あなたを見てきた。ずっと
普通の『虐められっ子』少年「僕」と神秘的な女性の話
「こんにちは、また今日も来たのね」
田舎の山奥にある立ち入り禁止の大樹。僕はいつもそこで密かに日向ぼっこをする。
「なあに?また今日も無視?」
神秘的な女性は愉快そうにくすくすと笑うが、僕の心は一つも動かなかった。
「…怪しい人には話しかけるなって言われてるから」
「まあ、それは大変ね」
尚も面白そうに笑う彼女に、僕はため息を吐いた。ふわふわと地面から浮き上がって僕を少しだけ見下ろし、凝視する。
「な、何…?」
「あなたのこと、小さい頃からずっと見守ってたわ」
「…そ」
素っ気ない返事をしても、彼女の柔和な笑みは変わらない。
「あなた、いつも何かあった時はいつもここに来るわね。今日はどうしたの?」
「…関係ないよ」
「お友達は?」
「…そんなの」
いないよ。またそうあっけらかんと答えれば、自称大樹の精は少しだけ悲しそうに笑った。僕は小さな罪悪感が一瞬訪れたが見なかったフリをした。それでも彼女は文句や説教も言わず、深入りをすることもなく、ただ僕に寄り添ってくれた。それがほんの少しだけ、心地良い。虐められている僕にとっては、ここが心の拠り所だった。彼女が僕にとって居心地の良い場所なのだ。
彼女は、僕の心の拠り所だ。
あなたを見てきた。ずっと