幻の水泳部エース

yumieisuke

暑い日が続いている、今年は8月までこんなひどい猛暑がつづくらしい。
僕はユズ、14歳中学生、うまれながら金髪、ハーフ。
このあいだ、幼馴染にアキに、中学の体力テストの結果がずば抜けていいことを指摘されて、彼女のすすめもあって、というより長い間説得されて、
帰宅部以外の有意義な部活動を探すことにしたんだ。
まあ、退屈していたし、僕はかわってる、まあ気分屋だし飽きっぽい。
僕の目は青い、外国人とのハーフだからだろうか?いや、もっと有意義な理由があるはずだ、この青い瞳が僕にしかありえなかった
メルヘンチックな理由が、じゃなきゃ、自分の性格があまりにも変わっているということに何の説得力も持てない気がしている。
まあ、そんな言い分けをするくらいに適当人間だと思う、これくらい適当がいい、そうじゃないと、変わった人間なんて生きていけない。

今日もいつもの踏切の前にいる、あのとき……
1か月前、いつものふみきりで、僕はアキにいった。

「水泳部にするよ」

「ふーん」

僕にとっては、この男なのか、女なのかわからないような
幼馴染のアキが、一番不思議な存在だ。
何にも興味のないような目をしていて、それでいて血気盛んで好奇心が旺盛なのだ。
ゲームも好きだし、読書も好きだし、おしゃれも好きだし、何でも屋だ。
こいつの目には、どうしたら俺の姿がはっきりと映るのだろう。

「おっ!!」

「わっびっくりした」

たったいま、踏切の遮断器が下りていたから、目の前にとびだしてみた、アキは読書の最中だった、ショートカットでストレート、前髪をぴっちりわけてる。
みるからにしっかりものだし、眼鏡もかけている。
まあ天然だから、たったこれだけの事、急に目の前に飛び出すだけで、びっくりするんだけど。

水泳部の体験入部は1か月ほどで済んでしまった。
読書中のアキは、あんなに熱心にすすめていたときとはうってかわって
あまり興味なさげに、僕にたずねた。

「そういえばさ、水泳部……飽きたの?」

「いや、違うよ、本物の天才をしったんだ、まあ飽きるよりも、ある意味しんどいね」

入部当初から、水泳部員としての僕の働きは、誰もが認めるものだった、
掃除もするし、挨拶も一番おおきいし、筋トレはもっとも気合がはいっていて、みんなより数回多いくらいだ。
そして、水泳の実力、タイムは……やはり早かった。
初めから平均以上だが、ぐんぐんのびた。
いつのまにか、部で一番早いタイムすらだすようになっていた、
まあ、時とタイミングによったのだけど、たしかにエース候補だった。

「こりゃ、エースになるのは時間の問題だな」

顧問のサトーはそういっていた、だが、自分の性格からいって、当たり前の事だったが、問題はすぐにおきた。
あるときおもった。

「最近、やる気がおきないない、俺は何を目指しているんだろう」

僕は真剣に挑戦した。
クロールのかきかたひとつ、ターンのモーションひとつ、自由形の感じもそうだけど、研究に研究をかさね、頭を動かし、メモをとった。
皆が褒めていたが、僕はほとんどアキに応えるためにやっていたといっても差し支えない、なぜだかは知らない、面白かった。

「うーん、もう少し、まだ速度がたりないのか?」

プール際、いつも独り言をいっていた。
いや、いまいちぱっとしない、水泳に速度を求めていないのだ。俺にとっては、そんなくだらない競争、速度の計測はあまりに退屈だった。
だから、だんだんと、泳ぎにも手を抜き始めた、顧問は、そんな様子をみて何かいいたげだったが、何も言わなかった。
そのうち、もともとのこの部でトップだった部長にぬかれてしまった。
部長はマッチョさまで、堅物で、口数がすくない、彼女はいないとおもったら、ものすごくきれいな生徒会役員の彼女がいた。
そしてぐんぐんとタイムがのびて、負けた、ありきたり過ぎて負けたんだ、多分。
こういう単純な青春の物事の循環は、自分には都合がわるい、当たり前すぎて吐き気がする。
俺がエースである必要がなくなった。
アキのやつは一度も部に顔をださなかったし、退屈になった。

そうだ、部長を尊敬しなければいけない。
実際、尊敬した……。
自分が手を抜き、足を止めた間に、いや、足をとめなくても同じだった、と思う。実際、すぐに追い抜かれた。
部長は努力をした。
自分の短時間では超えられない努力をしてきた。
僕は、それまで、ただ部長を模倣していた、全部真似した、しばらくの間、
この人より成長しているようにみえていただけ。
メモをとっていたのは、部長の動きを完全に真似しようとおもったから、
真似をしたもの、クロール、その次、バタフライ、言動、……。
いつのまにか、尊敬に値する人になっていて、真似したいものはなくなっていた。
だけど俺はこの人ではなかった。
もっと気軽にやっていきたい。
これを活動というのなら、活動がしたい、自分にあった活動がしたい。

「だから、水泳部をやめた」

そういうと、アキはふーんといって、
開いた遮断機の中に俺の手をひいてつれていく、
そういえばこいつ、彼氏とかいないんだろうか?きいたことがない。
いたらいたで面白いんだが、いなきゃいないで、ますます不思議だ、こいつは何に興味があるんだ?
バス停についてから、学校の近くをよるバスをまった、午前7時30。
アキは、たまにスマホをみるだけで、そのほかはずっと読書をしている、昨日はゲームの話ばかりしていたのに
今日はこいつにとっては、そういう日だなと思う。

「……」

何も話さない、バスの中、俺は一人でぼーっと外をながめていた。
なんだかいらいらした、あれだけ必死にさそってきたのに、
俺がやめたら、もうあんまり興味がないのか、
だからバスが学校近くについたと、校門までは普通にあるいたが、校門をくぐるその直前、アキをおどかしてみた。
さっきと同じように

「わあ、びっくりした!!」

そりゃそうだ、こっちのほうがびっくりする、なぜかアキは俺の腕の袖をもって、歩きながら読書をしていたから、
どんな本なんだ、きいても教えてはもらえない。

「なあ、お前の部活にいれてくれよ!!」

「はあ!!?体力テスト関係なくない!?」

小学生時代を思い出した、サッカー部員で、足が遅くて、5年生までやってた、
低学年のころ、何のやくにもたたなくて、
でも途中からぐんぐん足が速くなって、いつのまにかエースみたいな扱いになってた。
だけど、ある日転校生がやってきた、その時も天才ってやつをしった。
ドリブル、パス、シュート、あいつは俺にないものをもってた、ムードをつくってしまう、
知ってるやつと知らないやつの違い。知ってるやつは、人気がある、
何かにたいしてくわしいこと、こだわりがあること、流行りをしっていること、頼りがいがあること、
あいつも部長も知っていたから、人気者だった。
本当は自分では、わかっている、変わりものに、そんな器用な、単純なこと、そんな事はできないって。

おれにはやりたいことがあったんだ、
絵をかきたい、そこにはあらゆる表現の可能性がある。
逃げることも立ち向かうことができる、
自分のペースで、
それに、評価なんていらないんだ。

それに、この奇妙な存在“アキ”を絵に描くときには、多分、おれはありきたりな何かなんて、夢想する必要がなくなるんだ。

幻の水泳部エース

幻の水泳部エース

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted