おみくじDays

おみくじで大凶を引いたみゆきは半泣きしながらトイレへと駆けて行った。後を追いかけるなおとやよい。うちとれいかは二人が帰ってくるまで待っていることにした。
おみくじで大凶を引いたみゆき、せっかくの修学旅行なのについてへんなと思っていたけどまさかここまでとは。れいかとやよいが大吉でなおは中吉。三人の運勢が良すぎて私の末吉が一番ついてへんような気がしたけどみゆきのを見た後じゃ可愛らしくみえてしまう。
引いたおみくじを読んでみる。何度見ても書かれているのは末吉。

「れいか、結局末吉は何番目に運がいいんや?」
「並び順は吉凶の数によって少し変わりますが大体は大吉、中吉、小吉、吉、末吉、凶、大凶ですね。数が増えれば凶の種類が増えます。中凶や末凶など細かくなっていきます」
「吉はいっぱいあってかまへんけど、凶はいらへんな」
「そうですね」

れいかはくすりと笑って頷いてくれた。大吉、中吉、小吉、吉、末吉。指折り数えて5番目、凶の一歩手前。やっぱり微妙だ。
下の方に書いてある個別の運勢を読んでみる。れいかが言うにはおみくじは吉凶よりこの下に書かれている事の方が一番大事らしい。


学問 学ばぬことに悔いる
商売 現状維持
旅行 道に迷いし者を救う
争事 今は耐えるべき
恋愛 待つがごとし
願望 一歩控えよ



耐えろ、控えよ、今は何もやるなって言っている気がするのはうちだけ?

「れいかちゃん、あかねちゃん」

お手洗いからやよいが帰ってきた。みゆきとなおはまだ姿が見えない。

「二人は?」
「厄除けの御守を買っている。もう少しで来るよ」
「そっか」

やよいはポケットからさっき引いた自分のおみくじを取り出し細長く折りたたんだ。

「おみくじって結んだ方がいいんだよね」
「皆さんそうなさっていますが本当は結ばずに財布などに取っておくと良いそうです」
「それはおまもりみたいな感じ?」
「残念ながらおみくじはお守りにはなりません。手元に置き困難に陥った時、おみくじの言葉を見返せるようにするのが一番良いそうです。元々おみくじを結ぶようになったのは神様と縁を結ぶ為で、木の枝なのは樹木の生命力にあやかって願いが叶いますように祈りをこめる意味があるそうです」
「みんな結んでいるのは木の枝じゃなくロープだよね」
「木々を傷つけてしまうのでロープを張って結ぶようにしているんです」
「……れいかの話は勉強になるわぁ」
「れいかちゃん、先生やバスガイドさんみたいだね」
「れいかはスラッとしてべっぴんさんやからバスガイドさんぴったりやな」
「うん、似合う似合う!」
「そ、そんなことは……」

似合うを二人で連呼したられいかの顔が真っ赤になった。ゆでだこみたいだ。めったに見られないれいかのテレ顔はとても可愛くて、その顔を見たやよいが何度も何度も可愛いっていうもんだかられいかの顔はいつまでたっても真っ赤のまんまだった。

「このおみくじは財布の中に入れるね。今度おみくじを引いた時に古いおみくじを木に結ぶ事にするよ」
「新しいおみくじを教訓に、古いおみくじは祈祷に捧げる。それは良い方法だと思います」

二人は意気投合して笑いながらおみくじを財布の中にをしまった。

「うちは……」

末吉の文字が再び目に入る。凶の一歩手前。持ち歩いても結局忘れて見返すとかしないと思うし、ここは神様に運気向上を……。

「ちょいと結んでくるで」


大きな木の周りに紐が張ってあり、そこにおみくじが無数に結ばれていた。

「木を傷つけないように、だっけか?」

さっきやよいがやっていたようにおみくじを縦長に細長く折りたたむと無数に結ばれたおみくじの間を少しかき分けて茶色い紐に結ぶ。が、意外と難しい。結ぶものが紐ではなく紙で、柔らかくないから途中途中で折り目で引っかかってしまう。なかなかうまく結べない。
あーして、こーしてと不器用な手つきでぐいぐいっと紙を引っ張ったら突然「ビリッ」と破けた。

「あ」

中途半端に破けたおみくじは片方だけ結ぶには短すぎて、繋ぎ合わせる事は絶対に無理。これは諦めろということなんやろうか。うちはひきつった顔のまま、破れたおみくじを見つめる事しかできなかった。

「あかね」

呼ばれた声に振り向くとそこにはなおが立っていた。少し視線を後方に向けるとれいかとやよいのところにみゆきがいる。

「おみくじ結べた?」
「た、と思ったんやけど……」
「?」

首をかしげたなおに私は両手にもった破れたおみくじを見せた。それを見てなおは理解したらしい。

「あーあ、やっちゃったね。あかねって不器用?」
「ちょっと失敗しただけや!」
「はいはい。じゃ、ちょっとかして」

なおは私のおみくじを受け取ると財布から取り出した自分のおみくじにやぶけたおみくじを重ねて折りたたんだ。そして紐に結び付ける。ぎゅっと力任せに結ぶのではなく、大きな輪っかを作り結び目を作るとゆっくりと丁寧に輪を小さくしていき、輪が消えるとおみくじは綺麗に紐に結ばれる形になった。

「はい、これでよし」
「いいんか?」

さっきれいかから聞いた話を簡単に教える。なおは「へぇ、そうなんだ」と感心したけど、すぐににっこりと笑った。

「私の中吉の運を分けてあげるよ」

その笑顔はなんかすごく嬉しそうで、見ているこっちまで幸せになるような、ほかほかする笑顔。なんでそんな嬉しそうな笑顔ができるんやろ?うちのおみくじとなおのおみくじを一緒に重ねて結んだだけなのに。まったく、見ているこっちが恥ずかしくなる。

「そりゃ凄く嬉しいけど、うちよりみゆきの運をどうにかした方がいい気が……」
「そうだけど……あそこまでの災難になると引き受けにくいなぁ……みゆきちゃんには悪いけど」

なおの言葉に小さく噴き出して確かにそうかもしれないと笑ってしまった。

「あかねちゃーん、なおちゃーん」
「次にいこーよー!」

向こうでみゆきとやよいとれいかが手を振って呼んでいる。

「でもさ、みゆきちゃんならあの明るさで災難吹き飛ばしそうだけどね!」
「ほんまにな!」

三人の元へ戻ろう、とうちとなおは一緒に大きく一歩を踏み出した。

おみくじDays

おみくじDays

■ スマイルプリキュア! 緑川なおと日野あかねの御話

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-05

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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