8月21日

シャツの中で汗をかきながら、ぼくは 少し未来の約束のことを考えていた。おれの 左手には 花束、それが待ち合わせの 目印、早く着きすぎたのがバレないように、おれは 直前まで姿を現さない。
それから、お前が来る、はにかんだ笑顔で。おれは 薄い笑みを浮かべる、いや、我慢できずに、歯を出して笑うかも、それは ちょっとダサいような、でも お前は、そういうの好きそうだね。
おれたちは 十年来の 友みたいに、なんでも好きな話をしていて、一日は あっという間に 終わる。次は、おれが そっちの方へ行くよって言う おれに、うぅん、でも、って煮え切らないお前、を 押し切って、絶対に 今度は お前のとこへ行くよ。

ハート形に 並べられた たくさんの 写真と、 散らかった部屋に 少し漂う 練炭の匂い、明日 この部屋には 柔軟剤の くすぐったい 匂いが 充満して、おれは その香りと 一緒に ふわふわ 空いた窓の隙間から 飛んでいって、そのまま 遠い 綺麗な 山へ行って、いや 行かなくて いい ふわふわ ふわふわ 飛んでいって そのまま で いいや。いつかお前と、一緒に ふわふわ空を飛ぶ約束をした、それですら、守れるかは危うい。

指切り してないから、セーフだろ、破ったって。おれは お前に何を与えられるんだろう。 お前から 逃げた おれ、鬼ごっこの 鬼は おれの方なのに、逃げてるのは いつも おれだ。
(だけど お前は おれを追いかけずに ただ ずっと 待っていてくれる)

8月21日

8月21日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-21

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