約束だよ。
「俺、部活辞める。」
夕暮れの教室。険しい顔をして、勇太は言った。
「…何で…?」
涙が溢れそうになるのを、必死に堪える。
「もう、柔道部は嫌なんだ。
先輩は脱走するし、オニヤンマの首なしが転がってるし、部員は全然集まらないし……
未零もそう思わないか?」
まぁ…そうだけど…さ。
「オニヤンマの首なしは関係ないと思う。」
「…そっちじゃ無くて……」
頭を掻く勇太。
夕日のせいか、とても眩しく見えた。
私は、ペンとメモ帳を取り出し、手紙を書いた。
【君が決めた事なら、私は止めないよ。全力で応援する!! 頑張れ。】
「あげる。」
勇太に、その手紙を投げた。
「…ああ。」
それを読み終わると、勇太は言った。
「ありがとう。」
勇太は、教室を走って出て行った。
「勇太の馬鹿……!!
なにが「ありがとう。」だよっ……
本当は、行ってほしくないよ……
ずっと、私の隣に居てよ……
カレシなのに……他の女の子ばかり……
私を、置いて行かないで……!!」
私は、泣いた。
久しぶりの涙だった。
「…勇太…もう、1人にしないで……1人は嫌なの……」
「バーカ。
誰が1人にするかよ。お前みたいな奴。」
大好きな声が聞こえて来た。
「ゆーた……」
大好きな大好きな勇太。
「嘘だよ。お前がどんな反応をするか、見たかっただけ。強がりな俺のお姫様?」
「…勇太の馬鹿っっ!!!!!」
勇太に向かって怒鳴る。
「知ってる。」
「……馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿……!!」
とにかく、馬鹿を連発する。
「…ん〜〜〜〜〜……」
言葉に詰まった私を、勇太は抱き寄せた。
「ずっと、一緒に居てやるよ。」
約束だよ?
約束だよ。