怪奇警報装置

 世界中の科学者の知能を集めた世界規模の秘密結社があった。彼らの関心は、科学で解明できないものを科学によって解明する事にあった。やがて彼等の知能と持てる技術をすべて使い、長い奮闘の末、21世紀初めに、ufo、uma、いかがわしきオカルトを定義するための計画を進行させた。それは秘密裏の実験であり、外に口外されなかったが、まずはじめにひそかに、ある特別な装置が出来上がった。それは《不可思議警報装置》世界のありとあらゆる不可思議な現象を察知し、不可視な“非日常”をあぶりだす装置がだった。細長いまるで墓石のような様子で、全体は黒光りをしていて、てっぺんが三角形の形で、全身に奇妙なガラスのドーム状の窓のようなものがついていて、ひらぺったく、全体のちょうど正面、真ん中のあたりに時計のようなものがついている。それは目盛になっていて、異常が近づくと察知して目盛が大きく揺れる、そのパターンにも秘密があり、幽霊が近づくと244、未確認生物が近づくと333といった具合に、決まった波形をだし、異常を知らせる仕組みになっている。補佐する目盛もあり、そちらは異常の性質を知らせる、相手が生物ならば4、個体ならば3といった具合に相手の状態や、能力を察知する事ができた。しかし人間の身長と同じくらい大きく、重く、運搬もむつかしければ、それを使う機会もなかなかない。不可思議なものなど、そうそうでくわしはしなかったのだ。やがて、長い年月のこと、装置は、その組織の秘密とともに、とある孤島の地下空間に放置されていた。

ある日の事、一人でに装置が起動して、音にあわせて目盛が揺れている。これはいま、音の波形を表す装置になっている。地下での出来事で、研究室は何重にも機械と人の警備により、警戒態勢が敷かれている。侵入者の形跡もない、一人の科学者が語り掛けてみる。
「お前は誰だ」
波形は乱雑に、完全に数字をよけるように妙な揺れを続ける。
「おかしい、こんな波形は示したことがない」
彼は首をひねっていたが。ほかの研究者が、眠い、といいながら部屋に入ってくると、機械は正常な数値をしめした。それは333《未確認生物》で
2《気体》で244《幽霊》だった。おかしなことで、部屋に眠いと言って入ってきた人間は、その部屋に何もないのに、浮かれたように騒ぎだし、
「アンナ、アンナ」
と叫んでいる、それは死んだはずの婚約者の名で、昨年、不幸にも病で亡くなった人のようだった。しかし、妙な事もあった。その奇妙なものは、決してその《不可思議警報装置》のそばを離れようとはしない。科学者たちが、乱雑に揺れ続けるときのその気体の状態と、ある反応を示し、しっかりと目盛をさすときの気体の状態を比べてみると、それはどうやら、部屋の中にいる人間が何らかの《欲求》を持っているとき、装置はきっちりと正しい機能果たし、そうでないとき、誤作動のような状態を示し続けることがわかったのだった。その後も様々な実験を試みた。例えば装置を隣の部屋に移したり、地上に移してみたり、そして周りを壁ででおおわな空気中に装置を移しても、周囲に強烈な欲求を持つものがいない限り、目盛の波形は、基本的に常に誤作動を続けたのだった。やがてまた元の部屋に戻されると、組織では用のない限り、その装置の電源は入れない事にきまった。また長い年月がたったころ、ある人間がその部屋へ入った。部屋の中には薄黒い煙が目に見えて現れていて、それを察知し、外の人間に声をかけた。しかし、ついに、彼の不可解な死——3時間の間に、誰もその部屋に入ってくるものはいなかった―—

 やがて組織は新しい装置を開発した。《不可思議完全防護服》だ。この世のありとあらゆる不思議な存在からその身を護ることできる。科学者たちには、《不可思議警報装置》にまとわりついているものが《何か》たいていの分析はできていた、だから彼等は、再び一人の欲求を持つ人間を、その防護服を着せ、装置のそばに近寄らせたのだった。それは初めにその部屋に入った人間と同じく《食欲》——わざと空腹を持たせた状態で入れたのだった——やはり部屋には黒い煙が渦巻いていて、装置は奇妙なメモリを示し続けた。彼は―—その黒い煙は、《吸血鬼》であり《サムライ》であり《男女》であり《人魚》だという―—やがて、防護服が緊急の信号をならした。ピーピーピーという音、それは《防護服の故障》を知らせるものだった、すぐさま、防護服を着た人間は外にでたが、彼は発狂し、奇妙な事を口走っていたのだった。
「あれは、ただ観測する装置ではありません、あれは、この世界のありとあらゆる不可思議なものを収集する装置になったのです、この世界のありとあらゆる不可思議な存在は、観測する事によって存在できていたのです!」
彼はその三日後絶命し、科学者たちと組織は永久にその部屋を封鎖し、装置を破壊する決定をした、だからその後の人類のだれも、あの時、あの孤島の地下室にあふれていたその気体が何であるかを知ることは出来ない。

怪奇警報装置

怪奇警報装置

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-17

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