女性の足が見える。
女性の足が見える。
黄色の布をかぶせられて、二人の人物に棒のようなものでたたかれている女性の景色が見える。二人のうちの一人は男で、その者が棒を振っている。布から、素足のふくらはぎが出ているのが見える。場所は緑のある地べたで、草と土が見える。たたいても女性は動かないので、すでに意識は無いと思う。
男性は茶髪で(栗毛に近い。染めたのではなく、地毛かもしれない)、癖っ毛で、ぼさっとした感じがある。西洋人ではない。この男は、向かって右側、女性の腰のあたりに立っていて、もう一人が、反対側、頭のほうに立っている。(この反対側に立っている人物は)黒のズボンをはいている気がするが、男のなのか女なのかは分からない。
私は、女性の左側、足元のほうにいる。背が高いかもしれない。
※(黄色い布は、シーツや毛布のたぐいではない。ふちの処理で、そう判る。お店などで商品テーブルの上に掛けるような布で、色も真っ黄色ではなく、淡黄や刈安色にちかい。冒頭で二人の人物に叩かれているかのように書いてあるが、これは誤りで、たたいているのは足元に立っている男一人で、頭のほうに立っている者は、ただ見ている状態である)
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車の後ろの部分が見える。角に丸みがあって、色は白。後ろのガラスはスモークが入っている(なので、車内は見えない)。緑色の字のナンバーが見えるが、数字は見えない。
※(自動車については詳しくないので、うまく伝わらないかもしれないが、ぺたんとおなかをつけて座ってる猫を後ろから見たようなタイプの車。後ろが平らになっているタイプではない。地面はアスファルトの感じではない)
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鹿――ツノが無いので雌鹿が、こちらを向いているイメージがある。でもこれは鹿がいるのではなく、野生動物が出るような人里離れた場所というイメージかもしれない。季節は秋でも冬でもない。茂った緑の感じが、そうなっている。
二人目の人物(頭のほうに立っている人物)からは、黒のイメージしか出てこない。”ブラック企業”の黒ではなく、黒という色のイメージがある。
女性は……被害者は女性だというのは、はっきりと分かる。若い。
※(実はここでノートが切れてしまい、新しいノートに変えた。その作業に気を取られてしまい、だいぶイメージが薄れている。なにか手がかりになるものは無いかと意識を向けるが、後付けのイメージしか出てこない。すでに「はっきりと足が見えた」という記憶しか残っていない。茶色というのは、女性の服の色かもしれない。上着が茶色とか、肩ひもが茶色とか。ふくらはぎが見えてたので、女性はうつ伏せになっていたはずである)
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自転車のスポークのようなものが見える。自転車ではないかもしれないが、スポークのようなものが見える。私はスポークのこちら側にいて、向こう側で話す女性と男性が見える。女性は左側にいて、男性は右側にいて、なにか話している。
やはり、男は茶の癖っ毛。服は背広ではない。ラフな服装をしている。女性は黒髪で、店員のようにみえるが、そうでないかもしれない。イメージがころころ変わるのは、紙のせいだ。(新しいノートが大きすぎて書きづらく、そのストレスから)
女性は二十歳くらいで、上目づかいで見ている。ということは、男のほうが背が高い。
※(場面は変わっている。屋内。自転車店や、デパートの自転車売り場のイメージが近い。自然光を超える明るさは無い。同じ女性のはずなので、おそらく、時間をさかのぼっている)
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こうしたイメージが頭に浮かぶのではなく、とつぜん見える。目を閉じているのに、見える。(この感覚には慣れがいる)。場所や人物をはっきりさせるものが見えればよいが、今回は、そうしたものは見えてこなかった。
こんなものを届けても相手にしてはくれないし、怒られて終わりになってしまう。お年を召された嘱託の専門員が出てきて、テーブルを挟んでとうとうと話すだけになってしまう。
刑事事件として動いておらず、ニュースにも取り上げられていないというだけで、この手の事件はどこにでも起きている。調べてみると、一年間の行方不明者は八万四千人を超えている。その中でも特異行方不明者といって、犯罪をはじめ、命の危険にさらされている可能性がある人は、五万六千人に及ぶ。行方不明の届けを出していない(出されない)ケースがあるので、実際はもっといる。
五万六千分の一の、そのわずかな断片が見えたところで、なんの役にも立たない。何十年、何百年かすれば研究されるかもしれないけれど、いまのところは、なんだかモヤモヤとしたものを残すだけだ。
女性の足が見える。
本文(注釈と最後の章を除く)は、手書きフォント。手書きの部分は推敲せずに、そのとき書いたものを、そのまま載せてあります。
2018/06/24 初稿
2018/07/3 二稿
手書きの部分は手書き。注釈はワープロ