寝息の理由 三話
今朝は4時に目が覚めた。
この時間まだシーンとしている。
そうおとといの出来事が夢の様に思える。
フー。と溜息をついた。
その時である。又あの少女の声が聞こえて来た。
「奈帆子さん。私です。結衣です。実は私の母は10年前に他界しています。母はとても私に良くしてくれました。その私も母と一緒に他界しました。母が運転していた車がトラックと接触して母と私は死にました。
母はずっと陽二さんの事を気にかけていました。奈帆子さんと陽二さんが結婚した時にはとても喜んでいたのです。」
「本当に? えっとそれで結衣さんは何故今私に話をしに来たのですか?」
「母はずっと陽二さん私のお父さんを見守り続けて来たのをもう奈帆子さんに任せたいと言い私が代わりに来ました。ビックリさせてごめんなさい。これが私達の使命でした。」
「私はお父さんと話をしたかった。奈帆子さんと話せたからもうそれで良いのです。」
「そんなー。私は大したことない陽二さんに出来てはいない。それに昨夜陽二さんを怒ってしまった。そんな小さな女です。」
「それでは私はもう戻ります。」
えっ?!あのっ。結衣さん?!ねえ?!
気がついたらもう6時だった。
陽二はまだ、寝ていた。寝息は静かな音に聞こえた。
その事を早速朝、陽二に話をした。
陽二は新聞を読んでいた。
「陽ちゃん、聞いてる? ねえ、返事してよー。」
「あっ聞いてるよ。それ本当の話?
俺のこといつも見てたのか?」
「確かに陽ちゃんの娘さんよ。交通事故で他界していたの。」
陽二がいきなり静かになった。
手を合わせ黙祷をしている。
涙が光り落ちたのが見えた。
奈帆子も一緒に手を合わせ目を瞑った。
「ありがとう結衣さんのお母さん。結衣さんも。」
ふたりは暫く目を瞑って祈り続けたのだった。
寝息の理由 三話