天使
「あなたは知っていますか。私が何者であるかを。」
「それを知ってはならないのなら、その時にあなたは私に何と言いますか。」
私は蝶になって天空を舞う役割を、神から与えられたのです。私は蝶になってあなたを見守り助けますわ。
あなた、私が蝶になったらどうして頂けますか。そう、天空を舞っている私の姿を見ていてください。
天空を高く舞い上がり、選ばれた天上界に澄み渡った天使がいるのです。その天使はあなたの真理を知っているのかもしれない。
あなたに優しくふんわりと住み処を教えた。羅針板の方向性には広大な宇宙に夢が叶う妙理があった。
あなた、私を天使にさせてどうするつもりですか。か細く長い手を天空にそっとかざしてみる。
澄み渡る解脱した宇宙の最果てには、創造界の深層心理の襞に、青く遠い昔の記憶での淡い感動があった。
青い空に、その可憐な手が天使に溶けて無くなりそうな存在のか細き弱さ。
ああ、私は無くなっていく。忘れ去られていく。
その薄らいで存在を無くしていきそうなか細く長い手に、天使の虹色の羽根が青空をふんわり舞う、そのやすらかな静けさに包まれた。
もしかしたら、その天使は少女に恋をしたというのだろうか。少女はその憧れに満ちて、天使の生まれたばかりの表情をじっと眺めている。
その天使ははたして本当に存在しているのでしょうか。
少女の視線は天使の遥か彼方を見つめている。少女はその時美しく得も言われぬ神妙さで不可思議な微笑をたたえた。
すると優しく優しくそっと静かに泣いている。その美しい涙は天から授けられた限りなく澄んだ結晶でした。
少女は天使に大きく眼をまんまるにして見つめた。
もう知っているのでしょうか。一つの天使の生命が誕生する事を。
私は、あなたに伝えたいの。
指先の上に天使は柔らかく羽根をはためかせ、ふわりふわりと浮遊している母親の故郷の幻影のように。
そこには優しさだけがただただ柔らかく存在していた。
「天使、それはあなたなのですね。私にはわかるの。」
天使はこの世を超越した可憐できらきらとした光の中を飛翔し、少女の指先の上に優しく無くなっていくように、静かにふわっと載りました。
その時に神が奇蹟を起こしました。
天空から一筋の光が降り注ぎ、一斉に天使達が優美な音楽を奏でながら地上に降誕してくる。
少女は天使の浮遊感をじっと宿して、ふんわりとスカートが軽やかに揺れて舞わせ、空中に浮きはじめる。小宇宙は初めての浮遊をした。
そして初めて澄み渡る心の広大な体験にときめき溢れて、ふわっと突き抜けた表情をしました。
少女は天使の方をじっと見つめて、この世とは思えない母性の原始宇宙を示した。
何でこの私浮いているのかしらとふわり不思議になっていく。
「私はどこへ行くのかしら。私を何処へ連れていくのかしら。」「でもこれでいいの。これでいいんだわ。」
そう。すべては空になっていく存在。私ははじめから存在していなかったんだわ。
天使は迎えに来た。天使の光の方に、そう、少女を連れて天上界に灯火の明かりをぱっとつけていく。
澄んでいるこの内なる宇宙はどうして生まれたのですか。内なる宇宙はその質問に答えてくれないのはなぜですか。
天使達は少女の周りを囲んで、この世とは思えない優雅さで夢のような情景が誕生している。
天使達の舞い、は柔らかく自由に解放する意志の世界でした。
夢のような優しく柔らかな世界に包まれて、私はうっとり溶けていくのです。
天空へと変化する心の飛翔の何と多様で流麗な情景だろうか。
地上の森羅万象が神の光によって天上界に昇天していく。この不思議な世界は神の微笑の何ものにも表現できない静けさの中に澄んでいる。
ああ、神は微笑している。ふわっと優しく少女の生命は天使に変化していく。
そして少女は静かに神に微笑するのです。
ああ、思い出しました。かつて私は天使であったと。
天使の羽根をまとい、天空で静かに迎える神掛かりな感情の離脱があった。
私は行ってしまいました。私はもう存在していない。
もうすでに、もうすでに。もうこれでいいのです。
天使