ヨコドリ猫は、こうして消えた。

灼熱の通学路、台地が呼吸をしている、脈動が聞こえる。心臓がなみうって、アスファルトは人間の強弱を選別する。太陽の反射光がまぶしい、
そうだ、今朝SNSで面白い書き込みをみた。
「温暖化は僕らの責任だ、僕らが地球にしたことが、地球から仕返しされる原因をつくった。」
なんて美しい馬鹿らしい言い分か持論か、だったらお前が、資本主義を止めてみろ。
誰もが誰かのヨコドリ、人のものかっさらって自分のものにする。
そうだ、面白い話しをしよう、今朝、市立公園を横切るときに、カップルが公園のベンチにすわっていちゃいちゃしていて、男がありんこをつぶしていた、ポケットから飴玉をとりだそうとして、ふくろをさいて相方の口へはこぶ、その途中で、飴玉はおちた、舌打ちする男。
 こういう男が、SNSであれらの書き込みをするのだ。大体有名人に対してなら何を言ってもいいと思っているのか、有名人に資本主義が止められると思うのか、例のは、有名人が朝のワイドショーで発言したことへの書き込みへの非難だったんだ。しかし、有名人はただ、地球の変化が恐ろしいといったのだ、反論さえすれば、知った気になれるとは何事か、地球温暖化で初めにしぬのは、誰であるべきか、偽善者だ。

もうひとつヨコドリの話をしよう、昨日、幼馴染の荒廃のヨコシが、同年代のわれらが文芸サークルの電波系かわい子ちゃんのミヨに告白して、見事カップルが成立した、俺がふられたミヨちゃん、いや、もともと付き合っていたのだが……それでも悔しいのだ。しかもあいつは、ヨコシは、優柔不断で知られる有名人だというのに……。期待させておいて何もしない“芸”をもっているって、滑り芸で有名で。

ああ、暑い、熱射病になってしんでしまう、だが俺は、来月アメリカにいくんだ、そしてそこで、人類最初の崇高な一人になる、なぜなら、俺は、意図して地球に殺されに行くのだ、それを動画サイトに流す、ミヨちゃんは動画投稿サイトで、仮面をつけて踊ってみた動画で、再生回数7億を稼ぐ、超有名匿名系うんたらチューバーなのだ、そのことをヨコシがしらない、ヨコシより邪だったのは俺だ、なぜならミヨちゃんに、俺は養ってもらおうとしていたのだから、だが比べないでほしい、比べてはだめなのだ。ありんこたちは男が落したアメをどうしたか、協力して穴に運んだのさ、そしてその途中で、どこぞのノラ猫にその飴玉をぺろり、とかっさらわれていった、おれはカップルの背後の草木にかくれていたが、ずぼっととびだして、悲鳴も聞かずに、全速力で奴らを追った、いまの出来ごとに、どこに教訓があるというんだ、俺と同じく、支離滅裂ではないか!!!
だけどな、どんなにがんばってミヨちゃんにふさわしい男になろうとしても、俺は……昨年、漫画賞で奇跡的に佳作をとった以外には何のとりえもない、
「なんでー文芸部にきたの?」
なんて、ミヨちゃん、くそかわいい、ぱっつんおさげ。

 駅前についた俺は、水を買おうか、炭酸飲料を買おうか、自販機の前でまよった、しかし、俺は一大決心をしたのだ。
「俺は優柔不断でも嘘つきでもない、匿名アカウントをつくり、人類のために地球温暖化の恐怖をネット民の目に刻み付けよう」
とな、とはいえ、暑さは僕らを焼いてしまうのだ、いつか、10年後20年後には、人類は自然に選別される、資本主義が人を淘汰したように、その害毒は再び人を淘汰する、淘汰こそが資本主義だ、ならばアレは!!あの書き込みをしたやつは、嘘つきなのだ、口ばかりだ、どいつもこいつも、俺はこんなに、くらくらと、熱射病、熱中症を疑うまでに水を我慢して、気温52度を記録したアメリカの大地でネット中継をしようともくろんでいるというのに!!!
そうだ、俺は死ぬまでそうしているつもりだ、そこで内臓がこげで、ウインナーが出来上があがったところで、めしあがれ、と地球にコメントを残して一人消えていく、だからこのアカウントをみている人に一つ、最後にひとつだけ面白い話しをさせてくれ。

あの猫はどうなったと思う?さっきの話の猫だよ、アリから、飴玉をかっさらった、ありんこは人類だ、協力していきていたのに、巨大な足によってふみつぶされて、その足が自業自得な結末を経たと思いきや、飴玉は、猫にかっさわられた、俺は野良をおったよ、野良はトラックにひかれてしんだ。

ヨコドリ猫は、こうして消えた。

ヨコドリ猫は、こうして消えた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-08-01

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