8月8日

ぼく が昔 大好きだった子に、花ちゃん というのがいて、本当に大好きだったはずなんだけど、花ちゃん にとって おれ は、ただの ヤツ だったみたいだ。と 気づいた時から おれ の花ちゃんに対する アツイ愛が冷めていったから、おれ も たぶん そんなに本気じゃなかった。
でも泣くほど悲しかった。泣かなかったけど。

表面に白い粉が(怪しい おクスリではない)塗してある、丸いパンをちぎって、中にあるチーズの塊 とか、ナッツとか、若干のしょっぱさを 噛み締めながら、これが 涙の味ってヤツかな、って ひとりごち て、なにをするにも 元気がない ぼく も、花ちゃんのことを考えている時だけ は、死んだ心臓が ドキドキ動いてたんだよ、って 花ちゃんに言う機会は 永遠に、フォーエバー、失われたし、 言ったって、花ちゃんは 意外とロマンチストじゃなかったから、ドン引き されそう。

でも かつては、花ちゃんと デート、したり、おれ が料理を 作ってあげたり、っていうことを、妄想したり してたし、その妄想 に耽ってる間、おれ は本当に幸せだったよ、って、どんな気持ちか未だに (そしてたぶん 永遠に) ミステリーだけど、アレが恋じゃなくても、おれ は幸せだった、って、椅子にだらしなく もたれて、白い粉を口の周りにつけたまま 言っても、ダサいね。

8月8日

8月8日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-08

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