『〇〇しないと出られない部屋』2

前回の続きです
イチャイチャしないと宣言したのにごめんなさい妄想が先走りすぎた結果です
未遂ですがイチャイチャしているので苦手な方はご遠慮下さい

セイギ×零 sideセイギ

『"キス"しないと出られない部屋』

確かに、そう書いてある

セイギ「…は、」

なんだ、これは

頭の中が混乱して上手く回らない

キス、しないと出られない?

誰が

……俺とコイツがか?

なんなんだ一体…

本当にこれが指令なのだろうか

零「あの、セイギ…さ、ん」

先程コイツが、引いた紙を見て固まっていた理由が分かった

セイギ「……なんだ」

零「その…」

零「"キス"しないと出られない部屋って…」

"キス"……

頭の片隅で冗談だと思っていた
そうであってくれと思いたかった

その思いはコイツの妙に澄んだ声によって一気に現実のものとなった

セイギ「最後の最後にこれかよ」

セイギ「野郎とキスなんか出来たもんじゃねー、」

そう、
まだ見知らずでも、嫌いな奴でも、その辺の女やほかの奴らなら

それでリングが手に入るなら
いくらでもする

こんなに戸惑うことも無い

だが、相手はよりによってコイツだ

…宇海零

ドリームキングダムの挑戦者の中で

一番気に食わない男

潰したい男

自分の嫌いなやつとキスをしろなど、誰だって無理だろう

零「僕、他に出られる方法……探します」

不意に独り言のように、

部屋の中を手当たり次第調べ始めた

……多分、いや

確実に無駄だろう

ヤツらの思考など理解に苦しむが、今までゲームそのもののルールを変えたことなんて、無い

まぁ、それ寸前の卑劣な行為はしてきたが…

セイギ「時間の無駄、だろ」

思わずため息が漏れる

零「いや、でも…」

零「セイギさんも、同じ考えでしょう?」

零「僕と貴方が…その、」

零「キスなんて、ありえない」

そう歯切れの悪そうに呟く

セイギ「…あぁ、当たり前だよ」

どうしたものか、先の見えない暗闇に迷い込んだような絶望感に襲われる

その時、俺達を波乱の渦に突き落とした本人の声が聞こえた

峰子「まだ、何もしてないの?」

峰子「最初の30分が経ったわよ」

どうしてそんなに躊躇しているの?簡単な事じゃないと女は目を細めて微笑する

峰子「その中にはお互いの命を懸けた指令(ゲーム)もあったのよ?幸運な事じゃない!」

"キス"をすれば出られるの

そんなの頭では分かっている
それが出来れば今頃はリングを手にし部屋の外にいるだろう

だが、またこの女の言うことは間違いではない

このままお互いに何も動かなければ、
ずっと平行線のまま

タイムアップだ

言い換えれば、この女の言う通り"キス"をすれば出られる、と

半ば無理矢理、自分自身を納得させる

それじゃーねと途切れる音声と映像を尻目に
"ソイツ"の首筋に手を当てる

零「ッ……!?」

まるでどうしたんですかと言わんばかりの顔でこちらを見上げる

セイギ「あの女も言ったろ、"キス"すれば出られる」

そうだ。
キスをすればリングが獲得できる

そんなの願ったり叶ったりだ

今まで全て、リングの為に命を賭けて戦ってきた。だが、ここでは簡単に手に入る

先程までの戸惑いなど、無くなっていた

零「待っ、て下さい…!」

零「セイギさんも、さっきは、嫌がってたじゃないですか…!」

セイギ「うるせー 気が変わった」

そうソイツの耳元で囁けば、体を震わせ身を強ばらせる

何故か、
コイツの思考が手に取るように分かる

戸惑っている。
でもそれは俺とは違う

嫌悪感でもなく憎しみでもない

この場には似つかわしくない"恥じらい"

そんな感覚に陥る

セイギ「…おい、こっち向けよ」

零「嫌です…!」

必死に身を捩りながら、抵抗するそんな姿に妙な色香を覚える

零「セイギさん!」

俺の名前を呼ぶ、普段なら嫌気の差すその掠れた声も、何故か煽られる

急に現れる奇妙な感情に揺さぶられつつも躰は素直に反応する

セイギ「……なぁ、そんなに嫌がられると傷つく、」

そんなこと思ってはいない

元々指令でなければこんな事はしないのだ

だが、知っている コイツの性格を

嫌でもわかるお人好しさを

零「……え、」

零「そんなつもりはっ、…んん」

思惑通り、こちらを振り向いたその瞬間に唇を塞ぐ

頭と腰に回した手から逃れようと必死に抗うが、そんな事させるはずがない

零「ぃやっ、」

甘美な声にゾクゾクと身体が疼く

セイギ「動くなよ、じっとしてろ」


零「んぅ…ッ……」

死にかけの蚊が鳴いたような、そんな声を上げる

堪らずその細く締まった腰に手を滑らせシャツを捲る

零「…!?」

零「待って、それは…! 」

セイギ「、ん……」

シルクのような滑らかな肌触りにより一層惹き付けられる

口から首筋、胸元へと唇を這わせていく

零「あっ、」

コイツの足が震えているのが分かる

セイギ「もっと…欲しいか?」

涙目で止めてと訴える

零「ダメ、ですっ…」

そう言うコイツの目にはいつもの様な覇気はない

眠りに落ちる寸前のようなそんな目をしている

シャツのボタンを外し露になった首筋に舌を這わせる

セイギ「っは、、」

零「!そこッ、ダメッ…!」

首筋が弱いのだろう

より一層身体をよじる

零「っいッ…」

思わず首筋に噛み付いた

身体がビクンと大きく跳ねる

コイツの限界が近そうだ、直感でそう思った

近くにあったソファに組み伏せ馬乗りになる

涙を流しこちらを睨みつけるその顔は、美しいとすら感じた

零「ハァッ……ハァ、セイギさん、」

息をを整えながら、濡れた唇から吐き出す言葉

その唇から自分の名前が出ることに思わず顔が綻ぶ

零「なっ、何が可笑しいん、です、か?」

セイギ「別に、可笑しい訳じゃねえよ」

ただ、お前の形のいい、薄く開かれた唇から、俺の名前が零れることが嬉しく感じたなどと言ったら、どんな顔をするのだろう

上から見下ろすこの光景が、
今は俺だけのものと、そう思う程心の中の小さな欲望が、決して無視出来ないほどの大きさに膨れていくいくのが分かる

セイギ「もう一度…こっち向け」

心の中で確実に大きくなるそれを、
堪えることが出来ず思わず口にする

零「…嫌です、もういいんじゃっ、」

セイギ「お前から」

零「……えっ、」

セイギ「お前から、しろ」

零「な、何をですか」

セイギ「分かってんだろ、キスだよ。キス」

そう言った途端、顔を真っ赤にさせ口をパクパクさせる



セイギ「…ははっ、茹でダコみたいな顔…」

セイギ「かわいいな、お前」

無意識に口から出た言葉

しまった、そう思った時には遅かった

決して言わんとしていた、どんなに心の中で思っていても

決して口に出すまいと自身を咎めていた理性も、制御出来なくなる

セイギ「あ、その、忘れてくれ」

自分らしくない

そんなの俺が一番分かっている

女にも言ったことがないようなセリフ
普段なら歯が浮くような言葉も今ならスラスラと出てきてしまう

下から見上げてくるその瞳と視線を絡ますことが出来ない

俺の方がこの空気に飲まれてしまっているのだろうか

今までは確実に主導権を握っていたのに

余裕がなくなってしまう

零「…セイギ、さん?」

やめろ、そんな目で見られたら
今度こそ止められなくなる

熱く主張する自身のそれに気づかれないように

意識を逸らすように

未だ大人しく組み敷かれているコイツに口付ける

零「は…んっ、!ぃやだ、」

口では抵抗しているが、その腕には力が入っていない

零「んんっ、」

甘くとろけるような声に落ちそうになる

卑しく鳴くコイツに自身を擦り合わせ、外れかけのベルトに手をかける


零「…!セイギさん、!ホントに、ダ、メッ」

零「ゃ、やだッ」

必死に俺の胸板を押し返すその腕を、そのまま頭の上で拘束し、押さえつける

腕の自由を奪われ、今度は脚をばたつかせた

セイギ「ッ、おいっ…じっとしてろッ」

投げかけた言葉を無視し、未だ抵抗を辞めそうにない

セイギ「…大人しくしろ、ゼロ」

名前を呼んだ。ただそれだけなのに

その瞬間ずっと伏せられていたビー玉のような瞳が大きく開かれ俺を映す

零「えっ…今、名前、…?」

思っていた反応とは違うが

セイギ「…そうだ、ゼロ」

自身の口から出た驚くほどの柔らかい声とその名前にとてつもない居心地の良さを覚える

零「な、んで…狡い、ですよ、そんなの」

狡いのはお前だ、そう言いたくなる

涙に濡れた大きな瞳と艶やかな柔い肌

薄く湿った唇から吐息とともに吐かれる嬌声

行き場の無い快楽から逃れるようにその身を捩り、身体をなぞる度腰をくねらせる

今までこんな姿で人々を魅力し陶酔させてきたのだろうか

こんな表情に惹かれるのは女だけではない
その無防備さは一滴で命を奪ってしまうような危険な媚薬のようだ

細くしなやかな腰に口付ける

零「っや…あ…ふッ」

舌で縁取るように味わう度ビクンと腰を浮かす

衣服が擦れ合う音と零の嬌声だけが、この部屋に響く

頭がクラクラして周りが見えなくなる

まるでこの世界に自身と零の2人しか存在していないようにすら思えた

零「や、っん…ん……ぁ」

抑えきれなくなった自身のソレを零にあてがおうしたのその時


峰子「はい、ストーップ」

峰子「そこまでよ、二人とも」

あろう事かゲームの進行者の声がこの場を制したのだ

まさかの展開に思わず固まった

峰子「ちょっと、二人とも…」

峰子「"キス"って言ったじゃない、それ以上やられたら責任取れないし…だから、」

峰子「それ以上は、ゲームの後して頂戴ね?」

声がする方向を睨みつける

峰子「私が悪いわけじゃないわ、貴方も分かっているでしょう?」

体の熱が一気に下がっていく

セイギ「ッ…はぁ、」

ため息を吐き、ソファにもたれ掛かると強い倦怠感に襲われる

この女はどこまで邪魔をするのだ

峰子「そう、怒らないで」

峰子「…それより宇海零は、平気なの?」

その名にハッとする

コイツは、零は大丈夫なのだろうか
そう思い、横目で視界に捉えると辛そうに起き上がった

息が整っていないのか肩が大きく上下している

こちらに背中を向けているためどんな表情をしているのか分からない


峰子「…ゲーム開始から0時間52分、二人ともリング獲得よ。おめでとう」

峰子「リングは会場出口にいる黒服に渡してあるから」

そう言い残しモニターが消えた

防火シャッターのような大きな戸が上がっていく

そして、二人が入ってきた扉が現れた

たった数十分前に見た扉が何日も前のように感じる

時間感覚が消えてしまうほど刺激的な経験だったのだろうか

それとも、単に動揺しているからか

いや、どちらにしろ一生忘れられることは出来ないだろうと、そう思った

セイギ「おい、悪かった…」

先程から一言も発しないコイツにそう告げる

セイギ「…お前が嫌がるのは分かっていたのに、」

らしくない、ここまできてもやはりそう感じる

あまりの出来事に、全て夢だったのだろうかと錯覚してしまいそうだ

零「…さ……み………に、」

ボソッと何かを呟く

セイギ「…なんだ?」

あまりに小さいその声は俺にまで届かない

零「…さっきみたいに、名前、読んでくれないんですか」

以外すぎる言葉とその顔にゴクッと生唾を飲み込む

零「さっきは、名前呼んでくれたじゃないですか」

零「もう一度呼んでください。」

零「セイギさん」

先程冷めた熱が再び湧き上がる

セイギ「急になんだよお前……!」

零「いいから、聞きたいんです」

折れるしかない
お人好しと同じくらい頑固なのだ

セイギ「……っ、ゼロ、」

これでいいか、そう言えば満足そうに、はい!と頷く

その笑顔に心臓が大きく跳ねる

そして、おもむろにソファから立ち上がった

零「…外、出ましょうか。」

零「みんな待ってます」



セイギ「いや、先いってろ」

動けない

動けそうにない

その大きな瞳に囚われてしまったのだから

零「どうしたんですか、どこか怪我でも…」

セイギ「違う、そうじゃない」

零「…?そうなんですか」


零「分かりました、では」

セイギさんも遅くならないでくださいねと、足早に去っていく

仲間の元へと帰るその背中を見えなくなるまで見つめる

ゼロ、そう呼んだ記憶に身を委ね、思いを馳せた

全身がフワリと心地良い

その名を呼んだ自身の唇に手を当てる

次からはどんな顔をして零に会えばいいのだろうか

きっと彼は気づかないだろう

その背中をどんな思いで見つめているのか

だか、今はそれでいい

零が王になった時、そのたった一つの命を狙う者が現れ

襲いかかる火の粉を全てなぎ払い、その笑顔を守れたなら

眩しいくらい真っ直ぐて、純粋な"零"の隣にいることが出来るそんな自分に変われたなら

その時までは自身の心の中に留めておこう

そう、誓った。

不意に見上げた空は、緋色に輝いていた

もう一度、名前を呼ぶ

"ゼロ"そう動いた唇は未だ醒めぬ熱を持っていた_



_終わり_

『〇〇しないと出られない部屋』2

『〇〇しないと出られない部屋』2

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-20

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