瓦礫
Inside
破れた壁の隙間で空をうかがう。わたしは孤りじっと腕組みして座っている。体育館に置き去りにされた幼い子供のように……。炸薬が起爆したとき、幻想的な光線が差し込み、骨組みをくまなく探し回った。大勢の声が呑まれていった。形容しようのない爛れた瘢痕を皮膚に遺して……。鋭利な火炎の残忍な横顔が金色の太陽のように一瞬、瞬いた時、わたしは怒号よりも深い殴打にえぐられてちりぢりになった。意識が再びひとつにまとまったとき、わたしは降り積もった灰の只中に倒れていたのだった。なんの声もしない。虫も鳥もいない暗く燐の燃える世界に……。生きているのか、それとも堕落した天使ともども煮詰まった闇の裂け目に投げ込まれたのか。わたしに何が理解できる?ネフィリムは角を上げた。その即席爆弾は短絡的な雄弁さで壁を突いた。それは腰を砕かれて倒れこみ、弱い雛と守られた卵たちを粉々にしてしまった。金剛石の栄光に守られた象牙の宮殿はさんざめく白い柔肌を輝かせているというのに、わたしが窺う空は鈍びた煙に焼き尽くされたものたちの溜息で織り上げられている。瞼が羽ばたきする。翼を切られた鳩のように転がりまわる。もはやそれ自体は肉でしかない。血の滴りに満ちた野蛮な光景は精神の糸を切り落とす。わたしは力を抜き取られた人形。歪んで折れ曲がって丸まっている。ずっしりとした瓦礫の重みがわたしをまだこの場所に引き止めている。
Outside
声が聞こえる。手が幾本も伸びてきてわたしに圧し掛かる瓦礫を引き剥がしてゆく。わたしの髪を摑み、頬を撫で、脇に巻かれた無数の手がわたしを深い闇の眠りから引き上げた。生命、曖昧な視界に影たちが呼び交わしている。生命、繰り返される。生きていると言いたいのか。埃の絡んだ空気を肺の隅々にまで満たすと、酸素の微粒子が凝った肉体を暖め、膨らませてくれる。ありがとう、乾いた音で喉を擦った。生きている。
瓦礫