終わりなき日常のフィルムノワール

終わりなき日常のフィルムノワール


   







   





愛について教えてくれたのは単行本サイズのマザー・テレサでした。



   

恋のルールを教えてくれたのは風呂上りに見る「あいのり」の録画でした。



   

官能の手ほどきをしてくれたのは月収23万円の26歳保母A子さんで、



   

国宝文化財的な射精へと導いて下さったのはいつもあの方でした。



   



   



   

しかし裏切りについては、父も母も姉も従兄妹も友達も先生も精神科医も大学教授も外国人も首相も本も新聞もエロ本も聖書も般若心経もユダも明智光秀も彼も彼女も教えてくれませんでした。



   







   






   







   






だから



   

疾走するしかなかった。



   







   





それは真夜中



ではなく明け方で、



   



   

パリの街頭の中




ではなく浦安の路地裏で、



   



   

世紀末の空の下




ではなくいつまでもやってくる第3日曜日のよくある日常で、



   







   





わたしは、



   



   

知らなかった。



   



   

スピードに突き上げられる物語の終わり方。



   







   





だからわたしは、



   



   

こうしていまやハードランディングした1990年代の墓場で見つけた遅れてきたヌーベルバーグの主人公を
何度も繰り返し演じ続けます。



   







   







   







   







   







   





お願いです、



   



   

まだ出会わない宿命のファムファタルの あなたに、



   



   

とどめを刺して 欲しいのです、



   



   

わたしによって繰り返される この愛憎の「テイク1」に カットの合図をくれませんか。



   







   

終わりなき日常のフィルムノワール

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終わりなき日常のフィルムノワール

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-20

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