泣けないほどの寂しさなのです
短歌十首。
ひとをなぞる
淵に添いながら まどろんだまま
見つけられないように
「おまえの言ったかけがえがないってのはこんな人生でもいいのか?」
ただひとりに
消えゆくように祈った
飲みほす前のコーヒーの底
すこしだけ気分がいい
楽に生きる
おまえが願った
楽に生きる
おまえをかけめぐりゆく おまえからの生死 おまえを歌える遺跡
永い眠りへ 一番やさしいわたしで おやすみを灯したその日
傷ついたいま
編んでゆく
懐かしく古びて傷ついた道すじで
ありがとうね
たとえどちらが先に 眠りへと たどり着いたのだとしても
かけがえのない
一つ
夜
おちる
泣けないほどの寂しさなのです
「ごめんね」より
「ありがとう」を
「さよなら」じゃなく
「おやすみ」を
歌えるように
泣けないほどの寂しさなのです
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