3分宇宙人

ホームビデオ。世間を騒がす。

 今の時代、スマートフォンを持たずに、一日を過ごす人などいるだろうか、手放せない人ばかりだ。
例外として、ガラケーという言葉を持つ人や、そもそも携帯電話のようなものを持たない人もいる。
しかしスマートフォンやPCなど、現代技術の粋を集めたこの精密機械は、日常のほとんどをそのアイテム一つで補助、あるいは用をすますことができるほど高性能な代物だ、その代物、だからこそ、潜む危険もあるのかもしれない。
これは2018年5月、およそ今から三か月前に実際に起こった事件に関しての秘密報告である。
この事件は、今年五月、特殊な案件であるため先進国の諜報機関、および宇宙開発企業からの情報提供をうけ、世界的オカルト研究秘密結社および財団I.d.iによる研究によって判明したものだ。
すべてを話すことができない、が、危機的状況であるため、私の個人的判断により、この報告を、概要だけでもインターネット上にばらまき、なるべく拡散しようと思う。以上の事情により私は私の所属機関、個人情報を一切示すことはできない、初めにご了承いただき、ふざけた創作じみたお話にお付き合いいただきたい。

ある日、木型宇宙人の来訪を告げるエマージェンシーコールを、I.d.iの各国職員が受け取った、それは本部から緊急の通達とともに送られたものだ。
“東京に異星人A襲来”
すぐさま近隣諸国はもとより、現地のI.d.i職員は現場へと急行する、一刻も早く駆け付けなくては、現場に混乱をきたす、混乱がおきては、下手な事が起きた場合収集がつかなくなる、どんな“来訪者”であれ、“未知との遭遇”はなるべく温和なムードを作りたい、戦争などさけたいし、だからこそI.d.iは優秀な職員、コンピュータープログラマ、技術者、未知なる言語の解析班を抱え込んでいるのだ。
秘密結社は地下にあると相場はきまっている、うちもそうなのだ。私はそのとき、ある事情で指令室のモニターを監視できる立場にあった。

宇宙人は、東京の浅草におとずれていた。観光客はおおくいて、しかし月曜日ということもあって、日本人の数は多くなかった、しかし、言語は違えど誰もが持ち合わせているもの——スマートフォン―—観光客や野次馬、彼らが皆、木型宇宙人の姿をとらえていた。
その名の通り木型宇宙人は、木のようなやせたからだと骨をもち、体の一部、ツメや手足を伸縮させる能力があることがしられている。

「こんなに堂々と人込みに現れた事なんてなかったのに」

現場に駆け付けた新入りのI.d.ia女性職員は混乱していた。拳銃型の光線式拘束銃をとりだし、裏からまわりこみ、雷門の前にたたずむ、観光客のような巨大な、3メートルほどある木型宇宙人の姿を視界におさめた。——とおもった……。

「あ……あれは??」

SNSで拡散された情報では、たしかに木型宇宙人がそこにいるはずだった。しかし実際にそこにいたのは、オーソドックスなグレイ型宇宙人。
「どういう事だ??……本部、映像、ヘルメットカメラとつながっていますか!?」
本部へ連絡して、事情を尋ねる。本部はすぐに応答した。

「なんでもいい、捕まえろ、どうやらその近辺の人間と、スマートフォンが“ハッキング”をうけているらしい、宇宙人は一人じゃないはずだ、よく見ろ」

新入りの職員は、グレイをよくみた、その姿は、まるで道に迷った観光客のようだ、
「あれに害があるのだろうか……」
そんな疑問はさておき、彼女はすぐに二つ目の疑問を解決した、キョロキョロするかれの腕の中、一つの異形の猫がかかえられている。
「ペット??」
「——A隊員、A隊員応答セヨ、グレイは電子機器のハッキング、もう一体の宇宙人が人間に幻覚をみせているらしい、そちらを先に確保せよ」
すると、異形の猫は、その連絡が入った直後に隊員のほうをジロリとみた、三つの目玉と、その真ん中にユニコーンのような角がある、そして、ω型の
口が、さらにかわいげに、ニヤリ……と笑った。
その瞬間隊員は機転をきかして、拳銃をたしかにその猫のほうにむけて、トリガーに手をかけていた。
しかし視界には、猫型宇宙人はもとより、グレイの姿もなく、3メートルほどの木型の宇宙人の姿があった、彼がかかえていたのは、猫型宇宙人ではなく、丸太にすげかわっていた。
「まるた!!?」
しかし隊員は、ためらわずトリガーをおした。
弾丸は宙をまい、光線のようになり、縄の形状から、リングの形状へと変化して、猫型宇宙人をとらえた。
雷門の入口の、左側の赤い柱のすぐそばに、放り投げられたように、猫はころがった。

「モオオオオウ」

姿に似合わず、牛のような声をあげた宇宙人、猫型宇宙人は木型宇宙人から切り離されたのだ、瞬間。
彼の能力は封印され、幻覚はとけ、木型宇宙人も、もとの姿のグレイにもどった。そちらもすかさず、あとからかけつけていた隊員が同じく拳銃型の光線式拘束銃を使用して、光の輪でとらえ、確保した。
こうして宇宙人は浅草観光事件のすぐ直後にとらえられた、
にぎやかな観光スポットは、悲鳴と混乱の渦の中、駆け付けた警察や、当組織職員の迅速な対応によって、一定の収束をえた。

その日の、全世界共同ミーティングによって、この事件の情報は共有され、この特殊な事件は世間の混乱を抑え、事なきをえた。
しかし、I.d.iはこの事件によって、新しい性格の難題をつきつけられたのだ。
「宇宙人はコンビネーションで働くことがあるのか」
警察への根回しや洗脳を経て、我々にはまた地下でうごめく秘密結社としての日常がもどった。

SNSに拡散された情報のハッキング、当時周辺にあったすべての電子機器から宇宙人情報を抹消して、この事件は一件落着をえた、しかし、噂はとどまることをしらなかった。いまでもこの話はどこかで拡散されつづけている、だからどうか、知ってほしい、気を付けてほしい。

「宇宙人は、コンビで動くこともある、悪さをすることもある」

ということを……!!!

   PN匿名希望

3分宇宙人

3分宇宙人

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-30

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted