日常系漫画

すごろく

 私は日常系漫画が好きだ。日常系漫画の中には絶対にあり得ない「永遠」が閉じ込められている。「永遠」とはつまり、現状維持のまま後退も前進もしない日常が延々と続くということだ。日常が延々と続くということはどういうことか。私はそれを不死と同義だと思っている。日常が延々と続くということは、「永遠」に死なないということだ。キャラクターたちは年を取らず、大病も大怪我もせず、「永遠」に笑い合う。私にはその光景が、途方もなく眩しく見える。同時に、どうしようもなく羨ましくも思うのだ。
 私は怖い。年を取ることが怖い。だんだんと視界がぼやけていくことも、耳が遠くなっていくことも、胃もたれしやすくなることも、腰が痛くなりやすくなることも、頭が徐々に禿げ上がっていくことも、腹の肉が弛んでいることも、私は途轍もなく怖い。それは死へと近づいているということだから。私は絶対にいずれ死なないといけない。死ぬのが怖い。この生きているという日常が「永遠」に続かないことが、何よりも怖くて堪らないのだ。
 だから私は日常系漫画に憧れる。その世界の存在たちになりたいと願う。
 そのせいか、私はたまに夢を見る。日常系漫画の世界にいる夢だ。私は小学生で、見知らぬ友人たちとくだらないギャグを繰り広げて、見知らぬ家族とどんちゃん騒いで、そして笑う。春夏秋冬はあるけれど、一年が経つことはなく、私は年を取らず、「永遠」に続く日常の中で、私はただ笑っている。誰かと笑い合うふりをして、一人で笑っている。
 そしていつの間にか目が覚めている。私は自分が今日も一日老いていて、また一歩「永遠」から遠ざかっているのを悟って、薄っすらと頬を濡らすのだ。

日常系漫画

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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