求めていた俺 sequel
第三部 「黒崎寛也編」
六話 小さなリベンジャー
夏休み初日。
オレンジのキャップを被った一人の小柄な少年が夕方の街を歩いていた。
「どこだ・・?一体どこにいるんだ・・?」
どうやら少年は人を探しているらしい。
手に持った一枚の写真と真剣な顔でにらめっこしながら歩いていたため、正面から五人ほどの不良軍団が向かってきていることに気が付かなかった。
ドン!
小柄な少年の肩は不良の一人の腰あたりにぶつかってしまい、そこから先はお決まりの展開が待っていた。
「ん?ボウズ、もしかして人探しかぁ?!
あぁん?」
少年は自分を睨みつける不良にはお構いなしにその場を適当に取り繕おうとする。
「あーそうだよ、お前らには用なんかないからとっとと去れ。」
この一言が不良達の逆鱗に触れてしまう。
リーゼントの不良がその場を離れようとする少年の肩をガシッと掴んで引き戻す。そして少年に顔を近づけて挑発する。
「ガキのくせにその口の聞き方、聞き捨てならねえなぁ。ちょいと教育が必要のようですぜアニキ!」
「うわ、めんどくせぇことになっちゃったよ・・」
少年は小声で呟くも、不運なことに不良の耳にはしっかり届いていた。
「んだとナメてんのかコラァ!!」
「おい落ち着け。」
不良のリーダー格の男が言った。グループの中でも一番冷静なタイプだ。
「おいちびっ子。お前さんは人探しをしてるんだよな。お兄さんたちが協力してやるよ。」
「な、何言ってんすかアニキ!!コイツは俺に生意気な態度を・・・」
シャキッッ
不良リーダーはポケットからバタフライナイフを素早く取り出し、ニヤリと笑いながらリーゼントの首元に軽く当てた。
「いつから口答えを許した?」
「す、すいやせん!!」
深々と頭を下げて謝罪をするリーゼント。
「ちびっ子、付いて来い。人目に映らない場所に移る。」
リーダー格の男は何を考えているのかリーゼントには分からない。
「わかったよ」
少年は嫌々ながら不良たちに付いていく事になった。 その行き先は不明だった。
その頃、桐生は馬場コウスケ、菅原聡彦、栗山マナトの四人で道を歩いていた。
「この後ウチで”大関東クラッシュシスターズ“ やらない?」
マナトがゲームの誘いを持ちかけてきた。
「おっいいねー!」
ゲーム好きの菅原聡彦にとっては嬉しい提案だった。
「じゃあ俺も・・・」
言いかけた途端、桐生はすれ違いざまに不良らしき集団の列と、そのしんがりにオレンジ色のキャップの小さな少年がてくてくと付いていくのが見えた。
「(なんだろう、気になるな)」
「お、おい!どうした桐生?」
「悪いみんな!ちょっとトイレ!!」
桐生はコウスケらから離れ、不良軍団の後を追うことにした。
不良軍団に怪しまれないように距離を置きながら追跡する。
「やつらどこに向かうんだ?」
不良軍団と少年が行き着いた場所は街外れの古びた倉庫だった。
不良のリーダーは少年を木製の椅子に座らせ、紐でその両手を椅子に括り付ける。
「これで逃げられねぇ。ジュンタ、見張ってろ。」
「オッス!」
リーゼントの不良のことである。
「さて、このガキどう料理しますかぁ?」
不良の一人がリーダーに言う。
「そうだな」
シャキンッ
リーダーは例のバタフライナイフを取り出し、少年の手首に刃の先端を軽く当てる。
「コイツで少しず〜つ痛めつけるのも一興だが・・・。それじゃあつまらねぇ。」
するとリーダーは少年から奪った「ある人物」の顔写真を少年の目の前でピラピラとチラつかせる。
「お前がさっき探していたヤツに何の用があるか知らねえが、コイツのおかげで俺たちは知り合えたんだ。俺はコイツに少し興味を持った。 俺が代わりにコイツを見つけてお話ししよう。」
「だ、だめだ!その男はボクが見つけ出す!!そしてボクが倒さなきゃいけないんだ!!!」
少年は急に真剣になって牙をむき出す。
「ん?この写真の男に因縁でもあるのか?」
「そうだ!この男は兄ちゃんを殺したんだ!!」
「ふーんなるほどね・・。」
リーダーは何かを考えるように写真を眺める。
「イイこと考えた。」
何やら良からぬ事を思いついたようなリーダー。
「アニキ!何か面白いこと思いついたんすか!?」
「まぁな。 おいガキ。」
リーダーは再び写真から椅子に縛り付けられた少年に目線を移す。
「一つ取り引きをしよう。お前の因縁のこの男は俺たちが代わりに見つけてぶっ殺す。
その代わりお前は死ぬまで一生ここに監禁しておく。 ・・どうだ?」
「ダメだ、アイツは絶対ボクの手で葬るんだ・・!」
「やっぱりな。そう言うだろうと思ったよ。
しかしよかったぜ。丁度ご本人様が登場してくれたみたいだからな。」
リーダーは倉庫の入り口ふきんに目線を向ける。
「!?」
少年がリーダーの目線を追って見てみるとそこには写真と同じ顔の男が欠伸をして突っ立ってるのが見えた。
「ふわぁ・・。おいおい俺はいつまで茶番劇を見せられなきゃいけねーんだ?」
「くっ・・!!」
少年は欠伸をする男を睨みつけてやることしかできない。
「ほーう、兄ちゃんか。ガキが探していたのは。」
ジュンタは鉄パイプを肩に乗せて例の男に何の警戒もなくズカズカと近づく。
「兄ちゃん見たところ高校生みたいだけど・・・、ん?」
ジュンタが見たのは男の制服の胸にある校章だった。
「兄ちゃん聖川東学園の二年かぁ。確かアレだよなぁ、能力者の生徒が多いので有名な・・。兄ちゃん俺らの一個下か。」
「んなことどうだっていいだろ」
「で?兄ちゃん何しにきたの?あのガキを助けにきたの?」
奥で椅子に縛り付けられているオレンジ系のキャップの少年を親指で指すジュンタ。
「まぁ暇つぶし。ていうかお前らこんなトコで何遊んでんの?」
「随分と肝の座った兄ちゃんじゃ・・ぶぼべッッ!??」
ジュンタが男の肩に触れようとした瞬間、高速で繰り出された男の肘打ちが目と鼻の間あたりに直撃する。
「うがぁあああ!」
顔を両手で覆い悶絶するジュンタ。
「きたねー手でさわんな」
男は片手だけであっさりジュンタを一蹴。
「お前、名前は?」
それを見ていたリーダーが何やら興味深そうに尋ねた。
「“桐生”だけど?今からひき肉になるお前らにはどうでもイイことだろ」
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