デート・ア・ライブ 七夕記念
どうもこんにちはオタリアです。今回は七夕を記念して短編を書きました。楽しんでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
七夕の夜に
七月七日、今日は七夕――織姫と彦星が一年に一度出逢うといわれる日である。
そんな日を迎えるためか、天宮市は七夕ムード一色である。
午後五時すぎ。どこか浮足立った天宮市の街を士道と琴里は歩いていた。士道の夕飯の買い出しに琴里が同行している形だ。兄妹仲睦まじく寄り添いながら、街並みの一つ一つを楽しそうに見てまわる。琴里が嬉々として指をさすものに対して士道が反応する。まるでカップルのようである。
「今日のお夕飯は確かちらし寿司なんだよね、おにーちゃん?」
「ああ。今日はちょっと高いお刺身も買う予定だから楽しみにな」
「やったー!」
そんなやり取りをしていると、二人の目の前にちょっとした人だかりが形成されているのが見えた。
「ねえねえおにーちゃん。あそこ人がいっぱいいるけどなんだろう」
「ああ。ちょっと行ってみるか」
士道が琴里の手を引いて人だかりへ向かう。士道が人ごみの後ろからやや背伸びしてのぞいてみると、そこには短冊とそれを括りつけるための笹が置かれていた。そう、人だかりが作られている理由は、短冊に願いを書くためだったのだ。
先ほどから精いっぱい背伸びをしているにも関わらず全く状況が分からない琴里は、士道に尋ねた。
「結局なんだったのだー?」
「あれだよ。短冊を書いて括りつけるための列だったみだいだ」
「じゃあおにーちゃん、せっかくだから私たちも書いていこうよ!」
「ああ、そうだな」
そして待つこと十分弱。目の前の人だかりが消え、士道と琴里は短冊とペンを手に取った。それぞれ短冊に願いを書いて、それを笹に括りつけた。
――再び歩き出す。琴里が白いリボンを揺らして尋ねた。
「おにーちゃんは何て書いたの?」
「俺か? “精霊のみんなが平穏無事に過ごせますように”かな。あと……」
「あと?」
そう言った士道は恥ずかしそうに頬をかくと、
「あと――“いつまでも琴里が元気に過ごせますように”」
それを聞いた琴里は何かを返すでもなく、少しはにかんだような笑みを見せた後、きゅっと士道の手を握って歩き出した。
買い物を終えて帰路に就いた二人。帰り際、散歩がてら河川敷に立ち寄ると、そこでは花火大会が催されていた。多くの露店が軒を連ねており人々が殺到している様子が見て取れた。
「あ、そういえば今日天馬川の花火大会だったね」
「そういえば……」
そんなやり取りをしていると会場のスピーカーからアナウンスが聞こえてきた。
『さて。本日のメインメニューである天馬川の花火のお時間です。どうぞごゆっくりご鑑賞ください』
そして一筋の光が夜空を昇っていき、空高く炸裂した。辺りが鮮やかに彩られる。
「綺麗だね、おにーちゃん……」
「ああ、本当にな」
その時、琴里が自分の手をちょっぴり強く握ったのを士道は感じ取っていた。
ふと横顔を眺める。琴里の視線はすっかり花火に釘付けにされており、次々に夜空へと打ち上る花火で琴里の赤い髪がより美しく見えた。
とその時、一際鮮やかな花火が夜空に打ち上った。
鮮やかな青色の花火の後を追う様に、熟れた林檎のような赤色の花火が夜空に舞った。
「ねえ、おにーちゃん」
「ん、なんだ?」
――その時士道の頬に、柔らかくて、温かくて、ちょっと湿った感触が触れた。
しっかりと士道の手を握りながら、琴里は心の中で一つの願い事を、どこかにいるであろう織姫と彦星に託した。
“いつまでも、おにーちゃんのそばにいられますように”
~END~
デート・ア・ライブ 七夕記念
また、どこかでお会いできるのを楽しみにしております。