織姫カンパニー・七夕事業部・広報係からのお知らせ
序
織姫カンパニー・七夕事業部・広報係からのお知らせ。
人々の祈りにこたえて千三百年。私ども織姫カンパニーは、天棚機姫神会長と共に、努力を重ねてまいりました。祈願成就の指極星となるべく、勤めてまいりました。
二〇一八年度の七夕は土曜日になりますが、例年通り、業務を行います。先立ちましては種々諸々のおあらためをと、紙面を割かせていただいた次第です。
一、短冊について
原則、ご本人がご自身の意思で書かれたものを承っています。(諸事情あって、ご本人に難しいときの代書・代筆は、承っています)
機械類が書いたもの(印刷など)は、お受けできません。
■材質
金属類・化学製品。ビニールやプラスチック製の短冊は、ご遠慮ください。(川に流して差し支えのないものをお選びください)
植物の葉。一律承っています。カジ、サトイモ、しろつめぐさ。これらに限らず、どの葉を使われても構いません。(触ってかぶれるものは、ご遠慮ください)
材質による成就の違いはありません。裏紙を短冊状に断ったものでも構いません。
■色・柄
短冊の色・柄に制約はありません。どの色の短冊も、同じものとして扱っています。成就の違いもありません。
■形状・大きさ
制約はありません。ただし、あきらかに別のもの(戸板や畳、店の看板や横断幕など)は、お受けできません。
習字に用いる半紙、書道家が用いる大型和紙(幅一・五メートルを超えるようなもの)も、承っています。
折り紙などに書いたもの。問題なく承っています。
折れ、破れ、汚れ、靴の跡があるもの。まったく問題ありません。
■氏名や所属の記入
住所、氏名、所属等は、添えられなくても構いません。成就の違いはありません。
※「名前を書かないと、だれのお願いなのか分からないのではないだろうか」と心配される方もいらっしゃいますが、そのようなシステムは、使っていません。(名前が書かれていなくても判るようになっています)
■記入に用いる道具
なにで書いても構いません。(レモン汁を使ったあぶり出しでも構いません)
薄墨、濃墨、問いません。色の制限もありません。これらの違いは、成就に影響しません。
■文体や書き方
文体や書き方に、決まりはありません。成就の違いもありません。ただし、短冊に書かれているものが願い事なのか判断つきにくいものは、余興の類として扱わせていただく場合があります。
字体の良しあし、塗りつぶした書き損じ。問題ありません。成就にも影響しません。
短冊の裏表どちら側に書いても構いません。
■詩歌、書画、青年の主張。
受け付けています。風流余興と楽しませていただいています。
■絵柄(挿絵)付きのもの、挿絵だけのもの
歓迎します。挿絵の有無による成就の違いはありません。
※お子さんの写真やイラストを添えたものは、ご遠慮ください。
二、短冊や笹竹の飾りかたについて
■笹に下げていないもの
問題ありません。クワの木、モミの木、風鈴、物干し台。どこに下げた短冊も、同じものとして扱っています。成就の違いもありません。
■短冊の向きや位置
笹竹のどの位置に下げても、同じものとして扱っています。「内側に隠れているので願い事が届かないのではないだろうか」と心配される方もいらっしゃいますが、そのようなことはありません。(どれもきちんと届いています)
上下逆さまに下げられた短冊。問題ありません。
■飾るときの諸作法
きまった作法はありません。
七度回って笹に飾る。東西南北に一礼してから飾る。こうした所作があっても無くても、同じものと扱っています。成就の違いもありません。桶水をかぶって身を清める必要もありません。
■屋内に飾る
問題ありません。できましたら窓の外から見える場所におかけください。
三、お願いごとについて
■お願い事の数
数に制限はありません(ひとり何口でも構いません)。ただし、一つの短冊につき一件でお願いします。
重ねてお願いされても、効果は倍になりません。「10キロ痩せたい」という短冊を三枚掲げられても、30キロは痩せません。成就されやすくなることもありません。
■権能
会長も牽牛も八百万(やおよろず)の神ではありますが、万(よろず)の神ではありません。権能(けんのう)があり、得手不得手があります。会長は手芸と機織り。牽牛は農耕と牧畜。その他については、ほぼ管轄外となます。(「四、資料」の「権能。得意分野/不得意分野」に、詳しく載せています)
権能から外れているお願い事は、原則、お受けできません。所轄の御神に祈願上奏くださいますよう、お願い申し上げます。
※ 権能外のお願い事を受け入れていた時期があったのですが、他所の神様から猛反発を受けまして。ウズメの姐御はあのかっこうで、「いったいどういう了見で、うちの仕事にかぶさってくるんだい」と、ムチの柄をぐりぐりと押してきますし、矢乃波波木(ヤノハハキ)さんは、ただでえ仕事が減っているところへ持っていかれてしまったものですから、例の、あのじとーっとした目で見つめてきますし(わたしはヤノさんのあの顔は大好きなのですが、そのあとが怖いのです)。
専門外で成就も難しいこともあり、現在は取りやめています。
■注意事項・1
・恋愛関係
大半が保留になります。
「幸せになれますように」「彼と旅行ができますように」……会長曰く『私のほうがお願いしたい』。(保留になります)
「お金持ちと結婚したい」「お金持ちの彼氏がしい」……財産願望になるので、権能から外れます。所轄の御神に御祈請ください。(棄却されます)
出会い、縁結び……専門の御神へ御奏上ください。
・親孝行
親孝行関係のお願い事は、お受けできません。(親の成功や健康長寿をはじめ、「お父さんのようになりたい」といったものも含みます)
・家族円満、家族の幸せ
びりびりポイはされませんが、多くが棄却されます。
・子への願い
親の管理下に子を置くものや、親の一存で子の明日を決めるようなお願い事は、お受けできません。
「息子/娘が言うことを聞かないから、何とかしてほしい」……びりびりポイされます。
安産や乳幼児に関するもの……ご遠慮ください。
・仕事関係
医師の指示により、すべてお断りしています。
■注意事項・2
・品の無いもの
この種の短冊は、手動シュレッダーによって、くしゃくしゃポイ(またはびりびりポイ)されます。
・人の不幸や失敗
人の不幸を願うと、その方から幸福を願う短冊が来ます。その方の幸福を叶えると、もとの方から、不幸を願う短冊がまた来ます。
折ったり継いだりを繰り返さなければいけないようなお願い事は、ご遠慮ください。(棄却されます)
・願い事なのか、独り言なのか、はっきりしない
「○○します!」「○○になります」といったものを、多くお見受けます。有頂天外に感極まった独り言のようにみえますし、寸芸の前振りにもみえます。
こうした短冊は、余興の類として処理されるか、『がんばってくださいね』とひと言添えられてわきに置かれるかのいずれかになります。(会長、牽牛からのお言葉は頂けます)
・内容があいまい
「おいしいものが食べたい」というお願いを例にとって、ご説明します。
牽牛は「そうか、じゃぁ、まずは、土づくりからだな」と、酪農の講義を始めますし、会長は、黙って落花生の詰まった袋を渡します。お願いされた方は一流の酪農家になるつもりはないでしょうし、落花生で満足するつもりもないでしょう。最終的にはおいしいもを食べられますが(落花生については人それぞれかもしれませんが)、期待していたものとは大きく違う結果になっているでしょう。別の問題が起きるかもしれません(酪農には多くの困難が伴います)。
見当違いの結果にならないためにも、こうしたお願い事は保留にしています。お願い事は、はっきりと。
・衝突や矛盾を起こしているもの
競技の優勝やクジの当選のように、限られた枠に対するお願い事は、同じお願いをされている方と衝突を起こす場合があります。衝突が起きたものは、対応できません。(どちらも公平に扱うためには、どちらも棄却とせざる得ません)。
※ご好評だった「牛ルーレット」は、公平性が保たれないという理由から、とりやめています。
衝突を起こしていないものや、衝突していても双方の一致があるものは、対応させていただいています。(「今度の席替えで、○○さんの隣りになりますように」とお願いし、先方も同じことを願っていた場合。など)
「みんなの願いが叶わないように」……これを叶えてしまうと叶えられなかったことになり、叶えないと(部分的に)叶えてしまったことになります。こうした矛盾が起きるものは、対応できません。(棄却されます)
「みんなの願いが叶いますように」……お受けできないお願い事がある以上、こうしたお願いも、対応が難しいものになっています。周りを想う気持ちは会長の胸を温かくしてくれますが、短冊は保留になります。
■そのほか
・取り消しや訂正
承っています。7月末日までにされますよう、ご協力お願いします。
・「彦星と織姫が無事会えますように」
大変うれしく思います。雨かな、晴れかな。雨だと会えないのかな。晴れだと会えないのかな――。御心配には及びません。私ども、地上をはるか百九十兆キロメートル上空に、事業所を持っています。地の雨晴れは影響しません。会長と牽牛は、毎年きちんと会っています。
・日にち指定
2018年の七夕は、8月17日になります(旧暦七月七日)。会長と牽牛が「よし、やりますか」と、たすきの帯を締めるのが、この日になります。ですので、7月7日から8月17日のあいだに叶えなければいけないお願いごとは、成就できません。
・乙姫宛て
毎年必ずお見受けします。私どもの会長は織姫(おりひめ)で、乙姫(おとひめ)ではありません。乙姫は海の奥深く、亀太郎専門になります。
すでに先方とは業務提携を結んでおり、「間違って届いたものは回しましょう」ということになっています。(間違って海に行ってしまった短冊も、きちんとこちらに届きます)。しかしながら、たいへん手間のかかる作業になります。くれぐれも宛先のお間違いはないよう、お願いします。
※相合傘に「乙姫&彦星」と書いてあったり、「乙姫様と彦星様が結婚しますように」と書いってあったりという短冊を見ると、ドキッとします。
四、資料
■権能。得意分野/不得意分野
会長と牽牛の権能(得意分野、専門分野)を挙げたものです。
凡例:◎……得意。○……まあ得意。△……人並みなのであてにならず(友人知人にお願いしたほうが良いかもしれません)。×……さっぱりなのでパス。
△と×は、所轄の御神に御祈請ください。
・牽牛
畜産関係◎。最近少なくなりましたが、牛や馬の出産など◎。ペットをはじめとする小動物○。鳥は○、魚は△。
農耕○。家事一般○。本草学○。スポーツ・競技類△。財産関係△(牛飼いのお駄賃くらいまで)。
アサガオの観察日記◎。高速回転◎。
・会長
裁縫、織物◎。養蚕○。その他昆虫飼育△。染め物○。リリアン編み◎。手芸工芸◎。その他手先の巧さに関わるもの○。手品は×。サイコロピラミッドも×。
仕組みが簡単な機械類(織機くらいのものまで……というよりは、ずばり機織り機)◎。そのほかの機械類は△。電気、電子、精密機器×。重たいもの×。羽が回るタイプの扇風機△。洗濯機は×。
美容、エステティック×。服飾◎。ファッション△。ファッション業界は×。家事一般△(ひょっとすると×)。
スポーツ・競技類×。
なにかコツコツと続けること◎。ただし、ゲームキャラクタのレベル上げのように、生産性の無いコツコツは×。なんとなく夢中になってしてしまうもの◎。
なに不自由ない家柄だったので、財産関係×。
政治、支配する側される側の問題○(※1)。
・両者共通
賭けごと、勝負事×。会社仕事×。
恋愛△。出会い×。友達以上恋人未満○。恋仲を超えるものは×。
幸せ家族、親の成功健康長寿××。家庭の問題、夫婦の問題×。
学問一般△。
自然災害天変地異×。
※1 相談には乗れますが、それ以上は望めません。
■お願い事の統計(二〇一七年度)
・権能内であり、成就の見込みがあったもの……1%未満。
まだ成就を終えていないものもあります。
・専門外のため、結果の保証がないもの……5%。
恋愛関係が多くを占めました。大半が保留になりました。
・真意とは違う結果を招く可能性があり、保留にしたもの……7%。
「おいしいものが食べたい」「とにかく痩せたい」など。
・管轄外につき、保留としたもの……57%。
所轄の神様に御祈請ください。
・棄却……23%。
親孝行、幸せ家族など。
・その他……8%。
お願いの内容がはっきりしない。お願いなのか独り言なのかはっきりしない。詩歌、書画、応援のメッセージなど。
・以上とは別に、衝突や矛盾を起こすものが8%ありました。また、叶えてしまうと災いを招く恐れがあるものが、15%ありました。外の御神に御祈請されるときは、内容には、十分注意してください。重ねて申し上げますが、お願い事は、具体的に、はっきりとお書きください。
五、
七夕の日を今の暦に合わせると、2018年は8月17日になります。この日は星の巡りが良く、会長、牽牛、共に、東西南北どちらを向いても、頭の真上にみえます。
お盆の時期で恐縮ですが、8月の17日。東北を向いたまま、ごろんと仰向けになっていただきまして、ほぼ真上、明るく輝いて見えるのが、会長です。その右、天の川をまたいだ向こう側に(天の川が見えると良いのですが)、明るく光って輝いているのが、牽牛です。(夜遅いと、右上のほうに見えます)
針や糸、趣味手芸にかかわる品々を窓辺に供え、会長と牽牛、二人の行く末を想っていただけたらと、思います。
親なんかには負けるなと、応援していただけたらと思います。
織姫カンパニー・七夕事業部・広報係からのお知らせ
※創作ノートから、一篇載せます。後に他の創作ノートとまとめるかもしれません。
§
創作ノート・伝承と噂
『織姫がいた。機織りの業務に就いてた。独り身を不憫と思った父親が、牽牛との結婚を認めた。嫁いだら機織りをやめた。父親は怒った。実家に戻って来いと命令した。(牽牛とは)一年に一度会うのを認めた』
原文が読める範囲で手に入ったのが、このお話です。「嫁いだら機織りをやめた」の一文しかなく、辞めた理由つにいては、書かれていませんでした。([殷芸“小説”より] “嫁後遂廢織紝” )
この逸話に対して、「夫婦ともども仲良く遊びほうけていて、機織り仕事をしなくった」といったことを初めて書いた人は、いつの時代の誰だったのでしょう。確かな原本があって、そこから持ってきたのでしょうか。それとも、書き手としての創作魂に任せて、書き足したのでしょうか。
(本当に、二人は遊びほうけていたのでしょうか。もし遊びほうけていたとしたら、それは、客観的にみて、実家に連れ戻さないといけないくらいの道楽っぷりだったのでしょうか。機織を辞めざる得なくなる理由はいくつもあるはずですし、力ある者が娘を連れ戻そうと目論んでいたらいたら、どんな大義名分でも作ると思うのです)
もし創作魂が奮った一筆だとしたら、ペンの先から、流言飛語の最初の一滴を落としてしまったことにならないでしょうか。あたかもそれが真実であるかのように継がれていることに、胸が痛みます。牽牛と織姫が一年に一度しか会わせてもらえないのは気の毒ですが、それ以上に、根も葉もない噂に根が張りつつあるのが、気の毒でなりません。
「ねえ、知ってる? 織姫と彦星はね――」。ひとからそしりを受けながら短冊を取る気持ちは、どんなでしょう。
§
牽牛と織姫は恋仲止まりにしてあります。『結婚したら、一緒に住もう』と言えるだけ、希望があります。『牽牛の肩に身をもたれているだけで、ほんわか』という会長なので、品の無い話しは持ちかけないよう、お願いします。
『願う気持ちに変わりはなかろう』ということで、四百年前に流行りだした「これが正解!」「これが本当!」には、こだわっていません。
(地球時間で)2018/07/01 初
(地球時間で)2018/07/03 改稿
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