ある街のムカシバナシモドキ
ある日ロリコンの旅人が街をあるいていました、彼の武器は武術でした。
しかし街に若い者はおらず、終わりかけた世界の中心部で、人々は老いとともに生きていました。
星も老い疲れ果てていました。
ほとんどの人々には、愛する人もおらず、恋もなく、ただ必要か不必要かだけが、優れているか、優れていないか、競争するか競争しないか、強いか弱いかという基準だけが、一時繁栄した人間の空虚な資本主義社会の大量消費経済を担っていました。
しかし人々も疲れ果てていました。
そこでもっとも注目をあつめていたのが、昔話や童話でした。
その皮肉と教訓に富んだ物語は、人々の心をうったのです。
そしてその中には“童話の担い手”となる人々たちがいました。
心の乾燥した人々のためをおもって、ある少数の人々が、童話の担い手となったのです。
そこで、あるとき街での生活につかれ、童話の担い手に救われたいとおもった、ロリコンの旅人は、森に赤づきんをさがしにいきました。
世界の中心の都市のすぐ近くには、赤の森という場所があって、すべての童話の担い手たちの
楽園といわれていました。
郊外、スラム街をぬけます、しばらくいくと、ひとけのある森につくはずです。
スラム街や郊外は、移民の楽園です。
多様性の文化があります、しかし街で生きたい人々は、多様な言葉を持ちません、
話しかける勇気もありません。
なので森にいくのです。
森の中でまず出会ったのはマッチ売りの少女でした。
「マッチを買ってくださいませんか?」
「まっち売りの少女か、しかたない、この女の子にかまってもらおう」
「っぢっロリコンかよ」
「!?」
「めをみりゃわかるぞくさいおっさん」
マッチ売りの少女の童話の担い手は、
そそくさと街のほうにいってしまいました、街に愛はありません、若いからしらないのです。
おっさんロリコン旅人は落ち込みました。ロリコンではありますが、悪いことはしたことがなかったからです。
彼の幻想は醜くくずれさりました。
そしてその落ち込みは、まるで毒でもくらったかのようにおっさんの心の奥深くをえぐり枯れさせてしまったのです。
「ぐ……ぐるしい……」
「大丈夫ですか?」
旅人は、よつんばいになって森の中の道の真ん中でたおれこんでいました。
そこで、頭上から人の声がしたので、お腹もすき、喉もかわいていたし
ちょうどいいので、助けを乞おうと顔をあげました。
「あ!!ううう、あああっ!!??テメ!!」
旅人が倒れ込んでお腹をかかえたまま顔をななめにうごかしながら、だるそうに、上にむけると、視界のはしからあらわれたのは、狼、ではなく、狼のはく製をかぶった、巨人、とでもいうような長身の男でした。
彼はどこで鍛えたのか、まるでプロレスラーのような肉体美をもちあわせていました。
そいつは、おいしそうなリンゴを、背中に背負った籠の中にたくさん抱えもっていました。
「リンゴたべます?」
「ほしい」
「どうしようかな……許可が……」
「よこせ、よこせ、!!よこせっつってんだろうが!!」
おっさんはおっさんが嫌いなのがこの世紀末世界の鉄則なので、ろりこんおっさん旅人は狼のはく製のおっさんをきらいました。
それに戦えば勝つ自身はあります、まがりなりにも武術教室を経営し、それで儲けていましたから。
「狼!!はく製!!この野郎!!水かリンゴをくれ!!」
しかし男は、よつんばいのままの旅人がのばす手を功名に体をゆらしてよけてしまいます。
「う……ちくしょう、コスプレ野郎にも、ばかにされるなんて、ちくしょう、おれがなにしたっていうんだ」
ふときづくと、狼男は、全身マントのようなものでおなかのあたりをかくしていました、マントには全面にちゃっかりとチャックがついていました。
ジジジ……何やら、そのチャックが内側からあけられていきます、のぞいていたのは、小さな手です、そこから顔をだしたのは
ちいさな少女でした、少女はわらいました、旅人にわらいかけたのです。
にやり
旅人は、眠い目をこすり、その少女の姿をよくみつめました。
赤づきんです!!赤いづきんをかぶっています。赤いづきん!それと狼!!どうやら、彼女と彼は、赤づきんの童話の担い手だったようです!!
「あーげない」
ばちーん!!
とひどい音がしたかとおもうと、すわったままの姿勢の、おっさん旅人は赤づきんに強烈なビンタを食らいました。
狼のはく製の男は、赤づきんをしかりつけました。
「せっかく赤づきんちゃんがつけておいた毒リンゴなんだから、ちゃんとたべさせてあげなくちゃだめじゃない」
ずしずしと、赤づきんとリンゴを背負った狼のはく製をかぶった大男は、森の奥の赤い屋根の家の方向にあるいていきました。
旅人は気づきました。
ああ、赤づきんこそが、狼だったのだと。
旅人は、街へ戻る決心をしました。
「毒リンゴ、食べなくてよかった、街で水を飲もう」
ある街のムカシバナシモドキ