アンバランスな超能力者

 何事も他力本願な男がいた。彼はその日暮らしの生活をしていた。仕事は安定しないものだったが、持って生まれた誠実さと謙虚さによって、その日ぐらしの生活を続けていた。
平和を望む超能力者の女がいた、彼女はOLをしていた。
ある喫茶店にて、二人は出会った。
「いってえ」
「あっすみません」
女がもっていたあまりに厚く硬い本が、床に落ちた自分のゴミを拾おうとした男の、頭にあたった。申し訳ないと、腰の低い女、自分も悪いという男、なぜか男は、その本を見かけた事があるといい、なんだか、初めの印象と違い気さくな印象をもった彼女は、別の店でお茶をしないかと誘ってみた。二つ目の喫茶店によると、男はその本の内容をしっていた。量子力学の難しい本だった。二人は、話しているうちになぜか気が合った。男は思ったより剽軽な内面を持っていた、女性のほうは、好奇心旺盛といった感じで、くせっけのつよくて、あまり格好いいといった顔立ちでない、平均的な顔立ちの男に、興味を持っているようだった、確かに男は、奇妙な目をしていた、何事か隠しているような……その後、喫茶店や、街で何度か偶然会うたび、それなりに話はするし、たまに休みが一致するときには、図書館やカラオケで遊んだりしたのだが、私服さえ、少し地味さを持ちながら大人っぽさをもつ彼らの性質は、一致していた。だんだんと、友達、という概念がふさわしいようななじみ方をしてきたとき、徐々に自分の事を話しつつ、一緒にお酒も飲むような仲になったが、二人の心の奥底では、女もそうだが、男も仕事の部分は語りたがらなかった、彼女は彼女で、男に対して直接触れないある秘密をかくしてているままだった。

 男は探偵をしていた、名前をシドウといった、女はミィ。女は男の仕事について興味があったが、自分から話さないのならば……深く聞くまい、という想いがあった。
 一方、女は……昼は、証券会社のOLとして働き、夜な夜な人助けをしていた。彼女自身火を扱う超能力をもっていた。その超能力を持って、夜な夜な、自分の思う“正義”を形にしていたのだが……悩みもあった。

 女の能力、それ自体は圧倒的に強力なものだったが、彼女の超能力にはある秘密があった。それは、彼女がその非日常的能力と、ヒーローじみた行いを始めるようになった時、発端へと遡る必要がある。
 ——女の超能力の正体それは、3年前の、女が高校生だったころ、毎日の様に、彼女は部員とともに夜空を眺めるべく、ある高校近くの小高い山の上へのぼった
「今日もいい天体が見られるといいね」

 そうだね、と答え、彼女は、今年に迫った卒業の事をふと、考え、学生生活の思い出が走馬燈のようによみがえってきたのだが、その瞬間、ドーンという音がした。
天文部の天体観測で女のすぐ傍にふってきた隕石、彼女は、目を覚ますまえに、隕石の中から声がするのを聞いた。
「お前に能力をやろう、だがお前は、同じような存在を救わなくてはいけない」
それによって手にした力。女はいしきを失った後、その瞬間の夢をみて目がさめた。女の体に異常はなかった、しかし女はある一か所の記憶だけをうしなってしまった。それは―—天文部の皆の記憶―—おきると、友人のひざに頭をかかえられ、みんなが自分をかこって涙を流していた。思い出せない記憶を語ると、さらに同様して、涙を流した。しかし、その涙に、女は楽になっていく気がした。というのも、あの隕石がおちたあとから、体に妙な重みを感じるのだ。そして、体の奥底からみなぎる―—怒りーーのような感情に気がついた。女はすぐに自分の能力に気づいた、一週間もたたずに、それを使いこなせるようになった、しかし、ひとつ欠点があった、——それは気を失ったとき、人間の形をした白い光に言われた事だった。
“お前は、力と心の弱いものに超能力を与え続ける力を持った”
女は超能力を誰かに授けなくてはいけないのだ。———
それは言葉や、誰かに教えられた知識ではなく、女に超能力が備わったその日から、女の頭の中に概念として備わったものだった。それをしなければ、意図しないだれかが、本人の望まない超能力をもってしまう。初めの犠牲者は母だったーー。だから彼女は、そうなる前に、毎夜毎夜、弱い立場の誰かに超能力を授けてまわっていた。

ある日超能力者の女は相談にくる、女はすべての秘密を話し、そして、探偵としてのシドウに相談を持ち掛けた。力を授けた子がひいきのせいでハブられている。いじめられている人間がいる。と、そうでなくても、使い方がわからず、逆に弱い者いじめを始める人間がいる。と。
他力本願の男はいった。
「超能力をしのぐ超能力をくれ」
女は男にたった一つの超能力をあたえた。
「これは鏡だ」

翌日から世界にたった一人の超能力者は生まれた。その力は、“鏡”、それは、超能力者が近くにいなければ、力を使う事のできない性質の超能力だ。
対峙する相手の能力者と同等の力しかもたず、ただ“超能力者のマネをする超能力”その力に際限はない。だがその能力は、女がそばにいる事でしか発動せず。暴走の心配はなかった。女は、夜の、正義のヒーローのように顔を隠して暴れまわるとき、完全に男を使役するつもりだったが、女の失敗のたびに、男が手助けをするようになった、やがて男がまともな人格を手にするまで、男は女に同情し、そのたび、魔法だけではなく、少し人間の成長がみられるようになった。やがて女は男のもとで働くようになり、二人の探偵事務所は、今や超能力探偵社として有名になっている。女は男を粗雑に扱うことがあった、それは男があまりにぐーたらの他力本願人間だからだが、そのたびに男はいう。
「その病気が治るまでに、俺は探偵スキルを積み上げ、独立する」
すると女は満足げにわらう。

アンバランスな超能力者

アンバランスな超能力者

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-13

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