デルタ・ブルースの夜
短歌十首。
街
足早のひとの 陰り
誰かが
置いた 陰り
一日を信じて
どこからか帰ってきて傷みへともどる
沈めていくコップの底
独りだけで
独りだけではなくて
街の色 落ちて
射光
人々
詩を去って
ひとを去って
詩もひともない静寂の一人を いつかが
「ちょっとだけ家事やって詩だけ書いてくれてたらいいの」
「リルでいいの」
日々
こぼれ
おまえをなくして
遠い遠い遠いむかしさえなくして
好きで
消えて
歩き疲れて
歩き疲れることだけが残って
路
えぐり狂う この路
唐突に目が滲んだデルタ・ブルースの夜
ひとも
詩も
尽き
おしまいが近づきます
ただただ好きだったのでした
人生が
降りてくる
祈った
神ではなく 色素の抜けた瞳を
デルタ・ブルースの夜
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