8月2日

いただきます。

スーパーマーケットで買ってきた、1パック百円、特価中のシールを貼られた さんまくんをフライパンで焼いた。パラレルワールドでは、発泡スチロールのトレイには人間が寝転がっていて、上からかけられた、布団と言うには薄すぎるサランラップに「大特価」シール、貼られてるんだろうなとか考えていた。

菜箸で さんまくんを摘んで、ひっくり返そうとしてたんだけど。勢い余って(と言うよりおれの箸の使い方がへたくそ)、さんまくんの首が折れた。あげく、なんかの拍子に さんまくんのお腹が裂けて、茶色くなった内臓が、乳白色のクッキングシートに落ちた。(フライパンの上にクッキングシートを敷いてから魚を焼くと美味いよ)

グロいな、と思った。魚の世界の、ゾンビ映画に出れるよ。死んじゃったけど。首も無いけど。
そういえば昔、首の無いゾンビが出てくる映画が無かったっけ。無いわ。

焼かれる さんまくん があまりにも気弱そうだから、水槽に入れて「およげよ」って命令したら泳ぎだすんじゃないか、とか考えて、まぁ結局やらなかったけど、それぐらい弱そうだった。おれたちが さんまくんにしてることは、別の世界で さんまくんがおれたちにしてることだって思うと、背筋が凍るね。魚、苦手だったけど、これからはあんまり文句を言わないことに決めた。

ごちそうさまでした。

愛してるよと呟きながら馬鹿みたいにエスのベッドを撫でているぼくを馬鹿みたいと言ってくれるのはぼくだけ、エス、愛してるよ。でも愛してるの一兆倍ぐらいは、お前を愛してるから。忘れないでね。

8月2日

8月2日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted