オーラ・エト・ラボーラ

【中学生からのおはなし会】

…というものの講師に知人が選ばれたそう。

「何を話せば良いかな?」
と、相談されました。

過去には
日本ではあまり知られていない
少しマニアックな外国の童話などが
選択され
そちらに脚色したものが多かったそう。

・・・

あのね

昨今の中学生が
いや、【中学生からの~】というには
それ以上の年齢層もくるのでしょう?

そんな聴衆が

☆悪魔を騙した猫
だの
☆妖精から飼い主を救った猫
だのの
話を聞きたがりますか?

別に【猫縛り】ではありませんが。

とにかく
民話や伝説、童話的なものが欲しくて
私に連絡したのでしょうけど
それは間違いであると
私は考え

中学生はもとより
大人も楽しめる話題として

【ベーシックインカムと
アーティフィシャル選択圧】

について
私なりの考えを纏めた
簡単な草案を送りました。

どうです?

タイトルだけでも
興味をそそられるでしょう!

それに
この話題は
中学生のような
若い世代には特に重要なものだと。

年齢的にも
丁度よい。

出来れば

おはなし会の後に
討論的な時間を取ってもらい
各々の考えを述べてもらいたい。

先ずは
これからを支える若い世代へ問い、
答を。

そしてそれを受け止め

例え己の利点を失ってでも
後の世代へと繋がる未来を大人達が
選択出来るのか。

論点には
ファシズムや優生保護までもエッセンスに加え
我ながら
なかなかの出来映え。

こちらを
送信したところ

『おまえは頭がおかしい』

という酷評ともいえる心外な返事が。

これだから
頭の固い脳ミソコチコチは
困ったものです。

それなら
この草案を踏まえた上で
童話仕立てにでもすれば
良いではないですか?

尤も私的には
そんな比喩的表現より
ダイレクトに解りやすく

すぐに訪れるであろう
過酷な近未来における
自分達、若い世代の将来に
照らし合わせる方が

余程、有意義であり
危機感を育てられるのでは?と
推察しますが。

まったく

面倒な試算データを探り
それらを
解りやすく見やすく、と
パワーポイントまで使ったのに…

しかし惨状シミュレーションの後には
希望的観測のヒントを匂わせ
そのBGMには
KOKIAさんの♪小さなうた


こちらで
サブリミナルとはいいませんが
人間味も重要視した感動的なフィナーレを演出。


メルヘンを期待するというなら
そのオつむ達に
現実を打ち込むのです。

メリハリがきいて痛快。

というより
そういう人達にこそ
考えて頂きたい。

なればこそ
普段
聞くことの出来ぬ
新しい意見が出ると期待しているのです。

どんな事にでも
変革と転換の時期といのは在る、と
私は考えます。

何かにつけて
保守派といわれる私でさえ
解ることです。

そして
その事が無傷で行われることが
避けがたい事実も。

あらゆる方向へ
幸、不幸ともに
多面的な強い影響をもたらすでしょう。

それはこの事に限らず
人類文明が進歩していくほどに
認識していかなければ
ならないことなのです。


うーん、
もう当日
ゲリラ的に会場を占拠し

私が熱弁を奮うしかありませんかね。

オーラ・エト・ラボーラ

働き者の少女マチは
ブラック企業が乱立する日本の中で
昼も夜もなく働いていました。

雨の日も
風の日も

酷暑の日も

どんなに頑張っても
それでも仕事はなかなか終わりません。

お昼ごはんの時間さえ
ままなりません。

そんなある日の昼下がり

おなかをペコペコに空かせたマチは
打ち合わせに向かう途中の公園で
移動販売のお弁当屋さんを
見つけました。

そこで

これでようやくお昼がたべられるぞ!

そう喜んだマチは
タマゴとハム
二組のサンドイッチを買い求めました。

本当は
カツサンドやエビサンドを
食べたかったのですが

働いても働いても
なかなか
いっぱいにならない
お財布を覗き込んで

この
比較的安価な
ハムとタマゴにしたのです。

それでも
それは
マチにとって
すごいご馳走に見えてならないのでした。

忙しい時間の隙間を縫い

公園の木陰にあるベンチに
くたくたになった足を放り投げ

サンドイッチの包みを開くと

いつの間にか
側には
二匹の痩せ細った親子らしき猫達が
そっと近寄り

マチのサンドイッチを
羨ましそうに
眺めているのでした。


マチも可哀想だとは
思いましたが

これを食べないと
午後から
もう充分に働けません。


まずはタマゴのサンドイッチを
口に運ぶと
子猫がまるで

━━あっ…

というような表情を浮かべるので
マチは
食べるのを躊躇ってしまいました。

その瞬間

マチの携帯電話が鳴り響きます

「先方がお待ちだぞっ!今、どこに!○□◎!」

マチはそのあまりの見幕に
疲れ切った小さな身体を震わせると
電話の向こうにいるだろう
見えぬ鬼に向かって
ペコペコと頭を下げながら
謝り続けました。

そして
手付かずの二組のサンドイッチを
地面に置くと

ヨロヨロとした
足取りで
それでも駆け出していくのでした。


そして夜もふける頃
マチはようやく
賃貸のマンションに帰って来ましたが

それでも
まだ仕事は終わらず

幾つかの書類を持ち帰って
お風呂にも入れず
机に向かいました。


あと四時間もしたら
また
仕事にいかねばならないのです。

マチは
小心者なので
それまでに
なんとか仕事を終わらせようと
眠い眼をこすり
机に向かっていました。

すると

ベランダから

コン……コン……コンコン

という小さな打突音と
ニァー……ニァー……

という鳴き声が聞こえてくるではないですか

最初は気のせいかと思いましたが

その音は段々と大きくなり
マチは思いきって
カーテンをあけてみました。

すると
そこには
昼間の親猫が。

ここは高層階であるし
これは夢か、と
マチは驚きましたが

親猫がさらに
マチを驚かせます

『マチさん…お昼はありがとうございます
あんなに美味しいものを食べたのは
久しぶりで…おかげで子供にも
ひもじい思いをさせずにすみました。』

━━━いいのですよ、
どうせ食べる時間も無かったのですから。

そう
マチが答えると

突然、親猫の目付きが変わりました!

『マチさん!お礼代わりに人間に教えては
ならぬ事をお教え致します、
よく聞いて下さいね…!』

━━え、何でしょう。

『マチさんが住む前、空室だった
このお部屋はそれまで
妖精達の宴会場として使われていました。
その妖精達がマチさんが何時までも
仕事を止めず毎日遅くまで起きているので
宴会が出来ずに怒っています、
妖精達は人間に見られてはならないのですよ!』

━━そういわれても。

『今日はウチの子供が妖精達を
誘い出しているので
それを伝えにこられたのです。』

━━え、

『このままの状態が続けば
いずれ怒った妖精達がマチさんに
病気の粉を振り掛け
寝込ませるでしょう!』

━━━私はどうすれば?

『世論にベーシックインカム導入の流れを
誘導して政府を動かし
ブラック企業を淘汰するのです。』

━━━ほうほう!それで!?

『さすればマチさんにも自由な時間が取れ
睡眠もたっぷり!妖精も大喜びです!』

━━━ふむふむ

『本当に手に出きるかどうか分からぬ
年金を当てにするより
その方がきっとましだと!
稼得労働を…既成勢力を是正するのです!!』

━━うーむ!

『仲間を募るのです!マチさん!』



・----・・・・・・・
・・・・

・・・


チュンチュン

チュンチュン

机に伏せながら
眠ってしまっていたマチは
小鳥の鳴き声で目を覚ましました。

━━あれは…夢だったのだろうか……?

いつの間に
開けたのか

ベランダからの
風に揺れるカーテンを片手に

マチは眩しい
朝日を見詰めるのでした。

オーラ・エト・ラボーラ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-07-08

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