永眠症

 誰でも持病の一つや二つは持っているものだろう。中には自分は絶対的な健康体で、病気の陰など一つもないと言い張る人もいるかもしれない。しかし、人類含むこの世のすべての生き物は、とある病を必ず抱えて生まれてくる。それはまったくの例外なく。
 生きている者たちは、生きている限りその病から逃れることはできない。その病巣はみんな一様に精子と卵子が結びついたときからあり、いつ発症するかは不明だ。多くの者は老年になって発症するが、若いうちに、さらには幼い頃に発症する者も数少なくはない。
 その要因も様々だ。ある者は他の病と併発して発症し、ある者は重たい鉄の塊に吹き飛ばされて発症し、ある者は誰かの悪意と殺意と行動力によって発症し、ある者は自らの手で発症し、ある者は朦朧とした意識と無意識の境目で発症する。発症したら最後、あっという間に進行し、症状が改善することもない。
 もちろん、誰もがただその病の発症を待っていたわけではない。多くの学者や思想家、権力者たちがこの病の治療方法を模索した。しかし、どれだけ学者が理論を組み立てても、どれだけ思想家が理屈をこねくり回しても、どれだけ権力者たちが金を積んでも、その病の治療方法は発見されることも、確立されることもなかった。
 そしてそれは今日まで続いている。
 その病の種は今も生きている者たちの中に潜み、発症するタイミングを今か今かと待っている。多くの者たちはその発症を恐れ、一部の者は自ら進んで発症させながら、日々の生きるという活動に追われている。
 ほら、今朝も目覚めてみれば、また一歩、発症に近づいている。

永眠症

永眠症

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-19

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