爆発する何か

私には一つのトラウマがあって、
少女時代の記憶に、鮮烈な何かものが、爆発して、その破片が飛び散る時の、強烈で奇妙なイメージの記憶がある。
私の中にある、初めに記憶の中にある爆発の記憶は、深夜、たまたま私も目を覚まして、母親が朝からだしていた高熱で、トイレまでいって吐いたときだ。
二つ目の記憶は、近所の公園で悪ガキがカブトムシに小さな自作爆弾をはりつけて爆発させていた、その破片が道路に飛び散ったのを見て吐いた。

しかし思い出せないのだ。あの時の事だけは、あの朝、早朝5時に地震が起きた。小さいころから朝と夜のお祈りをかかさなかった、仏壇に手を合わせお辞儀をする。そしてご先祖さまに感謝をする。それは習慣にすぎなかった、しかしあの朝虫の知らせか、午前5時に目を覚まし、母親を起こし、弁当を一緒につくっていた、揺れ始めて、父を起こし三人でリビングでかたまっていた、大地震で、地面から突き上げるようなゆれ、そして、ひとつ窓がわれた。それも、自分たちのリビングのすぐ傍の一番端の窓がピキピキと奇妙な音をたてていた、瞬間、何かが走っていくのが見えて、瞬間、同じとき、カーテンが窓を覆うように、飛び散る破片を抑えたのがみえた、風もないのに、カーテンがすべて、飛び散る窓の破片を受け止めたようにみえた。そのとき、私は人影が見えたのだ、私より少し身長が高く、年齢も高いくらいの人影だった。
「早くおきて」
「宿題はした?」
私たち家族はテーブルの上で頭を押さえ、揺れが収まるのをまって、なんとか事なきを得たのだが、その瞬間よみがえった記憶、口うるさく、やさしい、でも存在しない兄の記憶。まるで毎日、兄と一緒にいたかのような記憶が、私の中で、こだまのように何度も何度も、駆け巡った。でも、兄なんて、うちにはいない、母にきいても、そんな人の心あたりはない、親戚や、たとえば……一時期預かっていたなんて話はきかない。

その後のこと、私には、ただ一つだけ思い出があった、小さな人形、今は手元にはないのだけど、あの日、私の部屋の割れたガラスの破片がつきささって、だめになってしまった男の子の人形だ。私はその子を供養にだして、あの時の人影とかさねて、今も時々おもいだしては、胸に少し痛みを感じる。

爆発する何か

爆発する何か

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-19

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