踊り
その少女は森の奥深くの薄明かりに、誰かと一緒に能を披露していた。それは森の精霊の化身だったような気もいたします。
少女の舞う肉体には精霊の美しい御心を宿していいた。
そこには不思議で宇宙的な命題を課せられた少女の完全な解決があった。
その解決の美しい方法は、不可思議な蛍の彼方遠くに広がる灯火の淡い優しさ。
みんな寝静まった森に、人間では感覚できない感性の不思議な小宇宙があった。
私の内なる宇宙はそんな蛍の優しくいとおしい神妙さに飛翔した。
厳しい美しさに輝くほの白いやわらかな心雪。御菩提の森の中に澄んだ仏様への帰結がもたらされる。
帰ります、この人間に生まれた心の住み処へと、暖かな子供の時代に広がる夢が叶う一つの筋道。
心願が成熟した果実となり新しく未来を想像する。この宇宙の謎は私のみぞ知る仏様の子による天上界のお経。
天上界での聖なる食卓にはこの地上を超越していた美食が載っていた。
私はいつになく澄んでいます。
森の御仏が降誕して仏堂へと還っていきます。御仏のお告げを知らせる場所。それは森の奥間にあり次元が静寂に変化し微細な有機物が運行する、その微かで不思議なお教を奏でる夜蝶が飛翔した。
私の存在を忘れさせてくださいました。
この世の美しいあの世への池の畔で神酒の法悦に身を授ける。
果実が実りその願いを叶えるお経。少女の可憐な御大に宿る細胞のお教が願いを叶えようとほんのり成熟させていく。
こんな美しい青みがかった新緑の若草を見つめながら、私はまったく安心な次空に旅立つのです。
悲しく泣いた夜の美しく晴れ渡ったほの白い満月の優しき暖かさ。
もう私の発見した夢の果実の方程式が、必要とされる時が来ましたわ。
帰る故郷へ御霊のさざ波が大らかに解けていき、流麗にそこに前から溢れる石仏の静謐に佇む愛。
この世界はもうすでに慈愛に満ち溢れています。
愛は美しく澄んで心地良いみそらの乙女の遥かな情景。
さあ、天空の女心はふわりとそわか。
地上から天へと精霊の精気がふわっと上昇する。この泣いている選ばれし幼児をお許しください。
私が訪れた颯爽とした野原に、ただ1人うずくまり泣く可哀想な乙女を私は守ってあげたかった。
美しき哀愁を感じさせる川の夢幻の揺らめき。
安芸の海の鳥居に覚めている月夜の光の客観性で、海辺にみそらの偶像の蛍の灯火に澄んでいた水の情景。
私に教えてくれた。清々しく生成され創造していく無の宇宙空間での不可思議な謎めいた物質。
その高き孤独な賢者が創造した船の進路は、何処なのですか。
少女は一体何処へ行こうとしているのですか。
そして、もうこのままでいいのだと例えようのない安心感。
逸脱した内なる宇宙の創造の革新性の彼方には、お教の人間的な解脱への真理があった。
私はこのようにして誕生したのです。この世とあの世の境界線にある中空世界の無の朧気に全てを許すのです。
そして、少女の肉体の選ばれた類い稀なる美しさを真命へと奉納する。
この乙女の薄らぐ生命の灯火はいつまでもってくれるのだろうか。乙女は限界の全く無い観音様の時空を持ち合わせていた。
そして生と死を司る仏様の命に私は捧げる天のわだつみの原理。
その爽やかな空のそのまた空の無意識の宇宙。
さあ、広大深遠な宇宙に全てを委ねます。全宇宙に委ねさせてください。
月や鳥が温かく出迎える森の静寂には真の命題があった。
夜明けに流れるお教に静かな心を感じさせる、仏像が泰然と座する心のスケッチの妙。
これは来るべくして来た修行の道は来世からの救済でした。また一つ生命の期待に深く広がる美しいコスモポリタン。
この世界の知られざるを知られるのは、死んだ時に見れる儚く淡白い天国の憧憬。
森の中でさぞかし法悦した人間の優しい暖かさを感じる、そして例えようも無いやわらしさに包まれていく。
あなたには、おわかりでしょうか。もうここまで来てるのです。
このように精霊は暖かく御仏様の生まれる場所を大事に見守っていました。
その寂していく静かな時に仏様の奥深い真理を教えようとしている。あの世へのその美しいきっかけがそっと訪れたのです。
あなたはあの世への光を知ったのです。
こんな美しい清められたみそらに、仏はこの人生の様想を全て解決していく。禊まですらっと伸びていく時空の広がる事象は仏に清められ修練した心。
もうどうでもいいのです。なるようになりあるがままにその仏の許しを受けた。仏は大きな大きな心でした。
何という少女に宿る宇宙の存在を肯定する嬉しき心象の精霊なのか。これこそあなたが本当に知りたかった御仏のお教の満行でした。
その御仏の家族に感謝の心を教えられたのです。人生の経験には意味があったのでございます。そして、これからあの世へと行けるのでございます。
踊り