようとしているそのイルカは北極星に真っ直ぐ進路をとっていく、あなたにはその意味がおわかりですか。
そしてイルカと私は神の住む島に泳ぎ着きました。
イルカをふと見るとこの世にも美しき聡明な女性に姿を変えていた。
私が海から島の陸地にはい上がる時、その女性はすらっと伸びたか細い手をそっと私に指し出してくれた。
その女の手に触れて、そっとあなたの方へと、美しくうるわしい女の体に身を委ねて寄せていく。
女は甘えた優しいやわらかい微笑で、好意を持ち嬉しそうにほんのり乙女になっていった。
そしてその女はふと悲しげな表情でゆがめ、私をふっと抱きしめる。女は私の体を抱きながら泣いている、嬉しいの嬉しいの。
二人の体は青い広大な海となって、生きている存在を遠くに遠くに薄めていった。私と女は抱き合いながら微かに薄く浮遊していくの。大空はその存在を大きく偉大な真理と共に優しく持ち上げる。
私は世界が見える。太古の生命の原始宇宙に存在をたぐり寄せたのではないか。あなたと私は、生命原始の御姿を知ったのかもしれませんね。
そう、私達飛んでいる。そして島は天国の御園であり、人類の理想郷で夢が叶う島なのです。
その島のオリンボス山に登る私達は、青空の雲が澄み渡るその創生記から、神の降臨に心を整えて待つその夢のまた夢。
私は天空への期待を漲らせてじっと見つめる。さあ、宇宙はあなたに創成させるのを待っていた。
天空が生命の原始の輝きで溢れていくわ。万物の生命の原子がこの世界に降誕していく、究極の生命のエネルギーが一線を遥かに超越していく、夢のまた夢に、この生きとし生ける者への祝福をした。
恍惚とした生命はこの世界に夢を大きく持ち降誕していく。その御姿はみんな生まれたばかりの幼児、みんなは愛されている。
このように美しくそしてかけがえのない人生、さあ、光る。
生命が降誕する御姿を見て、私達は感動してただただ泣くのです。
そして私達の後ろには威厳に満ちて神の子が凛と立っていました。そして私達の肩に優しくやわらかにその手を、その美しい神の手を、ああ、その手が私の肩の重荷を全て取り除いた。
私の体は人生において感じた事のない癒しを初めて感じている。そう私が生まれた時に、そこに立っていた男にさらわれたその過去のあまりにも美しい叙事詩を思う。
そう、あなたに会うのはこれが初めてではなかった。私が生まれた時以来なのですわ。
やっと私は私自身の創造主からこれまで生きてきたことを認められたのです。
両手を大きく広げる私は、ふと優しく宇宙にそっと恥ずかしげに微笑む。
私はこんなにも祝福されていく。人生で一番幸せな時空に存在している。
そして、新しい人生の世明けが始まるのです。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-25

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