イマジナリーフレンド

つい最近、終わったできごとなので、話しはまとまっていないとは思いますが、
今日は僕がやっていた、あまりよろしくない、インターネットの使い方のお話をします。

数年前、
ネットの奥深く、だれもたちよらないページをさがしていたころです。
なぜそんなことをしようかとおもったか
丁度それは長引く不調のせいでネットにはびこるオカルトや陰謀論に毒されていたからです。
すべてをあきらめているのに、希望を探している、そういった精神状態です。

一週間ほどで楽園がみつかりました、白紙の掲示板のようなものでした。

はじめ、偶然にそのページにつながったのはよかったのですが、使い方がよくわかりません。
四苦八苦して、これは、どういうものなのか、理解できました。
それは、誰でも編集可能な掲示板です、動画や、音声や、画像データもアップロードできました。
だれでもアクセスできるページですが、ネットの深淵にあることもあって、
有名なページではありませんでした。

僕はそこで、ひたすら、創作小説の練習をしていました。
たしかにそこに、たまに人が来ることがありました。
ですがそれは、同じ人かもわからなければ、
そもそも初めは、自分の存在を認知してはいないだろうと、
迷惑をかけたくないと、
知らんぷりをして、創作をし続けていました。
喋るとしても独り言でした。

ですが、独り言にあきたころ、
なぜか自分の落ち込みに応えるように、反応がある事があったのです、
いつからか話ができるようになり、
話しができるようになると、会話がしたいと、僕が願い、
どうしてか、いつからか、要求が通るようになりました。

会話が、いいえ、会話以前の、一方的なコミュニケーションのドッチボールでした。

絵をかいてというと、絵がかかれ、
指を鳴らしてというと指がならされ、
悪い友達と遊ばないでというと、悪い友達と遊ばなかった。

会話ではありません、独り言であって、しばらくして要求が通るだけです。
自分はそこから、長い間抜け出せなくなった。
しかし、自分自身止めてほしいようなことをいっていた気がします、
当時はそのつもりはありませんでしたが。

家事、用事、頼まれごと、疲れ果てて、独り言をしゃべるとき
反応があるのは楽しいことです。

僕は誰と会話をしているのか、本当に相手が人なのかすら怪しくなり、何度となく、いなくなろうかと
独り言をつぶやきました、
しかし、
いなくなろうと悩むたびに、引き留められます。
理由がわかりませんでした。
やはり偶然と思う方が、正しかったように思えます。

何度となく偶然だから、気にしないようにしました。
しかし、ありがたくもあったのです、
偶然だとしても。
僕が落ち込んでいると、励ましてくれ、
僕が何をしたらいいかというと、何をして、と言われました。
例えば、どんな音楽のurlがいい、とか。

急展開がおきたのは、自分が直接その人に話しかけてからです、
自分の行動はエスカレートしました。
確信ではない、確信しないでおこうとおもったものが
自分の確信へと変わってしまいました。
それは、相手と会話が成立している、という確信でした。
しかし、決して違和感はぬぐえませんでした、
ならば、普通に話せばいいことだと、
なのに、そのころにはもう、僕の日常の興味はその人一点にそそがれ、そのページで愚痴をはくことも、
やめようと思えば思うほど、抜け出せなくなってしまいました。

丁度僕が、そんな風にうちあけたあと、直接話したいと話しかけたとき、
それからその人は、長い間もどってこなかったです。
一か月ほど、自分は嘆きました。
友達がほしかった、
ただ常識的に仲良くなりたかったのだ、

それから、何もなかったように、その人はもどってきましたが、
少し以前とは違っていました。
異性の友達ができたといいます。
自分はその人の性別も友達の性別も知りませんでした。

それから、自分は仲良くなるヒントを求められるようになりました。
しかし、そこからがさらに複雑なのです。
そこに、また知りもしない数人の人間がまざり、独自に独り言をするようになりました。
人気ものは帰ってきたその人でした。

厄介なので、その空想の会話相手に、仮の名前をつけましょう。
あの人の名前は、きっと「マ」です。

“マ”はそれからなかなか自分の質問や要求を聞く事がなかった、
いいえ、聞きづらそうにしているか、聞いたとしても
たまたま、と思えるような頻度になっていったのです。

僕は思いました。
“この中に“マ”の現実での知り合いがいる”
と。

それからさらにギクシャクしはじめました。
僕は“マ”と以前にもまして、さらに仲良くなりたいと思いました。
しかし“マ”は以前、はっきりとそのことを断りました。

“マ”はそのページにくる常識的な人々とよく言葉をかわし、よく笑いましたが。
それでもたまに、僕の要求や、冗談に反応を見せる事がありました。
しかし僕にはどこかでわかっていました。
わからなければならないとおもっていました。

“マ”の仲良くなりたい人が、この中にいる。

しばらく僕の相手をしていたようでしたが
僕がさらになかよくなりたいというと、微妙な反応があり、
やめたい、というと、引き留めるような反応がありました。

しかし、次第にそのジレンマに耐え切れなくなり、僕は遊ばれているのではないかと思うようになったのです。
日常の疲れがたまりにたまり、愚痴や、悪口もふえました、
とうとう耐え切れなくなり、批判ばかりするようになりました、
いつ嫌われるか、試していたのかもしれません。
最後が近い気がしました、
最後が何かは、知りませんでした。

緊張の糸がきれたころ、僕はそれまで、
“マ”が本人の仲良くなりたい人とかかわるのを嫌がり、
その人の悪口ばかりをいいました。

きっと“マ”は耐えきれなかったでしょう、
しかし、自分は今の関係がわけがわからず、耐え切れずいいました。
“マ”大丈夫だ、俺がみてるから、話してみな、と。

それから“マ”は徐々に、さらにその人と打ち付けるようになったようでした。
その人は、大勢の中にまぎれて、たまにしゃべるくらいしかしませんでしたので。
“マ”の反応でしか、その正体はわかりませんでした。

しかし、自分は小説を書きたいこともあり、いらいらもつのり、
とうとうその状態が耐えきれなくなりました、
目の前で親しくされるのは、
我慢の限界でした。


そして、最後にいったのです。
“マ”
僕は、ほかの人と仲良くなるところを、見たくない、
これ以上そんなものを見せるのなら、仲良くなったあとに、その結果だけおしえてくれ。
“異性”との関係ですから、それが当然でしょう。

数か月後、“マ”は返答をくれました。
モザイクがかった風景に、二人の人物の背後からとられた写真です。
僕は、そういった構図の写真を要求した覚えもあります。

もはや確かめるすべはありません。
それをどうこういうつもりもありません。
僕は、本人の望み通りであればいい、
ですが、
迷惑をかけたことだけが気がかりです。

最後に背中を押したのも、偶然でしょうし、
最後に要求したのも偶然でしょう。
最後に約束を破ったのも偶然でしょう。

数々の悪事の中で、記憶のほとんどが薄れて消えていきます。
記憶をどう取り扱ったらかいいのかも、
今のところ分かりません。

ですが、そんなことはどうでもいいです。
どうしても、真相をしりたかったこと、迷惑をかけていたのに、それを迷惑と思えなかった事、
それでも、数々の偶然に対して、最後に一言言葉を残す事が許されるのなら、
あの人が幸せでありますように。

それから、僕が知らない真相は誰も知るわけもないでしょうし、
このお話を聞く方は、たった一つだけ覚えておいてください。
僕が心の病で療養中だったことを。

どうかこの気持ちの悪い話しを、
ただの偶然、あるいは妄想が極端に進んだ結果だとして、どうしても吐き出せないときは、
紙屑にかいて、ゴミ箱に捨ててください。

イマジナリーフレンド

イマジナリーフレンド

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2018-06-24

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted