余分な家電機能。つまらない人生洗濯機。

 ドラム型の最新洗濯機は、特殊な不要な機能を多くつけている。例えば会話、誰が洗濯機の、風呂場近くで家電とおしゃべりをするだろうか、風呂の中で扉越しに挨拶でもするのだろうか、テレビが見られるのなら別だが。
 例えば、献立機能、何ならスマホ機能と連携して販売いただこうか。
 そのほか、愚痴を聞く機能、乾燥具合のミディアム、レア機能。それからそれから、人生洗濯機能、ん……私は目をうたがった。
「人生の……洗濯?」
 所詮家電だ、つまり家電としての機能しか有していないはずだ、もし何かあれば、訴えてしまえばいい、訴訟こそ正義だ。
「かくなるうえは、ぽちっ」
疲れた体で、私は洗濯機のスイッチをおした、なんなら雨降りの休日、今日の鬱憤のすべてを回復しうるような、ユーモアの集まった機能であればいいのだ。
 《ゴゴッゴゴゴ》
何も起きない、洗濯機の前で、まわる様子を、ごろごろなるドラムを見つめ、30分ほどそうしていたが、退屈すぎて外にでてみた、ベランダから心地の良い風がふく、少しあめかぜがさしこんでいるが、網戸を開けて外にでてみた、こんなことは、子どもの頃以来だ、私はまるで自分が洗濯されたかのような気分になった。ふと私は私のせたけと、胸のふくらみをみつけて、違和感を感じた。
「あ、あれ?私って、誰だっけ?私って、どんな学生時代をおくってきて、だれの娘で、そもそも私ってもともと女だったっけ?」
ピーポロポープー。変な音をたてて、洗濯機が私に声をかける。洗濯は終わったらしい、ドラム式のガラスから私は私と顔を合わせると、小さな食品業界のOLとして働いている私の、大学を卒業したての私と顔があった、最近すこし、やせてきたかな、そんな事をひらいて洗濯機のモニターをみるとこんな文字が書かれていた。
「心地よい思い出にひたれましたか?」
中々いい機能だ。洗濯機に入るわけでもなく、記憶を失うわけでもなく、ただ“一瞬自分が誰だかわからなくなるなんて”なかなかやるじゃないか、この国の家電。

余分な家電機能。つまらない人生洗濯機。

余分な家電機能。つまらない人生洗濯機。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-06

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