ピエロタイムキーパー

yumieisuke

「ウヒョヒョヒョ」

「ウヒョヒョヒョヒョ2分30秒」

教室の中、正午近くをまわっている時計、その時計を秒刻みで気にしているのは、テスト中の教室に、自分だけだとおもっていた。
僕は背筋にぞっと寒いものを感じて、と同時に、全身から、肌という肌から汗がながれおちて、全身の肌が毛を逆立てて、鳥肌がゾワゾワと
なみうつように立っていくのを感じた。

「なぜだ……」

「なんでばれてる2分30秒の秘密がっ……」

そうだ、2分30秒、今日のテストは2分30秒目をつぶってから、
回答をうめようと考えていた、ジンクスなのだ、
ジンクス、演技担ぎだ。
いつもやってしまうクセなのだ。
それは、いつから始めた行為なのか、忘れてしまったが……
これで幼馴染の彼女もできた。

なぜか脳裏にピエロの姿がちらついて、脳内ではなしかけてきたのだ。
僕をからかっているのだろうか、僕の無意識が勝手に僕をからかっているのか?

「だめなやつだなあ、まだそんなことをやって」

ピエロはテスト中、ずっと僕にわらいかけてきた、ジンクスは成功しなかった。

「なぜピエロなんだああ」

テスト中、何度もシャーペンのシンをおってしまった、まあ回答はすべてうまったのだが……。
だが、部活がおわって中学校の帰り、ピエロといえば、自分の部屋にひとつ人形があることにきがついた。
それは、昔、実の姉ユサにもらった人形、年がはなれていて、もうお嫁にいってからほとんど正月にくらいしか会う事はない。
今年、ユサ姉さんは30歳になるのだろうか?
たまに連絡をしてくるものの、近くにいないものとそれほど頻繁にする会話もなく……。

「姉は別の家の人になったんだ」

そう思う毎日だった。
しかしなぜ、そのピエロの人形が、僕のジンクスに感づいたのだろうか?
家にかえってからも、風呂にはいるときも宿題のときも家族と食事中も、ずっとまる一日考えたが、ほとんどわからず、次の日にはすっかりとわすれていた。

それから何か月も過ぎて、そんなことは忘れようとしていた、テストの結果もたいして悪くもなかった、よくもなかったが。
が、ある日、幼馴染のニナが内に遊びに来た時のことだった、
僕の部屋の窓際においてある、小さなピエロの人形。
彼女はそれを手に取った。

「あっかわいいー」

「なんだよ、勝手にいじるなよ」

「これ、私とおねーさんでつくったんだよねー、おねーさん元気かなー、ねえ、元気?」

「なんだよ、元気だよ」

そのときだった、
脳裏に記憶がよみがえった。

(あっ……)

小学生時代、4年前のあのとき、そうだ、思い出した。
ニナが、昔僕が野良犬にいじめられてたことがあって、僕がトラウマに悩まされたことがあった。
野犬たちは、僕がおつかいにいっている最中で、空き地から突然あらわれて、空き地のほうこうに僕をひっぱり、ひきづっていった、
そこでがくがく震えて、大声で、近くの人に助けをもとめた、
すぐに近所の大人や警察官に救出されたけど、体中傷だらけになった、
それから何日も何週間も、外で遊ぶのが怖くなって、いつもニナに手をつないでもらって外で遊ぶことがおおかった、
友達には馬鹿にされるし、小学生とはいえ、男としてなさけなく感じ、
学校へいくのも、外へびにいくのも、ニナに連れ出される形になっていった。

 でも恥ずかしく、だから僕は、どうにかしてその手を放して、外にでようとおもって、何度も挑戦した、
でも、いざやってみると、野犬に囲まれたときのトラウマがよみがえってきてしまって、あしもすりむいた、なんなら、ワキだって、
顔だってひっかかれた、よく病気にならなかったと思う、学校にも一人でいけず、何度も一人でそとにでようとしては、玄関先で震えてないていた。
ニナはそんな僕の様子をみて、都合悪くみつけると、悲しそうな顔をして、何でもないような顔をして、泣顔の僕にハンカチをわたしてくれた。

 僕ははずかしくて、それからいくつかの呪文をつくった、
それはジンクスだった、野良犬に襲われないための呪文、どこか外国の古い言葉をつかって、まるで中二病にとりつかれたように
ノートにいくつかの呪文をかいて、それを読んでいると、体のふるえや、泣きべそをかくのがとまればいいと、そう思っていた、
あまり効果はなかったんだが、ノートは常に持ち歩いていた、学校の登下校でさえ、

だけどある日、事件は起きたんだ。
学校帰りにニナと下校中に、家のすぐそば、近くをとおる川があって、その
川べりの土手をあるいていて、すごく乱暴な蛇行運転をした高校生カップルの2人乗りの自転車が、
その前日ふっていた大雨がつくっていた、その水たまりを車輪がはねて、泥水がみずしぶきをあげて、ニナにおもいっきりかかってしまった。
おねえさんは明るく、ごめーんといったが、
ニナ酷くショックをうけたようで、ニナはないていた、僕は、僕のもっていたハンカチを渡して、
ニナがそれでも泣き止まなかったので、僕は思い切って、いつもの呪文のノートを一枚ずつやぶって、川にながした、
はじめはニナは驚いて、もうやめて、私は大丈夫、っていってた、
僕がくるったとおもったらしかった。だけど、しだいに、僕が男を見せようと頑張る様子を感じ取ってくれたらしい。

「僕も大丈夫だ、ニナもきっと大丈夫だよ」

そういうと、
ニナは、意味わかんないといいながらもそれからわらってくれた、
2人はそれから泣かないようにいそいで走っって、二軒となりの家のニナのうちへ先に彼女も無事におくりとどけた。
ニナは、安心したのかそれから、毎日僕を迎えに来ることはなくなった、だけど、やっぱり僕は呪文なしでは、しばらく体の震えはとまらなかった、

そんなときだ、ピエロの人形を、姉とニナ、二人でつくって、僕にプレゼントしてくれたのは、
小さな人形で、手のひらサイズほど、
それを、手に握っていると、絶対大丈夫だと、二人がいってくれた、
人形にはチャックがついていて、二人の手紙もはいっていた、
汚れるとだめだから、いまは机の一番右、上から二番目にしまってある。
思い出した、それが新しいジンクスだったんだ。

そうかあのピエロは、僕にはもうジンクスが必要ないっていいたかったんだ。
そう思うと、ピエロの笑い声がどこかで聞こえたきがした。

ニナは、僕が何かをいいだそうとするのをとめるように、こっそりといった。

「泣き虫」

くすりと笑ったその笑顔が
ある意味不気味で、美しかった。

ピエロタイムキーパー

ピエロタイムキーパー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-21

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