神社と夕方の鬼


昔、物心ついたばかりころ、田舎も田舎、山奥の村で育った僕は
よく近所のがきんちょたちとかけっこやおにごっこをしていた。
そのときよく利用するのが、家の裏手の小高い丘のような小さな山にある、神社だった。

その日、あつい夏の日、小学生やなんかは、夏休みで、よくかまってくれた。
皆は、4時ごろあつまった、なぜならその日はプールにあそびにいったあとで、だけど
僕が遊び足りないといったので、もう少し長くあそぶことになった。
集合は例の神社前。
神社の入口前にある、石の杭の文字は、はげている、というより、苔むして文字が見えない。

「今日はかくれんぼな」
ガキ大将のサトがいう。

ケイちゃん、いとこは、こういうときには、僕の面倒をみるように、母にいわれていた。
いとこのケイちゃんは、ものしりで、なんでもしっていて、
一緒に隠れるのがいつもの決まりで、僕の手を引いて走り回った。僕にむかって、
「いつもは仲がいい皆だけど、こういうとき、疑いあって、疑心暗鬼になっちゃうな」
僕はピンときた、そして、2度目の鬼がきまったとき、つまり一度みんなが捕まって
集まったあと、いった。

「この神社には鬼がいるらしいよ」
ガキ大将のサトが一番に反応した。
ケイちゃんは面白そうにわらった。
「さっきも説明しただろ」
だが、僕はきかなかった、
「疑心暗鬼っていう鬼がいる、この神社にいる」
皆は笑ってとりあわなかった、だけど暗くなってきたこともあって、次が最後のかくれんぼという事になった。

僕ら、(つまりケイちゃんと僕)は、わりとすぐに見つかった、
木を隠すには森の中、というわけではないが、実は意表をついて、鬼のすぐ近くの木々のはざまにすわりこんでかくれていた。
隠れている木には、したっぺらにウロがあったのだが、夕方に見る木のウロは、コケがはえて、神秘的で、どこかおそろしかった。

僕らは三番目に見つかったらしいことがわかった、
1人目が、Aくん、二人目がBくん、ガキ大将が鬼なので、6人で集まっていたわけだから。
最後一人ということになる、
A君は掃除道具入れの中、B君は、手水舎の裏手。

僕らは、最後の一人を神社の境内の隙間でみつけた、まさかそんな罰当たりな事をするなんて、
しかし、その子は平気そう、いや、むしろ何かにおびえている様子だった。
あまりに面白みのない平凡なかくれんぼだったので、午後5時、僕らは解散することに、また明日ね、と声をかける。
そして、その一人が、別れ際こういった。

「僕はへんな叫び声をきいたよ、だからみんな探し始めたんじゃないの?うぉおぉおおって聞こえたよ」

やっぱり、夜中のかくれんぼはきをつけたほうがいいんだと、少しさとった、小さなころの思い出だ。

神社と夕方の鬼

神社と夕方の鬼

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-12

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