略奪の夢

近頃、夢の中の社会では、治安が悪くなる一方だ。
夢の中でさえ、退屈はしないが、安寧もない。
「盗みや奪い合い、略奪はあたりまえの時代だから」
恋人はそういった。
「もはや隣人さえ、信用にあたいしない、信用するなら、私を信じなさい」
おぼろげな影、肌の感覚と匂い。

例の一件が発覚したのは、深夜だったか、隣人は、すでに失踪していた。
近所のうわさでは、近所のものを略奪しすぎて、相当うらまれていたとか、
青い屋根は、隣人の象徴。
他の家は、自宅からかなり距離がある。

夢の邸宅は一軒家。
下着のまま眠っている、恋人は帰らない。
深夜二時、カーテンのゆれる感覚が、足をつたって、頭に流れ込んでくる。

(風だ……窓を開けた覚えがない)
僕はそこに立っている、恋人の“消失”そのあとも、一軒家は僕の家、
家賃を支払う義務もない、ただ、“消失”と“例の一件”の事を想いだすときの、息苦しさだけがはかなく残っている。

(侵入者だ、侵入者の足音だ……足元に誰かいる!!足元の……ベランダの、窓が開いている!!)

僕は手探りで、ベッドの上部に備え付けのテーブルの小物入れをあけた。
そこには“拳銃”こんな社会だから。

僕は銃を手に取った、標準は、段々と上へ、侵入者はとまったままだ、どうやら中の様子をさぐっているらしく
片足だけフローリングの床について、片足はまだ、ベランダにある。

「しめた、銃口を頭部へ……」
標準はあった、仮面の下の顔はみえない。
だが次の瞬間、恐ろしい出来事がおきた。

「○○」

仮面は、恋人の声色をつかった。
僕は、無我夢中でさけんだらしい。

「手を挙げろっ!!!」

叫び声に反射して、恋人は体をうごかした、それは、そういった事に手慣れた人間の動き、
恋人は拳銃を構え、片手ではサバイバルナイフを頬に近づけて構えた。
拳銃は火を放った。

警察はすぐにかけつけた。
仮面をつけたまま、恋人は泣いていた。しゃがみこんで、泣き崩れていた。
恋人は、隣人の邸宅を奪い、隣人は恋人の嫌がらせで越していったのだと、泣いていた。

空の弾倉、無実の銃口を、次は誰にむけてトリガーをひかせたら、楽になるのか、
僕は無実だ、人に罪を擦り付ける。

そういう夢をみた。

略奪の夢

略奪の夢

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-13

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