スマホ、空想、空メールより。

スマホのメールをチェックする習慣は昔から考えるとへってきたといえるかもしれない。
インターネットチャット、通話アプリなど、自分にとって身近な存在、家族、友人などと接触する場合には、手間がかからないしかなるべく簡潔なやりとりですませたい用事など、そのほうがいい、忙しくしているときにはとくにそうだ。
だから近頃、メール、それも空メールが、知らない相手から届いたときには驚いた。
「yumemigokochi○○○@○○」
「??」
駅の改札を抜けて、まきつけた赤白縞模様のマフラーで白く濁った息を吐き出した口元をかくして、私の頭は??でうまった。
本文にはこんなことがかかれていた。
「マタオアイシマショウ」
「ウワッ」
これは新手のストーカーだろうか、私はマフラーで顔まで覆いたくなった、しかし時は刻一刻とすぎていて、お気に入りのラノベを熟読する間もなく、快速電車がやってきた、寝坊気味の私は常に快速だ。会社まで通う15分間だけ、私はもう一度異世界へ転生される。
「アナタハダアレ」
とでも送ってみようか、しかしこれは、あきらかに業者か詐欺かストーキング行為である、男の友人に相談しておこう。
しかし、異世界転生に少しつかれ、スマホ画面に目を通し、さっきのメールをみてみる、すると、なぜだろう、本文の内容が変わっている。
「20年後の私は元気ですか?」
私は、その瞬間、記憶の中の自分の姿を、対面の誰もいない座席の上、電車の中、空の座席の上のガラスの向こう側に見た、そこには女子高生時代の、
眼鏡をかけ、おさげの格好をした、田舎少女の私がいた、私は田舎の生活になじめず、友達を作るのもおっくうで、だからおもいきって、大学は都会にでようとこうしてがんばって上京して、バイト時代をすごしていた、そうだ、あの頃、私は私に空メールをおくっていた。
ふとぞっとして、もう一度さっきのメールをチェックする、メールは、なくなっていた、存在がなくなっていた、あの頃の私がいなくなったようで、私はマフラーにめをこすり、なみだをふいた、顔をあげると、少し化粧のくずれた私の向こう側、ガラスの奥に、よこたわって眠る学生時代の私がいた。マフラーは黒と白、ギンガムチェックのハンカチで、口元を覆って目をつぶっていた、少し涙がでていた。ガラスの向こう、私は、一人つぶやいていた。
「おやすみ、未来の私」
あのアドレスに覚えはない、なぜなら、私はあのころ、めちゃくちゃにSNSアカウントやフリーメールアドレスをつくり、友達を募っていた、あのときの私は、今の私をストーキングしているのだろうか、あこがれるような何かを手にしていないようにも、手にしたようにも思える。近頃しわが気になるな、泣き止んだ私は、丁度通勤に利用している会社から歩いて15分の駅に都会の駅についた。スーツはすっかり板についた、あたしは今年で33になる。

スマホ、空想、空メールより。

スマホ、空想、空メールより。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-31

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