異質な期待

暑い夏の日、8月の上旬。ユゾーは、同級生と出会った。高校の外で同級生と出会うのは久しぶりだった。そして、まさかそこから二人だけで話をするなんて……なかなか知れた中じゃないとできない。
「もっと落ち着いている人かと思った」
その日高校生の男子ユゾーは、同級生のルラが、あるゲームセンターでギャル仲間とたむろして、はっちゃけた冗談を言っているのを見た。位置は店の入り口付近、右側のUFOキャッチャーのゾーンと真ん中の格闘ゲームとのはざまだった。そんな目立ちやすい所に、同級生がいた。ルラはユゾーを見つけると居心地悪そうに目をそらしたが、思わずユゾーがあっけにとられていると、ギャル仲間が。知り合いじゃないかとユゾーを指さした。ルラは、それまでの無造作なスタイルから、またいつものぴっちりとかみをわけたようなヘアスタイルに戻し、整った顔立ちの、やさしそうな顔立ちと、きれいな茶色い髪、まるい大きな瞳で、きれいに手をそろえてこちらに手を振った。その様子に思わずユゾーは。
「ぷっ」
と笑ってしまったのだが、すぐに少しギャップがあったので、と謝罪した。その後、あとで待ち合わせしよう、伝えたいことがある、と呼び出されたので、彼らはゲームセンターの外で、夕方ごろ待ち合わせた。
「ごめん、今みんな……帰った」
申し訳なさそうに汗をかいて、息を切らせてやってきたのは、さっき見かけたルラだ。ユゾーは、彼女が頬をハンカチで拭くのをみて、さっきコンビニで買ってきた飲み物を差し出した。ユゾーは、気が利くが、顔立ちもシャープで、細い目をしているが、まつげもながく、堀も深いので渋みがあった。
「ホラ」
「あっ、ありがとうー、やさしい」
二人が出会った場所は高校からかなり距離があった。彼女の地元だったので、気を抜いていたらしかった。二人は店をでてすぐの大きな道路の歩道橋の上でコンビニで買った飲み物を飲みながら、少し話をする事にした。道路はひとつは街をむいて、銀行の看板がと建物が見える。西に沈む太陽も見えた。逆側は田舎町、田園風景が広がっている、ユゾーは今日そちらに用があって、その帰りだったのだ。
「ユゾー君はどうしてここへ?」
「親戚の叔父さんの手伝いだよ、でも意外だったな」
「昔は、中学まではあんなふうにはっちゃけていたのよ」
「手を振り返してくれたときよかったなあ、いつもの顔、礼儀正しいキャラにもどって」
少しの沈黙、きまずさはたしかにあった、ユゾーがペットボトルの口を自分の口元へ運び一気にのみほそうとすると、タイミングよく歩道橋の下に一台のトラックが通り、気まずさを打ち消してくれた。

彼女は紙をかきあげ、耳元で整理して、伏し目がちに少し憂鬱げな表情を、夕日に照らされた、歩道橋から見える街の景色へとむけた。それまで色々と汚い会話や口調をかわしていた人とは思えなかった。しかし彼女は、そのことについてさらに掘り下げると、彼女らしからぬいいわけをした。
「あまり、みられたくなかったなあ……」
「なはは……」
「私、二番目なの、クローンでね、私たちって、この国の決定で、記憶だけバックアップをとるじゃない?私一度死んだのよ、それからちゃんとしなきゃって思うようになって、でなければ今もまだあんなふうにキャッキャってやってたと思うの」
「え?本当?」
とユゾーはそのときふと顎に手をあてて考えた。
「そういえば、僕にもそんな過去があったっけ」
「ユゾー君も二人目!?」
そうなのだ、小さいころわがままばかり言ってた自分は、母親に、あなたは一度死んだことがあると脅されたことがあった、それは物心つく前のことなので自分には記憶にないのだが、それから人がかわったようにおとなしくなり母のいう事を聞くようになったという。
「そういえば、ユゾー君、昨日の事おぼえてる?私、いったよね、大事な事」
思い出せなかったのも無理はないのだ、彼もまたクローン人間、事故による生まれ変わりなのだから。
「ごめん、なんだっけ、俺昨日、死んだみたいで」
「そっか」
ルラは、寂しそうに笑った。

異質な期待

異質な期待

※少し書き足しました。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-13

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