第4話ー8
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あの謎の敵に負けてから数カ月がすきようとしていた。
星間国家ジェザノヴァがひろげる前線は、崩れていた。原因はあの生物だ。姿形は違うものの、あの再生、増殖する細胞をもった生物が各戦場に湧いてきた。
前線の兵器を食い破り、兵士を食べ、ジェザノヴァ軍を押し返した。
広げていた前線の縮小に、焦った参謀本部は緊急会議を連日行い、国王を同席させてどうやって部隊を動かすか話し合った。
参謀本部は前線の縮小を提案した。だけど国王は断じてそれを受け入れなかった。国王は回収した敵生物の細胞の調査、弱点の救命を命令した。
だがその間にも兵士は命を落としている。最悪なのは支援できず、敵国に置き去りにしなければならない事態だった。
食料を失った部隊の末路は地獄だ。
そしてこの数カ月、台頭してきた星監督国家があった。敵生物の暴れているのに便乗して、版図を拡大するバジャラハ国。
宇宙の蛮族、ジェザノヴァとは正反対の国家だ。
この凄まじい勢いに、相次ぎジェザノヴァの属国だった国々、衛星、惑星は反旗を翻した。
政治を司る執政官ン・メハは各国へ連絡して、離反するのはやめてほしいと交渉をするも、餌場が移れば動物は移動する。
国々の離反は止めることのできない雪崩だった。次々と執政官のところへジェザノヴァを離れる連絡が入り、同時に宣戦布告してきた。それはバジャラハ国の意向が反映されたものだった。バジャラハ国は前からジェザノヴァの北の宙域に位置する、最大の勢力としてにらみ合いが続いていた星間国家だ。切っ先を向けあい、ずっとこれまで小競り合いを続けてはいたが全面的に戦うことは、お互いの国の利益にならないことをしっていたから本格的田戦闘は避けてきた。
敵前で弱った獣は仲間にすら食われる。敵生物の影響から前線が乱れたことで、バジャラハ国は一気に各国を引き入れ、多方面からジェザノヴァを攻めてきた。
各国へ駐留するジェザノヴァ駐留基地は攻撃を受け、そこへ乗り込んできたバジャラハ国軍によって、駐留基地は次々と壊滅していった。
バジャラハ国は重力が10Gという重たい首星で進化した人型生命体バグスリアンがバジャラハ国の80%を占めていた。その筋力は尋常ではなく、兵器を使用した戦いというよりも、むしろ褐色に染まり、背中が金属化したその肉体を使用した白兵戦を行っていた。
だからバジャラハ国の戦争後は、肉塊と鮮血がたまる。
政治も帝国的圧制である。支配した国家は政治体制をすべて奪われ、国民の利益はすべてバジャラハ国に座れる。
それでも離反が多いのは、圧倒的な武力にある。ジェザノヴァの保護の傘の下にあった小さな国、衛星、惑星はバジャラハ国の力の脅しから避けてきた。が、その傘が小さくなった時、バジャラハ国は刃を各国へ向けて、離反を促したのだ。
これに焦燥感をあらわにしたメハは、父に前線の立て直しを提案した。
「何を言っているか。我が軍は勝っているのだぞ。あのような生物など、焼き払ってしまえ!」
と強気で娘の言葉を一蹴した。
とにかく前線を立て直す最短の策は敵生物を何とかしなければならない。
メハは研究ラボへ向かい軍団長に生物の肉片からわかったことを聞いた。
「少しですか解明できました。この生命体は爆発的に増殖します。そしてこれをご覧ください」
そう言い軍団長はクリスタルボードを操作した。
すると小型のリスのような白い小動物が細胞が隔離された囲いの中に転送された。その瞬間、黒い細胞は小動物に吸い付いた。磁石に砂鉄が吸い付かれるように。
そして全身を黒い細胞は覆い尽くすと、リスのようなその形状を変化させて、目玉が無数にあるヌメヌメとした不気味な、形容できない姿に変化した。変化と同時にクリスタルの囲いへ物かってきた。
軍団長は冷静にクリスタルのボードを操作してビームを放射、黒い不気味な生物を焼却した。
メハはこれではサンプルがなくなった。そう思い軍団長を見つめる。
軍団長はさらにボードを操作すると今度は別のビームが放射され、黒い肉片が灰の中から急激に膨らんで蘇った。
「どうやらこの生命体は細胞が増殖し他の生物を侵食、別の生物へ変えてしまうのです。現地から戦場から報告にありました現地惑星生息生物が一切姿を消したという報告は、この現象によるものだと思います」
クリスタルボードを囲いの横に置き、軍団長はさらに説明した。
「この生物を殺す方法はビーム兵器の周波数を変更する必要があります。そのことでこの生物は壊滅させることができるでしょう」
メハは光明が見えた気がした。
「早速、前線の部隊へ通信を!」
その場に居合わせた兵士へ怒鳴るかのようにメハは命令した。
これですべてが好転するはずだ。メハはそう思い、胸の奥に秘めた不安と不安定な気持ちを安定させた。
が、これは悲劇を拭うことにはならなかった。
ENDLESS MYTH第4話ー9へ続く
第4話ー8