Fate/Last sin -interval.2

「ごめんなさいね。わたくし、貴方とは組めなくなりましたわ」

 木々のざわめき、雲一つない空を吹きすさぶ真冬の空気に、鈴を転がすような可憐な声が響き渡る。
 植物の枝葉の先まで凍らせるような深夜の寒気をものともせず、黒いベールの少女はそう言った。
 闇の中で、空にそびえる歪な影のなかで、それはうごめく。
「―――組めない、とは?」
 無感情の声が、闇から返ってくる。驚き、焦り、怒り、動揺、――アサシンが予測していたあらゆる反応を一切見せず、ただ事務的な声だけが返ってくる。
「他のマスターと組みたくなったの」
 アサシンは声に近づこうと声に向かって、コツ、コツと石畳の上を小鳥のように渡る。
 空にそびえる歪な影は、黒く焼け落ちて半壊した風見の聖堂教会。
 焼け崩れた建物は、未だに燻るような火を根元に宿している。その火はただの火ではない。近づくたびに、空気に滲み出る魔力が肌に触れるようだ。
 その入り口だった場所に立つ、煤けた白い制服に身を包んだ、監督役(マスター)の表情が見えた。
 彼は教会の池に張った薄氷のように、冷たい声色で言う。
「やはり暗殺者のサーヴァントは失敗だった。召喚して数時間で手のひらを返されるとは、流石の私も想定していなかったよ」
「……八人目を愛したの。裏切りと糾弾されようと、気持ちは変わらないわ」
 神父はアサシンの言葉を聞くと、右手の袖口に手をかけ、するりと衣擦れの音を立てて一息に捲り上げた。手の甲から肘にかけて、規則的に配列された赤い刻印が――十七画のそれが、禍々しい輝きを以て夜の闇に浮かび上がる。
 アサシンはゆっくりと微笑んだ。
「使うの? いいえ。使うのね、マスター」
「できるならば使いたくない」
「優しいふりをするのが上手いのね」
 アサシンは令呪にも怯えることなく、コツ、コツと自分のマスターに近づいた。彼も怯えたり動じたりする様子もなく、ただ淡々とアサシンの挙動を観察している。彼の紫水晶の瞳に感情を浮かぶところを、アサシンは見たことがなかった。そう、一度も―――この男に召喚された時から、あの目は冷たく、まるで一度も熱くなったことが無いみたい―――と、アサシンは思った。
「怒っている? それとも悲しい? ねえ、マスター。ルールを破ってまで召喚したわたくしを、どうしたら貴方は手放してくださる?」
「―――――」
 返答はない。
 アサシンは更に、コツ、と一歩近づいた。もう二人の距離は腕を伸ばせば届くほどに近い。ゆらり、と地に落ちる影がうごめいたと思ったら、黒く空を映した池の水面が風に撫でられただけだった。二人は微動だにしない。
「ねえ、マスター」
 甘く、蕩けるようなささやき声が彼の耳を掠める。悩ましい視線が彼の瞳に注がれる。黒い艶やかな手袋をした細く華奢な指が、アルパの頬にそっと触れる。軽やかで美しい蝶のように頬に触れた指先をアルパが見下ろした時、わずかにその目の奥が緩んだのをアサシンは見逃さなかった。
「アルパ」
 最後に名前を呼ぶだけで。―――それだけでいいはずだった。
 パシ、と軽い音を立てて、アサシンの細い腕が叩き落とされる。
「……!」
「触るな、暗殺者」
 見れば、アルパは厳しい色を湛えて引き絞られた弓矢のような視線でアサシンを見下ろしていた。
「私がその宝具に絡めとられることはない。魔術師を甘く見るな」
「……あら。教会の神父ではなくて?」
 言うなり、アサシンは右手を素早く懐から引き抜いた。そのままの勢いで、何の躊躇いもなくアルパの左胸を突き刺す。
 だが、その刃は心臓はおろか、皮膚に到達する前に呆気なく叩き落される。先ほどまでアルパに触れていた腕のように、ナイフは簡単に狙いを逸らして煤けた制服の表面を撫でた。
「嘘つきね。魔術師がサーヴァントの一撃を叩き落とすなんて、聞いたことがないですわ」
 アサシンは不服そうに唇をへの字に曲げて神父を睨んだ。睨まれた神父は、無表情でその視線を受け止めながら、捲り上げていた右腕の袖を元に戻す。再びするりと乾いた音がして、長大な令呪は制服の下に隠れた。
「令呪はよくて?」
「要らない」
「そう――――」
 ふうっ、とため息をついて、アサシンは黒いベールに覆われた髪をかき上げた。ふわりと髪が舞い上がって、微かな百合の香が冬空の凍った空気の中に散りばめられる。
 その百合の香が散り散りに消えた瞬間、アサシンも姿を消した。
「……」
 アルパは目を細めて虚空を見た。
 消えたわけではない。彼女には気配遮断のスキルがある。必ず、どこかに――――
 そう思って後ろを振り返ろうとした瞬間、そのちょうど背後で可憐な声がした。

「ごめんなさいね、マスター……」

 首元を細い腕に絡めとられ、不意を突かれた隙で抵抗する間もなく引っ張られる。そのままアルパの首を抱きかかえるようにして、アサシンは後ろに一歩跳んだ。
「――――!」
 バシャン、と派手な音を立ててアサシンと共に落ちたのは、教会の広場にある小さな浅い池だ。張り始めていた薄氷が二人の重みで簡単に割れて、ぽっかりと暗い水が湛えられた口を開ける。二人は仰向けの形で池に倒れこみ、身を切り裂くような冷たい水が大きく水しぶきを上げる。割れた氷と身も震えるような氷水がアルパの制服に染み渡った時には、下になっていたはずのアサシンが馬乗りになって、左腕でアルパの額を押さえつけていた。右手には、銀色に輝くナイフを油断なく握っている。アルパは仰向けのまま池の底に倒れこみ、身を切るような水に体の裏半分を浸しながらも無表情だった。
「……水か。なるほど、宝具を?」
「人間相手に宝具を使うなんて、野蛮な真似はしませんわ」
 アサシンは天使のように微笑んだ。雲一つない冷たい夜空を背にした少女は、神父の左胸に寸分たがわずナイフをあてがう。
「何か仰りたい?」
「―――――そうだな」
 神父はわずかに瞳を動かした。アサシンへの返答を律儀に考えるかのように、少しの間があった。
「君はもう、聖杯は要らないだろうね?」
 その言葉に、アサシンの蜂蜜色の瞳が揺れた。それから、くしゃっと顔を歪めて、泣き顔のような笑顔を浮かべた。
「……そうですわ。だってわたくし、やっと恋を……愛を、知ったのだもの」
 その言葉が終わると同時に、輝くナイフが、煤けた制服の胸に、深く、深く押し込まれる。
 溢れ出る真紅の淀みに刃を濡らしながら、アサシンは呟くように言った。

「あのひとの為なら、わたくし、何でもできるのよ」





 美しい人間に出会った。―――否、それは人間ではなく、天使だった。
 けれど幻だったのかもしれない。彼女は今、いない。おかしいな、と彼は朦朧とする頭で考える。さっきまではいたんだ、と。


 いつものようにギリギリまで居残ったゼミ室を出た後、今朝マフラーを与えた名前も知らない人間に会った。その後、奇妙な音が聞こえたので、その人間から離れて様子を見に行った。何かが目の前を過って――あれは今思うと矢のように思える――背後に気配を感じたと思ったら、鋭い痛みを頭部に感じたあと、意識を失った。そこまでは覚えている。意識を取り戻した時には、もう自宅の前だった。どこをどうやって歩いたのか、そもそも歩けたのかも分からない。まるで時間という一本のテープが一部分だけハサミで切り取られて抜け落ちたようだった。
 あまりに帰りたくないから、とうとう頭がおかしくなったのだろうか。
 そんなことを思って目を上げた時、見知らぬ少女がそこにいた。
 ―――奇妙な少女だった。
 この真冬の夜には薄すぎるワンピースに、頭には黒いベール。長いまつげが縁取る瞳は蜂蜜色。現実にそぐわない奇妙な出で立ちの少女は、しかし彼の目を惹きつけてやまなかった。なぜだろう。陶器の人形のような肌、細く均整の取れた手足、つややかな栗色の髪、全てが何かを訴えかけてくるように思えた。
 それまで、彼は人間、とりわけ美しい人間を嫌悪していた。
 憎んでいたと言っていい。なぜなら自分がそうだからだ。どこからどう見ようと、自分が他人と一線を画す顔立ちや身体をしているのを彼ははっきりと自覚していた。――それによって起こる、ありとあらゆる人生の弊害も。自分を嫌悪するように、自分に似た他人を遍く嫌悪した。
 だが彼はその少女を見た時、嫌悪しなかった。
 それどころか好意すら覚えた。一目見て、美しい、と感じたものに好意を抱くなど初めての経験で、彼は大いに戸惑った。戸惑い、困惑し、矛盾に苛まれたが、その少女から目を離すことができなかった。
 少女の薄い桃色の唇が、そっと開く。
「こんばんは」
「……こん、ばんは」
 たどたどしい彼の返答に、少女はにっこりと花のように可憐な笑みを浮かべる。彼は鏡で見慣れ切ったはずの完璧な微笑みに、心臓を掴まれたような気さえした。
「ねえ、こんなことを言っても信じられないと思うのだけど―――」
 少女は一瞬目を伏せ、
「わたくし、貴方に恋をしたのよ」
 コツ、と、自宅であるマンションの駐車場のアスファルトを、彼女の靴のかかとが優美に叩いた。彼は固唾をのんで、近づく彼女から目を離せない。
「……信じるよ」
 なぜ? と彼は小さく自問する。
 なぜ出会ったばかりの奇妙な女の、どう考えてもふざけているとしか思えない唐突なその言葉を拒否できないのだろう? ……あまつさえ、信じる、などと。
 けれど彼は、脳裏に浮かんだ疑問を口にすることはない。口にしてしまえば、目の前にいるこの美しい人間が、淡雪のように消えてしまうような気がしたからだ。黙る彼に、少女は言葉を続ける。
「うれしいわ。貴方も同じ気持ちだと、もっと嬉しいのですけれど」
 コツ、と、再び彼女の靴が地面を叩く。軽やかに。軽やかに。
 百合の香がした。――ような、気がする。心臓を掴まれるような感覚は強くなっていった。苦しい。苦しいのに、どうしてか、心地よい。
 初めての経験だった。
「僕も、同じだと……思う」
 彼女が彼の方に近づくたび、彼の理性はおそろしいほどの速さでほどかれていく。否、それは理性ではなく、あまりに長い時間をかけて積み上げられた巨大な壁だった。美しいものを嫌悪する。嫌悪しなくてはならない。自分を嫌悪する。自分を嫌悪しなくてはならない。自分を取り巻くすべてを嫌悪する、そうしなくてはならない。
 その壁は、みるみるうちに崩れ落ちていく。こんなに美しいものを、憎悪できるわけがない。百合の香は濃くなっていく。眩暈がした。
「名前――――」
 少女が呟いた。名前、そうだ、名前を―――
「―――杏樹」
 そう口にした瞬間、その少女の細い腕がするりと首に巻き付いた。精いっぱい背伸びをして、硬直した彼の上体に抱き着く。



「杏樹!」

 少し離れたところから聞こえた怒鳴り声に、杏樹ははっと目を覚ました。眠っていたわけではなく、意識はあるのに目が覚めたのだ。奇妙な眩暈のような感覚だけが残り、頭を押さえて辺りを見回すと、先程まですぐ傍にいたはずの少女は消えていて、そこはもう既に自宅の自分の部屋だった。一体いつどうやって入ったのか、電気は点いておらず、真っ暗な部屋の扉は閉じている。杏樹は暗い部屋のまんなかに立ち竦み、怒鳴り声の主のことをようやく思い浮かべて、それから青ざめた。
 今日は「当たり」か「外れ」か――――
 少女に抱きすくめられた時とは全く異なる種類の鼓動の速さで、心臓が暴れ出す。まずい。どうしてぼーっとしていたんだ。いつもなら玄関から家に入った時点で気付くだろ。後悔している間にも、ドスドスという遠慮もクソもない足音が廊下の向こうから響き渡ってきて、部屋のドアの前で止まった。それはまさしく、死刑宣告だった。
 どうして、いつまで経っても慣れないんだ。
 この歳になってもまだ震える指で、セーターの上から震える腕を握りしめる。二日前に付けられたばかりの生傷が、じくりと痛む。母親だったか、父親だったか。そんなのはどちらだっていい。今、ドアの前にいるのが誰なのか、それだけが重要だ。
 母親だったら―――
 何をされる? 殴られるか。蹴られるか。酔っていれば、椅子が飛んでくるかもしれない。ドアなど蹴破ってしまうかもしれない。煙草を吸っていたら? 火傷は免れない。ああクソ、思い出したら四日前の傷跡が痛み出す。この間のように鋏が飛んで来たら、こんどこそ顔で受け止めてやろう―――あの女は、僕の顔に傷がつくのを本当に嫌うから。
 父親だったら―――
 杏樹はその時のことを考えるのをやめた。一秒だってあんな時間が自分の人生の中にあったことを考えるだけで、反吐が出そうだった。
 今日は当たりか外れか。どっちでもいい。どっちにしろ、この人生はもともと最低だ。
 そういえば、あの美しい人間は何処に行ったのだろう、と考える。とうとうあの母親のように、自分の精神にも疾患をきたしたのだろうか、とも。幻聴か幻覚か、或いは両方か。二十年余り常人のように振舞えた精神も、限界を迎えているのだろう。何か、都合のいい夢を見ていたに違いない。

『可笑しな人。わたくしでしたら、いつでも、すぐ傍にいますわ。そういう契約でしょう?』

 激しい音を立てて、ドアが開いた。廊下の照明の光が逆光になって、その人間は黒く塗りつぶされている。
「杏樹……」
 父か、母か。もう判別できない。したくもない。今日は最低の外れだ。いいや―――
 最低というなら、もう最初から全部最低だったじゃないか。

『なぜ?』

「杏樹。ああ、杏樹!」
 立ち竦む彼の首に、勢いよく硬い指が巻き付く。律儀なほど、顔には微塵も触れないように。気管が狭くなる。明日には、くっきりと青痣が浮かび上がるだろう。そんなことを呆然としながら考えた。自分の首を絞める人間の金切り声が、死ぬほど煩かった。
「どこにいたの。ねえ、どこにいたのよ。答えなさいよ。こんなに夜遅くまで―――」
 この人間は、答えなど待ってはいなかった。声を上げようとするも、気道は限界まで狭められている。ただ不意に精神を壊して、ただ手当たり次第に虐待と破壊を繰り返すだけ。ああ、だから出かける前、薬をちゃんと飲めよって言ったんだ。まるで聞いていないんじゃないか。
「杏樹、杏樹! どうして泣くの。笑って。笑ってよ! ねえ教えたでしょう、笑ってよ、昔みたいにさあ―――!」

『この人は何?』

 煩かった。けれどそれ以上に、恐ろしいと思ってしまう自分がいる。こんなか細い腕の女一人、自分の力ならどうにでも出来るはずなのに、一度だってこの母親の腕を払いのけられたことはなかった。
 笑ってよ、となおも狂ったように命令する女に、朦朧とする意識の中で何とか笑いかけようとする。幼い頃からの、習性のように。
 だがその時、

「やめてくださいまし」

 幻だと思っていた声が、突然はっきりと鼓膜に届いた。




 
 
「酷いわ。醜いわ。わたくしはもう我慢なりませんわ」

 蜂蜜色のリボンでナイフの柄を握った右手を縛って、その手でそのまま女の細い背中を貫いた。
 突如として現れたアサシンの、何の前触れもない行動に、マスターである青年は赤い瞳を見開いて硬直していた。その白い頬に、即死した女の赤い血液が二度、滴り落ちる。
「なぜ苦しいのに笑うのです? なぜ恐ろしいのに笑うのです?」
 どさり、と死体になった女が、杏樹の体の上に力なく倒れる。アサシンは左手で女の襟首を掴むと、その細腕からは想像できないほど軽々と死体を持ち上げ、廊下に放った。それからナイフと右手を括りつけていた蜂蜜色のリボンをするりと解く。
「なぜ愛しているのに苦しめるのですか。なぜ苦しめたいのに愛するのですか」
 アサシンが口を閉じた一瞬のあと、廊下の奥の方からバタバタと足音が聞こえた。―――父親。マスターの思考が、そのままアサシンの頭に伝わってくる。父親。母親と同じ、まごうことなき抹殺対象。
「酷いわ。醜いわ。わたくしの愛した美しい人が、こんな醜悪に脅かされるなど、もう我慢なりませんわ」
 だからアサシンは、駆け寄ってきた父親なる男の胸に飛び込み、そのままナイフの刃を左胸に沈めた。男は一言も発することなく、力を失い、地面に倒れこむ。しばらく痙攣したように震えていたが、それも床に赤い染みが広がるにつれて静止していく。やがてその家には、完璧な静寂が訪れた。
「……あ、あ……きみは……」
 掠れたマスターの声が、その静けさを破った。アサシンは血に濡れたナイフを腰の鞘に戻すと、百合の香の髪をかき上げて笑った。誰が見ても完璧な微笑みだった。
「ごきげんよう、マスター」
 そう杏樹に声をかけたアサシンは、上品な仕草でそっと杏樹に歩み寄る。膝をついて呆然としている杏樹の、頬に垂れていた赤をそっと指で拭い取った。白くなめらかな肌の上を、黒い手袋の指が滑っていく。アサシンはたった今、人間を二人殺したなど思わせないほど穏やかで気品のある動作で、まだわずかに震えている杏樹の首に腕を絡めた。ちょうど、初めて出会った時のように。
「恐れないで、杏樹。貴方の望みは、きっとわたくしが全部叶えて差し上げますわ」
「僕の、望み……」
「ええ。貴方の望みですよ」
「……殴られたくない」
「ええ。もう貴方を傷つける人間はいませんとも」
「……怯えたくない」
「貴方の恐れる人間は、もうこの世界のどこにもいませんわ」
「……普通に……愛されたい」
「わたくしは貴方を愛していますよ」
「……初めから……君と出会っていれば……」
 アサシンは次に続く言葉を待った。杏樹はゆっくりと瞼を閉じ、深く息を吐く。傷を負った動物がやっと安全な巣に戻ってきて体を休めるように、体から力が抜けていく。
「初めから。そうだ……初め、生まれた時から」
「……」
「生まれ変われたら、いいのに――――」
 杏樹はそう言うと、事切れたように首から力を抜いた。深い呼吸と、ゆっくりと彼の肺が上下していることから、眠ったのだと分かる。アサシンは杏樹の首元に抱き着いた姿勢から、そっと彼の身体を離し、その細い身体を床に横たえる。杏樹の右手には赤い令呪が三画、きっちりと刻み込まれていた。アサシンはその右手に、自分の右手を重ねる。
 眠ったマスターに語り掛けるように、静かに、穏やかに、けれど確かに語り掛ける。

「ええ。貴方がそう望むなら、わたくしは何でもできるのよ」

Fate/Last sin -interval.2

Fate/Last sin -interval.2

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-31

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work