霧
「死ぬなら、こんな霧の日が良いよな。」
私もそう思う
濃霧と肌寒さの中で溶けたい
薄紫と、弱い青に包まれて
「霧の日に吸う煙草って、美味しいんだよ。」
うん
笑ってみた
この人、無邪気なのかな
結局わからない
同じことを思うのに、わからない
この人、霧の色してると思う
赤い血が流れてるくせに、こんなにも白くて、青い
こうして枯れた声を見てると冷たいのに、私より温かい
横向いたらいなくなってたりして
咳払いを聞いた
たしかに硬い音がした
「溶けないよね。」
安心したら、口から漏れた
「何が。」
私が今考えてたこと、いなくなってたりして…ってこと話すと、ははは、良いなそれだって
感情とか共感とか、期待とか、結局弱いんだな
霧くらい細かくて、なんでも包んで濡らして、太陽から逃げるように消えてしまう
「また出てくるけどね、霧は。消えるわけじゃないでしょ。」
「その度に、溶けちゃう人が出るかもね。」
「うん。」
溶ける人は溶けて、出てくるときに出てくる
お天気屋さんだね
霧