ちから
踏切の所に、ほんの2mくらいの小さいけど急な上り坂がある。
そこをガッと一息に自転車で登ったら、下にいた腰の曲がった婆さんが自転車を押そうとしながら、斜めに上を向いて「力があって良いねぇ」と言った。
「良い」か。
僕のは、自分勝手な力だなと思った。
この坂を壊すこともできまいし、婆さんを担ぐこともできない。
それ故に婆さんは僕の純粋で身勝手な力を、ただ羨んだのだろうと思った。
なんの意図もない言葉だったと今になって思う。
自分が難なく先に進む以外になんの使い道もないこの脚の上で、なんとなく悔しいと思った。
ちから