猫姉と犬弟
今回、初めて星空オリジナルの作品を上げてみました。
相変わらず、下手な内容ですが。
もしそれでも宜(よろ)しければ、どうか御覧ください。
残暑も厳しい、ある夏の日。
「はあ〜、涼しい・・・」
僕は、居間にてエアコンで涼んでいた。
近年では考えられない、異常な猛暑である外とは打って変わって。
室内は、まるで天国の様に過ごしやすい。
「(チリリン〜)」
締め切ったサッシから聞こえるのは、わずかに風鈴の音だけである。
その風鈴が、風に揺れて透き通った音を鳴らしていた。
「気持ち良いなぁ・・・」
余りに涼しくて気持ち良いので、無意識にそう漏らしてしまう。
今日は、学校の補習も無い日なので、朝から家で何もせずにノンビリしていた。
せっかく用事が何も無いのだから、こんな暑い外に出たくはない。
そう思いながら、怠惰な時間を貪っていたら。
「(のしっ)」
僕の足に何かが、乗ってきた。
それは結構、質量があるのだが、決して重いと言えるほどの重さがある訳でも無かった。
一瞬、何かと思い、目の前を見ると。
「えへへっ〜♪」
一人の女の子の姿があった。
女の子は、僕とほぼ同じくらいの年頃で。
顔立ちは整っており、特に少しタレ気味の目元が特徴的な。
ひと目で穏やかな性格だと分かる、可愛い系の美人である。
髪は前髪を切り揃えた、背中までのストレートの黒髪で。
スタイルは、スラリとしたスレンダーな体型だが、出てる所は出ていて。
特に胸に、つい目が行ってしまいそうだ。
服装は、シンプルな白い部屋着のワンピースを着て。
その格好のまま、僕の膝の上に横座りで座っていた。
「もお〜、姉ちゃん。
イキナリ、何をするの〜」
「うふふっ、チョット冷房が効き過ぎて寒くなったから。
ケイちゃんで温まろうと思ったの〜♡」
そう、僕の膝の上に乗っかって来た女の子は、僕の姉である。
姉ちゃんは、まるで気まぐれな猫の様に。
こうして、僕に構うよう催促する事がある。
その一方、僕が相手をしようとすると逆に、スルリとスリ抜けてしまう。
本当に、猫みたいな姉ちゃんだ。
しかし普段は、見た目通りの穏やかな、人当たりの良い面しか見せなくて。
そんな気まぐれな部分は、僕だけにしか見せなかった。
思えば昔は、僕の方が姉ちゃんに甘えた方だったが。
僕の身長が、姉さんを追い抜いた辺りから、そうなった様な気がする。
「・・・ねえ、ケイちゃん。
いつもの様にして、お姉ちゃんを温めてちょうだい・・・」
そんな事をつらつらと考えていたら、姉ちゃんが右向きに座った状態からにじり寄り。
上目遣いで甘えるようにして、僕に要求してきた。
姉ちゃんが自分から催促する時は、大抵、ハグをして欲しいのである。
「(ギュッ)」
それを聞いた僕は、ため息を出しつつも姉ちゃんを抱き寄せる。
「ケイちゃん・・・、あったかいよ・・・」
抱き寄せて、できる限り体を密着させると。
姉ちゃんが、微かな声でそう漏らした。
「(なで・・・、なで・・・)」
そうやって、姉ちゃんを抱き寄せたら、僕の肩に顔を付ける形になったので。
彼女の頭を撫で始める。
こう言った行為はいつもの事であり。
姉ちゃんは、僕がハグをすると、必ず撫でる事も同時に要求してくる。
毎回、姉ちゃんが、そうやって言ってきている内に。
僕の方も自然に撫でるようになっていた。
「(なで・・・、なで・・・)」
姉ちゃんの頭を撫でる。
それもただ、手で表面を滑らすだけでなく、髪を梳く様にして撫でたり。
あるいは、頭皮を揉むようにしたり。
または、髪を揺するようにしてして撫でたりと。
その滑らかで心地よい感触を、思う存分堪能する。
「・・・はあっ」
そうやって撫でていると、気持ち良さそうな声が聞こえてきた。
どうやら余りの気持ち良さに、声が出てしまった様だ。
「(カリ、カリ、カリ・・・)」
「・・・ケイちゃん。
私、猫じゃないよぉ・・・」
「猫だよ。
きまぐれで、甘えたい時に甘えてくる所なんかは」
「もお・・・」
次に僕は、姉ちゃんの耳の裏から顎にかけての部分を、まるで猫を擽る様にして掻いた。
当然、彼女が抗議してしてくるが。
僕がそう返すと、不貞腐れてしまうも、それでも掻くのを止めようとはしない。
何だかんだ言っても、気に入らない訳では無いらしい。
「・・・んんっ」
姉ちゃんは、僕の肩に頭を乗せながら満足そうにしている。
その様子は、まるで撫でられて喉を鳴らす猫の様だ。
こうして僕はしばらくの間、膝の上の姉ちゃんを撫でて居たのである。
**********
「ねえ、ケイちゃん・・・」
「ん、なに、姉ちゃん?」
こうして、しばらくの間、姉ちゃんを撫でていたら。
僕の肩に頭を乗せ、ウットリしていた彼女が突然、そう言ってきた。
「私なんだか、急にケイちゃんをギュってしたくなっちゃった・・・」
「えっ?」
「えいっ!」
「(ドサッ)」
姉ちゃんそう言って腰を浮かせると、イキナリ僕に頭に抱き付き、右横に押した倒した。
僕は、背中を背もたれから離していたので、簡単に倒されてしまう。
「(ギュッ)」
ソファーの上で横倒しになったまま、姉ちゃんは僕の頭を抱き締める。
すると僕の顔が、柔らかい物に包まれた。
「ほら、ほら、ケイちゃんもギュってしてよ」
今度はそう言って僕の腕を握り、自分の腰に持っていく。
姉ちゃんの言う通り抱き付くと、思った以上の細さに内心驚いた。
「(なで・・・、なで・・・)」
「うふふ、ケイちゃんの背中、広くて撫で応えがあるね〜」
何だか嬉しそうに、そう言いながら。
姉ちゃんが左手で僕の頭を抱えたまま、右手で背中を撫でる。
「・・・はあ」
背中を滑る手の感触の良さに、今度は逆に僕が溜息を漏らした。
「(トン・・・、トン・・・、トン・・・)」
「おねえちゃん・・・、きもちいいよぉ・・・」
「クスクスクス」
次に、背中を撫でていた動きが、指先で軽く叩く動きに変わる。
その体に染み入る様な優しい動きに、僕は思わず昔のような甘えた声を出し。
それを聞いた姉ちゃんが、可笑しそうに笑う。
「ねえ、ケイちゃん?」
「ん・・・、なあに・・・」
「女の子にとって、理想の弟ってね。
体が大きいけど優しくて、自分の言うことを素直に聞いてくれて。
でも、イザと言う時に頼りになる、例えるなら優しい大型犬みたな子なのよ」
「そお・・・」
抱き付いた体の柔らかさ、特に顔全体に包まれた二つの膨らみと甘い匂い。
背中に染み入る手の動きで、スッカリ意識がボンヤリしていた僕に姉ちゃんが言った。
「だから、ケイちゃんはワンコみたいだよ」
「もお〜、僕は犬じゃないよ〜」
「ううん、ケイちゃんは優しくて、素直で、結構頼りになる。
私の可愛いワンコだよ」
「(ギュッ)」
「んっ! んんんっ」
姉ちゃんがそう言って、僕の頭を強く抱きしめると。
口を塞がれた僕が、息が出来なくなった。
「こうして、ケイちゃんを抱いたり背中を撫でていると。
何だか、大きなワンコを可愛がっているみたいだし」
「(なで・・・、なで・・・)」
「・・・あぁ」
窒息して一瞬、意識が覚醒したが。
続いて、再び背中を撫でる感触に、また意識がボンヤリしてくる。
「(スリスリスリ〜)」
「もお、ケイちゃん、擽ったいよお〜」
顔を覆う感触の気持ち良さに、思わず頬ずりをすると。
擽ったそうに、姉ちゃんが身を捩る。
しかし、かと言って、僕を離そうともしない。
気持ち良いけど、姉ちゃんが可愛そうなので、頬ずりするのを止める。
「ホント、ケイちゃんは甘えん坊だから」
「(なで・・・、なで・・・、なで・・・)」
背中に変わり、今度は僕の頭を撫で始める。
「おねえちゃん・・・、おねえちゃんだいすきだよ・・・」
「クス、お姉ちゃんもケイちゃんが大好きだよ」
撫でられている内に、昔の事を思い出し、つい姉ちゃんに甘えると。
姉ちゃんも笑いながら、そう返す。
その後も僕は、姉ちゃんに成すがままにされていたが。
別に不快ではなく、むしろ、このままずっと居たい位である。
・・・
こうして二人は、この様に。
お互い、甘えたり甘えられたりしながら、ユッタリとした時間を過ごしたのであった。
猫姉と犬弟