昇天する少女

昇天する少女

「そのままにしてください。そっとそのままにしておいてください。」「私は天国の高みへと昇ろうとしているのです。」
人生は今想像の世界の中で生きている。これから夢を叶える人間になっていく。
その少女は私を誘惑しようとしているのか。こんな浅はかな私にはまだ理解不能な宇宙を、天空からは照り注がせる無限の啓示があった。
青空の丘の上であなたは我が子を天空へと高く突き上げる。
自身の子供時分の懐かしい幻影が現れて、さらなる情熱と期待を託して、宙の星々のサイクルに我が子を回転させるのです。
今まさにその少女は宇宙の漆黒の中に輝く天体の動きと同調しようとしている。
天体の動きは生命の中に宿る宙の働きに、無の調和を迎えた。
天動に流れる偉大な調性を奏でて、その主への忠誠を誓う。
そう万物の創造主への美しい時空に、一輪のアイリスが天空に微笑み清められる人間の情感の潤いは忘却の彼方へ。
さあ、忘れましょう。
私がその少女を高く天空に飛翔させてあげるわ。嬉々として何の執着もない惑星の美しい軌道に乗らせた。
そこには神が築き上げた天笠への栄光の道があった。

そこに私の子供がいたのですと、そっと呟いてみる。
さあ、大丈夫、迷わずにお行きなさい。私の人生は私だけのものなのですから。
その少女はずっと天空の中に清められて飛翔したままに、はにかんで笑っている。
あなた、許してください。
私はあなたのもとに実は帰ってはいけないのです。
少女は私を見て悲しき感傷的な心の流れで何気なく凛とさせて、くっと気を張っていた。
人生に少女はもう帰ってこない。
そして私には悲しみの摂理を用意しなければならないというのか。
天地に住む人間の営みに神々の調べが泰然と優しく奏でられた。
この世に私を残して、たった1人残して、少女は天空でしか存在しえない感情の、一筋の青白いコスモスとなった。
神様に一身に授けるもう掛けがえのない奇蹟の身体の少女。
ああ、死なせてください。もう私を死なせてくださいと、死への許しを、青白い浜辺でレクイエムを歌った。
人生は一人孤独でなければならない。
なぜなのか、知性を超越した夏の草原に流れるのどかな牧歌のようにたゆたい、そんなやるせなき人間の願いがさらりと浄化されていった。
少女は知っている。何を知っているの。
神様は何処にいるのか。
その時に私は何も答えられなかった。
少女はこんなにもわかりやすく天性の謎めいた微笑をした。
あなたはモナリザになった。
ああ、少女は私の頭上でミステリアスに回転している。何という不思議な動きだ。それは少女の意志なのか。それとも神の意志なのか。
天空へと迎える少女の心の媒体が美しく変化していく、そしてこれまでの人間の営みを全て肯定させようとした。
そう聖なる十字架の行方を安じながら。
少女は肉体を回転していく毎に変化して調和する精神のバランス。
その表情は様々な感情の機微を示している、少女の多種多様な心模様の変化は不可思議な世界へと迎えた。
神はあなたに、様々に傑出した才能の逸材をお与えになったのです。
これから少女の可憐な感情は一体何処に向かうのだろうか。それはすでに少女だけが知っています。
人間の心の中にある類い稀な創造性を、もうあなただけが知っている、たった一つの美しい人生の意味を。
地球の外側から、一人自分自身の内なる媒体を静かに探求していた。
神の思想を持った一人の人間とは、これから一体どのような輝かしい方向へ向かおうとするのか。
「知りたいわ、神様となった少女の栄光の未来というものを。」
「人間が神様になると一体どうなるのですか、そして神様が人間になると一体どうなるのですか。」
「どうか教えてください。」

少女は両手を広げ大きな十字架となって、私の方を向いてそっと真摯に歌を歌った。
ああ、何という美しく安らかな歌なのと、心から泣いた。
少女の次元を超越した創造性を感じて、私の真なる心は宇宙へと、広大深遠に無限化していったのです。
少女は神となって人類の心の救済を行うのです。
今神の奇跡の救済に私は対面している。
さあ、神の次元の高い創造性を私は知っていた。
ついに私も知れたのです。
ああ、ありがとう。
私の心が神の流麗な模様を見つめて、天空への羽根をすらっと伸ばし、感無量にただただ感動している。
私は知ってしまいました。神となった一人の人間の未来を、この世を超越した全くの救世主の稀有な存在を。
これから少女はこの世の人々を癒して救っていけるんだわ。そんな少女の煌めく姿は神々しいあの世への絶世の憧景となったのです。

昇天する少女

昇天する少女

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-25

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