蜂の少年

甘いあまい蜜を吸うよ。
僕は、サイアクな蜂の子供。誰の気持ちも、分からない。
今日も近所の同級生(まさおくんと言うらしい)を刺し殺してきた。
ザマをみろ。
僕は、世界が憎く、そして、嫌いだ。
理由なんて、聞かれても、答えない。
どうせ奴らには、分からないから。
僕の脳味噌(頭の中)のことなんて、分かるはずがない。
アイツらは、俺よりオトッテるんだから。


今日も、狂っている。
俺(僕か)の頭の中は狂っている。
誰にも分からない。
誰に俺の気持ちが分かる?
(俺は)僕は独りぼっちだ。


今日、一人の少女と出会った。
真っ白な奴だった。
まるで死人のようだった。
俺は、そいつに話し掛けてみた。
返事は、なかった。


昨日の出来事が頭の中から離れない。
あの少女の名まえは何だろう。
何で、死人のようなのだろう。
話し掛けても、返事がないのだろう。
気になって、気になって仕方がなかった。


俺は、考えないようにした。
寝ることにした。
何故だか、考えるといけないような気がした。
自分にとって、考えると
苦しいこと。確実に、苦しくなること。
何故だか、息がしづらくなって。
呼吸が、止まって。
だから、考えない。何も。寝ることにする。


二日たった。
あの少女は、まだあそこにいるのだろうか。
あの場所。僕と少女が出会った公園。
思えば、あの出来事は本当に現実だったのだろうか。
夢ならばいい。無視されることなんて、
苦しくて苦しくて堪らないから。


僕は、泣いていた。
声も出さずに。目の中から水が流れ出てきて、
だから放っておいたら、自然と垂れた。


地面に落ちて、吸収された。


誰も、俺に触れるなっ!
触るな!!
心に触ろうと、するな。
記憶の中で、頭の中の少女が、笑っている。
俺の方は、見ずに。


泣いた。泣いた。ずっと、号泣しつづけた。
胸が苦しくて、嗚咽が止まらなくて、
傍には誰もいなくて、何もなくて、
何処かへ行きたくて、檻の外へ出たくて、
解放されたくて、じめじめとしていて刺々しくて、
儚げで、脆くて、崩れ去りそうで、
どうにか掴んでいたくて、
俺は、固まった。


完全に、時間が停止した。
心が動かなくなって、受け入れなくなった。
誰か、あの少女を、連れてきて。


春が来た。
周りのはち達は、幸福そうに、温かそうに、太陽の光を浴びていた。
俺は、木に出来た穴の中に身を潜ませて、
誰も、存在を意識する者はいなくなった。
泣いていた。
何日もたっても、涙は乾かなくて、そのうち、心は壊れて
涙だけが自動的に流れるようになった。
それでも、自分は待ち続けた。
もう、少女を思いつづける事だけが、
自分の人生だと気づいていた。


だから早く来て。
名前も知らない女の子。
僕の隣へきて。
そうしないと、僕、死んじゃうよ。


少年は、そう言って、目を閉じた。


何時間経っただろうか。少女は、その声を聞いて。
彼(蜂)の元へと辿り着いた。
彼女は、もう何年も前から蜂の存在を知っていて、
けれど、回避することはできない運命があって、
彼の元へは辿り着けなかった。


けれど、いま彼女の前にはなんの壁もない。


探し続けていた。
あの日、あの公園のベンチで座っていた時から。


少年は自殺しようとしていた。
消極的な。
それを止めるべく、少女は現れた。


彼の前まで。

蜂の少年

蜂の少年

突然、思い付きました。蜂の少年の話です。 いちおう、恋愛もののつもりです。 掌編ですが、読んで頂けると、幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-09-20

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