誰にも見られていませんが、生きています

 私は生きています、たぶん。
 今日だってご飯三食食べたし、昼寝だってぐっすりしましたし、エッチな画像で自慰もしました。
 だから私は生きています。きっと生きています。
 もう何日もまともに他人と会話していません。それでも私は生きています。
 スマートフォンの電話帳に登録されている人物、母と父しかいません。それでも私は生きています。
 ラインを使ったことが一度もありません。それでも私は生きています。
 ツイッターに一応登録しているのですが、フォロワーが五十人です。そのうち半分がスパムとか出会い系のアカウントです。何をツイートしても「いいね」も「リツイート」もされません。それでも私は生きています。
 街頭のティッシュ配り、私だけスルーされました。それでも私は生きています。
 ラーメン屋の行列に並んでいて、割り込まれたのに文句を言えませんでした。それでも私は生きています。
 履修しているゼミの教授に「えー、君、誰だっけ?」と言われました。「嫌だな、××ですよ」と笑って言ってもピンと来た顔をされませんでした。それでも私は生きています。
 同じゼミの好きな子に勇気を持って挨拶しました。無視されました。それでも私は生きています。
 じつは趣味で小説を書いています。ネットに投稿もしています。反応は全然ありません。閲覧数は最高で十ぐらいです。それでようやく評価をつけてもらえたと思ったら、三点という微妙な数字。ようやくコメントも来たと思ったら、「性的な表現が酷い」とのダメ出し。それでも私は生きています。
 誰も私を見ていません。誰にも私は見られていません。それでも私は生きています。
 だって私は毎日お腹が痛いです。何を食べても胃もたれします。下痢と便秘もよく交互に繰り返しています。おまけに頭痛も酷いです。いつも頭の内側がガンガンします。耳鳴りもします。歯も痛いです。虫歯かもしれないけれど、近所の歯医者が怖くて放置しています。季節の変わり目にはほぼ間違いなく風邪を引きます。花粉症です。自転車に乗っていて転倒したときの擦り傷もまだ治っていません。ついさっきドアノブに強く打ちつけた腕に青痣ができています。先日なんかは階段を上っている際に躓いて足の爪が一枚剥がれました。だるいです。朝も昼も晩もずっとだるいです。生きていることが辛いと感じます。だから私は生きています。
 誰にも見られていませんが、確かに生きています。

誰にも見られていませんが、生きています

誰にも見られていませんが、生きています

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-21

Copyrighted
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