8月6日

火星が接近してるなんて嘘だ。二十一時五十一分が永遠に続く気がした。火星が地球に急接近しても、好きな人が急接近してくれることに比べたら、だいぶ どうでもいい。天文学者が血まなこになって火星を視姦している間、おれは インターネットで なまこの画像を探して、気持ち悪、って思いながら火星のことを忘れようとしてる。
でも、見れないことが悔しいか悔しくないかで言うと、悔しいような気もする。見る気がそもそもあんまり無いけど。

悲しすぎて死ぬかと思った。死ななかったけど。

心配しないで。いつか地球も火星も月も木星も天王星も冥王星も土星も金星も水星も海王星も、お前が好きなシリウスも、ポラリスも、急接近するから。合体するから。ラスボスみたいに。夏休みの宿題の、自由研究を休みの最終日まで やるのを忘れていた宇宙人が、木工用ボンドで適当に星をくっつけて、先生に提出しようとするから。だから、火星が地球に近づいたのを見れなくても、なにも惜しくないんだよ。いつか全部くっついちゃうから。大丈夫なんだよ。

泣かないで。心配しないで。

8月6日

8月6日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-06

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