鬱憤守護霊

「体が重い……」
「あなたの守護霊がとても、後悔をしたまま。体中に毒をため込んだまましんだためよ」
唐突にふたつとなりカウンターのマダムが私にはなしかけてきた、今日はママがいない、きりもりしているのはマスターだ。
「あー……常連さんですか?」
「ええそうよ、私はいつもみているわ」
店員の道子ちゃんが、きをつかって僕におしぼりをくれた、
「肩こりですかね~……」
さりげないセリフにたすけられる、なんだか例の、すこしがたいのおおきく、ぽっちゃりぎみの、唇のおおきなカエルのようなマダムは、少しむっとしているようであった、僕はよっていたので、同じくムッとしてみた、するとマダムはわらってみせて、道子ちゃんは僕に説明をしてくれた。
「有名な占い師の道源寺頼子さんです、とても占いや風水関係にくわしくて、初めて会った人の職業を当てる事もできるんですよ」
「飲食の、セールスマン」
あたりだ、いえている、そうともいう、もっともエナジードリンク関係だが……。
僕は腰のあたりの紫の椅子をターンさせて少しマダムのほうをみえた、景色が、前の店ですでによっぱらったようで、ゆがむ……。
マダムは、僕にこういった。
「あなたが今いいたいことをいってみなさい、きっとそれはあなたの背後霊がいいたいことよ」
その瞬間、鈍痛が頬に響いた気がしたが、店の奥で目を覚ましたのは、営業終了時の0時ごろだった。

「大丈夫ですか……」
道子ちゃんのかわいらしい声と、耳元であんだ髪の毛がみえた。
「あ、ああ、膝枕……ありがとう」
冗談だ、もっとも場合のよってはセクハラになる、道子ちゃんは何か書類にてをとって、僕のいる一段あがった座室とは別の、床にじかにおいてある高いいすと高い机にすわって目を丸くしてこちらをみていた。
「おやじギャグ……」
「もーからかわないでくださいよ」
道子ちゃんは年ににあわずに、まねきねこのように手をこまねいて冗談を制する格好をとった、僕はシャツからネクタイをほどき、あおむけの姿勢のまま、一つ溜息をついた。
「うあー」
何分めをつぶっていたか、目の前にあのマダムの姿がに見えて、一瞬おびえたが、それはぼやけた視界が見せた幻影だと気づく、道子ちゃんがたちあがり僕にコップ一杯の水をもってきてくれた。
「さっき、面白かったですよ、こういう事いっちゃなんだけど」

彼女いわく、例のマダム、頼子さんはとてもチャーミングな人らしく、無料で霊のお祓いなどしているらしい、さっきのもそのようなもので、僕の守護霊といわれるものは、この世に多く未練を残しているらしい、そのひとつが……。
「くそばばあ!っていったんですよ、その瞬間、頼子さん、往復ビンタで、クスス、あっごめんなさい」
頼子さんの予測性能は大したことがないらしく、霊感にまかせて、無料で他のお客や知り合いなどの悩みを解決することが日ごろの趣味で、常連客にはよく知られているらしい、僕は二か月ここに通っているが、あの人は初めて見た気がしていた……。

「はじめにいっておかなくてごめんなさい、あの人、相談に乗ってくれるのはとてもありがたいっていわれているのだけど、さっきだって、子どもの霊だとしっていたけど、何が不満かわからなくて、思わずなぐっちゃったって……ちょっとなんでもまかせろってどしっとかまえて、そのせいで、不測の事態になるとさっきみたいに……」

道子ちゃんは笑いをこらえていた、俺は、この若い女性のなんともいえない喜びにも悲しみにも似た感情が押し殺されているのを感じながら、座室の、畳の上で、腰の左ポケットからハンカチをとりだして、鼻血と一緒にこぼれる涙をふいた。

鬱憤守護霊

鬱憤守護霊

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-01

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