I am happy? 4
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toヒメノ
fromこぅチャン
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今から会えない?話しておきたいことがあるんだけど。
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付き合っていた頃に交換したメールアドレス。
消したくても、消せなかった。
決定ボタンに力が入らなくて、という言い訳をいくつも重ねた。
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toこぅチャン
fromヒメノ
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どこ?
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toヒメノ
fromこぅチャン
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さくら公園。
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会いたいと思っているときに、会える関係じゃ、ない。
相手は先生であって、自分は生徒という関係が、この世の中での常識というやつで。
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toこぅチャン
fromヒメノ
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わかった
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私は走った。
会いたくてしょうがなかった。
学校にいるたったの12時間じゃ、もう足りない。
息が切れても、足がちぎれてしまっても、走る気持ちだった。
強く。
強く。
「こぅチャン。」
「だから、その呼び方やめようって言ってるでしょ。なんか、他の先生から変な目で見られんの。」
「やだ。やめない。」
「なんで。」
「そんなの分かんないよ。」
「とりあえず、次学校来るときからはもうやめろよ。」
「やーだー。」
「…。」
「こぅチャン、こぅチャン、こぅチャン、こぅチャン!!!」
「うるさい。」
一言、言い放つと大きな手のひらで私の頭を自分のほうに寄せた。
そしてぎゅっとしたのだ。
こうやって触れ合うことは、もう無いと思っていたのに。
「こぅチャン?」
「マコト。」
え?
「マコト。」
こぅチャン?
「もう一回、やり直せる?俺たち。」
こぅチャン。
「やり直せますか、ヒメノマコトさん。」
「好きだよ。マコト。」
「忘れてなかったのは、俺の方だ。」
傷つけてごめん。
泣かせてごめん。
たくさんのごめんが心にゆっくり染みる。
そしてまた、還っていく。
先生は、2ヶ月前にすでに美大の女の子と離婚した。
原因は、女の子の浮気。
「忘れたい?」
「ううん。これは生きていくうちで”思い出”っていうキレイな名前がつくんだよ。」
「ふぅん。」
「時間は巻き戻せなくても、こうやってまた…。」
「…泣いてんの?」
また先生に、マコトって呼ばれる日がくるなんて。
また。
もう一度。
─────もう一度、名前で呼んで?
I am happy? 4