闇に舞う桜
布石
36-01
「もう出来ないよ!」大きな声で空を見上げて叫ぶと、隣の男が「これ位の事で、音をあげていたら何も出来ないぞ!二千年迄には目処を付けないと負けだよ!」と気合いを入れる様に話すが時間は真夜中。
若い男は木檜慎治三十三歳、もう一人は京極憲弘、彼は定年を過ぎた年齢に見えるので、上司かと思うがこの男は契約社員だ。
木檜は大手のコンビニエンスストア、ハピット本部の正社員、今夜は遅くまで田舎の農家を訪問して、契約が終わって出て来たのだ。
「木檜君はこれから、どんどん出世する。私なんか捨て駒だから、今日でこの家に来る事も無い、開店の時に地主さんにお祝いを言うと、もう店にも自宅にも顔を出す事も無い」と虚しい仕事だと話す。
「私も似た様なものですよ!この地区に未だ未だ出店させなければ、成らないのですよ!」
「私はこの地区からは今夜で消えますが、後は山田さんと、小南さんが何店舗確保出来るかですね」その様な話をしながら、二人は田舎の道を車で走り去って行く。
関西には(ラック)と云うコンビニエンスストアが、勢力を持っているが数年前から関東を拠点とした(ハピット)の関西進出が始まった。
今回木檜はこの地区を任されて、本部から時々やって来て、契約社員が纏め上げた店舗契約の仕上げにやって来る。
出店企画課の所属で、店舗が出来れば直営にするか、フランチャイズにするかはその後検討される。
拠点の倉庫を中心に最低でも、一台の配送車が巡回出来る場所に出店出来れば、及第点が貰える。
理想はこの地区専属の総菜工場弁当工場、サンドイッチ工場等、日配品の供給をこなせる店舗網展開が完成した時が勝利と云う事に成る。
京極達契約社員は、めぼしい土地、マンション、空き店舗を探して地主との契約を取り付けるのが仕事だ。
土地の大きさ、出店出来る店舗の規模、場所が予定の範疇に在る事が条件と成る。
京極達契約社員は、一地区で一店舗出店すれば姿を消す。
それは地主とのトラブルを避けるのが目的と、店舗運営課の手に渡ると自分達の仕事が終わる。
店舗運営課は、出店した店舗の売り上げと利益をどの様に上げるかが手腕に成る。
店舗運営課は嫌われて幾らの仕事、出店企画課の京極達は喜ばすのが仕事の様なもので、与えられた予算をいかに少なくするかも、能力査定の対象に成る。
勿論出店の候補地は地元の不動産店、大手の建設会社、その他色々な処に情報網を張り巡らせている。
(ハピット)の出店に伴って、金融機関も建設会社も出店出来そうな場所の提供、情報を伝える。
関西の企業もこの機会に(ハピット)との関係の構築に動いていた。
その中でも、共和建設と共和住宅は連携して、関西の出店をチャンスと考えて、関係の構築に力を入れていた。
大阪地区で(ハピット)と関係の深かった持田を神戸の支店長に一昨年から置き、体勢を整える共和住宅。
共和住宅の店舗流通課の福永誠二も、自分の客の中で(ハピット)の出店のお眼鏡に叶う場所を捜していた。
共和住宅は関西の(ラック)とも関係が有るので、成るべく刺激を避けて担当をすみ分けしていた。
福永はその中で(ハピット)の出店の方に配属されたのだ。
出店計画の中心に、土地とかマンション等、コンビニに適した場所を捜していた福永の目に止った物件が在った。
急ぎ調べる福永に、土地の持ち主の阿部彰次は「残念だったね、あの場所は私の相続対策で、マンションを建設する事に保々決まったよ!」の返事が返ってきた。
自分は店舗流通課だから、マンションは別の課の仕事。
阿部とは数年前に店舗付きマンションを建設して貰って面識は有った。
今建設予定の土地の開発は、もう数年先だと半年前に話したので、まさかとは思ったが、ライバルのダイヤ建託の営業に先を越されてしまった様だ。
早速阿倍の自宅に向かう福永は、そこで驚く事実を聞いてしまった。
一階の店舗にコンビニを誘致する話が進んでいると言うのだ。
(ハピット)?(ラック)?と尋ねると、全く異なる九州を拠点にしているコンビニ(NOZOMI)だと聞かされて、驚いてしまって事務所に戻る福永。
もう、話が相当進んでいると思われたが、一か八か(ハピット)の出店企画課に電話をした。
木檜慎治が偶然に電話に出ると事情を聞いて、その地区なら今丁度手の空いた京極憲弘さんが居ますから相談して下さいと話した。
木檜は課長の安西に現場の地図を見せて、場所の説明と経緯を話した。
安西は地図を見ると「木檜君、この場所は今回の拠点に出来る場所だよ、どの様な手段を使っても良いから、落とせ!」と檄を飛ばした。
「この近くには(ラック)の地域一番店が在りますが、大丈夫でしょうか?」
「何を弱気な事を、我々の関西進出の核に成る場所が何カ所も在るが、この地域ではこの場所を押さえて(ラック)と勝負だ」と熱が籠もった。
この場所で(ラック)に勝てれば、一気に制覇に拍車がかかると、気合いが入った。
その気合いは、店長の人選にも反映されて、直営店にする方向で検討に入る。
店舗運営部だが、逆に保険を掛ける事も視野に検討をするのだった。
負けても立ち直れる様に、フランチャイズの人の準備も怠らないのが(ハピット)の作戦だ。
丸菱銀行に勤める四十三歳の近藤久三も、銀行員の仕事に限界を感じていた。
顧客廻りに明け暮れて、一日が終わって空しい日々を過ごす。
融資を希望する商売人は、融資が出来ない職業とか業績が悪く本部も上司も許可しない。
その影響も有って、商売を廃業する顧客も何度と無く目の当たりにして、嫌気が毎日増していた。
そんな時、関東のコンビニエンスストア(ハピット)の関西進出のニュースを目にする。
条件は五十歳迄の夫婦で働ける人大歓迎の文字。
妻の昌子に、その話をすると「毎日、貴方の愚痴も聞き飽きたわ、条件が合えば脱サラでも良いわ!」の言葉に資料を取り寄せる近藤。
人間は不思議な動物で、明日の夢が出来れば急に元気に成る。
最近では「近藤さん、今日は張り切っていますね」と若い女子行員に言われる様に成っていた。
競い合い
36-02
資料を取り寄せて、読みながら「千五百万の供託金を払って、権利を取得するらしい」と久三が言うと「返ってくるの?」と念を押す様に尋ねる晶子。
「二十年後に少し利子が付いて戻る様だ」と読みながら答える。
「利子が付くなら、貯金と変わらないわね、良いのでは?」と食事の片付けをしながら話す晶子。
数日後結局二人は、申し込む事にして書類を書く事に成った。
子供が早かったので、既に手が掛らないので決断出来た部分も大きい二人。
数日後、説明会に来て下さいの手紙を受け取ると、久三は天にも昇った気持ちに成ってしまった。
その姿を見ている晶子には、今更辞めとは言い難い状況に成ってしまった。
先日実家に帰った時に、両親に大反対をされてしまったのだが、晶子は口に出す事を躊躇ってしまった。
沢山失敗した人を知っていると、大反対をされて意気消沈の晶子。
コンビニ経営で身体を壊した人、夫婦の仲が冷えてしまった人を沢山聞いたと反対をされたのだ。
だが有頂天の久三には言出せる筈も無く、口を閉ざす晶子。
二人には公務員の息子久司、大学を今年卒業する娘昌美が居るが、就職が決まって独立をするので、失敗しても気分的には楽なのだと自分に言い聞かせる。。
一方福永は上司から(ハピット)の本部から相当な圧力がかかったのか、どの様な手段を使っても良いから、その場所を落とせの命令が下る。
福永は(ハピット)の契約社員京極を連れて阿部彰次に挨拶に向かう事にする。
しかし、彰次は福永の訪問を拒絶して会おうとしなかった。
彰次は既にダイヤ建託との話が進んでいるので、今更共和住宅が割り込むと話が混乱するから会いたく無かったのだ。
福永は彰次の息子彰彦に話をして、打開策を考え様とした。
以前の建物も彰彦の口添えも有って、彰次が相続対策を考えたのが切っ掛けだった。
彰彦には姉が二人居て既に結婚をしているが、彰次の財産を狙っているのは、彰彦には良く判っていた。
彰彦にも子供が二人、姉昭子と里子にも各二人と三人の子供が居る。
彰次に相続が発生すると、妻華子と三人の子供で相続をする事に成るが、それぞれに伴侶が居て、子供も最近結婚をしているので複雑に成っている。
里子の娘の結婚式では婿の親戚が挨拶で「資産家のお孫さんを頂戴しまして。。。。。」と公然と言う始末に彰彦は呆れていると、妻の美子が耳打ちをして恐い顔に成っていたのだ。
彰彦からの進言は、共和住宅がコンビニの大手(ハピット)を連れて来ると言う話。
福永は京極を伴って彰彦の元を訪れて、破格の家賃と建設協力金を提示したのだ。
ダイヤ建託の岸は、五階建てのマンションの建設を提案して、一階には良い店舗を連れて来て誘致しますよとしか彰次に話していないのに、いきなり好条件のコンビニを連れて来たので、流石の彰次も息子の話を聞かなければ成らなく成った。
福永はこの時とばかりに、マンション建設を根本から自分の共和住宅にしてしまおうと話を進める。
だが義理堅い彰次は、簡単にはその条件には乗らない。
彰次は「福永さん、既にダイヤ建託さんに殆ど決めているから、今更変更は出来ないよ」と断る。
「我々にも時間を下さい(ハピット)を中心とした計画を作成してきますから、しばらくお待ち下さい」と時間稼ぎをした。
京極は「当社は日本一のコンビニです、阿部さんの土地に店を開けば地域一番店に成る事は確実です、福永さんと良い計画を持って参りますから、しばらくお待ち下さい」と丁重に挨拶をして帰った。
先日も田舎の農家に日参して契約を取った京極は自信が有る。
特に物腰が柔らかく下手に出るので、年寄りには受けが良いのだ。
(ハピット)の契約した農家の畑は、道路に面しているが農地調整区域で、店舗は出店出来ない場所だが、色々な抜け道を使って出店契約をしてしまったのだ。
先日の農家は信頼している農協の職員を同行させて、言葉巧に説き伏せてしまったのだ。
一度契約が終わると、失敗しても殆ど損は発生しない絡繰りが、関係会社の間で取り決められている。
販売が伸びずに閉店に成っても、損をするのは地主で、関係各位には全くの損失は出ない仕組みに成っていた。
今回は田舎の出店では無いので、閉店は考えられない。
特に関西の山陽本線で新快速の停車する駅を中心とした出店は、生命線に成るので今回の店は絶対に確保したい場所なのだ。
聞けば(NOZOMI)が出店を考えていると云うので、絶対に負けられないと気合いが入った。
コンビニでは五番手程の(NOZOMI)が進出すると、尚更厄介に成るので阻止を考える。
だがダイヤ建託も大きな建設物なので、ここは負けられないと必死に成って、一気に仮契約まで進めようとしていた。
その日から毎日の様に、京極と岸が交互に父親の彰次と彰彦の元を訪れる。
彰次は岸に(NOZOMI)の契約金と賃貸料を提示されて、殆ど決まる寸前まで進んだが、彰次は息子に相談して良い結果を出すと、後一歩で後日に成った。
この後一歩が、逆転を許してしまうのだから、運が最後には決め手なのかも知れない。
彰彦に主接触していた福永と京極は、彰彦の「親父は岸さんと馬が合うようだ」の言葉に危機感を感じて、本部に相談して奇策と云うか強引な作戦を使ってしまったのだ。
(ハピット)は共和住宅とも取引をしているが、地域によってはダイヤ建託とも取引を行なっていた。
本部の安西課長は部長の山下に「今関西地区でダイヤ建託と出店で争っています。圧力をかけて我が社の出店にして貰えませんか?」と頼み込んだ。
山下は「それを頼むと、弱みを握られてダイヤ建託に譲らなければ成らない物件も出来るぞ」と言った。
「部長!今回の地域の要に成る場所です。どの様な手を使っても当社には必要です」と説いて頼み込んだ。
「安西君がそれ程言うのだから、間違い無いのだろう!今回はダイヤさんに頼み込むとしよう」
そう言うと、山下は笑みを浮かべて安西の肩を叩いた。
失敗すると責任を取れと云う意味だと、安西は肝に銘じて深々とお辞儀をした。
逆転の策謀
36-03
山下部長は井上常務に安西の希望を持って、頼み込みに行くと井上は渋い顔をしたが、山下部長の願いを聞き入れて近日中に折衝してみると引き受けた。
井上常務は態々ダイヤ建託の本社に足を運んで頼み込むと、当然交換条件のお土産を持って行った。
数日後ダイヤ建託の支店長に、本社の専務から「君の部下で岸君が今手がけている阿部彰次さんのマンションが有るだろう?」
「はい、御座います五億程の物件で我が支店でも過去に無い建物で、もう契約間近で御座います」と電話の前で揉み手状態の川瀬支店長。
「そうか、大きな物件だな!中々岸ってセールスも仕事が出来るのだな」
「はい、最近では支店ではトップの営業です」
何故本社の専務の耳に入ったのだろう?誰かが囁いて妬みを持ったのか?その様な事を思いながら、次の言葉で耳を疑ってしまった。
「申し訳無いが縮小して共和住宅に一部譲って(ハピット)を建設させてやって貰えないか?」
「えー専務、今何とおっしゃいましたか?」声を大きくした川瀬支店長。
「何度も言わせるな、これは我が社と(ハピット)の今後の事を考えての事だ」
「でも岸は納得しませんよ!我が社は歩合給が大きいのですから、怒ると思います」
「それを収めるのが君の手腕だろう」
「と言われましても。。。。。。」と言葉詰まらせる。
「共和に譲っても三~四億には成るだろう?上手に事を収めれば、君にはもう少し大きな支店の長も考えている。頼むよ!」
「岸を今変更すると、阿部さんは気を悪くされるでしょう?」
「君は馬鹿か!今のビルの建設が終わって、竣工したら見せかけは栄転で転勤させれば良いのだ。事情を知った男を置いておくと、将来(ハピット)と揉めた時に飛び火が来る」
尾藤専務は(ハピット)が各地で地主と揉めている事を、度々耳にしているので今回も懸念を持っていた。
翌日川瀬支店長は岸に特別用事も無いのに、他支店のモデルルームを偵察に行って、阿部さんのマンション建設に役立てなさいと京都に行かせた。
自社のマンションが偶然京都で完成したので、タイミングが良く岸もその気に成って出掛けて行った。
川瀬はその隙に、阿部彰彦に会う為に共和住宅の福永に連絡をして、遭遇を装って行こうと作戦を立てた。
息子の彰彦に(NOZOMI)の出店を考えるなら(ハピット)にした方が良いと説く為に仕組んだのだ。
九州から全国進出を考えるコンビニよりも、実績も有りこれから関西進出の(ハピット)が良いと両方から説く予定で阿倍彰彦の事務所を訪れる。
介護用品の通販を五年程前から始めている彰彦、これから二十一世紀に成れば老人が増加するので、介護の時代だと思い独立して始めたのだ。
川瀬支店長が最初に行って「岸から聞いたのですが?(ハピット)から出店の話しが有るそうですね」そう言って切り出した。
「親父がお宅の岸さんを気に入って、持って来られた(NOZOMI)で良いと云うのだよ!正直この辺りでは全く見ないから大丈夫か?心配しているのですよ」そう言いながら微笑む。
「最近まで知らなかったので何も申しませんでしたが、地主様の事を考えましたら(ハピット)が良いと思います。確かに(NOZOMI)も悪くは有りませんが、問題外だと思います。それと(ハピット)は関西進出に力を入れていますから、今なら家賃も、建設協力金も奮発すると思いますね」
「ダイヤ建託の方がライバルの肩を持つ様な事を、そこまでよく言われますね」
「地主様の事を考えて、アドバイスするのが私達の使命ですから、当然ですよ」調子の良い川瀬支店長。
「それは営業の鏡の様な言葉だ」笑顔に成る彰彦。
「今なら、相当良い条件で建設が出来ますので、阿部様も大変お得でしょう、正直(NOZOMI)ではその様な条件は出ないでしょう」そう言って煽った。
しばらくして福永が京極と一緒にお邪魔したいと、連絡をして来る。
彰彦は(ハピット)がどれ程の条件を出すのか?聞いて見たい気持ちに成っていた。
建設協力金、家賃、権利金はこの時まだ彰彦は全く聞いていなかった。
(NOZOMI)の価格は既に聞いている福永達は、先ずは息子のド肝を抜く事を考えている。
従来は五階建てのマンションの一階に、コンビニを入居させる事に成っているので、建設資金も五億以上必要だが、別棟で建設する事に成れば建設資金も三億程度に成る。
開口一番「建設協力金は福永さんの建築費の半分をお出しします」と京極は大きくぶち上げた。
驚き顔の彰彦に「家賃は破格の八十万を予定しています」と続けて語る京極の顔は勝ち誇った様に見える。
彰彦は(NOZOMI)の家賃が頑張って月六十万程度だと、既に聞いているので益々驚き顔に成った。
京極は続けて「私達は日本一のコンビニです。調査網も万全で阿部様の土地に出店出来ましたら、地域一番店に成れると調査済みです。その為破格の家賃の提示をさせて頂きました」強気の言葉が続く。
「近くに(ラック)が在り、いつも客で賑わっていますよ!大丈夫ですか?」彰彦は心配顔。
「大丈夫です、酒も煙草も開店時は置けないのですが、直ぐに許可が出ると当局とも話しが終わっていますので、半年後には(ラック)を上回ります」そう言って胸を張る。
「それ程、良い環境に土地をお持ちだと云う事です。ダイヤ建託に総てを任さずに、路面の土地を(ハピット)単独にされる方がお得です」福永も援護射撃をする。
「権利金は家賃の半年分ですので、実質建築費の五千万の半分は建設協力金で、約五百万は権利金で残金は約二千万ですよ!こんな事案は初めてです」続けて福永が煽る。
だが、建物自体倍近い値段が提示されている事に気が付かない彰彦。
話しは和やかに終わって、父に一度話してみますが、義理堅いので一度決めた事を変更するか判りませんと彰彦は言った。
裏取引
36-04
ダイヤ建託では岸には伝えないで、阿部が建築予定のマンションを設計変更してしまう作業に取りかかっていた。
(NOZOMI)の本部には(ハピット)が提示の金額を伝えて、太刀打ち出来ないと川瀬支店長が岸に断りも無く伝えると(NOZOMI)の担当者は「裏取引をしましたね!」笑いながら電話口で言った。
川瀬支店長は否定したが「九州ではこの様には成りませんよ!貸しを作っておきましょう」捨て台詞で電話を切った。
場合によっては(NOZOMI)の担当者は後日この話を岸に教えて、混乱させてやろうと考えた程。
支店長が連絡をした事で、経緯を察知していた(NOZOMI)の小坂だった。
自宅に帰った彰彦は彰次の機嫌を見計らって(ハピット)の話を始めると、関東の方では相当多くの店舗を出しているらしいなと、話しに乗ってきた。
彰彦は昼間に聞いた条件を彰次に話すと「流石に日本一の会社は違うのだな」と(NOZOMI)の条件を知っているので計算をして「大変な違いに成るな!」そう言って条件の良さに触手を見せた。
そして「どの様に断るかな?岸君には悪いな」と義理堅い言葉を言う。
「実は支店長もコンビニ誘致の方が良いと電話で話していたよ!」
「ダイヤの支店長が?岸は売り上げが欲しいので、無理をしているのだな」納得した様に言う彰次。
その後二人は建築費の計算と、月々の家賃の違いを電卓で弾いて、勝手な皮算用をして納得をしていた。
週明け支店に来た岸は、京都のマンションを見学して来て「支店長!京都の我社のマンションは阿部さんの今度建築予定の建物より、一廻り小さいですね!あの建物よりも大きなマンションが出来ると思うと、わくわくしますね」と嬉しそうに言った。
「岸君!丁度良かったと思うよ!阿部さんが金曜日に今の図面より一廻り小さいマンションの図面を造って欲しいと依頼が有ったのだよ!」
「えーそれはどう云う意味ですか?」驚き不思議そうな顔で尋ねる岸。
「大きな道路に面した場所は(ハピット)を建てる様だな」
「え!そんな事今初耳です」顔を紅潮させて驚く岸。
「(NOZOMI)よりも相当良い条件が出たらしいな!」
「幾らですか?」
「総ては知らないが、聞いた話だと建築協力金も相当出て、家賃が八十万だと話されたな」
「家賃が八十ですか?そんな金額嘘でしょう?私が出した家賃でも破格ですよ、それよりも二十も。。。。。。」と言葉を詰まらせて「兎に角阿部さんに聞いてきます」そう言って青い顔で支店を出て行った。
「岸!新しい図面届いているぞ!」支店長の声が聞えないのか、振り返らないので若い社員に後を追い掛けさせる。
駐車場から出る寸前に追いつくと「これを持って行かなければ、話しに成りませんよ」若い社員に言われて「何だ!」恐い顔で尋ねる岸。
「阿部さんに頼まれている図面ですよ」そう言うと、受け取って後部座席に放り投げる。
そのまま駐車場を出て行く岸は、頭の中が混乱して冷静な判断力を失っていた。
自分に取って一億の売り上げ減は、妻や子供と約束した臨時ボーナスを期待出来るぞ!の言葉が大きく減る事に成るからだ。
歩合給は一定の売り上げを超えると急上昇するので、五億の売り上げは大幅なボーナスとしての手取りに成る。
アポもしないで自宅に行くと、彰次の妻華子が驚き顔で「岸さん、慌ててどうされたの?」と言う。
「建設予定のマンションの件で。。。。。御主人は?」言葉もはっきり言えない。
「畑に行っていますよ、マンションって?今計画中の?」
「変更されたのですか?」
「昨日彰彦が来ていたわね、でも私は何も知らないわ」と呑気に話す。
岸は直ぐに阿部の自宅から飛び出し、マンション建設予定の畑に向かった。
畑に行くと直ぐに阿部は車を見つけて駆け寄ると「岸君!悪いな!早速図面を持って来てくれたのか?流石に対応が早いな!」一気に喋る彰次。
「あっ、阿部さん!その件でお話が有るのですが?」
「判った!悪かったな!急に決まってしまって!まだ他にも土地が在るから、そこでは岸君の顔を潰さない様にするから、今回は目を瞑ってくれよ!」一気に断りの言葉を並べられて、岸も何も言えない状況に成った。
彰次はそれを見計らって「今度のマンションが完成したら、あそこのマンションの横の土地に、もっと大きなマンションを建設しよう」そう言って遠くを指さした。
確かに岸は地積図面では、この近くにまだ二箇所で一千坪以上の土地を持って居る事を知っていたので「そうですか?次のマンションの建設をお考えですか?」急に機嫌が良く成る岸。
彰次も岸の顔色が変わったので、安心した様に「家に戻るから、来てくれるか?」
ようやく話しに成りそうだと彰次も岸を自宅に招く事にした。
結局新しい図面をテーブルに開いて、始めて見る図面を知っている様に話す岸。
京都で見てきたマンションと全く同じ大きさで、自分の知識で充分説明が可能だった。
まるで今日の為に京都に行かされたのかと錯覚する程だった。
翌日川瀬支店長に、共和住宅の神戸支店長持田が話しの成立を祝って、一席を持ちたいと誘ってきた。
担当者の知らない世界で、裏取引が行なわれていた。
(ハピット)の安西課長が東京から来て会合が行なわれた。
有馬温泉に会合の席を持ち、お骨折り頂ましてと御礼を行なった。
勿論寸志と云う名目で、川瀬の懐にお金が渡り、座敷に呼んだコンパニオンは新地のホステスで、持田の行きつけの店の「ホワイティア」のママ三田麻紀が準備した女性だ。
安西課長、川瀬支店長のお気に入りの女性は、そのまま朝まで二人の部屋に泊まった。
持田保は共和住宅でも若手の支店長で、将来を嘱望されている人物で、この様な露骨な接待を行なって相手を封じ込める荒手を使う人物なのだ。
勿論麻紀はこの持田と、お互いの利害の中での関係なのだろうとその場の全員は思った。
持田は五十代前半、麻紀は三十代前半の美人、雇われママだと思うのだが持田でも麻紀のスポンサーが判らないのだ。
疑惑の地鎮祭
36-05
阿部親子の知らない世界で話しが纏まり、実際の当事者、ダイヤ建託の岸は工事費が一億以上減額されたマンション工事で納得する事に落ち着いた。
共和住宅の福永もハピットの京極と、ダイヤ建託を気にせずに交渉に入れる。
元々三千万程度の建築物を五千万で建設するので儲かると思うが、この差額の中に様々な経費が隠れている。
建設する阿部には建築費の大小は関係無い、今後の家賃収入のみに目が向かうので話しがし易い。
「同時に建設は出来ませんよ!ダイヤさんは大掛かりな工事に成りますからね」福永が言う。
「当社の工事なら、三ヶ月も有れば大丈夫ですよ」京極も早い出店を促す。
しかしここでも、ダイヤ建託の思惑と共和の思惑は大きく隔たりが生じた。
岸は彰次に電話でコンビニの建設を先にと聞かされ、資材置き場等マンション建設の為に使う予定が狂った。
岸は翌日マンション建設に伴う資材置き場等を、近所で借りるとこの様に成ると法外な見積書を持って彰次宅を訪れた。
見積書を見た彰次は仰天してしまい、コンビニの建設は遅らせると態度を一変させた。
流石に福永も京極もそれ以上の強引な条件に行き詰まり渋々納得をした。
丸菱銀行の近藤は(ハピット)の研修の申し込みをすると同時に、支店長に辞表を提出、支店長は内心喜びながら「近藤君、脱サラをするとは思い切ったな!君なら何かすると前々から思っていたのだが(ハピット)の経営とは凄い!これから関西に多数出店だと聞いている!大きな一歩だな!」と褒め称えて辞表を受理したが、内心は馬鹿が一人消えて人件費が助かったと喜んでいた。
二ヶ月後、近藤夫婦は東京へ研修に行く予定だ。
翌月早々に退職金から一千五百万の供託金を払い愈々独立の準備に入った。
暇が有れば近くのコンビニの見学に向かう近藤夫婦。
本部の安西課長は木檜に「近くの銀行を退職した近藤とか云う夫婦を保険で、阿部さんの土地に建てる店を任せるのはどうだ?」と話した。
木檜は「あそこは激戦地で、敵方の地域一番店が在りますので、直営にするのが妥当だと思いますが?」
「だから保険だよ!近藤が売り上げをもし伸ばしたら良いが、直営で失敗したら今後に影響が出るだろう?」
「でも、最近まで銀行の外交の人ですよ!難しいと思います」
「それを成功させるのが君達の腕だ!失敗しても立ち直せるから近藤にさせるのだ!」安西課長の強引な手法に反抗出来ない木檜。
新人の銀行マンにコンビニの運営は難しいと思うが、本部では最高の人材なのだ。
夫婦で小銭を持ち、学歴もそこそこで金銭の取り扱いに慣れている。
近藤夫婦はもう一つ本部が気に要ったのが、子供が大きくて全く手が掛らない事。
激戦地に出店して、勝ち取れば売り上げも見込めると研修で教え込んでその気にさせる事も忘れない。
研修を受けると、それ程乗り気で無かった妻の晶子でもフランチャイズの出店が成功する様に思えてくる。
研修とはマジックの様な物で、その場に居る人全員が催眠術にかけられた様に成ってしまうのだった。
本部の安西課長は最初の研修が終わる頃に、近藤夫婦に出店の地域を伝えて煽るが、阿部の土地に出来るとは教えない。
迂闊に教えて阿部と接触しても困るからだ。
良い場合と悪い場合が混在するので、地域は教えても絶対に店の場所、地主は開店の前に成らないと教えない。
シークレットにして、研修の結果次第で一番売り上げが見込める店を任せると伝えるのだ。
自宅から通勤が半時間程度の場所は確定だが、それだけなら範囲が広すぎて近藤達、フランチャイズの人には判らない。
店の完成までに数回の研修を行なうので、洗脳されてしまうのは間違い無い。
二ヶ月後ダイヤ建託の岸は誇らしげに、阿部彰次のビルの地鎮祭を仕切っていた。
規模は小さく成ったが、管内では一番大きな建物の建設なので鼻高々に成って、神主の詔を聞く予定だった。
「共和住宅の福永さんと、(ハピット)の安西様がお見えです」の言葉に振り返る岸。
「この度はお譲り頂ありがとうございました」の声が岸の耳に聞えた。
ダイヤの支店長川瀬と、岸の面識の無い安西課長の挨拶。
譲るってどう言う話しだ?規模を小さくした事か?岸の脳裏に残る言葉はその後地鎮祭が終わっても消えない。
共同での地鎮祭なので(ハピット)の関係者が来るのは当然なのだが、鍬入れの時にマイクで「(ハピット)本部、安西課長様」で岸は安西の存在を知った。
勿論木檜もこの中に居るのだが、下っ端で鍬入れには参加していない。
阿部親子は大手企業の人々に、歯の浮く様な世辞を並べられてご満悦で地鎮祭を行なっていた。
地鎮祭が終わっても岸は安西課長が、支店長の川瀬に丁寧に言った言葉が気に成って仕方が無かった。
マンションの敷地を削られて、大きなマンションが小さく成ったのに、譲ったって変な話しだな。
家では妻にボーナスの上澄みを期待させていたのに、減少して嫌みを言われて機嫌が悪かったのに、そう考え出すともう我慢が出来ない岸は、社内で事情を知っている人を翌日から探し始めた。
同僚が「新地のクラブ(ホワイティア)のママの事を支店長は最近よく話すな!」と岸に囁いたのだ。
以前は川瀬支店長の口から新地のクラブの話しは聞いた事が無かったので、岸は勘で(ホワイティア)が何か関係していると察した。
だが自分の給料で簡単に行ける店では無いので、得意先で同時に不動産の仕事仲間で遊ぶ事が大好きな東海林に適当な話しを作って誘う事にした。
女には目が無い五十代の東海林に、新地に凄い美人のママが居て、川瀬支店長が最近通っていると話したのだ。
探りあい
36-06
実際顔も見ていないが岸の話しに直ぐに乗る女好きの東海林。
実際は共和住宅の持田支店長の行きつけだったが、川瀬支店長はその宴席の後二度程(ホワイティア)に飲みに行っている。
麻紀の美貌と顔の広い事が大いに気に入った川瀬支店長だった。
川瀬には持田支店長の存在が邪魔で、あわよくば横取りも考えている程。
三回目に会った時に持田支店長との関係を尋ねても、お客様の一人ですよ!川瀬さんもご贔屓にして頂けるなら女の子は準備致しますと、はぐらかされたのだ。
ダイヤ建託と共和住宅はライバル関係で、会社の規模は共和が大きくダイヤは新々気鋭の存在で、近年は業績が鰻登りで株価もダイヤ建託が高い。
その様なライバル関係で建物を譲る事は岸には考えられない事なのだ。
会員制のクラブだが川瀬支店長の名前を言うと簡単に迎え入れて貰えた二人。
「ママさんは何方ですか?」そう言って早速店内を見廻す東海林。
一番年長の女性が「今夜は同伴で遅いですが、もう直ぐ来ると思います」と答えてボックスの奥に案内をした。
店内には一組の客が居るだけで、女性も三名程が二人の目に止っただけだ。
岸が時計を見ると八時半、まだクラブでは早い時間だと思いながらボックス席に座る二人。
五十人程の客が入れる店内を見て岸が「支店長は何度か来ましたか?」と尋ねると二度程だと答える女性の言葉を遮って東海林が「ママさんは美人?」といきなり尋ねる。
女性は黒服に川瀬支店長のボトルを持って来る様に伝えると、微笑みながら「多分新地では一二だと思いますよ!」と言った言葉に東海林は笑顔に成って岸に目で合図をした。
内心不安だった岸も東海林の機嫌を損ねずに良かったと、自分の勘の良さを心で笑っていた。
川瀬支店長が行く飲み屋は何処の店も綺麗な女性が一人は必ず居たので、岸は自分の勘を信じたのだ。
その後扉が開く度に目を移す東海林だが、肝心の麻紀ママは中々店には来なくて、十時前に男性と同伴でやって来た。
勿論持田支店長だが岸は面識が無かったので全く判らない。
しばらくして挨拶に廻って来るのを待ちかねていたのは東海林の方で、一目で麻紀を気に入った様子で岸に目で合図を送った。
「川瀬支店長にはお世話に成っています」と微笑みながら会釈をする麻紀。
三十代初めでこれ程の規模のクラブのママをしている事に驚く岸。
持田支店長は再三同伴出勤でスポンサーを調べ様としたが、上手に煙に巻かれてしまうのだ。
「ママさんは人気が有るので、中々相手をして貰えそうに無いですね」
「それ程では有りませんわ」微笑みながら言う麻紀。
「今も紳士の方と同伴で来られたので、我々の出る幕は無い様ですな」東海林は嫌みたっぷりに言う。
「先程の方ご存じ無いのですか?」不思議そうに尋ねる麻紀に「有名な方には見えなかったな」岸が持田支店長のテーブルを見て話す。
「同業の方だからご存じだと思っていましたわ」
「同業?」
「あの方は共和住宅の神戸支店長ですわ!持田さんですよ!」
「えー、共和の支店長ですか?知らなかったな!面識無いからな」
その後の僅かな時間で麻紀は、この岸昭夫が先日の密談の当事者では?と思い始めた。
その後席を外すと麻紀は持田の席に戻り、しばらくして逃げる様に持田が店を後にした。
すると麻紀は他の席に行かずに岸の席に戻って来て「支店長さん急用で帰られましたわ」そう言って二人の前に座った。
勿論麻紀がダイヤ建託の営業が来ていますよ、若しかしたら先日のマンションの当事者かも知れませんよと囁いていた。
一緒に来た東海林は麻紀を目の前に上機嫌、だが麻紀は何故か東海林には造り笑顔での対応で、岸昭夫に探りを入れ様と試みていた。
お互いが探り合いの様な状況に流石の東海林も「何か変な雰囲気だな?ママさん岸君の事、知っているの?」と尋ねた。
「いいえ、全く知りませんわ!」
「それじゃ、先程の支店長に頼まれたのですか?」
「まさか!その様な事は絶対に御座いません!」急に恐い顔に成って岸に言った。
その後話しが変わって麻紀の生まれは?の話しに東海林が変えたので、雰囲気が大きく変わった。
麻紀は関東の生まれで、関西には学生時代にやって来て、色々有って現在に至ったと適当な説明をした。
二人は閉店まで居て上機嫌で帰って行った。
麻紀は帰りに岸に小さなメモを手渡し、それには自宅の電話番号が記載されていた。
岸は東海林に見られる前にポケットにねじ込み、笑顔で帰って行った。
岸昭夫は自分の思惑とは異なり、美人の麻紀に好意を持たれたと勘違いして、当初の目的をすっかり忘れてしまった。
自宅の電話番号を教えてくれるとは、自分に好意が有るのだろう?とにやにやしていたが、もしかしてダイヤ建託の情報を共和住宅に?の疑問が急に芽生えてきた岸。
そうなると迂闊に電話が出来なく成るが?その日から数日麻紀の顔が浮かんでは消え、消えては浮かぶ岸だった。
だがその迷いも三日後、支店に掛った電話で打ち消された。
痺れを切らせて麻紀が会社に電話をしてきたのだ。
女性事務員が「岸さん、松山さんって女性からお電話です」と取り次いだ電話の受話器に麻紀の声が聞えて、舞い上がってしまう岸。
「岸さんから電話が頂けないので、私から電話をしてしまいました」
「松山さんって?」
「それは本名です!松山麻紀が本名です!驚かれました?是非一度お食事でもと思いまして、実は土曜日の昼神戸に行きますのよ!如何ですか?」
麻紀から誘われて悪い気はしない岸は、この際自分の疑問も確かめて見ようと、麻紀の誘いを承諾した。
土曜日は阿部の建設現場の測量の立ち会いが有るのだが、無視してしまった岸。
それ程岸には麻紀の存在が気に成り始めていた。
老人ホーム
36-07
「おばあさん!漸く糸口が見えてきたわ」麻紀が訪れたのは介護付き老人ホーム。
「ま、き、危ない事はお止し」辿々しく話す老婆はベッドに松山幸代とネームが有る。
「許せないの!おじいちゃんを。。。。。。」と言葉詰まらせる。
「ばかなのはおじいさんだよ。。。。」
「私は許せないの!」恐い顔に成る麻紀。
しばらくして、老婆と別れを惜しみながら麻紀は老人ホームを後にした。
「お孫さんいつ見ても綺麗ね」ヘルパーが見送りながら幸代に言う。
「芝居をし。ている」
「そうなのね!女優さんなの?テレビで見ないけれど綺麗な自慢のお孫さんね」
ヘルパーの小杉は先月から幸代の担当に成って、毎日の様に孫の麻紀を自慢するので楽しみにしていた。
今日初めて会って幸代の自慢が判る気がしたが、女優って感じでは無く水商売の臭いがした小杉秋子だった。
幸代の身寄りは今帰った麻紀だけで、現住所は新大阪のマンション住まいだ。
改めて身元を書いた書類を見る小杉は麻紀の職業欄に、芸能事務所と書かれているので、幸代の話が本当だったと確認した。
幸代が入所の時は確かに芸能事務所に籍を置いていたのは事実だった。
子供は先に亡く成って、孫の麻紀との二人だけの様だが、八十歳を越えている幸代は多少の惚けと足が不自由に成っている。
この日から秋子はこの老婆と孫に興味を持ち始めた。
翌日夜勤明けを利用して、マンションに向かった秋子。
見上げる様な高層で高級が一目で判る程の建物に驚くと、偶然とは恐ろしいもので麻紀が着物姿で出て来たので慌てて隠れる。
美容院に向かう為にタクシーを呼び寄せていた様で、麻紀が出て来ると同時にマンションの前に停車した。
知り合いの様で、簡単な挨拶の様に会釈をして乗り込む。
秋子はタクシーのナンバーと会社をメモに書き留めて、タクシーを見送った。
しばらくして、タクシー会社にナンバーから運転手を指名して呼び出す秋子。
その昔若い時は雑誌の記者をしていた秋子の好奇心が、この様な行動をさせていた。
車に乗り込むと上手に聞き出して、麻紀の勤め先が北新地の「ホワイティア」と云うクラブで、ホステスでは無くてママさんだと知った。
「若いのにママさんなの?」
「人気の美人ママですが、私がママさんを知って一年程ですね」
「パトロンの方がいらっしゃるでしょう?」
「殆ど毎日乗せますが、その様な方と自宅マンションに帰られた事は有りませんね」
結局秋子は麻紀がクラブのママをしている事実を掴んだのみで、他に収獲は無かった。
週末阿部のマンションの測量を適当な病気を理由にして立ち会わないで、麻紀の誘ったステーキハウスに向かう岸。
「お忙しいのに宜しかったのですか?」洋服に栗色の長い髪、着物姿とは全く異なる姿の麻紀。
スタイルが着物の時は判らなかったが、洋服に成ると腰の括れ、足の長さ、胸の大きさと手に取る様に判り、今更ながらのスタイルの良さと美人だと見とれてしまった岸。
「どうされましたの?」と言われて我にかえり「ママの洋服姿に見とれてしまいました」と本音を言う岸。
「このお店高いので有名ですよ!この様な高級店にお誘い頂いて、ママの様な綺麗な方と食事が出来るなんて、夢の様です」舞い上がる岸。
「岸さん!店以外ではママと呼ばないで下さい」
「じゃあ、何とお呼びすれば良いですか?」
「麻紀と呼んで下さい」
四十代後半の岸にはこの様な美人女性から誘いを受ける事が過去には無かったので、年甲斐も無く顔を赤くして店に入って行く。
予約をしているので店員が直ぐに大きな鉄板の前の席に案内をした。
岸はこの様な高級店なのに、殆ど満員状態に驚きながら席に座った。
「お飲みに成ります?」お酒を勧める麻紀。
「仕事中なので。。。。。」
「仕事柄、お飲みに成る時も多いでしょう?一杯位良いでしょう?私だけ頂き難いわ」
上手に勧められてビールを飲み始める岸。
食事の間岸は麻紀の身の上話を聞きたいので、絶えず昔の事を尋ねる。
麻紀は適当に話しを作って喋るが、持田支店長の話に成ると語気が荒く成って、同伴をする相手の事とは思えない感じがした。
酔っ払って岸は本来の自分が訪ねたかった事を思い切って尋ねる事にした。
「我社の川瀬支店長の事をお尋ねしたいのですが?」
「何かしら?」
「関東の(ハピット)の人とママのお店で会っていませんか?」
「安西課長さん?名前は聞いた事が有りますわ、持田支店長さんからね」そう言って微笑む麻紀。
麻紀は持田から(ハピット)の出店でダイヤ建託に世話に成ったので、一席準備して欲しいと依頼を受けて女性を派遣したのだ。
昔の伝手で芸能事務所に籍を置いているが、アルバイトで身体を売る女性が居る事を知っていたので、持田支店長の依頼に応えて送り込んだのだ。
実際には安西課長の顔を見た事は無いのだが、川瀬支店長は持田支店長と一緒に店に来たので知会い、その後川瀬支店長は一人で何度か店に来ている。
持田から聞いていたのは、関東の(ハピット)の安西課長とダイヤ建託の川瀬支店長に今回大変世話に成ったので、御礼で有馬温泉に招待をした。
女性を二名程都合付けてくれないか?相手は(ハピット)の安西課長とダイヤ建託の神戸支店長川瀬だ。
相手の名前を伝えないと絶対に引き受けない事は、これまでの経緯で知っている持田は正直に麻紀に伝えていた。
過去にも地主、大手の飲食店チェーンの専務、車のデーラー社長と数回持田の要望に応えてきた麻紀。
今回初めて同業者のダイヤ建託の支店長なので、麻紀は何か匂うと気を配っていたのだ。
麻紀の罠
36-08
麻紀には漸く待ちに待った組み合わせ(ハピット)と共和住宅に成ったのだ。
持田支店長は共和住宅では、若手で支店長に成ったやり手で、今の神戸支店の前は高槻の営業所長をしていた。
大阪支店で会議の後に店に行き麻紀と知り合った持田は、仕事とプライベートの両方で麻紀の店を使う様に成った。
勿論大阪支店の部長が、客で来る様に仕向けて持田を誘い込でいたのだ。
近畿エリヤでも一目置かれる支店長にのし上がっていた。
高槻営業所時代の事はもう遠い昔に成っている持田だった。
酔っ払った岸は「麻紀さんと持田支店長の関係が気に成ります」
「私は業界の不思議な部分が知りたいわ?」そう言って笑顔に成る麻紀。
「僕は麻紀さんに気に要られたのかな?」
「それはどうかしら?少なくとも今日は気に要られていると思うわ?」
「意味ありげな言葉ですね、麻紀さんの先程の質問、業界の不思議な事って何ですか?」
「ダイヤ建託さんの営業さんは歩合給でしょう?」
「そうですよ!基本的には歩合の部分が多いので、沢山入社しますが残るのは二割程ですよ」
「岸さんは有能なのね」そう言いながら、ビールを勧める麻紀。
持田が何故、ライバルのダイヤ建託の支店長に女性を準備させる程の接待をしたのか?
岸は自分の支店長の川瀬がライバルの共和住宅の支店長と、どの様な関係なのかが気に成っている。
麻紀は今日それを確かめる為に岸にモーションをかけたのだ。
「トップセールスに近い成績だったのに、大きな損失ですよ!妻も落胆しています」
急にぼやき始めた岸に「何か最近有りましたの?」
「私が契約寸前まで漕ぎ着けた案件が、減額されましてね!ショックですよ!でもそのお陰でママ、違った麻紀さんとこうして会えたのですがね」
麻紀はその話に目を輝かせて「それはショックよね!どんな話なの?もう少し聞かせて?」
「つまらない話ですよ!僕が約五億のマンション建設の契約を貰う寸前に約三億に減ってしまったって事ですよ!」大袈裟に言う。
「小さく成ったのね」
「違いますよ!三分の一を(ハピット)に譲ったからですよ」
「それを共和住宅が工事するのね!」勘の良い麻紀は直ぐに先日の接待の意味が理解出来た。
「鋭いですね!持田支店長が喋りましたか?」
「いいえ、仕事の話はしませんよ!」
「僕もコンビニを入居させる段取りにしていたのですが(ハピット)の条件が良すぎて負けてしまいました」苦笑いの岸。
麻紀は少し酔っている岸に詳しく場所、施主主を聞き込み、今日の目的は達成した。
この岸は充分使い道が有ると思った麻紀は、次の行動に移る。
トイレに立った隙に睡眠薬をビールに入れて、岸を眠らせる作戦に入った。
この男も持田と変わらない悪い男だと決めつけている麻紀。
食事が終わる頃には大きな欠伸が出ている岸。
知り合いの個人タクシーに乗り込むと「六甲山に酔いを覚ましに行きましょうか?」
車が走り始めると直ぐに睡眠薬の効果で、岸は熟睡状態に成ってしまう。
「石谷さん!例のホテルに向かって」と運転手に告げる。
「ダイヤ建託の営業さんですか?」
「そうよ!持田と競わせるのよ!必死に成るから面白いわ」
「気を付けて下さいよ!お嬢様にもしもの事が有ったら、お母様に顔向け出来ません」
「それとこの岸が今建て様としている地主さんなの、調べて貰えますか?」メモを手渡して頼み込む麻紀。
麻紀は両親が事故で亡く成り、祖父母に学生時代から育てられた経緯が有る。
しばらくして六甲山のラブホテルに入るタクシー。
完全に熟睡した岸を二人でベッドに連れ込んで、衣服を脱がせて石谷が部屋を出て行くと、麻紀も衣服を脱いで下着にバスタオルで、岸に抱きついて写真を撮影する。
しばらくして(楽しかったわ!次回は酔っていない時に誘って下さい。仕事が有りますので先に帰ります。 麻紀)と書いてホテルを後にして、自宅に戻って夜の九時過ぎに着飾って店に出た麻紀。
数時間後、岸はラブホで目覚めて置き手紙を見て仰天の表情に成る。
記憶の隅々まで捜しても、ラブホに二人で入った事も覚えていない。
確かにタクシーに乗り込んだのは記憶に残って居て、六甲山に行こうと聞いた事は思いだしていた。
自分は全裸でベッドに眠っているので、間違い無くここに来たのだろ?
脱いだ衣服の下着は風呂場に、洋服はクローゼットに吊されている。
風呂には今も入浴剤が入って、使った形跡が残って居るが記憶が無い岸。
ホテルを出ると会社に電話をして、状況を尋ねて何事も無い事を確かめると、そのまま自宅に向かった岸は深夜に帰った。
自宅に帰る前に麻紀の自宅に電話をするが、留守電の為今度は店に電話をすると「岸さん、沢山お酒を飲まれて、眠られていましたから起こしませんでしたのよ!」
「すみません。。。。。。。」
「いいのよ!私も岸さんの事好きですから、楽しかったわ!今度機会が有れば温泉に行きたいわ!酔わない程度でね。。。」意味ありげに言うと、客が呼んでいると一方的に電話を切った。
数日後石谷から、阿部彰次のマンションと(ハピット)建設の情報を手に入れる麻紀。
今度の日曜日に現地を見学する事を石谷に伝えて、共和住宅と(ハピット)の繋がりを掴み、岸を利用して麻紀は自分の思いを成し遂げようと考えていた。
その岸は、もやもやとした気分だけが残り、麻紀とラブホテルに行った事実だけが残された状態で、仕事に気合いが入らない。
それでも簡単には、麻紀の店に行くだけの財力も無い憂鬱な日々が始まっていた。
経緯
36-09
日曜日に阿部の農地を見に行った麻紀と石谷、水田に地上げの為に土砂をダンプカーが運んで来て居る最中だった。
その様子を隣のビルの横に立って見ている老人を見つけた麻紀。
「こんにちは、広い土地ですね!何が建てられるのですか?」笑顔で話し掛ける。
美人に話し掛けられたのは、ここの地主阿部彰次。
太陽に麻紀の髪が光ると、明るい栗色に見えて水商売で働いていると物語っている様に彰次には見えた。
「マンションですが、一階は堅い商売の店舗を入れる予定だよ!」
早速牽制球を投げて、水商売には貸さないと先走った事を言う彰次。
「マンションですか?五階建て位ですか?広いですね」
「向こうまでで八百坪有るのだが、向こうの大きな道に面した場所にはコンビニが出来る予定だよ!(ハピット)が来る」
「関西はまだ少ないですよね」
「そうらしいな、直ぐ近くに(ラック)の地域一番店が在るのに、勝てるって東京のお偉いさんが言ったらしい」
「お爺さんはその話信じているの?」
「わしは、家賃を貰えばそれで良いからな!」そう言って高笑いをした。
麻紀は(それはインチキですよ!直ぐに売れなければ出て行きますよ)ともう少しで言いたく成ったが言葉を呑込む。
「ここは何処の建設会社が建てるの?」
「ダイヤ建託って聞いたけれど、丸投げの様だな!下請けの建設会社がする様だな!」
麻紀はダイヤ建託も、共和住宅も同じ穴の狢だと思っているので「お爺さんも騙されない様にしてね、紹介だけで五パーセントの御礼を受け取っている連中が沢山居るから気を付けてね!」
麻紀はこの阿部のマンションと(ハピット)の建設は自分が考えている事件の縮図の様な雰囲気を感じて「お爺さん、実は私の父も高槻の方でマンション建設を考えているらしいの?時々見せて貰っても良いかしら?何処で建てるか研究させて欲しいのよ」
「別嬪さんの見学はいつでも歓迎だよ!飲み屋さんの候補地を探しに来たのかと思った」
「私?芸能事務所に所属している売れないタレントなのよ!だから少し派手に見えるのね」しばらくして麻紀は微笑みながら彰次にお辞儀をして、その場を去って行った。
この建設現場にこれから何度も足を運ぶ人がもう一組存在していた。
それは近藤久三と昌子夫婦で、まだ決定もしていないが自宅から近い事も有り、朝の早い時間散歩の合間にこの現場を見に来る様に成る。
自分達の店がここに出来るとは聞いてはいないが、建設現場と聞くと見に行かないと気分が収まらない二人だ。
当事者のダイヤ建託の人間、共和住宅の福永と(ハピット)の京極も週に何度も見に来る。
正式契約をするまでは油断が出来ない、自分達が行った事を別の人間が行うかも知れないと、絶えず目を光らせている。
ダイヤ建託がもう来る事は皆無だが、他の建設会社が首を突っ込む事は考えられる。
建設申請を行うまでは油断出来ないのがこの業界の常識だった。
仮契約の段階は一番不安定なので、注意は怠れ無い。
「あの若さで新地のママをしているから、必ずパトロンが居るだろう?」
どうしてももう一度麻紀の店に行きたい岸は、不動産会社の東海林の元を尋ねていた。
「それはそうだろうが、違うかも知れない例えば財産、そう親の遺産が有るので店を開いた?」
「親の遺産で北新地に店を出すと思うか?」岸の入れ込み様に呆れる東海林。
「その辺りをもう一度行って確かめたく無いですか?」
「岸君がママに惚れているのだろう?」東海林に心の底を読み取られて岸は「ママが美人なのは芸能人だからですよ!」口から出任せを言った。
「本当なのか?それなら知り合いに芸能人も沢山居るのか?」
「多分!その辺り仲良くすれば、社長のお気に入りの女優さんに会えるかも知れませんよ」
「岸君!いつの間に調べたのだ?有名な女優も良いけれど、新人の歌手とかとお近づきに成れるのか?」
「それで共和住宅の持田さんも、懇意にしているらしいですよ」
「あの支店長やり手だと思っていたが、その様な裏技を使っていたのか?ママの男だと思っていたけれど、違うのだ!それなら俺も共和住宅と仲良くするぞ!」
「社長!共和と仲良くしなくても、我々はママと面識が有りますから、直接話が出来るでしょう?」
「そうだな!近日中に行こう!」上機嫌に成る東海林。
岸は先日の食事の時、麻紀に充分芸能界でも活躍出来そうな美しさですよ!と話すと、芸能界にも沢山友人が居ますわ!と話した事を思い出しての急場凌ぎの嘘が出てしまった。
店に行けばママに適当に話して、口裏を合わせて貰えば良いと考える岸。
持田支店長は若い時から、強引な営業スタイルで実績を上げてきたが、高槻営業所の所長に就任してからは、使う立場に成ると営業社員に強引な営業を強要して現在の立場を確立して、未だ高みを狙っているので、支店の営業マンは毎日午前様だ。
接待の名目で麻紀の店を使う事も度々で、麻紀がママに成って半年、月に最低三回、多い時は五回はやって来る。
持田支店長は岸と同じ手法で、危機一髪で肉体関係を切り抜けていた麻紀。
麻紀はこの一年の間に、持田支店長が(ハピット)関係の事を口にしなかったので、痺れを切らしていた時に今回の話が持ち上がり、それもライバルのダイヤ建託を巻き込んでの仕事に成っている事に大きなチャンスを感じていた。
数年前麻紀の祖父松山寅夫は、新名神の建設予定地近くに山林を所有、他にも工場跡地も在り将来性抜群だと持田営業所長に煽てられて、工場跡地に関西進出を決定した(ハピット)の誘致を計画した。
元々は染色工場を寅夫が初めて、息子即ち麻紀の父が継承する予定だったが、交通事故で夫婦揃って他界、その後寅夫はショックで後継者を捜さずに商売を辞めてしまったのだ。
年金生活の寅夫は孫娘の生活が楽に成ると思い、持田の話に乗り気に成った。
大学を卒業と同時に芸能事務所に入る程の美人で、ミスキャンパスに選ばれた事が切っ掛けで東京の大学から芸能事務所の道に進んだが、芸能活動は元々苦手で殆ど活躍は無かった。
年に数回戻る麻紀を老夫婦は楽しみにして、工場跡地にマンションとコンビニが建設されると麻紀に話していた。
麻紀の罠
36-010
災難は重なるもので、阪神淡路大震災が追い打ちをかけて、マンション建設は頓挫。
開店していた(ハピット)は僅か半年で閉店、祖父寅夫は心労で病に伏して、自宅山林を安価で売却して建設資金を精算した。
工場跡地も持田が言葉巧みに安価で売りさばき、残ったお金で麻紀の住んでいるマンションの購入と、祖母の介護付き老人ホームへの入居代に充当した。
地震の災難は有ったが、地震が無くても無謀な出店だったと、祖父が亡くなる前に言い残した。
麻紀はその後色々調べて、持田の強引な営業スタイルを知り、祖父は完全に騙された事を痛感した。
祖母は騙された祖父が馬鹿だったと麻紀に忠告したが、許せない気持ちが現在の麻紀を作り上げた。
麻紀の予想よりも早く岸は店を東海林と訪れた。
「先日はどうもありがとうございました」岸は取り敢えず食事をご馳走して貰った御礼を言った。
「いいえ、こちらこそお忙しいのに、お付き合い頂ありがとうございました」
「岸君!ママに何かして貰ったのか?」
親しい感じの話に気に成る東海林に「社長お願いするのでしょう?」
「そうだった!ママさんは芸能界に親しい人が多いと聞いたが、本当なのですか?」
「一応懇意にして頂いている方は何名かいらっしゃいますが?何か?」
「そうなのか?岸君が言うから本当なのか?疑っていたが今の言葉を聞いて安心して呑めるよ」
「何か?」
「少し飲んでから話す事にしよう」東海林は機嫌が良く成って、女の子に囲まれて飲み始めた。
しばらくして、麻紀が他のテーブルを廻って挨拶を済ませて戻って来ると「こんな店構えのクラブママの若さでは中々持てないと思うのだけれど、芸能関係の人のパトロンが居るのでしょう?」東海林がいきなり尋ねる。
岸が前から疑問に思っていた事を、躊躇いも無く尋ねた東海林。
「そうですわ!芸能プロダクション社長のお父様がここのオーナーよ!」
「麻紀さんが所属していたプロダクションですか?」
「はい、息子さんです!祖父の友人なのですよ!」
麻紀はこの時事実を話していた。
安達周造は祖父松山寅夫の親友で、芸能界に入る時も周造の会社なら安心だ。
孫娘は美人だから虫が付かない様に頼むよ!と芸能界入りをさせたのだ。
SALプロダクションは次男、安達良純が現在は経営しているが、数年前までは長男周一が社長をしていた。
周造と寅夫の間では、周一の嫁に麻紀が内々で決まっていたのだが、阪神淡路大震災が周一の命を奪い話は藻屑と消えた。
天災は安達周造にも松山寅夫にも大きな痛手と成って、二人の人生を変えてしまった。
寅夫は不動産活用に失敗と云うより、持田に上手に騙されて全てを失った。
寅夫は周造に亡く成る前にその様な事を言い残し、偶然その話を聞いてしまった麻紀は復讐に燃えてしまった。
適当に話した岸の方が驚く展開に「芸能事務所に入られていたので、お綺麗なのですね」
「岸さんにお聞きしたい事が有るのですが?」
「何でしょうか?」
「(ハピット)ってご存じでしょう?」
「はい、関東が基盤のコンビニの最大手ですね」
「そこの方で京極さんて、ご存じ無いですか?」
「京極さんですか?聞いた事無いですね」
「もう年齢は五十代後半だと思うのですが?営業の方で関西方面の仕事をされていたと聞いたのですが?本部に電話をしましたが判らないと言われました」
「それは多分契約社員ですね、出店する土地を捜している人で、名刺は持っていますが、トラブルを起こした時逃げられる様に個人で働いているのですよ」
「契約社員ですか?」
「何かその京極さんとトラブルでも?」
「一度お店に来られて。。。。。。」言葉を濁した麻紀。
「ここに契約社員が来るのは、相当上客を掴んでいたのですね!一度何処に居るか調べて見ましょうか?」
「相手に判らない様にお願い出来ますか?」
「麻紀さんの為なら、例え火の中水の中ですよ」
「おいおい、岸君奥さんに聞こえるぞ!」横から東海林が言いながら笑う。
「ママさん、SALガールズって知っているだろう?」急に言い始める東海林。
「はい、知っています」
「その中の茂木茜って女の子のサインって、手に入らないかな?」
「五人のグループで、今人気絶頂ですね」岸が東海林の顔を見ながら確かめる様に言った。
「違うよ!私じゃ無い!甥っ子が欲しいって言うのだよ」慌てて否定する東海林。
「お易い御用ですわ!一ヶ月以内に貰っておきますわ」笑顔で答えると、大喜びの東海林。
麻紀は自分がSALプロダクションに居たとは、敢えて言わなかった。
二人の話はその後も芸能界の話に集中して、東海林は有名女優のサインを欲しいと言い始めて、麻紀はそれも引き受けると言い切ってしまった。
「その代わり、私の人探しも助けて下さいよ」
「勿論です、早急に捜してママさんを喜ばします」東海林はそう言って、岸に八波をかけた。
岸には先日のラブホテルで、眠ってしまった事が気に成っていたので、何事も無かった麻紀の機嫌に胸を撫で下ろしていた。
これは持田と初めてラブホテルに行った時と同じだ!男は自分が何をしたか覚えていない時は、気に成って中々次の行動を起こせない動物だと、改めて確信する麻紀。
祖父寅夫が「京極と云う営業に上手に騙された!開店の時参列していたのが最後で、その後は一度も顔を見せず、名刺の電話番号に連絡すると、現在の勤務地は判らないと言われた!後任の男は一ヶ月目で、売り上げが目算と違う!家賃の値下げを考えて欲しいと言い出した」と強い怒りを表わしていたのだ。
その京極と云う男に問い質したい事が、沢山有る麻紀だった。
バブル時代の夢
36-011
祖父が家賃の値下げ要求に難色を再三示すと、半年後突然解約を伝えると一方的に違約金を払い退居してしまった。
開店から二百日目で、コンビニは空き家と成り建築費の半分が負債として残った。
隣に建設中のマンションは阪神大震災で、崩壊してしまった事を境に建築中止、追加の資金を要求されて頓挫した。
祖父は心労で病に成り、建設は中止と成ってしまった。
異常な家賃設定で成り立っていた建築物は、店子の撤退で負債だけが残る事に成り、銀行からは催促を受ける。
持田は祖父の病を見て、資産の売却による精算を勧める様に変わった。
「震災は災難で、誰が悪いと言うものでは有りません運が無かったのです。コンビニも震災が起らなければ順調に売り上げを伸ばせたでしょうが?残念でした」が持田の言い訳だった。
麻紀は祖父が死ぬ間際まで「あの京極と云う男が来なければ、あの様な嘘を見抜けなかった。。。。」と譫言の様に言った言葉が今でも耳から離れない。
その後(ハピット)の常道手段がこの営業方法に有ると思っているが、証拠は押さえていない麻紀。
東海林と岸は最後まで店に居て、芸能界の話に終始、東海林は芸能人と一度関係を持ちたいのが本音の様で最後まで執拗に尋ねた。
岸は再び麻紀と遊びたい心境に成っていたが、麻紀は心得たもので、上手にあしらわれて帰って行った。
その後岸は麻紀に頼まれた京極を捜すが、(ハピット)では基本的に共和住宅の仕事をしている営業をライバルの会社に教える事はしない。
何故なら情報が漏れてしまい、お互い共倒れに成る可能性が高いからだ。
その為共和住宅の担当の京極は、ライバルのダイヤ建託の仕事は基本的には行わない。
大きく地域が異なる場合は変わるが、それでも基本を変える事は無いのだ。
京極はもう関西の共和住宅とは十数年の付き合いで、持田支店長とはその昔一緒に仕事を何カ所も行った仲だが、今は持田が出世して一緒に仕事をする事は無い。
持田支店長も京極も一切昔の話は社員の前でする事は無い、何処で繋がって恨みを持っている人と出会う事も有るからだ。
阿部の地鎮祭で会っているが、お互いは紹介を避けるので名前は知らない。
安西課長以外に、木檜、京極が地鎮祭に(ハピット)から出席していたが、岸には放送された人しか判らない。
岸はマンションを減額されたので、腹立たしい気分でとても紹介の気分では無かったのも事実だ。
岸が阿部の工事現場を訪れたのは、造成が全て終了してからだった。
「岸君久しぶりだな!契約が終わったので、仕事は終りか?」彰次が嫌みを言う。
「そんな事は御座いません、まだまだ色々決めなければ成りません」
「共和の福永君とハピットの京極君は、毎日の様に見に来るのに!」笑いながら言う彰次の言葉に「今!京極って?おっしゃいましたか?」
「そうだよ!ハピットの京極君は物腰が柔らかく、出来た男だよ!」
数日間捜しても見つからなかった京極が、まさか自分のマンション建設現場に毎日来て居たとは!灯台元暗しとはこの事だと急に嬉しく成った岸。
これで麻紀に会う口実が出来たと笑みを浮かべる。
「にやにやして気持ち悪いぞ!」
「この土地全体を見渡すと広い敷地だと、今更ながらに思っていたのですよ」
「ハピットに譲った事を惜しそうに言うね!向こうの土地はマンション以外難しいので、ここが完成したら、岸君に計画をして貰うよ!」そう言って遠くの自分の畑を見る彰次。
「はい!あの場所でも三階は建てられますから、是非お願いします」笑顔でお辞儀をする。
目の前の造成地に、石灰で目印を書いて数日後から、基礎の工事が始まる様だ。
この場から直ぐにでも麻紀に電話で教えたい衝動を抑えて、彰次の相手をして半時間程度を過した岸。
その半時間が岸の考えを大きく変えて、京極の事をもう少し調べてから麻紀に伝えればもっと感謝して貰えるが、麻紀が何故京極を捜しているのだろう?の疑問が芽生え始めた。
持田支店長に尋ねたら直ぐに判るのに、何故?の疑問も続けて湧いてきた。
岸が来た二日後の日曜日、石谷のタクシーで再び麻紀が現場を訪れた。
その日は重機の運び入れが始まり、同時に基礎工事に必要な道具が日曜日にも関わらず運び込まれていた。
それを見に来ていた彰次は直ぐに麻紀を見つける。
「また見学にいらっしゃったのですか?」
「はい、おじゃましています」と笑顔で会釈をすると続けて「日曜日ですのに、機材の搬入をされているのですね」と話す麻紀。
「家内が良い日だと言うのでね、暦に五月蠅いのですよ」そう言って笑う。
「主な目的は相続対策ですか?」
「そうですね、子供達が私の財産を成るべく少ない税金で相続する為ですよ!」そう言って微笑む。
「お父様はお幾つで?」
「私は今年、七十七歳に成ります」
「まだまだお元気ですから、相続対策に成らずに建設会社と金融機関の儲けに成ってしまうかも知れませんね」麻紀がそう言った。
「早く死ななければ駄目ですね」そう言うと声を出して笑った彰次。
「結局、どの様に対策をしても税金は取られますよ!お父さんが払うか子供さんが払うか?どちらかですね」
「土地を持っていると毎日の様に建設会社がやって来る!農地の宅地並み課税で農業をしていたら税金が払えない!この場所で私のお爺さんの時代から農業をしているのだが、数年前区画整理を市が行って、三割以上の土地が無く成ってしまった。変わったのは税金が大幅に上がっただけだ。ここもバブルの時は地上げ屋が来て、売れと迫ってきました」
「高かったでしょうね、これだけの広い土地ですから」
「あの時売って、悠々自適の生活をしていた方が良かったかも知れない」
彰次は昔を懐かしむ様に話したが、麻紀はこの土地なら当時売れば本当に悠々自適の生活が出来たのだろうと思った。
絡繰り
36-012
「完成は半年以上先ですよね」
「来年の春の完成に成る予定だ!」彰次は嬉しそうに言う。
「じゃあ二千年の区切りに竣工ですか?縁起が良いですわ」
「そう成るな、二十一世紀か?気にしていなかったが、何だか気持ちが良く成った!美人にその様に言われると何か良い事が有るのかも知れないな」
「ハピットはその後に建設ですか?」
「取り敢えず資材置き場に使うが、マンションの内部工事が始まれば資材置き場は必要無いから、工事を始める予定だ!だから殆ど同時に開店だよ!」
「本契約は未だですか?契約書をよく読まないと、ハピットは恐いと聞きましたよ」
「そうなのか?日本一のコンビニがその様な事をするのか?」
「悪い事をするから大きく成れるのですわ」
「そうか!それも理屈だな!別嬪さんが言うと本当の様に聞こえる」そう言って声を出して笑う。
全く本気にしていない彰次だが、その顔色が変わる事を今は未だ知らなかった。
(ハピット)の本部では、安西課長が阿部の店舗は駐車場が狭い!これからの時代は車で来店されるお客重視に成ると持論を、会議で度々論じていた。
これまでは町の駄菓子屋&雑貨屋で、今直ぐ人が足りない物を補充の為に!が出店の主流だったが、これからは車で買い物に来る人を対象にと力説していた。
前任者の課長に比べて若い安西は、社内でも頭角を表わしていたのだ。
事実ライバルのラックの地域一番店も、車のスペースは五台程度しかなく条件的にも甲乙付けがたいので、近隣でもラックに対抗出来る場所の確保を主張している。
安西課長はその為に、この阿部の土地に出来る店を捨て石にと考えていると会議で発表した。
驚いたのは木檜達で、まだ半年以上先の開店なのに、早くも次の手を打つ安西課長の手腕が恐い程だ。
「その為には、ここの店舗はフランチャイズオーナーに経営を委ねる事にする」と発表した。
「銀行員の近藤さんですか?」
「それで良いだろう!負けても痛手は小さい、直営店で負けると後々影響する」
「破格の賃料で阿部さんの土地に建てるのに、諦める様な事を。。。。」石黒部長が口を挟む。
「私が常々申しています敷地の広さが御座いません!もしも近藤さんが頑張ってラックに勝てても駐車場の確保か、他の場所に将来は変わるべきだと考えます」
「京極さんには絶対に聞かせられませんね」木檜が発言する。
「勿論だ、共和住宅にも内密にしなければ、大変な事に成る」
「とにかく今回はラックの地域一番店を窮地に追い込む事が、最大の目的と云う事だな!」石黒部長が納得した様に会議を締めくくった。
翌日木檜が近藤に対して、本社の会議で今度の阿部さんの土地に開店する店は近藤さんにお任せする事に成りましたと報告をした。
本部では夫婦のオーナーを採用すれば、一人の人件費はゼロと考えている。
経営が苦しく成っても、バイトを節約して自分達が店頭に立って寝ないでも働くからだ。
一応規則ではその様な文言は一行も書いて無いが、夫婦は昼夜を問わず働く様に成る。
夜は主人が店頭に立ち、昼間は妻が店頭に立つので夫婦は完全にすれ違いの連続に成る。
そしてどちらか一人が病に倒れると、その時から一層地獄が始まる事に成る。
風邪程度の病はバイトで乗り切れるが、重病に成ればその時点で終りに成る事を判っているのだろうか?
フランチャイズは他人の褌で相撲を取る様な物で、勝てる筈も無い。
筆者が昔取材で大手コンビニの本社営業社員に尋ねたが、皆さんは奴隷の様な者で雑巾の様に仕事をさせるのが、本社の我々の仕事だと語った事を今でも覚えて居ます。
近藤さんも銀行員と云う安定した仕事を辞めて、人生の後半を茨の道へ船をこぎ出したのだった。
近藤さんが頑張って軌道に乗せると、近くに直営店を出して商圏の半分を本部に奪略される仕組みも知らずに、人生の終盤で大きな冒険に進んだ。
ハピットの契約社員京極は、地主との契約が終了すると、殆ど地主の元には顔を出さない。
阿部彰次との仮契約が終り、数ヶ月後本契約書に捺印を貰えば、後は「開店おめでとうございます」の挨拶を終わると、別の担当者を連れて引き継ぎ業務に移行する事に成る。
ここまでがえびす顔で、その後は別の担当者が鬼に変わってしまう仕組みに成る。
一度出店してしまえば、どの様にでも成るとの考え方なのだ。
町の色々な場所にコンビニの残骸を目にする人も多いと思うが、この話の末路が実体なのだ。
世の中実勢価格の二倍とか三倍の家賃と、建設協力金には必ず絡繰りが存在しているのだ。
麻紀の祖父もその手法に騙された一人だった。
京極と云うセールスに言葉巧みに出店させられたが、阪神大震災も重なって閉店に成ったが、その前に大幅な家賃の値下げ交渉が行われた様で、当時の本部の担当は既に京極から吉永と云う人物に変わっていて、祖父は前任の京極と話がしたいと何度も吉永に言ったが、最後まで京極は現れなかったと話した。
そして祖父は自分が騙されたと気付き死んでいった。
石谷は大昔、祖父の会社で働いていて、自宅にも出入りして幼い麻紀を学校に送り迎えもしてくれた仲。
七十歳後半に成っても、個人タクシーの運転手として働き、松山の家には訪れる事も多い。
会社を畳んだ時、祖父が石谷の面倒を最後まで見た恩を今も忘れない。
岸は京極の事を調べ始めたが、ダイヤ建託担当の住田に京極の事を尋ねると、自分と一緒の契約社員ですが成績は相当良い人だと思いますと言った。
年齢はもう直ぐ定年位だとしか知らないし、殆ど顔を見る事も無い。
一度同じ地主さんの攻略に鉢合わせに成ったけれど、自分が負けたと言った。
「でも結局その店は半年で閉店に成りました。地主さん怒っていたと聞きましたが、その時は既に担当は京極さんでは無かったと思います。当時は関西での開店に成ると本部の吉永さんの手に行くのですよ!この人は値切りの吉永と云いましてね、殆どの地主さんは泣き泣き値下げを飲むのですよ」と教えてくれた。
調印
36-013
「値下げに応じない場合はどう成る?」
「早い店なら半年で閉店ですね!元々安い家賃設定ですから、高い家賃は払えませんよ!私と京極さんがバッティングした店も、値下げ交渉を断って半年で閉店に成りました!気の毒でしたね!良いお爺さんでしたからね」
「私も少しは知っているのですが、今まで一度もハピットの仕事はしていないので、よく判りませんでした。先日(NOZOMI)を誘致しようと考えて居たけれど、同じシステムなのですか?」
「まあ、似たり寄ったりだと思いますよ」
まさか住田のこの話が、麻紀の祖父の話だとは岸に判る筈も無かった。
麻紀がこの事の真相を探っている事をこの時岸が知っていたら、これから起る事件は防げたかも知れない。
その後麻紀は持田支店長に、先日の接待の真相を聞き出す為に、岸が何かを掴んで居る様だと囁いていた。
持田支店長は口が滑って「ダイヤ建託の営業は歩合だからな、二億近い減額されると相当収入が減る」
「支店長さん、それが岸さんに気づかれるとどう成ります?」
「川瀬支店長も私も殺されるかも知れないな!」
「えーそんなに凄いの?」
「そうだろう?ママが準備してくれた女を抱いて、お金を貰って(NOZOMI)から(ハピット)に変たのだぞ」
「えーーー知らなかったわ!(NOZOMI)からなの?」驚く麻紀。
「絶対に岸の耳に入らない様にしなければ、今の話は聞かなかった事にな!」
「勿論ですわ!クラブで聞いた話は外では話しません!」唇に指を持って行く麻紀。
「ところで、ママ!あれから一度も付き合って貰ってないぞ!温泉でも行こう!」
「支店長さんと温泉?いいわね!行きたいわ!」
「時間が中々空かないだろう?近くの有馬でも良いぞ!」
「私ね、温泉に支店長さんと行くなら、遠い処がいいわ!北海道とか東北」
「おいおい、そんなに休めるのか?」
「今は無理よ!来年の冬とかなら。。。。。」
「えーそんなに先か?私は有馬で充分だが!」
「駄目よ!お客様に見られるわ、これでも客商売ですからね、パトロンの様に見えたらお客様が減るわ」上手に話を切り抜ける麻紀。
だが今夜は大きなニュースを手に入れたと、喜んでいた。
このネタで、ダイヤ建託の岸を焚き付けて、困らせてやろうと考える麻紀。
この話は阿部彰次の土地を巡るトラブルだから、阿部彰次の動きにも目を光らせなければ、土壇場で逆転も自由分考えられる。
岸は京極の事を麻紀には中々教えないでチャンスを待っていたが、麻紀から連絡を貰わなければ店には簡単には行けない。
一方麻紀は岸の家族構成を調べて、偶然を装って今回の件が耳に入る様にしようと考えていた。
岸は神戸の六甲道に一軒家を持ち、妻芳美と子供二人で近くに岸の両親が住んでいる事を石谷が調べて来てくれた。
石谷が「両親になら近づけるかも知れない」と同時に伝えた。
老人大学で父親の昭輝は囲碁を、母親は造園を習っていると調べていた。
囲碁なら自分も好きで、素人としては強いと自負している石谷は自分の出番だと張り切った。
数日後老人大学に潜り込む石谷は、岸昭輝に接触する機会を探る事に成った。
一ヶ月後、阿部彰次の自宅にハピットの京極と木檜、金融機関は地元の地方銀行で彰次の取引が有る京阪神銀行の明石支店長望月と担当者荒木。
彰次は元々この銀行とは取引が無かったが、福永の持って来た物件から取引が始まって、既に三年が経過して、彰次の信頼も厚く成っていた。
少し遅れて共和住宅の福永が訪れて、本契約書にサインをしていた。
彰次の妻の華子がこの時はしゃしゃり出て、良い日はこの日しか無いと言い切っての調印に成っていた。
「こんなに沢山の建設協力金を頂いて、申し訳無いな」
「マンションを小さくして頂き、NOZOMI に決まっていた物件を当社に変更して頂いた御礼の様なものです」木檜と京極が笑顔で肯きながら言う。
銀行の望月も「色々な物件を見てきましたが、この建設協力金と契約金で、建設費の半分に相当するなんて、初めてです」調子の良い言葉を並べる望月。
建物が異常に高額な事に全く気が付いていない彰次と華子、毎月八十五万以上の家賃にえびす顔。
建設資金の半分が建設協力金と、契約金で賄えるのだが、毎月の家賃から協力金は差し引かれる。
それでも七十万以上のお金が収入に成る。
建設資金を払っても約四十万弱は手元に残る計算に、二人の老人はえびす顔なのだ。
もしも自分が商売するなら、この様な高い物件を買って商売をする筈が無いのだが、二人にはその様な事は判らない。
どう考えても三千万程度の建物を、五千万以上で建設させる手法は殆ど詐欺に近いが、収入と支出のバランスが合っているので誰も文句は言わない。
こんなに高い建設資金の理由を尋ねると、この場所に価値が有るから企業が出店するのです。
私達共和住宅の信頼で企業様がこの場所に出店されるのです。
建設資金は実際の費用と我々のノウハウ費用が加算されているのですと、公然と言い訳をする。
だが本当はもっと薄汚い世界なのかも知れない。
その事を知ってか知らずか?阿部彰次は、常ににこにこ顔で契約をして、自分が若い時の話を全員に話してご機嫌だ。
集った連中は彰次の昔話を聞きたくも無いが、常に笑顔を絶やさない。
銀行の支店長には隣のマンションが欲しかったが、地元の信用金庫に流れてしまい漸く今の物件を貰ったので、不満は言えない。
数年後にはマンションを借り換え頂く様に、上層部からは強く言われていた。
恐ろしい計画
36-014
彰次の自宅を漸く出た面々は、近くの喫茶店で今後の段取りを話し合う。
「長い話でしたね」開口一番木檜が言う。
「私はあの話三回目ですよ」福永が笑いながら言うと、京極が「私も二度目です」そう言って笑う。
「私達は毎月の様に聞かされています」望月が言って大笑いの五人。
京極が「私も今回で阿部さんの自宅に来るのは後一回開店時に成ります。お世話に成りました」と挨拶した。
「開店後は何方がご担当に?」
「はい、この地区は吉永さんの担当に成ります」
「あの有名な吉永さんですか?」
「ご存じなのですね」京極が福永に言った。
「はい、当社の支店長の持田に聞いた事が有ります。優秀な方だとお聞きしました」
「ははは、私はいつも良い役回りで、吉永さんは嫌われ役ですからね」
京極が自分は店舗用地を獲得するだけですが、後任はそれを運営しますので大変だと説明をした。
その様な話をしながら、今後の入金その他の事案に付いて、当事者を除いて話が進んでしまう。
もう契約書を貰ってしまえば、京極の仕事は殆ど終わって木檜の範疇に委ねられた。
「私、用事が有りますので先に失礼します」と京極が席を立って帰って行った。
一仕事が終わった安堵感が背中には漂っていたが、今後の成り行きを考えると頭が痛いのが現状だった。
阿部の自宅に向かう時、本社の安西課長の話を聞いてしまったからだ。
木檜も気が重くて、誰かに話して楽に成りたかったのが実情だった。
開店と同時に吉永さんの口撃が始まるのは確実だから、もう一度しか会わないと思っても気が重かった。
他の人達には絶対に喋る事が出来ない内容だった。
救いは阿部さんが資産家で、今も隣に大きなマンションの建設を行っているので、支払いには困らないだろうが?大きな損失に成るのは確実だからだ。
だが救いは近藤さんが頑張って繁盛させて、ラックに勝ってしまうと簡単には移転が出来ない。
近接地に新店舗を誘致する必要が生じるが、簡単には近くに見つかる事は無いのでは?京極はその様な事を考えながら帰路に就いた。
だが安西課長からこの時既に、エリア内の不動産業界には、店舗用地募集の案件が出回っていた。
当然東海林の店にも届き、破格の家賃設定の賃貸用地に触手を伸ばそうと考えている。
敷地三百坪、家賃二百五十万の店舗は破格の条件だった。
東海林は知り合いの岸に住所を伝えて情報を貰おうとした。
「その住所俺が今建設中のマンションの近くだ!何の用地だ?」
「いや、店舗としか判らない!申し込みは東京と成っている?コンビニか?ハピット?」
「馬鹿な!ハピットは俺のマンションの横取りをしたから、そんな近接地には来ない」
「そうか!それじゃライバル?」
「それも無い!施主が誰か捜してくれ!簡単には判らないだろうが気に成る」
岸は何故か胸騒ぎがしていた。
自分のマンションを減額された事も、何か裏が有りそうな雰囲気だし、川瀬支店長が持田支店長の行きつけの店に出入りしている事も気に成る。
「だがな、この場所一等地に近いから中々空きが無い場所だよ!それに三百坪の空き地は無いから、現在の建物を壊さないと無い!」
「その様な難しい場所に三百坪か?益々怪しい」そう口走る岸。
翌日岸は工事現場の視察を兼ねて阿部彰次の自宅を訪れた。
「建設中のマンションの近くで、三百坪以上の土地をお持ちの方っていらっしゃいますか?」
「一反か?昔は数カ所在ったが、沢山マンションが出来ただろう?もうそれ程纏まった更地は無いだろう!」
「そうですよね、阿部さんの畑以外に無かったですよね!建物では?大きなマンション意外、直ぐに取り壊せそうな建物とか?」
「個人の自宅で三百坪の家は、マンションの近くには無い!まだこの辺りで建てるのか?入居者が減るから辞めろ!」
「違いますよ!東京の商売人が捜していると情報が入りましてね!気に成ったのですよ!」
正直に伝える岸。
「どの様な商売をするのだ?」
「それがライバルかも知れません!」
「岸君のライバルか?最近君とこよりも荒手の業者が出来ているらしいな?」
「違いますよ!コンビニかも知れないと思いましてね」
「コンビニ?」声が変わる彰次。
「ハピットの出店を知らない業者では?」
「そうだよ!知らないライバルのコンビニが捜しているのだよ!」彰次もそう自分に言い聞かせる。
そして考え込んで「この近くで持って居る人が一人居た!少し離れているが四百坪弱だな」
「有るのですね?何処です?何方の持ち物ですか?」
岸が慌てた様に尋ねると、彰次は自分の顔を指さして笑い出した。
「阿部さんの畑?」
驚いて尋ねると二人は急に大笑いに成ってしまった。
それでも気に成る岸は彰次の自宅を出ると、歩いて建設現場の近くを散策して確かめた。
幹線道路に面した場所には空き地は全く無く、路地に入っても区画整理で整地されて、彰次が言う通り三百坪の土地は皆無。
自宅を含めてもその様な大きな敷地と、区画は見当たらずに安心して帰って行った。
ハピットは流石にこの場所に京極は投入できないので、芦田と云う同じ契約社員を秘密で投入して、現在出店予定の半径百メートル以内で、三百坪を確保する事と指令を受けていた。
この事実を知っている人は、安西課長他数人で木檜も京極も、この話は知らない。
だが、一週間後芦田は、この地区で三百坪の確保は大変ですと安西課長に報告した。
安西は、住人を転居させるとか他の方法を考えてでも、確保する事!それは一年後でも二年後でも構わないと譲歩した。
胸騒ぎ
36-015
石谷は老人大学で囲碁サークルに入り、持ち前の腕前を披露して囲碁仲間を唸らせていた。
勿論岸の父親昭輝とも懇意に成り、石谷を負かそうと必死に成っていた。
麻紀からの指示待ち状態で、石谷も好きな囲碁をして楽しめるので、週に二日を楽しみにしている。
岸の親父も中々の腕で、石谷には三回に一度勝つ程だ。
その為岸も石谷が来る日を選んで来る様に成って、子供の話、孫の話を始める様に成った。
「お嬢さん、もういつでも話は出来る状況に成っていますよ!」と告げたのは老人大学に行きだしてから、二ヶ月後だった。
阿部のマンション建設も基礎工事が始まり、昼間は重機の音で五月蠅い。
近藤昌子が阿部彰次を見つけて「大きな工事ですね!マンションですか?」自分の店が出来るのか?と探りを入れに毎日の様に散歩で見ているが、今日は辛抱堪らずに尋ねていた。
「そうですよ!五階建てのマンションです!」
「一階は場所が良いので店舗ですよね!」
「その予定で捜していますが、まだ決まっていません!ダイア建託さんが捜すでしょう?」
「えっ、未だ決まっていないのですか?」
「はい、三店舗を予定しています、飲食店は火を使うので入居者が嫌うので、服とか美容院、散髪屋が良いのだがね」
彰次の口からコンビニの声が聞こえなかったので、昌子は項垂れてその場を後にした。
彰次は毎日工事現場に来て、一日の大半を過して工事の人達に飲み物を振る舞うので人気者に成っていた。
ハピットの人間はその後誰も姿を見せる事は無かったが、福永だけは月に二度程度は現場に顔を見せる。
そして毎回の様に、ハピットの条件の良い事を彰次に語って帰る。
それは支店の中でも、過去に無い条件だと持田支店長が事有る事に言うからだった。
裏取引が余程影響しているので、これ程奮発したのだと思っている持田支店長は自画自賛に成っていた。
持田氏店長は昔から自分の能力を高く評価しているので、部下を持つと皆自分と同じ様に仕事が出来なければ腹が立つ様で、部下に対しては非常に厳しい。
今回のハピットの事案も全て自分が、裏工作をして手に入れたと自負が有る。
「福永!阿部さんはまだ近くに土地をお持ちだ!ハピットを梃子に恩を売って手に入れてこい!」
「支店長まだ工事も始まってないのに、次の案件を持って行くのは?」
「福永!今がチャンスだ!もう年齢も八十歳近いだろう?相続!相続で押し切れ!来年には相続税の見直しが有るから、今がチャンスだと言うのだ!」
「有るのですか?相続税の見直し!」
「今度の国会で決まると言えば良いのだ!老人には判らん!君は店舗流通課だが阿部さんには信頼が有るからここは一気に決めて来い!」
阿部の持って居る他の土地は店舗流通課には用事の無い土地、でもマンションを建てるには静かで良い立地条件だった。
持田支店長は支店の成績を上げる為には、今期中に契約をして来年着工が理想なのだ。
阿部彰次はマンションの減額をさせてしまった岸に対して、合う度に悪い事をしたとの気持ちを表わしているのだが、共和住宅の次の作戦を知る筈も無い、ましてや今建設中でその様な提案をする余裕も考えも無かった。
翌週持田支店長は福永と一緒に阿部の自宅に中元を持って行くと言い始めた。
勿論躊躇している福永の尻を叩く事と、自分が自らマンション建設に推し進め様との作戦だ。
「支店長この荷物は何ですか?」中元を持参する朝車に積み込む様に言われて尋ねる福永。
「DVDプレーヤーだよ!高価な品物だ」
「えっ、中元にDVDプレーヤーですか?驚きですね!」
「驚かすのが目的だ!何処も持って行かない物を持って行く!これが俺のやり方だ」
自慢の様に言うと車の助手席に乗り込む持田支店長。
十万以上もする高級品を中元に持って行く豪快な手法に驚きながら、車は阿部彰次の自宅を目指して動き出した。
その頃麻紀も朝から石谷の車で久々に建設現場を訪れていた。
「基礎工事進みましたね」麦わら帽子を被り、タオルを首に巻いて今朝も現場を見ている彰次。
毎日の楽しみなのだろう?騙されてなければ良いのだけれど、と気遣いながら日傘をさして話し掛ける麻紀。
「こんな暑い場所に来ると日に焼けて、別嬪さんが台無しに成るぞ!」そう言って微笑みながら、ポリバケツに放り込んでいる缶を取り出して「飲むか?」と差し出す。
「私は結構です!石谷さん頂きなさい」
「そうですか、それじゃ遠慮無く頂きます!」
サイダー缶を受け取ると「よく冷えていますね」石谷が早速開けて飲み始めると、彰次も同じサイダー缶を直ぐに飲み始めると一気に飲み干す。
「凄いですね!炭酸を一気飲みされる方始めて見ましたわ」驚く麻紀に「若い時は瓶を一本一気に飲んでいたよ!炭酸が好きでね」そう言って笑う彰次。
「ビールはそれ程飲まないのだよ!炭酸のコーラ、サイダーが好きだ」
聞いてもいないのに嬉しそうに答える。
ポリバケツの中は氷が一杯浮いて、見えるのはコーラとサイダー系の物が殆どだ。
そこに工事の現場監督が来て「お孫さんですか?綺麗な方ですね」と会釈をして近づいてきた。
「違う!俺の様なむさ苦しい顔から、この別嬪は産まれん!休憩だな!そこのバケツを持って行きなさい」
横に在るポリバケツを指さす彰次、毎日の様に差し入れを持参しているのだろう?
現場監督も手慣れた様に、バケツを持って現場に戻って行った。
「別嬪さん!今何時だね!」急に尋ねる彰次。
「十一時前ですね!」と答えると「帰らんと十一時に共和の支店長が来る」
その言葉に麻紀が思わず「持田支店長が?」と口走ってしまった。
怪訝な顔で麻紀を見る彰次は、何か胸騒ぎを感じていた。
嘘で固めた話
36-016
「別嬪さん!持田支店長を知っているのか?」不思議そうに尋ねる彰次。
「イベントに一度呼んで頂いたので、知っていますのよ」
咄嗟に上手な言い逃れをすると彰次は「地主を招いて、歌とか芝居を見せて食事会をするから、その時に出演したのか?」そう言って笑いながら、日陰に置いて在った自転車に乗ると自宅に向かう彰次。
「お嬢さん、危なかったですね」
「本当だわ!持田の名前を聞いて出てしまいました」そう言って微笑むと「帰りましょう、ここにも来るかも知れませんから」車の方に向かう麻紀。
その時、持田支店長を乗せた車が、工事現場を見る為にやって来て「麻紀!」と小声で口走る持田支店長。
慌てて「もう基礎工事が相当進んでいるな!」と話を逸らしながら、目では麻紀の後ろ姿を追っていた。
偶然か?この辺りに知り合いが居るのか?パトロンが住んでいるのか?次々と疑問が頭の中を駆け巡る。
「支店長、車止めますか?」
「いや、もう時間だ!阿部さんの自宅に行こう!」
「はい」
「いや、待て!止めてくれ」車を止めさせると、車を降りて工事の現場監督が、飲み終わったポリバケツを持って来たので「済みません!先程この場所に日傘をさした女性が。。。。」
「ああ先程の美人?阿部さんのお知り合いではないかな?」
「知り合い?」
「そうですよ!親しそうに話していましたよ!でも美人に日傘は似合いますね」
それだけ聞くと、直ぐに車に乗り込み阿部の自宅に向かうが、麻紀が阿部の知り合いの言葉が脳裏に残ってしまった。
確か麻紀は関東の生まれだと聞いたが、関西に親戚?阿部さんとは?
「支店長!到着しましたが?」福永の言葉で我に返るが、疑問は絶えず次々と浮かんでくる。
自分と関係が有った事実を誰かに喋ったのだろうか?
荷物を抱えて玄関先で待つと、中から彰次の妻華子が引き戸を開けて迎え入れて、福永の持つ大きな荷物に目が止る。
「奥様、これは我社からの中元の品で御座います」
福永が上がり戸にDVDプレーヤーの箱を置く。
中から彰次が出て来て「何を大きな物を?」箱を見て言うと「御主人!最新のDVDプレーヤーをお持ちしました」嬉しそうに言う持田支店長。
「支店長!大層な物を中元に?」
「御主人は映画が好きだと聞いていましたので、最新式の物をお持ちしました」
「支店長!この様な高価な物は困るよ!マンションを建てたダイヤ建託がビールで、小さなコンビニを建てただけなのに、この様な高価な物を頂くと困るよ!」
そう言いながらも笑顔の彰次。
「いえいえ、ダイヤ建託さんからお譲り頂、誠にありがとうございました」
「支店長に度々御礼を言われて、この様な高価な物頂いて恐縮しまう」
「処で、話が変わりますが相続税が大幅に変わる事をご存じですか?」
「いや、全く知らないが?」
「今度の国会で決まれば、二年後には大幅増税に成るとの情報が入っているのですよ」
「えー、二年後ですか?」妻の華子の声が変わる。
「特に都市部の農地、駐車場は更地と同じ評価に成って、膨大な相続税が課せられる様に成るらしいです」
「それは本当なのか?」
「同時に固定資産税の大幅アップも予定されているらしいです!この情報は当社だけのルートで入手した事ですから、他では判らないと思います」
「相続税は私が死んでからだが、固定資産税は直ぐに影響が出る!今でも膨大な税金を払っているのにまだ増えるのか?」
「そうですよ!そこで私達が阿部さんの為に提案をさせて頂きますので、今のマンションの工事が終われば直ぐに着工出来る様に準備致します」
「次はダイヤさんに、担当者に義理が有るのでな!」
「御主人それは考える必要は有りませんよ!担当の岸さんは転勤が決まっている様ですよ!栄転らしいです」
「えー岸君が栄転で変わるのか?」
「これはまだ誰も知りませんよ、本人も知らない事です」
「えーその様な他所様の情報が良く手に入りますね」
「先日建設業の会合でダイヤの常務が、岸君の事を褒めていたので尋ねたら、栄転の事を酒の影響も有ったのでしょうが、口走られてね!それで知りました」
「常務の耳に入っているのか?岸君は中々出来る男だからな」
「でも先に本人が知ってしまうと、ご破算に成るかも知れませんので、内密にお願いします」
「判った!絶対に誰にも言わない」
「ですから、ダイヤ建託さんに気を使う必要は有りませんよ」
「そうだな!岸君以外は殆ど面識無い、支店長の川瀬って奴は偉そうにして好きに成れん!」
持田の話ですっかり共和住宅の話を信用してしまった彰次。
持田達が帰ると、早速DVDプレーヤーの箱を開けて喜ぶ妻華子だ。
「中々出来た支店長だ!良い情報網が有る様だな!」
「お父さん、これ以上税金が上がったら畑では破産しますよ」
「共和住宅でマンションを建てるのが得策の様だ」
二人は完全に持田支店長の口車に乗せられて、マンション建設に舵を切ってしまう決意に成った。
車に乗り込んだ福永は支店長に尋ねたが「殆ど嘘だ!だが私の読みでは岸って営業はこのマンションが竣工したら、転勤は間違い無いと思う」と言い切った。
「福永!もう今日の話でマンション建設に舵を切ったので、今後は君が建設まで進めてくれ!」
「は、はい」持田支店長の勢いに負けてしまう福永。
だが少し時間が経過すると、持田は先程の麻紀の事を思い出す。
「福永君!今後の相続の事も有るので、阿部さんの家族関係を調べて報告して欲しい!今後相続する人まで細かくだ!」
持田支店長の変な指示に戸惑いながら、引き受けてしまう福永。
その数週間後、岸の知らない時に畑の測量が始まる事に成ったのだ。
会計士の欲望
36-017
数週間後の測量の事前打ち合わせと言って、福永は相続税の関係も考えなければマンションの規模等が決まりませんので、家族関係を教えて下さいと彰次に頼み込んだ。
この話は妻の華子が乗り気で、福永が喋らなくても子供、孫の事を細かく話し始めた。
子供は三人で、彰彦には妻と子供が二人、長女は子供が二人で次女は子供が三人と説明して、子供の事、亭主の事、孫の事を話して、それぞれが財産を欲しがっていると話した。
その為に相続税を出来るだけ少なく出来るなら、対策をすると普段口を挟まない華子が力説した。
だが実際は、税務署に払うか?銀行と建設会社に払うか?の違いだけで全く同じ事だが、税金と自分が建設した喜びと物が残るので、得した気分に成るだけだ。
実際はその建物で、税務署は余分な税金を徴収出来るので、結局は得をした事に成るのだろう。
苦しんで相続しても、次の代では対策が無く相続税を取られる事に成る。
福永はそれ程苦労せずに、親族関係の名前と住所を聞き出し、会計事務所でシミュレーションを作り、阿部様に最適のプランをお持ちしますと帰って行った。
翌日纏め上げて持田支店長に渡すと、福永君にしては敏速な調査だったと褒めて、自分が顧問の会計事務所に相談に行って来ると、資料を持って出掛けて行った。
行き先は探偵事務所と、藤井会計事務所の二箇所で、空探偵事務所ではこの記載の人で松山麻紀と関係の有る人物を捜して欲しいと依頼した。
空探偵には最近麻紀のパトロン探しを依頼の為に、接触しようと考えて居た矢先だった。
持田支店長も一度大阪のホテルに行ったのだが、岸と同じ様に薬を飲まされて麻紀を抱いた実感は残っていなかった。
「支店長もの凄い美人ですね!芸能人の様ですね」
写真を見て空探偵は嬉しそうに言うと「この中にこの松山麻紀さんと関係が有る人を捜せば良いのですね」
「そうだ!この女性にパトロンの様な男が居ないかも調べて欲しい」
それだけ頼むと持田支店長は、共和住宅の顧問をして貰っている藤井会計事務所を訪ねる。
藤井剛宏は「支店長!幾ら位のマンションにすれば良い?」といきなり尋ねる。
「そうですね、片手位の物を建てる様にして欲しいのですが」
「それは良いが、この見返りに阿部さんの専属会計士に推薦して欲しいな」
「大手の会社で充分なのでは?」
「今、資産に目を通したが、この親父八十前だろう?相続税の申告は美味しい!頼むよ」
「だが今は、専属の税理士が居た様な!うちの福永が細かい税務署上がりの男で困ると言っていた」
「税務署からなら、少し難しい事を聞いたら判らないだろう?実践経験が少ないからな!だがな!国家試験で免状は貰っても、実際は客商売だからな、この事務所には私より税務に優れた奴は沢山居るが、商売が出来ないから独立しても無理だから!だから歳は食っても、ここに居座って居るのだよ」
応接室で聞こえ無い事を幸いに、持論を語る藤井会計士。
「一度阿部さんに会わせて欲しい!また礼はする!そうだ新地のクラブに美人を囲っているらしいな」
「えー、藤井さんの耳に入りましたか?」
「一度拝ませてくれよ!」
「判りました、先生には無理をお願いするので、両方引き受けましょう、いつでも新地に連れて行きましょう」
藤井は手帳を見て「クラブは来週の木曜日!阿部さんの自宅には土曜日でどうだ!」
速攻で勝手に決めてしまう藤井、笑みを浮かべながら条件を飲む持田支店長。
持田支店長はこの藤井の懐に飛込む準備をしている。
共和住宅本社の公認会計士に名前を連ねているので人脈が有る。
持田は自分の出世の為、この藤井は棄てがたい人物だと思っているが、中々つけ込む隙を見せない。
今回は麻紀の店に自分から行きたいと言い始めたので、絶好のチャンスだ。
事務所を出ると直ぐに麻紀に電話をして、来週の木曜日の予約と同伴で食事に行きたいと申し出た。
会計事務所の先生に、女性を準備して欲しいと頼み込む持田。
「四人で食事ですか?」
「そうだ!五十過ぎの会計士の先生だが、噂では美人が好きな様だ!確実な女性を頼む」
「支店長の将来が懸かって居る様な言い方ですね」
「その通りだ!私の将来が託されているのだぞ!ママ頼むよ!」
「判りました!食事は寿司?」
「そうだな!銀平の予約も頼む!七時前で!」
高級寿司屋の予約までさせるとは、相当な大物なのか?会計事務所の先生?麻紀は少し考えると、自分で頷く様な仕草を見せて相手が誰か判った様だった。
一週間後、空探偵が電話で、クラブの名義は松山麻紀さんですよ!元の持ち主は芸能事務所SALの会長安達周造氏に成っていました。
阿部彰次さんの子供の嫁ぎ先でも、松山麻紀さんと知り合いとか血縁関係は全く居ませんと報告してきた。
芸能事務所SALは大手だと空探偵が教えてくれて、会長は資産家で数多くの物件を持って居た。
このクラブもその中のひとつだと思われると説明した。
安達の昔の女が麻紀か?手切れ金代わりに貰ったのか?芸能界の女性似知り合いが多いのは、この人脈なのだと勝手な解釈をした。
それならあの若さで、ママをしているのも納得出来る。
安達周造はもう高齢に成っているので、手放したか?麻紀はこれから磨けば益々光るのに、歳には勝てなかったか?と独り言の様に言って微笑む持田支店長。
今まで気に成っていたが、パトロンは居ないは本当だったと安心すると同時に、本気に好きに成っても支障が無いと思い始めた。
今までは変なパトロンが出て来て、揉めると困ると遠慮していたが大丈夫だと思い始める。
自分がもう一歩積極的に成れなかった。
喉の棘が取れた心境に成っていた持田支店長だ。
甘い囁き
36-018
季節は真夏に成り、安西課長の指示を受けた芦田は、内密に阿部彰次のマンション工事を横目で見ながら連日情報集めに余念が無かった。
その中で中央道路に面した自動車修理工場、桜モータースの話を近所の喫茶店で聞きつけた。
百五十坪程の敷地なので基本的には論外なのだが、芦田はその百五十坪に目を付けたのだ。
桜モータースの社長は高齢で、子供は娘が二人で既に嫁いでいて、跡を継承する人が居ない事、従業員の一人を可愛がり跡を継ぐ話が出ていたらしいが、娘が反対をしたので困っていると聞いたのだ。
早速その話を安西課長に連絡すると「その桜モータースを落とせば、併設された土地は住宅か?」と尋ねた。
「二軒有りますが老朽化した家に、老夫婦が住んでいるのですが、三十坪程です!その隣は若い夫婦で子供が二人で、両親が近くに住んでいる元は農家ですね!この家が駐車場を含めると五十坪です」
「うーん、少し足りないな、他には無いのか?」
「隣家の小さな畑が三十坪程在りますね」
「おおーそれも落とせば目的は達成だな!取り敢えず桜モータースを落としてからの話だ」
買うなら簡単だが、借りるのだから簡単では無いですよ!と電話口で叫びたい芦田だ。
安西課長はもう手に入れた気分に成っている話し方だった。
しかし、現実は簡単には進まないが、芦田の奮闘がこれから始まるのかも知れない。
翌週の木曜日新地の寿司屋、銀平に石谷のタクシーで薄い水色の紗の着物で、今美容院から出て来た感じのアップに纏め上げた茶髪で入って来た。
紗は二本の経糸で緯糸一本ずつをからめて織り上げたシンプルなもじり織で、絽以上に透け感があります。
織り柄のある紋紗(もんしゃ)、紬糸を使った紬紗などがあります。
白い長襦袢を重ねたときの紗の涼感は、見る人にも涼しさを届けてくれます。
一般的には、紗は7月中旬から8月上旬までと言われますが、白襦袢ではなく色襦袢を重ねると、透け感が無くなるので6月、9月の単衣の季節でも着られます。
「いらっしゃい、ママ今日は一段と綺麗ですね!持田さんだから?」案内に出て来た女将が麻紀を見て微笑みながら話した。
「もう一人来てない?米山さんって美人?」その辺りを見て言った。
「未だですけれど、若い人?」
腕時計を見て、少し前に来て打ち合わせをする予定が来ていないので、仕方無く個室に向かう。
高級寿司店だけ有り、都会の真ん中の中庭には小さな池が造られ、個室はこの中庭を囲む様に四部屋在る。
麻紀も今夜の米山桐子は初めての女性で、条件を言って準備して貰った二十七歳の美人だと聞いていた。
時計を見ながら気を揉んでいると「お連れ様がお見えに成りました」そう言いながら案内されてきたのは持田支店長と、藤井先生で幻滅する麻紀。
それでも笑顔で「支店長早かったですね」そう言いながら腕時計を見る麻紀。
「今日は涼しそうな着物だな?それに色っぽい!こちらが我社のお世話に成っている会計士の藤井先生だ」
「麻紀と申します」と正座でお辞儀をする麻紀。
その襟足を見て藤井は強烈な色気を感じてしまい麻紀のファンに成っていた。
「桐子さん少し遅れている様なのです」
「まあ、ママさんが居てくれたら、僕は充分だよ!なあ持田支店長!」好色の藤井先生は微笑みながら言う。
その目を見ながら自分の服装が失敗したと思い始めていた麻紀。
自分の姿を舐める様に見る藤井の視線を痛い程感じていた。
「連絡してきます」麻紀が立ち上がると、改めてつま先から頭まで舐める様な眼差しで見る藤井の視線に恐怖さえ感じて、部屋を出てSALの事務所に確かめる。
表向きはコンパニオンのバイトに成っているので、事務所の人間は全く知らないで派遣をしている。
一部の人間しかこの仕組みを知らない。
「まだ到着していませんか?実は連絡が出来ないのです!携帯が通話出来ない場所にいるのでしょうか?」
「引き続き連絡をして下さい!お願いします」
気を揉みながら部屋に戻ると、座敷机には簡単な突き出しとビールが運ばれて来たところだった。
「おおー良い処に帰って来てくれた」藤井先生がもうグラスを持って、麻紀の酌で一杯飲もうと差し出した。
「女の子まだ連絡が付かないのですよ!取り敢えずお注ぎしますわ」
着物の袖に手を添えて、ビールを持ち上げると藤井先生のグラスに注ぎ始める。
「ママの手は白魚の様だな」じろじろと着物の袖から出た白い腕から、指先を見る藤井。
「支店長の彼女ですか?」いきなり尋ねると「いいえ、贔屓にして頂いているだけですわ」
「本当か?支店長!私はママが支店長の彼女だと思っていたぞ!」
藤井のグラスに注ぎ終わると、直ぐに持田支店長がグラスを差し出す。
今度は藤井がビール瓶を持って、麻紀のグラスに注ぐ為に待っている。
「ママに注がせて貰うぞ!」嬉しそうにビールをグラスに注ぐと「美人のママに会えた事を記念して乾杯!」自ら音頭を取ると上機嫌で飲み干す。
料理が運ばれて来ると「流石は有名な銀平だ!見事な盛り付けだ!」と上機嫌。
この藤井先生は女癖が悪いので有名で、女を与えておけば機嫌が良いと持田支店長は社内の噂で聞いていた。
その為今回新地で一席招待をしたのだが、すっかり麻紀を気に要ってしまい持田支店長も困り果てる事に成る。
しばらくして酔って来ると理性が壊れるのか、本性が出るのか麻紀の横に座って飲み始める。
「それにしても色っぽい着物だな、ママの身体が見えそうな気がする」そう言って麻紀の肩に手を置いて飲み始める。
堪らず麻紀はトイレに立ち逃れて、その後の状況を尋ねると、後十分程で到着だと言われて一安心に成った。
だが部屋では「持田支店長!あのママを今夜は抱かせて欲しい!何とか成らないのか?」
「先生には芸能界の美人を今宵は準備していますから、その子で今夜は我慢して下さい」
すると耳打ちする様に近づいて、持田が驚く言葉を囁く藤井だった。
悪の企み
36-019
「君の噂は本社でも出ているぞ!ここで私達監査の人間が囁けば、将来は重役も夢では無いと思うがな!」そう言って囁く時、麻紀が戻って来て「男同士で、内緒話ですか?」微笑みながら部屋に入って来た。
「後十分程で桐子さん来ますわ」
「そうか、それは良かったな!持田支店長!」まるで持田支店長の為に用意した様に言う。
麻紀の不思議そうな顔を見ながら「女の子が来たら、そろそろ店に移動の時間だな!」
時計を見ながら「じゃあ、お寿司出して貰いましょうか?」麻紀が部屋の電話でにぎりを注文して戻ると、いつの間にか藤井先生がトイレに行って居なく成った。
「先生!ママの事が気に要った様で若い女の子に全く興味を示さないが、どうしたら良い?」
「どう言う意味でしょうか?」
「先生は君と過したいと言われているのだよ!困ったよ!」
「冗談は辞めて下さい!何を考えて居るのですか?」
「そうなのだよ!充分判っているのだが困った!」
「暴力団関係のパトロンが居ると言えば?諦めるわ」
「そうか、その手が有ったな」嬉しそうに言うと同時に藤井が戻ってきて持田支店長の側に来て、小声で「飲んできた!」と精力剤の事なのか?嬉しそうに言った。
しばらくして寿司が運ばれて来ると「お連れ様が只今いらっしゃいました」仲居が同時に告げる。
「入って貰え!」持田が怒った様に言う。
直ぐに仲居に案内されて桐子が入って来ると同じに、畳に頭を付けて「すみません!急に母の具合が悪くなって出る事が出来なくて」嘘を言った。
「そうなの、お母様の具合が悪かったの?それでもう大丈夫なの?」
「はい、医者に連れて行きましたので、落ち着きました」そう言って顔を上げると、三人が同時に可愛い感じの女性だと思っていた。
「お寿司だけでも食べて、店に移動しよう」持田支店長も桐子の容姿に安心に成って、後は先程の脅しの言葉を、タイミングを見計らって藤井先生に告げるだけだと思っていた。
桐子は恐縮しながら、お寿司だけ一緒に食べると、藤井も桐子の明るさと可愛い感じに機嫌良く寿司屋を後にして、三人はほろ酔い気分でクラブホワイティアを目指す。
だが寿司屋を出ると藤井は持田支店長、ママに交渉して欲しい自分はママに惚れてしまったと耳打ちする。
予想外の言葉が出たので持田は今だと「ママ若いでしょう?あの若さでママが出来るのはバックに黒い組織が居るからですよ」
「えー」
「そうです!暴力団のパトロンが居るのですよ!桐子と云う女性を準備出来るのも、裏社会だからですよ!」
「それは確かか?」
「確かだと思いますよ!店の子に聞きましたよ」
「そうか!それは少し危ないな!今夜は若い子で我慢するか」
「先生それが無難ですよ、触らぬ神に祟り無しです」
「それで、君も手をつけてないのだな!」
納得した様に言うと、前を歩く二人に追いついて「今夜も暑そうですね」そう言いながら桐子の手を握って、手を繋いで店に向かう藤井先生に変わった。
持田支店長はそれを見て、安堵の表情に変わって直ぐに麻紀に追いつくと麻紀が「ごちそうさまでした」と小さな声で御礼を言った。
翌日の十時に桐子が「ママ!あの人変態よ!昨夜は大変だったわ!」
「えっ、変態なの?」
「そうよ!それもドスケベーの分類よ!それよりママの事執拗に聞いたわ、でも私はママの事知らないから答え様が無かったけれど、ママの事相当入れ込んでいるわ!気を付けてね」
「ありがとう、助かったわ」
桐子の事を気に要った様子に安堵するが、共和住宅に侵入するにはこの藤井会計士は絶好の人間かも知れないと思う麻紀。
持田支店長の会社での地位を落とすには、上層部にコネクションが有る人が必要だからだ。
だが今の話では、相当の好き者の様だが桐子を気に要って再び連絡をして来ればチャンスが広がると考える麻紀。
麻紀の店の事を知った持田は、これからは機会が有ればもう少し積極的に麻紀にモーションをかけて、心身とも懇意に成りたいと考えている。
一度関係が有ったが、殆ど記憶に残っていない持田は、その事も苛々に繋がっているのだ。
同じ様に苛々に成っているのがダイヤ建託の岸だった。
店に行く事が中々出来ないので、麻紀の顔を見る事も簡単では無いが、今唯一麻紀に知らせると喜ぶ話が捜していた京極の存在だ。
いつどの様に話すか?考えて居たが中々良いアイディアが浮かばないで、時間が過ぎていた。
麻紀も岸に裏取引の実体をいつ教えるか?タイミングを見計らって、石谷から自分は楽しいですが、お嬢様の思いをいつ相手に告げるのですか?と時期を探っていた。
九月に成って藤井先生が持田支店長に「君は僕に嘘を教えたね!」とご立腹の電話を掛けてきた。
「麻紀ママは暴力団の関係者では無かった!」
持田支店長は藤井先生がその後も麻紀の事を忘れずに調査をしていた事実を知って、背中に冷たい物を感じる程驚いた。
だがもう嘘で通すしか自分の立場を守る術は無いと思う持田は「えー、私も店の女の子に聞いたので、それ程詳しく調べていませんので、先生はお調べに成られたのですか?」
「勿論だ!元の持ち主は芸能事務所の会長で、松山麻紀さんが今の持ち主だ!暴力団の関連は無かった」
「流石ですね!先生の情報網は素晴らしい私の及ぶ物では有りませんね」
「君は興味が無い様だから、遠慮無くアプローチさせて貰うよ!君が多少でも気が有ると断らないといかんからな!」
そう言うと電話の向こうで笑い声が聞こえる。
誰か一緒に居る様だが、女性の様に思えるが持田支店長は胸騒ぎを感じていた。
罠
36-020
「桐子!事務所の会長の女だったとはな!驚きだ!」
「私も先生に聞いて驚きですわ!事務所には売れない芸能人の卵が登録しているから、私の様に売れない様な女の子を使って商売しているのね!美人の仮面を被った悪党だった」
藤井先生と桐子はその後も二度程会って、個別交渉で楽しんでいたのだ。
事務所に知られると直ぐに処分されるのだが、この様な抜け駆けの女は必ず居るのだ。
「先生はあのママを捕まえて、私の様に変態プレーをしたいのでしょう?」
「勿論だ!私は一目見た時から、あのママを一度縛って楽しみたいのだよ」
「それで私に手伝って欲しいのね」
頷くと再びベッドに倒れ込む二人、勿論桐子は上半身を縛られていたのだった。
持田支店長は藤井先生の執念に驚いたが、彼の性癖も噂で聞いた事が有るので危険を感じていた。
露骨に邪魔をすると何をされるか、一気に左遷も充分考えられるので迂闊に口出し出来ないが、一応次回会った時に一言言う事にする。
だが藤井先生の行動は早く、電話をした翌日には麻紀の店に向かっていた。
この日は久しぶりに東海林と岸も店に早くから店に来ていた。
東海林は麻紀に頼んでいた茂木茜のサインを貰う為と、芸能人と付き合いたい下心もあって久しぶりに来て居た。
麻紀は東海林と岸が早く来るので、今夜は開店から店に入っている。
しばらくして東海林と岸がやって来て「流石はママさん!約束は守る人ですね」
「随分来られていないので、お顔を忘れそうに成りましたわ!」
「最近うちの支店長は来ますか?」岸が尋ねた。
「月に一度位に成りましたね、持田支店長に気を使ってらっしゃるのかしら?」
サインを渡すと大喜びな東海林、甥っ子が喜ぶと言って荷物の中に大事そうに入れて黒服に預けた。
ママに芸能人と仲良く成る方法って有るのか?と尋ねて益々興味を持って話す東海林。
岸は京極の話をどのタイミングで話せば、効果的なのか?何度も考え何故京極を捜しているのかも調べたが、全く判らないのが実情だった。
お客も早い時間で少なく、麻紀も他の席に挨拶に行く事も無く二人に付き合っていた。
九時半を過ぎた頃、藤井先生が一人で店にやって来た。
入ると直ぐに黒服に「ママを呼んでくれ!」そう言って案内された席はお互いが見えない場所に係が案内した。
心得た配慮で、共和住宅の顧問会計士とライバルのダイヤ建託の営業を近くに座らせる事は絶対に無い。
暫くすると直ぐに、黒服が麻紀の処に来て耳打ちをして、藤井先生の来店を伝える。
「お客様がいらっしゃった様ですので、挨拶に参りますので失礼致します」
笑顔で若い女の子に席を譲って立ち上がろうとした時、岸が急に「ママ!京極の事が判りましたよ!」と咄嗟に小声で言った。
何故この時、自分が急に京極の事を言ってしまったのか?何かが岸の背中を押した気分で話してしまった。
「えっ!」大きく顔色を変えると、お辞儀をして向こうの席に向かったが、右手を腰の部分に岸に手を振る仕草を見せて、直ぐに戻ると合図をしていた。
「やあーママまた来てしまったよ!」
「いらっしゃいませ!藤井先生」笑顔で応対する麻紀。
「今日はママにお願いが有って来ました」
「まあ、お願いって?恐いわ!」
急に小声に成って「先日の桐子ちゃんをもう一度呼び出して欲しいのですよ!」
「えっ、桐子さんを?どうでしょう?聞いてみなければ判りませんが?先生の好みだったのね!」
「そうなのだよ!でも連絡先を教えてくれなくて、連絡する時はママを通してって言われたよ!」
「それが一応のルールですから、仕方無いですわ」
「それよりも今夜の着物も中々良いね!先日の着物は色っぽかったがね」
「そうですか、それはありがとうございます!でしょうか?」そう言って微笑むと、横に座る様に麻紀に言う藤井。
話が終わったので、女の子を呼ぶママに「僕はママさんだけで良いのに!」と言った。
横に座ると直ぐに麻紀の手を触って嬉しそうにする。
二人の女の子が来ると、お酒を作り始めて「先生!一杯頂いても宜しいですか?」と早速四人分の水割りが造られる。
先日置いた酒がもう残り僅かに成っている。
一本五万以上する酒が、僅か二回で無く成るが客は気にしていない人が大半だ。
岸にはこの様なクラブに来る事は一大事で、東海林を連れて来なければとても何度も来られる場所では無い。
今夜も東海林にお強請りする様に付いて来て、麻紀に何とか外でもう一度会う切っ掛けが作りたい岸だ。
「先生お酒が無く成りましたけれど、同じお酒にしますか?」
「持田君の酒だから、同じ物を出して置いてくれ!」
麻紀はボトルをキープして貰って、嬉しいのだが岸の言った京極が気に掛る。
しばらくして、場を立とうとするが中々逃げ出せない。
「ママはいつ見ても綺麗だね!芸能人の様だな!僕の知り合いでSALって芸能事務所の人を知っている人が居るよ!美人が多いので有名な事務所だよ!」
麻紀はこの時自分の素性をこの先生は調べて、知っていると半ば脅しの様な感じだと思った。
持田の頼みで桐子を紹介したが、足元を掬われる危険を感じ始めていた。
桐子を再び呼んで欲しいと乗り込んで来たが、本当は関わりたく無い人物だと思う。
だがここで拒否をすると、何を言い出すか判らないので、桐子に託すしか無い。
桐子と藤井が繋がっている事を全く知らない麻紀は、上手にあしらってくれる事を期待していた。
麻紀は黒服が呼びに来る様に、袖の中に入れたブザーを鳴らした。
しばらくすると、黒服が来て「ママ電話でございます」と呼びに来た。
色々な事を裏でこの様に打ち合わせがされて、その場を切り抜けるのだ。
身近に居た
36-021
漸く藤井のテーブルから抜け出して、事務所に電話で桐子の事を頼むと、岸のテーブルに戻った。
「お待たせしました」笑顔で戻ると直ぐに岸の横に座る麻紀。
小さなメモ用紙を東海林に見られない様に手渡す。
その用紙には店が終わってから会いたいですと、待ち合わせの店の名前が書かれていた。
この数年間見つける事が出来なかった京極が見つかった喜びは、麻紀には最高の出来事だった。
短い時間岸の席に居たが、携帯に連絡が届いて席を立つ麻紀。
予想よりも早く桐子に連絡が出来たと、事務所の担当者の弾んだ声に驚く。
事前に打ち合わせが行われているので、桐子は事務所からの連絡を待っていたからだ。
藤井の席に戻ると、連絡が出来て桐子のいつでも合わせるとの趣旨を伝えると、大袈裟に喜ぶ藤井。
「一緒に月末食事をしましょう!二人で会うのは少し照れます」
「そうですか、判りました日時が決まれば携帯に連絡下さい」
暫くして藤井は嬉しそうに、用事が終わったと帰って行った。
麻紀は桐子との約束に満足したと考えて、笑顔で藤井を見送り新しい客の席に挨拶に向かった。
藤井にそそのかされた桐子は、藤井の願望を満たせる為に麻紀を騙してラブホテルに誘拐を企んでいた。
自分が芸能界で芽が出ない為、身体を売る事を商売にしていると思っている桐子。
確かに麻紀は持田支店長に近づく為に、芸能事務所の裏組織に連絡をしているが、一円も利益を貰っている訳では無かった。
持田支店長に貰った金額はそのまま支払っている。
今夜の藤井の為の桐子の代金は持田に請求するが、却下された場合は自分が支払う覚悟なのだ。
藤井には請求は行わない事は、表面上は自由恋愛に成るので売春犯罪として表面化する事は無い。
金品の受け渡しは別の場所で行われるシステムだ。
持田支店長に麻紀が連絡すると、本当に好き者先生だなと笑いながら、自分が支払うのでクラブの領収書を貰えないか?と言った。
麻紀は本社の公認会計士に名前を連ねているので、将来の出世の為にだが所詮会社の経費の分捕り合戦の様な物だと笑っていた。
だがその様な事をする為に、自分の祖父が殺された様なものだと思うと憎しみが倍増した麻紀。
店の閉店時間と同時に麻紀は会計も他人に任せてクラブを出て行く。
岸と待ち合わせのスナックに向かうと、もう半時間以上待っている岸は嬉しそうに立ち上がって麻紀を出迎えた。
「お待たせしました」
「何を飲みますか?」
「ビールを頂きます、本当に京極が見つかったのですか?」
「ママの口ぶりからすると、相当憎しみが感じられますが、京極に何かされたのですか?被害に遭われたとか?」
「はい、私の知り合いの老夫婦が京極の口車に乗せられて、コンビニ用地に貸して。。。。。。」
「全て話さなくても察しは出来ます、京極は色々な農家を言葉巧みに騙していますからね」
岸は自分が調べても判らなかった事を簡単に麻紀が語ったので、直ぐに内容を把握出来た。
「それで京極は何処に居るのですか?」
「私が今、マンションの建設をしている阿部さんと云うお爺さんの処に出入りしていますよ!」
「えーーー阿部さん!」思わず声が出てしまった麻紀。
「阿部さんをご存じなのですか?」
「ええ、母方の知り合いに成ります」と適当に慌てて誤魔化す麻紀。
「ご存じなら話が早いです!私が建設中のマンション用地を譲って、ハピットを建てて居るのが京極達ですよ!建設は持田支店長の共和住宅神戸支店です」
「そうなのですね、何か因縁を感じますわ」
「京極に会ってどうされるのですか?」
「そうですね、老夫婦にお詫びの一言でも言って貰いましょうか?」
麻紀は京極に会って何がして欲しいとか、償いを求めていないと自分では思っていた。
どの様な人物が祖父を言葉巧みに騙したのか?それをこの目で確かめたいと思っている。
本当は殺したい程の憎しみは持ってはいない。
持田支店長とは次元が違うと認識していたが、祖父の話では京極の嘘が見抜けなかった!の言葉が脳裏に残っている麻紀。
しかし何度も見学に行った阿部の土地に、京極が関係していた事実は麻紀には驚愕だった。
岸と一時間程付き合って、岸の誘いを上手に断ると石谷のタクシーで帰宅してしまった。
早速翌週には阿部の建設現場に向かう麻紀と石谷。
相変わらず阿部彰次は現場に来て、工事の進捗状況を見学して、工事の人達に飲み物を振る舞っていた。
流石に九月も下旬に成って、氷の中のジュースは少なく成って、近くに設置した自動販売機から好みの飲み物を振る舞っている。
お金を入れずに次々と持って行くので、彰次が自動販売機そのものを設置している様だ。
「久しぶりに別嬪さんの見学だ」
麻紀を見つけて嬉しそうに言うと、自動販売機を指さして「コーヒーでも飲むか?」と尋ねる。
肯き彰次の側に行く麻紀はコーヒーを受け取り石谷に手渡して、彰次に御礼を言った。
基礎工事は既に終り一階部分が殆ど完成している。
「中には入れないが、この隙間から見えるので充分判るのだよ」嬉しそうに言う彰次。
「叔父様、この横にコンビニが出来るでしょう?」
「よく知っているな、まだ誰も知らないのに」彰次は不思議そうに麻紀を見る。
「以前お聞きしましたわ!ハピットでしょう?」
「えっ、そこまで知っているのか?別嬪さんは何者?俺が話したかな?」再び麻紀の顔を見る彰次。
二つの招待
36-022
「別嬪さんには口が軽かったのか?そのハピットがどうかしたのか?」
「担当の京極さんにお目に掛りたいのですが、連絡先ご存じないでしょうか?」
「担当が京極君だと話たか?」不思議そうな顔をしながら「自宅の名刺見れば判るが、頼みたい事でも有るのか?」
「以前お話した高槻の知り合いに頼まれまして、叔父さんの話を聞いてお願いしようかと思いましたの」
「そうだったか?京極君の話をしたのか?彼は良い営業マンだ!条件も簡単に出すし、殆どこちらの要望を飲んでくれた!あの様な男は今まで見た事ない」と褒め称えて、是非使って欲しいと逆に頼み込んだ。
この時麻紀は携帯の番号を彰次に伝えて、後日連絡を貰える様に頼み込んだ。
だが京極と連絡が出来た阿部彰次に、高槻は自分のエリアでは無いので、担当の人に連絡をさせますと話して麻紀の元には別の人が電話を掛けてきたのだ。
麻紀は京極さんと交渉したいと言うが、会社の方針でこのエリアでは自分が担当だと、麻紀の希望を無視した返事に終始した。
麻紀は漸く会えると思っていた京極を、後一歩で取り逃がした状況に成り、再び阿部に頼らざるを得ない事に成った。
彰次が連絡しても京極は開店の日まで、絶対に姿を見せる事は無い。
既に担当エリアが大きく変わって、広島地区に移動している京極には阿部彰次はもう過去の人に成っているのだ。
来年の四月の開店のお祝いに駆けつけるのが最後の仕事だった。
既に担当はまだ顔も見せていないが、吉永と云う値切りで有名な男に変わっているのだ。
吉永は開店もしていないし、建設も始まっていない阿部の店の値切る手段の検討を始めているのだから呆れてしまう。
数日後岸が京極に会えましたか?と電話で尋ねてきた。
自分が教えた情報が役に立ったと思い、麻紀にデートを誘おうと考えていたのだ。
だが予想に反して、麻紀の答えは京極に会えなかったし、今は担当地区が変わって関西に居ないと言われたと説明した。
岸の思惑は大きく外れて落胆したが、麻紀は岸を御礼にお店に招待すると意外な事を言った。
中々一人では行けないクラブに招待されて、本当は別の場所に二人で行きたいのだが取り敢えずは嬉しい岸。
「日にちを決めて下さい、合わせますから食事でもしてからお店に入りましょう」
同伴を誘われて、岸は飛び上がる程の嬉しさを電話口で感じていた。
岸は仕事に追われて殆ど家庭サービスをしていない。
元々見合い結婚で、岸の親父と妻芳美の父親がお互いの知り合いから紹介されたのだ。
岸昭夫自身は仕事が好きで、歩合給で頑張れば給料が上がる事に意欲を持って仕事をしている。
自宅で今月の成果を話すのが自慢の様な日々、妻の昭子はその話に付き合っているだけで、二人の関係は子供で繋がっている様な空気に成っている。
その為、岸にはこの麻紀に対する気持ちは久々に恋をしている気分に成っていたのだ。
未だに石谷に入り込ませた老人大学での、岸の親父から情報を伝える方法に躊躇している麻紀。
年老いた老人を利用する事に躊躇いを感じていたのも事実だった。
麻紀はこれまでに得た情報から、阿部彰次の土地を巡ってダイヤ建託とハピット、そして共和住宅が色々な事を画策したと考えていた。
先ず岸が五階建ての大きなマンションの建設を阿部彰次から受注した。
歩合給の岸は大喜びに成り、一階にはコンビニの(NOZOMI)の入居を進めていた。
だがそこに京極と共和住宅が横やりを入れて、岸に無断でダイヤ建託がハピットに一部を譲ってしまった。
そして見返りに共和住宅神戸支店の持田支店長は、麻紀の芸能事務所から女性の提供を受けて接待された。
接待されたのはハピットの安西課長と、ダイヤ建託の神戸支店長川瀬の二人だ。
その後川瀬支店長は数回クラブに来ていたが、岸が来ている事をホステスから聞いたのか?最近は来なく成っている。
岸は翌日月末の二十八日が都合の良い日と連絡をしてきた。
麻紀は岸が喜びそうな高級寿司、銀平を予約してもてなそうと考え、自分から減額の話を岸に教えて混乱を考えていた。
高齢の父親を使う事に最後まで踏み切れなかったのだ。
一方藤井先生と米山桐子の作戦も二十八日に決行が決まっていた。
桐子には芸能事務所の会長の愛人で、自分達に売春をさせて儲けている麻紀を許せない気分だ。
藤井先生はその桐子の恨みと妬みを利用して、麻紀を自分の物にしたいと計画を立案していた。
藤井は変な性癖が有り、女性を縛って楽しむ癖が有る変態癖の男だ。
麻紀の着物姿にすっかり魅了されている藤井は、この日を待ち焦がれていた。
計画では麻紀を言葉巧みにホテルに連れ込んで、二人で辱めてしまおうとの計画に成っている。
計画ではホテルの部屋に藤井が待っていて、桐子が麻紀を誘って入室する段取りだ。
例え問題に成っても、売春に携わっているので絶対に訴える事は出来ないと決めている二人。
麻紀の卑猥な写真を撮影して置けば、自分達の身は絶対安全だと考えている。
藤井は自分の趣味で、桐子は憎しみと嫉妬でとんでもない計画を実行しようとしている。
確かに麻紀は売春の片棒を担いではいるが、合法的な恋愛を前提にしているので、藤井先生に金銭の要求は行ってはいない。
だが桐子の給料にはイベント出演料として、金額が加算されているので事実として残っている。
実際売れないタレントが給与を得る近道なのかも知れない。
もしこの様なアルバイトが無ければ、収入が無く生活も困るタレントが多いのかも知れない。
麻紀の危機
36-023
二十八日の夕方に成って急に藤井先生が電話で、今夜に変更出来ないか?と言って来た。
予定では翌日に成っていたので、麻紀は急遽事務所に電話で桐子に連絡をして欲しいと頼み込んだ。
麻紀は決して桐子と連絡をする事を行わない。
と云うより全ては事務所を経由する事で、犯罪に繋がる事を警戒している。
その為敢えて桐子の連絡先を聞いていない麻紀。
金曜日はクラブが忙しいので、麻紀が急に店を空けられない可能性が有るので木曜日に変更した二人。
岸も同じ事を考えて木曜日にしている。
店が忙しい場合自分の席に麻紀が数分しか居ない可能性を考えていた。
麻紀に運命の二十八日が訪れた。
藤井先生は過去にも使った事が有る有馬温泉の古い旅館に急遽変更していた。
当初は北新地に近いホテルに決めていたが、ホテルでもしも大声を出された場合自分の立場を考えると何度か使った旅館に安心感を見いだしていた。
先日も下見の為に予定のホテルに桐子と宿泊したが、物足りなさを感じた藤井。
桧旅館は有馬温泉の外れに在り、この様な古ぼけた旅館が何故営業を続けられるのかと思う程の構えだった。
趣味の合う人々には重宝されている異質の旅館だから、経営が成り立つ様だ。
誘拐は桐子が知り合いの男菅野と彼女の久保喜子を誘って、実行する予定に成っている。
確かに売れない芸能事務所のタレントに、アルバイトを斡旋しているのだが、商売抜きにで、客から頂いたお金は殆ど全額女性の財布に入る事に成っている。
安達周造が昔考えたタレント救済策の一つだったが、今では数十人が登録をして居るのも事実だ。
一応厳重に面接をして登録をさせては居るが、中に米山桐子の様なタレントが存在する。
持田支店長に麻紀が連絡したのは昼過ぎで、口座に入金されたのが三時丁度で、一応ビジネスは成り立った。
入金が無い場合は桐子の派遣は見送られる事に成る決まりだ。
持田支店長はこの時、藤井先生があの桐子を二度も呼ぶ事に多少の違和感が心に残った。
変な性癖が有る事は噂で聞いていたので、桐子と云う女性が同じ趣味なのだろうか?と思った。
夕方麻紀は銀平に石谷のタクシーで向かい、岸は仕事先を早めに切り上げて散髪屋から銀平に向かった。
約束の時間より半時間前に、美容院に行き茶色のロングの髪をアップにして、着物姿も艶やかに入った。
「ママさん、今夜はデート?」店員に冷やかされて「いつもと変わらないわよ」
「そんな事無いですよ!一段と綺麗ですよ!」
今夜は岸に裏話を話して、共和住宅とハピットを岸の力を借りて破滅させるスタートラインにしなければ成らない決意が見える。
どちらも同じ穴の狢だが、毒を持って毒を制す心境の麻紀。
もしも自分の指示通りに岸が動いてくれるなら、今度は本当に身体を提供しても悔いは無いとの決意なのだ。
その為には目一杯着飾って、岸を引きつける必要が有るので、美容院でメイクをして貰い着物も一番色っぽい物を選んでいた。
「石谷さん、今夜は勝負よ!岸さんの協力で仇を獲らないとね」
「信用出来ますかね!岸って男!」
「今は彼を頼って叩き潰すしか方法は無いわ!阿部さんの土地で何かが起ろうとしていると思うのよ!お爺さまの時と同じ様な事がね」
「すると、阿部さんは騙される?」
「あのハピットが高額な家賃を支払う筈無いから、絡繰りが有るのよ」
「でも共和の支店長は女まで使って逆転しましたよ!それでも何か裏が有ると思われるのですか?」
「共和住宅もハピットも狐と狸だわ、お互い利益と出世の為なら何でもする悪党よ!」
「兎に角充分注意して下さい!思惑が露見したらお嬢様が一番危ないですから!」
「持田支店長と京極、ハピットは許せません!」
「私は近くの公園で待機していますので、用事が有れば連絡下さい」
「判ったわ!ここで食事の後は取り敢えず店に一緒に行きます。後は岸さんの気持ち次第です」
「判りました」石谷は、麻紀を部屋に残して銀平を出て行った。
時計を見ると六時十分、この時携帯が鳴り響き知らない電話番号に躊躇しながら、耳に持って行った。
「クラブホワイティアのママさんですか?」女性の声が聞こえる。
「はい、ママをしています麻紀と申しますが何方でしょうか?」
「米山桐子さんが交通事故に遭われまして、今救急車で病院に運ばれました!私は偶然彼女に聞いて連絡して欲しいと頼まれた者です!今自宅でしょうか?」
「新地の銀平に来ていますが彼女の容体は?」
「命には別状無いと思いますが、銀平でしたら直ぐ近くですから、直ぐにお迎えに参ります」
「病院は何処でしょうか?タクシーで参りますが?」
「何処の病院に運ばれたか、救急隊員から連絡が入る事に成っていますので、お迎えに行く方が確かだと思います。十分以内に白のワンボックスでお迎えに行きます」
事故と聞いて慌ててしまった麻紀は、銀平の女将に事情を伝えて岸に食事と相手をする女性の準備をお願いした。
桐子の容体を確認して、藤井先生に連絡をしてから銀平に戻るまで一時間は掛るだろうと伝えた。
直ぐに藤井先生の携帯に連絡をすると、大袈裟に驚いて本当はお見舞いに行きたいが、関係上顔を出さない方が良いだろうと、今回は諦めると簡単に引き下がった。
時計を見ながら、石谷に連絡をして事情を話すと自分が病院まで送りましょうか?と言ったが迎えが来ると断ると、岸を怒らさない様に食事の後店に運ぶ様に頼んだ。
玄関先に麻紀が出ると直ぐに白のワンボックスが近づいて来て「麻紀さんですか?」女が窓から顔を出して尋ねた。
外から全く車内が見えない様にシートが貼られているので、何人乗っているのか判らない。
誘拐
36-024
その白いワンボックスの向こうに岸の乗ったタクシーが近づいて、麻紀の姿を見ていた。
どうしたのだろう?そう思った時ワンボックスの扉が開き、麻紀の身体が吸い込まれる様に車内に消えた。
するとワンボックスは直ぐに発進して、岸は咄嗟に何かを感じると「すみません、あのワンボックスを追い掛けて下さい!」タクシーの運転手は急いで追跡を開始した。
そこに石谷のタクシーが戻って来て、岸の姿を発見慌てて石谷も異常を感じると、大きく車を回転させてタクシーを追い掛ける。
ワンボックスの中では既に麻紀が気絶して、横たわっている。
「この女が桐子達に売春させて儲けているのね」
「新地のクラブのママだな!上等の着物着ているぜ!」
「菅野君の空手の腕は一流ね、一撃で寝ねだわ!」
菅野は気絶した麻紀の両手と両足を紐で縛りあげて、後方の椅子に横たわらせて「中々良い身体をしているぞ!」
「駄目よ!傷つけたらお金貰えないからね!大事に連れて行くのよ」運転席の久保喜子が言う。
近くの駅前に滑り込むワンボックス、ロータリーに米山桐子が待っていて手を上げて車は桐子を直ぐに乗せると再び走り始める。
後続のタクシーの岸は駅で降りる体勢に成っていたが、その様子を見て慌てて尾行を続ける。
石谷のタクシーは駅のロータリーに入らずに、一直線に走ってしまい先頭に成っていた。
三台の車が一路有馬温泉を目指しているが、石谷は麻紀にメールを送っていたが、全く返事が無いので岸のタクシーと関係が有ると胸騒ぎを感じていた。
一方の岸は駅で麻紀が降りると思っていたが、逆に女性が乗り込んで来たので、麻紀に何かが起っていると思い追跡を続ける。
有馬の桧旅館に入った藤井は、持田支店長に面白い事がこれから起るから見学に来ないか?と連絡していた。
「支店長も私の趣味の噂を聞いた事が有るだろう?」
「何の事でしょうか?」
「緊縛趣味だよ!実は最高の獲物を手に入れてね!有馬温泉の桧旅館で辱める段取りだ!見学に来ないか?支店長も興味の有る女性だぞ!」
「桐子さんですか?可愛い女性ですが、私にはその様な趣味は有りませんので」
「桐子では無いぞ!支店長も興味があると思ったのだが。。。」
「桐子さんでは?違うのですか?」自分がお金を振り込んで桐子と遊ぶと聞いていたのに、全く異なる女性と聞いて驚いていると「ママだよ!麻紀ママを手に入れたのだよ!」
「えーーー!」持田支店長の驚きは半端では無かった。
自分も一度は麻紀を抱いたが、殆ど酔っ払っていて記憶が残っていなかったのだ。
機会が有れば温泉旅行に行きたいと日頃から言っていたが、上手にかわされて未だに麻紀を抱いてはいない持田支店長。
自分の愛人の様な麻紀を変態の藤井先生が捕えたと連絡してきて、冷静に成れる筈も無い。
「先生!ま、待って下さい!直ぐ行きます!」
慌てふためいて直ぐに事務所を出る準備を始める持田支店長。
噂で聞いている事実が本当なら、麻紀は藤井に完璧に辱められてしまい自分の夢も消えてしまうと思う。
あの時、自分の彼女だと言えば今日の事件は起らなかったと、後悔をしながらタクシーに乗ると、今度は麻紀の裸体が縄目に苦痛を見せる姿が浮かぶが、麻紀の裸体は想像の域を出ていない持田。
「急いで下さい!」と急かすが夕方の渋滞に巻き込まれて動かないタクシー。
「この道の先はお客さん高速ですよ!」岸のタクシーの運転手が伝える。
「カードで払うよ!予め金額を決めよう!」
現金の持ち合わせを心配する岸は、少し多めの金額でカードを切る様に伝えると運転手は笑顔で信号待ちの時間を利用してカードの手続きをしながら「もっと遠くならどうされます?」と尋ねる。
「何処までも追い掛けるぞ!運転手さんもその覚悟で頼む」
ワンボックスの中では、麻紀の持ち物はバッグのみで携帯は既に電源が切られている。
漸く意識が戻る麻紀は自分が車の中に倒れ込んだ事だけを覚えていた。
車が動いている事が直ぐに判ったが、話し声で三人が車内に居る事が判ったが、手足が紐で縛られているので動けない事も直ぐに判った。
「その女いつまで寝ているの?菅野君」その言葉に慌てて目を閉じてしまう麻紀。
だが二人の女の声に聞き覚えが有ると思う、一人は桐子が事故だと話した女?もう一人は桐子?それでは私は今何故縛られて?当て身で気を失って何処に?と考えていると「あの変態先生が初めからこのママを狙っていたのには驚いたわ」と桐子が話して、麻紀は自分の立場が理解出来た。
「SEXが出来ないのよ!でも女性を縛って楽しんで、辱めて楽しむ事が好きなのよ!私も縛られたけれど肝心のSEXは駄目みたい!ママなら出来るかも知れないと期待を持っていたわ!」
「売春の斡旋で儲けている人が、売春させられたらどの様な顔に成るのだろう?」喜子が興味有り有りで言う。
「先生が出来なければ俺が一発ぶち込もうか?」
「何!言っているの?私が見ている前で他の女とSEXすると、ハサミで切るわよ!」
「おおー恐い」そう言って笑う菅野。
麻紀はこの二人が恋人で、桐子の友達で男が菅野で女が喜子だと判った。
このまま連れて行かれたら、あの変態の藤井先生に変態プレーをされてしまう、何とか逃げなければ、しかし手足の紐は頑丈に縛られていて解ける気配は全く無い。
その動きに菅野が気付き「美人のママさんお目覚めらしいぞ!」と顔を覗き込んで言った。
目を見開くと「貴女達は、桐子さんの友達?こんな悪い事は辞めて解いて!」
「それは出来ないよ!別嬪さん!お金貰っているからね」
「お金ならその倍払うわ!だから解放して頂戴」
「駄目よ!その女は私達に売春させて儲けている悪い女なの!懲らしめてやるのよ!自分が売春すれば身に浸みて感じるわ」
「そんな事はしてないわ、売春で儲けていません!売れないタレントの力に成っているのよ!信じて!」
「事務所の会長の女が、何を言っても無駄よ!もう直ぐ変態の親父に女の哀しさを存分に身体に叩き込まれるといい気味だわ」
「馬鹿な事を言わないで、騙されているのは貴女よ!」
「五月蠅いわ!菅野君黙らせて頂戴!」桐子がハンカチを菅野に投げる。
「口を開くのだよ!別嬪さん」そう言われて口を真一文字に閉じる麻紀。
「困った女だな!こうすれば自然と開くのだよ!」そう言うと麻紀の鼻を左手で摘まむ。
麻紀は直ぐに苦しく成って口を開いてしまうと、右手に持ったハンカチを口にねじ込まれて、タオルでその上から口を覆うとアップに纏めた首の後ろで強く結ばれて、声を出せなく成る麻紀。
悪魔の館
36-025
「もう逃げる事は諦めた方が良いわよ!美人に生まれた事を悔やむのね」桐子がそう言って笑う。
「うぅ、うぅ」菅野を睨み付ける麻紀。
「変態のおっさんが待っている!喜子急げ!」
麻紀はシートに横たわった状態で、身動き出来ずにこの後の事をどの様に切り抜けるかを思い巡らせていた。
麻紀のワンボックスの数台前を走っている石谷は、このまま走ると高速道路だが、岸の乗ったタクシーは数台前を走っていると思っている。
何故岸が高速に向かっているのか?連絡が出来ない麻紀お嬢様と関連が有る筈だと自分の勘を信じている。
交差点に差し掛かる度に岸のタクシーが、曲がっていないかを確かめて走る石谷だが、岸のタクシーは後ろを走っている。。
その時、後ろのワンボックスが石谷の後ろに付いた。
何気なく見たミラーに、あの米山桐子を発見して驚愕の表情に成った石谷。
運転している女性は見た事も無いが、確かに助手席の女は米山桐子。
様子を見て、先に行かせて自分はこのワンボックスの後ろに移動する事を考える。
車の数が減って横に寄せて速度を落として、やり過ごすと数台後に例の岸の乗ったタクシーが尾行している事に気が付く。
いつの間にか自分が追い越したが、あのワンボックスを岸が尾行している事に気が付く石谷。
自分も数台遅れて、車列に紛れ込み追走を始める。
米山桐子は今夜確か会計士の先生と楽しんでいる筈で、交通事故に遭ったと聞いたが、先程の様子では元気だった。
石谷はこの時漸く事情が多少判り始めていた。
事故は嘘で、何かの目的であのワンボックスに麻紀が乗せられていると感じ取った。
銀平の前で偶然岸は麻紀が乗せられる処を目撃したのだろう?それで急遽尾行を始めたと思う。
自分はその岸の乗ったタクシーの異常な動きに、反応して追い掛けて来た。
もう七時を過ぎて、高速道路の中国池田ICに入って行った。
何処に行くのだろう?先程よくワンボックスを見つけたと安堵しながら、前方の二台の車を追跡する石谷。
だが車は直ぐに西宮山口ICで高速道路を降りて、北神戸線から県道98号線に入った。
「これは有馬温泉ですね」タクシーの運転手が岸に伝える。
石谷も同じ様に「有馬温泉か?」と口走っていた。
麻紀の車よりも少し早く桧旅館に到着した持田支店長。
「藤井先生!大胆な事をしますね!大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ!この旅館は趣味の合う仲間が使うので、店主も心得ていますのでその心配は有りません!充分楽しんで帰って下さい!あの清楚にすました美人の淫らな姿が楽しみです」
「でも彼女から警察に訴えられませんか?」
「大丈夫です!彼女も売春に手を染めていますから、迂闊に警察には駆け込めません!桐子が証言すれば一味が一網打尽に成ってしまいますからね」
「芸能事務所の事ですね!」
「あのママはその事務所の会長の女です!あの若さで北新地のママが出来るのは、バックの影響が大きいのです」
「暴力団とかは大丈夫ですか?」
「それも調査済みです、多少関係は有るでしょうが、我々に復讐する程の関連は有りません!会長も高齢でママとは全く会っても居ない様です」
「流石の調査ですね!驚きました」
「支店長がママの彼氏かと思いましたが、違うと聞いて安心して今夜を迎えられましたよ!」
「は、はあ」先手を打たれて言葉に詰まる持田支店長。
「でも、一度は抱いて見たいでしょう?今夜は思いを遂げさせてあげますよ!実は私は変態趣味に成ったのは精神的に性的不能者に成ってしまったからなのですよ」
「えっ!先生が?」
「いつも先生と言われていますと、思い切り女性を虐めたい!辱めたい気分に成りまして、それがエスカレートして変態プレーが好きに成ると同時に不能に成ってしまいました」
「それは気の毒ですね」驚きの表情で言うと「支店長がママを抱きたいなら、抱かせて上げますが、私の目の前で嫌がる彼女を強姦して欲しいのですよ」
「私は彼女に顔を見られると、今後の仕事に影響しますし会社にも影響が出ると思いますので、その様な事は出来ません」
「そうですか、彼女には目隠しをしますから、見られる心配は有りません!それでも無理なら若い男に犯させますが?どうされます?」
躊躇いながら「彼女に悟られないなら、是非。。。。。。」自分の思いを抑えきれない持田、若い男に強姦されるなら、自分が犯したい気分に成った。
「私達が彼女の卑猥な写真の撮影が終わるまで、別の部屋で薬でも飲んで支度していて下さい!見られている前で犯すには元気が一番ですからね」そう言うと、店主を呼んで持田支店長は別の部屋に消えた。
その頃麻紀の乗せられたワンボックスは、有馬温泉の中心街に入って来た。
直ぐ後ろには岸の乗ったタクシー、二台置いて石谷のタクシーだが、信号が黄色でワンボックスは交差点を右折「行ってーー」思わず叫んだ岸の声にタクシーも同時に赤信号に突入した。
石谷のタクシーは停止をしなければ激突に成る。
右に曲がった車が石谷の視界から消えたが、ナンバーは二台とも書き留めているので、この近くのホテルか旅館だろう?駐車場を捜せば見つかるだろうと考えて信号を待つ。
ワンボックスは有馬温泉の外れに在る桧旅館に入って行く。
「桧旅館に入りましたね」
「古ぼけた旅館ですね!もっと良い旅館が多いのに!」岸が言うと「ここは噂が有る旅館ですよ!私は元々神戸で流していましたから、聞いた事有りますよ」
止った車の中で話しながら、料金のカードを改めて切る運転手。
調教の部屋
36-026
「ここは変な趣味の人が愛用の旅館ですよ」
「変な趣味?」
「そうですよ!変態プレーって言うのでしょうか?ラブホテルでも最近増えたでしょう?それの旅館版!沢山乗って頂きました!ありがとうございました」とカードを返すと、岸はタクシーを降りて桧旅館に向かって歩き始めた。
ワンボックスの車は、駐車場の奥に在るガレージに入るとシャッターが閉じられているのが、岸の目に入った。
ラブホと同じで、部屋に直結しているのだろうと思われる仕組みだ。
もしあのワンボックスに麻紀ママが乗せられていたら、変態プレーをしているのか?元々彼女の趣味か?それとも誘拐?岸は店に電話をしてママの事を聞いてみる事にした。
店を休んでいるのなら、でも自分と銀平で食事の約束をしているのに、この様な場所に来る事は変だ。
店に電話をするとママに連絡が出来ないので困っていると言い、岸さんとご一緒では?と逆に言われて会えて無いと答えた。
今度は銀平に連絡をすると、急に事故の連絡で出られましたが、岸様もご一緒ですか?と尋ねられた。
岸は誰かママの知り合いが事故に遭って、ここに来たのだと思ったが、変態プレー中に誰かが具合が悪く成ったのか?と次々と考えるが、肝心の麻紀との連絡が出来ないので誘拐の可能性が高いと判断して、旅館の玄関に向かった。
石谷は岸のタクシーを見失って、有馬温泉の町中を彷徨っていた。
「あっ、あのタクシーだ!」岸を降ろして走り去るタクシーとすれ違う。
尋ねる事が出来ずに車は逆方向に走り去った。
だが、もう岸は既に何処かに降りているが、何処の旅館だろう?この方角に在る何処かの宿だが?後はワンボックスを旅館の駐車場で捜すしか術が無い様に思い、近くの駐車場に車を駐車して捜す事にした。
密集した旅館街は歩く方が早いと判断したのだ。
石谷は麻紀の身に異変が起っている事は、連絡の無い時点から察していたが、老骨に鞭を打って夜の有馬温泉を捜し始めた。
ワンボックスから菅野に抱きかかえられて、部屋に運ばれて来た麻紀。
「ママさん!お待ちしていましたよ!」藤井は好色の目で畳の間に横たえられた麻紀に言った。
「うぅ、うぅーーー」首を振って何かを言おうとしている麻紀。
「何か喋りたいか?外してあげなさい」
桐子がタオルを緩めて外すと、喜子が口の中に入って居るハンカチを取り出した。
「貴女達は私をどうするおつもり!」恐い顔で睨み付ける麻紀。
「どうもしませんよ!ここで簡単な撮影会を行って楽しむだけですよ!」
「何を言っているの?この様な事は犯罪ですよ!」
「馬鹿じゃないの?犯罪はママの方じゃないの?私達売れないタレントに売春させて儲けているじゃないの?」
「儲けていません!桐子さんの誤解です!」
「その様な事はどうでも良い、早く始め様!ママさんを強姦したい男も待っているからな!」
「何を!馬鹿な事を!直ぐに警察に逮捕されます!」
「それはママ!貴女の方よ!私が売春の事実を報告すればパトロンの会長も逮捕ね!早く警察を呼びなさいよ!」
麻紀の頬を叩こうとする桐子の腕を掴む藤井。
「もう直ぐ赤っ恥をかくから、暴力はいけませんよ!向こうの部屋に行けば声が出なく成りますよ」
藤井の指示で麻紀の足首の紐を解き始める菅野。
手首を結んでいる紐をそのままに、革の手枷を持って手首に取り付け始める藤井。
後ろで結ばれているので見えないが、手首の感触で判る麻紀が「何を付けているのですか?」振り返ろうと首を回した時、足の紐が解けて前に起き上がる麻紀は前に急に走った。
「おお、自分から調教部屋に走って行ったぞ!」そう言って笑う藤井。
部屋に飛込んだ麻紀の腕には革の手枷に、長い紐が付けられてその先を藤井が持っている。
部屋を見た麻紀が「いやーーたすけてーーーーー」と反対側に走って逃げるが、紐を引っ張られて扉の前で止る麻紀。
中央の天井に滑車が数個付けられて、縄が垂れ下がる。
その前にはカメラが三脚で固定されて、撮影の準備がされていた。
奥には黒のレザー張りの大きなベッドが据え付けられて、四方に固定用の器具が取り付けられていた。
それ以外にもスケルトンの浴槽が設置された場所も在る。
「幾ら大声を出しても誰も来ませんよ!この旅館はこの様な遊びをする為の施設ですからね!」
「狂っているわ!」
「私は痛い事、汚いプレーは好きでは有りませんから、鞭、蝋燭、浣腸プレーは行いませんからご安心を!」近づきながら藤井が言う。
菅野に目で向こうの部屋に連れて行く様に指示をする藤井。
簡単に背中を持って押されると、先程見た部屋の方に連れて行かれてしまう麻紀。
「ゆるしてーー」の言葉に変わる麻紀、この場は兎に角時間を稼いで説得して逃げる機会を待つ事にする。
その頃玄関では岸が、フロントの人間と押し問答をしていた。
先程入ったワンボックスに知り合いが乗せられて、連れ込まれたので会わせて欲しいと詰めよる。
「お名前をお聞きして該当すれば案内致しますが?」
「麻紀さんと言う女性で着物を着た美人だ」
「麻紀?上のお名前は?」
「松山だった!松山麻紀さんだ!」
宿泊の名簿を見て「松山さんは当旅館には来られていませんが?」
「そんな事は無い、確かにここに入った白のワンボックスに乗っていた筈だ!」
その様な押し問答の末、岸は今夜泊めて欲しいと言い始める。
館内に入って確かめる気に変わったので言うと「今夜は満室で御座います、それに当館は全て予約で御座いますので、無理で御座います」と断られてしまった。
困り果てた岸は一旦玄関を出て、今度は駐車場をうろうろとして、バットの様な丸木を拾うと再び玄関に入っていった。
岸の救出も?
36-027
木の棒を持って「少し前に入った一番左のガレージの部屋は何処だ!案内しろ!」木の棒で床を叩き怒鳴る岸。
「お客様興奮されません様に!」驚きながら言うフロントの従業員。
「一番左のガレージは桔梗の間ですが、お客様とのご関係は?」
「関係も何もない!知り合いが誘拐されたのだ!警察を呼びたいのは私だ!」怒鳴る岸。
「誘拐?」
「そうだ!きっと誘拐だ!鍵を早く出せ!」男は恐る恐る鍵を岸に手渡す。
鍵をむしり取る様に受け取ると、館内の奥に入って行った。
直ぐにフロントの男は内線で、桔梗の間に電話をして棒を持った男が向かったと連絡をした。
「お前達誰かに尾行されたな?」と睨み付ける藤井。
それを聞いた麻紀が「たすけてーーここよ!」と騒ぐが中央の滑車の下に座らされて居た。
藤井が直ぐに革の猿轡を台から取って、麻紀の口にねじ込むと後頭部で強く結び付けて、声が消えてしまった麻紀。
犬が咥える骨の様な形で、柔らかい品物なので痛くは無いが、完全に口に食い込み声が出せない。
後ろ手に結ばれた紐を解いて、天井から垂れ下がった縄に手枷を結び付ける。
滑車で引っ張ると、万歳の体勢で立ち上がる麻紀。
着物の袖から白い腕が上に上がり漸く止った時、扉を開ける音が聞こえて「麻紀さん!麻紀さん!」と叫びながら入って来る岸。
「うぅ、うぅーーー」首を大きく振って、部屋に入って来た岸に伝える麻紀。
麻紀の側に居る藤井を見て近づこうと部屋に入った時、横に隠れて居た菅野の蹴りが岸の腰に炸裂すると、そのまま床に倒れ込む岸。
「この男は誰だ!彼氏か!」
頭を掴まれて起き上がらせると「お前の彼女なら、見せてやろうか?」ぐったりとしている岸の鳩尾に一撃を食らわせると、完全に意識を失った岸。
「隣の部屋に縛っておけ」藤井は直ぐに麻紀の側に行って「この男は誰だ!お前の彼氏か?」と尋ねる。
麻紀は岸の行動に感謝して大きく頷いて涙を溢した。
「しかし、この様な男に尾行されていたとは、気が付かなかったな」菅野が言う。
そしてフロントから電話が有ると「知り合いだが勘違いをしていた様だ、これから一緒に楽しむから安心して下さい」藤井は適当な事を言って安心させた。
「あの男に見せてやったら、喜んだのに残念だな!早速撮影を始めるぞ!」
着物を着た美人が口に革の猿轡を填められて万歳の姿を、カメラを向けて喜子が撮影を始める。
顔を背ける麻紀の抵抗に「顔を動かすと写せないでしょう?カメラを見なさい!」桐子が横から怒鳴る様に言う。
「どうせ、すっぽんぽんにされるのに、今頃顔を背けても意味ないのよ!綺麗な着物姿も映さないと駄目でしよう?美人ママの解剖の全てってね」
「うぅうぅー」首を大きく振る麻紀。
「綺麗にセットしているのに乱れてしまうわよ!どうせ乱れるかな?」
「そうよ!人を食い物にして稼ぐ悪女の仮面を剥いでやるのよ!」桐子が嬉しそうに言うと首を掴んで動かない様に押さえた。
「先生!次の撮影に入りましょうか?」
「そうだな、帯を緩めてあげなさい!苦しいでしょう?」藤井が言う。
「はーい」嬉しそうに二人の女が麻紀の帯の紐を緩め始める。
「ママさん、着物にパンティラインが出て無いわね」そう言って腰を触る喜子。
「本当だわ、もしかして下着履いてないの?」
「うぅ、うぅーーー」首を振る麻紀だが、今夜の麻紀はパンティを履いていなかった。
岸を誘惑する為の最後の手段として、色気を出す作戦でホテルに誘う場合も計算に入っていた。
確実に自分の味方に成って貰えるなら、抱かれても悔いは無い覚悟の麻紀だったが、この様な事に成るとは考えてもいない出来事だ。
帯を緩めて一気に外してしまうと、離れた場所に持って行く。
「汚れたら大変でしょう?ママは自分で着られるから大丈夫だわよね!私達脱がすのは出来ても着せるのは無理よ!」そう言って笑う。
「うぅ、うぅーーー」着物の腰紐を緩めると顔を大きく振る麻紀。
「着物って着るのも大変だけれど、この紐の多さは困るのよ」そう言いながら次々と紐を外してしまう二人。
「先生これで良いですか?」麻紀の着物の前が完全に広げられて、二人が漸く麻紀の側から離れた。
着物の間から長襦袢が見えるが、今夜は特別色っぽいピンクに近い色調だ。
「ママの長襦袢は色っぽいですね」着物の前を左右に開いて、藤井は嬉しそうに見ている。
その頃石谷は困り果てて、岸の携帯番号をダイヤ建託に尋ねる事にした。
もう八時を過ぎているが、建設会社は今も営業中で電話が繋がる。
だが簡単には岸の携帯番号は教えて貰えない。
事務員は岸からお客様に連絡をさせますので、お待ちくださいと伝えて電話を切った。
しばらくして、事務員が呼び出しますが電話に出ない様ですと石谷に連絡をしてきた。
これで岸の身にも何か重大な支障が発生したと思う石谷は、近くの交番所に行くか?迷う。
躊躇したが思い切って飛込んだ交番で、男性一人と女性が一人何処かの旅館に拉致されていると訴えたが、警官には石谷の事を詳しく尋ねられただけで時間の浪費に成るのだった。
待ちくたびれた持田支店長は麻紀の事が気に成り、内線で様子を尋ねてきた。
電話に出た藤井は「まだ撮影は終わっていませんよ!変な男が尾行してきたので、捕えています」
「変な男?」
「サラリーマン風で四十代、麻紀の彼氏かも知れない」
「えっ、麻紀の彼氏?その男の顔は見る事が出来るか?」
「隣の部屋で気絶しているから、見る事は出来るが。。。。。」
小声で喋るので、その後の話を聞き取れない麻紀。
別の部屋にもう一人男が居る様だが、ここに来ないのは自分が知っている人?と考えていると、二人が再び麻紀の側に来て、万歳をしている手枷の縄を緩めて着物を脱がせる準備を始めた。
片方の縄を緩めて、手枷の縄を外すと右肩から着物を脱がせる。
緊縛写真
36-028
片方ずつ腕から着物が脱がされてしまうので、麻紀には逃げるチャンスは皆無で長襦袢姿にされてしまった。
脱がした着物は全て帯と一緒に一纏めにして、部屋の隅に積み上げられている。
電話が終わって戻って来る藤井が麻紀の長襦袢姿を見て「中々色っぽい姿だ!私の不能も治りそうだ!」そう言って麻紀の長襦袢の両襟を持って左右に開く。
「うぅ、うぅ」の声と同時に白い胸元が大きく開いて、胸の谷間が蛍光灯に光る。
「顔も美形だが、肌も綺麗で白い!もう少しで乳房が見えてしまうぞ!」
そう言いながら一層長襦袢の襟を広げる藤井。
「うぅ、うぅ」目を閉じてしまう麻紀の胸から、白い乳房が飛び出して光に照らされる。
「美しい乳房だ!色も形も最高だ!夢に描いていた理想の形だ!縄を取ってくれ!縛りあげたい」
菅野が縄を持って来ると「足を固定してくれ!」と指示をする。
女二人が足枷を持って来ると、麻紀の足首に革の足枷を巻付け始めた。
中央に短い鎖が付いているので、足枷を填められると手が自由に成っても歩けない。
「うぅ、うぅ」乳房を藤井に掴まれて足枷に気が向いてない時にセットを終わった二人。
カメラの場所に行くと、撮影を始めて麻紀の乳房を掴む手をアップで写した。
菅野が万歳に成っていた麻紀の手を降ろすと、手枷も外して両腕が漸く降ろされた。
身体を藤井に持たれて、足枷をされているので身動きは出来ない。
菅野に麻紀の身体を持つ様に指示すると、縄を持って麻紀の背後に回る藤井。
麻紀の両腕を背中に廻すと、後ろ手に腕を縛り始める。
手慣れた藤井は直ぐに、麻紀の白い腕を背中の位置で固定する。
今度が長襦袢の上から胸に縄を巻付け始めると物音が聞こえて、菅野に入り口に持田支店長が来た事を目で合図をした。
胸の上に二重に巻付けて縄を背中で固定すると、今度は乳房の下に縄を二重に巻付けて背中に持って行く。
乳房の上下に縄を巻付けて、今度は首に縄を引っかけて乳房の下に巻付けた縄に引っかけて、引っ張ると麻紀の乳房が長襦袢と一緒に飛び出す様に成った。
後ろ手に縛り上げた縄を天井の滑車から垂れ下がった縄に結び付けて完成した。
「良い感じだわ!ママ綺麗な乳房をカメラに向けてね」喜子と桐子が縛られた麻紀の姿を撮影して楽しみ始めた。
隣の部屋に入って来た持田支店長は、岸を見て驚きの表情に成っていた。
調教部屋から入って来た藤井に耳打ちして、この男はダイヤ建託の岸だと告げた。
「それは不味い事に成った!菅野!しばらくこの男には眠って貰わないと、遊べないぞ!」
岸の口に猿轡をして、目隠しもしてしまい畳に転がす様に指示をする。
だが、岸がここに来たので、他の誰かが来る可能性も残っていると持田と藤井は判断をして、事を急ぐ事に成った。
持田は直ぐに元の部屋に戻って、準備が整うのを待つが、持田は既に勃起薬を飲みいつでも麻紀を抱きたい気分に成っている。
藤井は持田に強姦させた後、色々な縛りをして楽しむ予定が岸の存在で中止に成ってしまって残念そうに調教部屋に戻った。
「両方の乳房を長襦袢から引っ張り出して!」ポーズの注文を言う喜子。
既に数十枚の写真を撮影したのか、徐々に大胆な絵を要求する。
藤井はその喜子に耳打ちして、予定が変更に成った事を伝える。
「残念だわ!」そう言いながらシャッターを切ると、麻紀の処に行って足枷を外し始める。
桐子も藤井に呼ばれて事情を聞かされて、残念そうに麻紀の処に戻った。
足枷を外されたが桐子が戻って来ると「そろそろここを見せて貰いましょうかね」そう言うといきなり麻紀の下半身を手で押す様に触った。
「ヘアーヌードを撮影しなければ駄目でしょう?」
「うぅ、うぅ」身体を動かして逃げる。
「先生!ママ!予想通りノーパンの様です」嬉しそうに振り返って言う。
「それなら脱がす手間が省けたな」縄を手に持って近づいてくる藤井。
「調べさせて貰うよ!」藤井はいきなり麻紀の長襦袢の間に手を入れる。
「うぅ、うぅーーー」首を大きく振って抵抗するが、藤井の手が太股から陰部に這う様に入って来る。
「おおー中々のヘアーだな」麻紀の陰毛に触れて満足そうな藤井。
「う、うぅーー」首を大きく振るとセットされた髪が乱れてしまう。
長襦袢の紐を解いて、向こうに放り投げる。
薄いピンク地の裾よけが見えて来ると「これももう必要無いだろう」腰に手を入れると紐を緩めて素早く取り払って放り投げる。
麻紀は足を閉じて防御の態勢に成るが、長襦袢の裾を後ろから桐子が持ち上げて、後ろ手の縄に結び付ける。
下半身が完全に露出して、麻紀は隠す為に必死で足を組んで股間を隠す。
「うぅ、うぅー」と口走りながら、カメラを避ける様に身体を動かす麻紀。
「ヘアーヌード写真には最適な濃さだわね」そう言いながら次々とシャッターを切る喜子。
「動き過ぎだわ!大人しくしなさいよ」
藤井が直ぐに足枷を持って、屈み込んで麻紀の足首を掴んで取り付ける。
「逃げられないから無駄だよ!全てを曝け出してしまうのだよ!」そう言いながら足首に巻付けると、横に在る縄にフックを引っかけてしまう。
両足は引っ張られて、もう閉じる事が出来なく成ってしまった股間は仁王立ちに成る。
「良い感じだわ!ポーズ最高!」
黒い股間に白い肌、胸に食い込んだ縄、身体の一部分に長襦袢が残って、色っぽい緊縛写真が次々撮影されてしまった。
「うぅうぅーーうぅ」麻紀が目の前に見せられた桐子の持ったハサミに驚きの表情に成る。
「乱れた髪もこれで切ってしまおうか?」
そう言いながら顔の前でカチャ、カチャと音を立てる桐子。
髪の毛を引っ張ると目を閉じてしまう麻紀「嘘だよ!ここを散髪してよく見える様にしてあげるのよ!」そう言うと中腰に成って麻紀の陰毛を引っ張る。
「うぅ、うぅーーー」首を振って嫌がるが「ジョキ、ジョキ」と切り取り「ほら、こんなに切れたわ」短い陰毛を持って麻紀の顔に吹きかけた。
麻紀の顔に陰毛が散らばりながら、身体に絡んで飛んで行く。
再び中腰に成ると「ジョキ、ジョキ」と引っ張りながら切ってしまう。
「これで少し見える様に成ったわね」短く切り揃えられてしまった陰毛。
その姿を再び撮影する喜子、無残な姿が永久に残るので、いつでもまた呼び出して今度は色々な縛りを楽しみたい藤井だった。
強姦
36-029
撮影が終わると「麻紀さん!今夜撮影した写真は全て私が管理して、誰にも渡しませんからご安心して下さい」
「うぅ、うぅー」睨み付ける麻紀。
長襦袢を脱がせて全裸状態にされているので、縄目の跡が胸に数本残っている。
「今から、寝て頂く時間に成りますよ!明るいと眠れないでしょう?これを着けると直ぐに眠れますよ!あそこのベッドで!」
革で作られたアイマスクを、首を振って嫌がる麻紀の目に装着する藤井。
足枷を外す女達、後ろ手に縛った縄を解き始める藤井。
声が出せない状態に、今度は視界を奪われてしまった麻紀は、人の気配の方向に頭を向けるだけに成ってしまう。
暫くして縄が解かれて自由に成ったが、二人の女に両足を抱え込む様に持たれているので動く事は出来ない。
「さあ、ベッドに行きましょうか?」
その言葉と同時に四人に抱え上げられて、直ぐ横に在るレザー張りのベッドに運ばれて、べッドの四方に在る固定用の金具に付いている革のベルトに、麻紀の手首を巻付ける。
足は投げ出した状態で、仰向けに寝かされてしまった麻紀。
誰かが部屋に入って来た気配を感じるが、誰なの言葉を発しないので判らない。
声を出さないのは知っている人だからだと感じていたが「さあ、お客様今夜の売春婦をお楽しみ下さい」藤井の声が近づいてくる。
もう一人の客は男だ!煙草の臭いがするので、愛煙家で自分の知っている男?
そう思っていると、いきなり乳房を掴んで揉み始める。
持田支店長は既に全裸で、麻紀の身体を見ると直ぐに興奮状態に成っている。
薬の効果と、麻紀を抱ける気持ちの高ぶりが押さえられないのだ。
麻紀が急に身体を動かして暴れ始めるが、両手首が固定されているのでどうする事も出来ない。
男がベッドに上がると今度は女二人が、麻紀の足を抱え込んで持ってしまい全く抵抗が出来ない。
両足を抱え込まれて、大きく広げられると股間に持田の身体が入ってくる。
もう逃れる事が出来ない!自分は誰か判らない男に強姦されてしまうのだと諦めの心境に成る。
今度は乳首を吸い始めると、女の性か自分でも判る位乳首が硬く成ってゆく。
舐めて吸われて、左右を交互に舐めて吸われて、感じる事を拒否出来ない状況に変わる肉体。
今度は陰部に指が向かうと、乳房から徐々にお腹から陰部に愛撫が移動して来る。
相当SEXの熟練者の様だと思う気持ちが、冷静さが持田の愛撫で消えて行く麻紀。
身体が受け入れてしまう環境が徐々に造られてしまう。
持田が麻紀の陰部から確かめる様に愛液を吸い出すと、仰け反る麻紀の頭。
安心した様に挿入体勢に成る持田。
二人の女が足を持たなくても、持田が抱え上げて挿入をしてしまう。
大きく仰け反る麻紀の頭、綺麗にセットされた髪は完全に乱れてしまった。
麻紀自身は久々のSEX、この数年店の事と祖父母の事に執念を燃やして来たので、男性との交際は全く無かった。
安達周一とは結婚の約束をしていた付き合いだったが、彼の死後は殆ど恋愛状態に成る事は皆無だった。
店で言い寄る男性も上手に切り抜けていたので、本当に久々のSEXに成っていた。
一度火が点いてしまった麻紀の身体は、持田のテクニックによって完全目覚めてしまい。
何度も逝くのが自分でも判る程だった。
その感度の良さに持田も薬の影響で長い時間経過して、射精をして果ててしまう。
SEXが終わると、疲れ果てて放心状態の麻紀をそのまま残して、四人は桧旅館を深夜抜けだし帰路に就いた。
気絶している岸の縄を緩めて、いつでも自分で解ける状態にして帰って行った。
旅館の代金は前払いの為、明日の朝までは自由に成っている。
旅館の人は変態の連中は見学の人も沢山連れて来るので、旅館は出入りには感知していない。
「久しぶりに興奮したよ!」
「薬の影響は偉大だと改めて感じました」
嬉しそうに話す持田支店長は麻紀を抱いた事を実感して、途中からタクシーで自宅に帰って行った。
「この写真が有ればあの女はいつでも呼び出せます」別れ際に不気味に笑う藤井先生。
四人が旅館を離れて十分程で岸は漸く意識を取り戻して、縛られている縄を解いて部屋を見渡し誰も居ない事を確信した。
あの着物姿の麻紀ママは何処に居るのだろう?部屋の明かりを灯す岸は、ベッドに横たわる異様な姿の女性を発見する。
「ママさんなの?」と呼びかけると「うぅ、うぅ」と声の方を見る麻紀。
直ぐにアイマスクを外すと続けて猿轡を取り払う。
唾液でべたついた革の猿轡を外されて「岸さん!」とか細い声で話す。
手枷を外して自由に成ると麻紀は岸の身体に抱きついて、泣き始めて「恐かった!」と言った。
「誰に襲われたの?」
「判らないのよ!知らない人がいきなり銀平に来て、ここに連れて来られたの」
麻紀は敢えて藤井の名前を岸に伝えなかった。
自分の卑猥な写真を持って居る事実と、岸には行きずりの連中に捕まってレイプされた事にした方が良いと思ったのだ。
「お風呂に入りたいわ!岸さんが助けに来てくれなかったら、殺されたかも知れないわ」
確かに岸が来た事で、藤井達の行動が変わった事は事実だった。
麻紀は今夜ここに泊まるしか方法は無いだろうと考えていた。
自分の持ち物を捜して、石谷に連絡をしなければ心配していると思い直ぐに電話をする。
「お嬢様、ご無事でしたか?今どちらに?」
「色々有ったけれど、今は岸さんと旅館に来ているから、もう安心して。。。。」途中から涙声に変わる麻紀。
石谷は「今夜は岸さんとゆっくりされるのですね、明日お迎えに参ります」そう言って電話を終わったが、石谷には何か事件に巻き込まれた事が察しられていた。
「麻紀さん、お風呂に湯が入りましたよ」
「岸さんも一緒に入りましょう?」
麻紀には今後の復讐に岸は欠かせない人間に成ってしまった。
払拭
36-030
「綺麗な身体に縄の跡が付いてしまいましたね」
背中を流しながら気の毒そうに言う岸。
その後二人は隣の部屋に布団を敷き、抱き合いながら結ばれていた。
久しぶりに強姦でSEXをしてしまった麻紀に、男の味が戻ったのか?それとも思惑が有っての岸との行為に及んだのか?だがこの設定で結ばれない方が変だった。
翌朝の食事の時、麻紀は予てから考えていた阿部さんの土地を巡る事件を岸に伝えた。
唖然として聞いている岸に、麻紀は自分の祖父も持田支店長に騙されて財産を失った事実を伝えた。
「そんな事をしていたのですか?自分の減額は小さな事です!前々からハピットと共和住宅の噂は聞いた事が有りましたが、現実に聞くと許せませんね」
岸は自分のマンションの減額に、川瀬支店長が関係している事を聞いて完全に怒り始めた。
「岸さん!興奮しないで私に協力して、持田支店長と京極、そしてハピットの中西課長を葬り去りましょう」
「判りました!僕は麻紀さんの為に、そして亡く成られたお爺さんの為に協力しましょう、さし当たって何をしましょうか?殺せと言われたら殺したい奴らですからね」
「私は阿部さんの土地で持田支店長達が何か企みをしていると思っています」
岸は少し考えて「僕も変に思っている事が有るのです」と三百坪の土地を捜している話を始めた。
「地元の不動産会社に連絡しているのね?」
「僕の最初に感じた印象はコンビニの建設では?ハピットの出店を知らないコンビニが捜していると思ったのだ」
岸は麻紀の身体と、自分に正直に話してくれた事に完全に虜に成ってしまった。
昨夜変態に犯された事実は何処かに忘れ去るだけの魅力を感じていた。
持田支店長も昨夜の麻紀とのSEXで、益々麻紀を好きに成り自分の愛人にしたい気持ちが強く成っていた。
生まれて始めて強姦によるSEXは、持田支店長の新たな欲望を目覚めさせてしまった。
革のアイマスクに革の猿轡、両手を固定され自由を奪われて喘ぐ麻紀の姿に興奮が今でも蘇っていた。
昼過ぎ藤井先生が持田に夜会いたいと連絡をしてきた。
麻紀は金曜日の為店を休む事が出来ないので、石谷の車で大阪に戻る。
「心配させてすみません」
「ご無事で良かったです」二人の会話はそれだけで、無言の時間が流れた。
石谷は昨夜岸と一緒に過したと聞いてはいたが、麻紀の身に何かが起った事は事実だと考えていた。
急に独り言の様に「共和住宅は許せない!同じだわ!」藤井が共和住宅の顧問会計士だから、持田支店長と重ね合わせて考えていた。
「お嬢様、もう危険な事はお止めに成った方が。。。。。。」
「駄目よ!益々許せない気分なの!」そう言うと急に美容院の予約を始める麻紀。
「石谷さん、夜七時に美容院に迎えに来て頂けますか?」
「遅い時間に行かれるのですね」
「そのまま店に入ります、昨日休んだのでね」
何を決意したのか、一点を見つめて考え事をしている様にも見える麻紀だった。
夕方岸は阿部の自宅を訪問して、最近何か変わった事は有りませんか?と探りを入れた。
流石に持田支店長が提案したマンション建設の事は話せなかったが、藤井会計事務所に世話に成っている事を話した彰次。
藤井会計事務所を車に戻って調べると、共和住宅の顧問会計士をしている事が判った。
明らかに阿部の資産、資金の状態が共和住宅に筒抜けに成っていると感じ取り、早速麻紀に連絡をした岸。
「藤井会計事務所なのね!」噛みしめる様に言う麻紀の脳裏には昨夜の、忌まわしい事が蘇り電話が終わると「いゃーー」と大声で叫んでいた。
その後行きつけの美容院に歩いて向かう麻紀は、珍しく青い洋服姿で髪を風に靡かせていた。
「ママ!まあ珍しいわね、洋服?」
月に二度か三度洋服の日は有るが、その日は美容院には来ないので珍しいと言われたのだ。
美容師の店主が「今日は同伴?」早い時間だからその様に思って尋ねる。
「昨日休んだから、今夜は早く行くの?髪を染めて七時までに終りますか?」
「髪を染めるって?先週染めたと思うけれど、まだ伸びてないから染めなくても大丈夫だわ」
「違うのよ!黒に染めたいの!」強い調子で言う麻紀に驚いて「ママ、黒に染めても直ぐに戻ってしまいますよ!それに長いから時間も。。。。。」
「それじゃあ、切ります!短く切って下さい!それなら早いでしょう?」
麻紀は昨夜の悪夢を忘れる為と、あの連中にイメージチェンジをして興味を削ぐ事を考えた。
藤井の手元に写真が有るので、再び何かの要求をして来ると考えていた。
持田支店長も自分に対して、興味を持っているので避ける為でも有る。
「どれ位にするの?着物着るから少し長い方が良いと思うけれど、急に黒髪って彼氏の好み?」
そう尋ねられて、岸の言葉を思い出す。
「ママは夜の仕事って云うより、清楚な若奥様って感じがしますね!黒髪なら絶対水商売には見えませんよ!」
「岸さんは黒髪の女性がお好み?」
「は、はい」曖昧に返事をする岸。
その言葉も心の何処かに残っていたのかも知れないが、兎に角昨夜の悪夢を払拭したい麻紀。
結局腰まで伸びている髪を徐々に五十センチも切って、床には山の様な麻紀の茶髪が散乱していた。
最初から一気に切れなかった美容師に、驚かれて黒髪に染めてしまった。
七時に迎えに来た石谷が「ママは?」と店内を見廻す程の変身に成っていた。
「お嬢様!どうされたのですか?」驚きの表情の石谷の肩を叩いて「行きましょう!」
そう言って先に店を出て行く麻紀を、驚きながら付いて行く石谷。
変身
36-031
その姿はショートボブの黒髪で、以前より清楚で活動的な女性に見えて、新たなファンが増える予感がする姿に成っていた。
店に入ると早く来ている従業員に、新人と間違われる一幕も有り、開店時に来た従業員も麻紀の変身に驚きの表情に成ったが、全員が若返って前より綺麗と持ち上げた。
その頃持田支店長と藤井先生は三宮の料理屋で会っていた。
藤井は「ダイヤ建託のあの男を一刻も早く麻紀から遠ざけ様と思うのだが、何か良い方法は無いか?それと女を一人ママのクラブに送り込む手筈を整えた」
「いつもながら素早い先生の行動力に感心させられます」
「今は訴え無いだろうが、岸が私の周りをうろうろする可能性が有る!ママが私の素性を話せば逆上するだろう?」
「未だ多分岸には言わないと思いますね、行きずりの変態に襲われたと言っていると思いますね」
「岸が彼氏なら、言うと店も終りに成るな!それなら安心だ!だがあの男を遠ざけてしまわないと、今後遊べないからな!」
「阿部さんのマンションが完成したら、転勤は決まっている様なのですが、まだ半年先ですからね」
「近日中にママの店に行って様子を見てきて欲しい、忍び込ませる女性と同伴で行って頼み込んで貰えるか?」
「それなら早速明日行きましょう、私も麻紀の様子が見たいですから」嬉しそうに言う持田。
「支店長のSEXはまだまだ三十代でしたよ!」
「人に見られて女を抱いたのは始めてでしたが、意外と興奮出来ました」
「これから面白い人に会うのですよ、一緒に会いませんか?」
「どの様な面白さですか?」
「私達の仲間ですよ!」変な顔で見る持田。
「例の旅館でも時々一緒に遊びましたが、彼は医者でね!それで変態なのですよ!」
「医師ですか?」
「実は麻紀の事を話したら、乗り気に成りましてね!今から会うのですよ」
「もしかして婦人科の先生ですか?」
「その通りです、大きな病院の院長です」
「その様な大きな病院で、沢山看護師も居るのに?病院で遊ぶのですか?」
「そこが盲点で、有名人とか芸能人が秘密で診察に来る時だけ、院長が診察するシステムに成っている様です!最近では見るのが楽しみと聞きましたが、実際は判りませんがね」
「すると、時々遊ばれている訳です」
「そうです!そのシステムを使って麻紀に診察に来て貰うって事です」
「ママが病院に行きますか?」
「妊娠してしまったら、仕方が無いでしょう?それも相手が判らない強姦ですからね」
「えっ、それって私?ゴムを着けていましたよ」
「麻紀には判りませんから、妊娠も充分考えられるでしょう?その為に女を送り込むのです!現役の看護師を送り込むのですよ!院長のアイデアですが、上手く運ぶ様な気がします」
「私も先生の仲間に入れて下さい、先日から興味が湧いて興奮します」
「持田支店長にもサド、マゾの世界に興味が湧きましたか?」微笑みながら藤井は持田を近日中に仲間に入れると約束をした。
料理屋から出た二人は待ち合わせのスナックに向かう。
「卍」と書かれた会員制のスナックは、藤井達が情報交換する隠れ家の様な店に成っている。
勿論この店を通じて、桧旅館の予約もプレー内容もこの店で行っていた藤井。
「藤井先生!お久しぶりだな!良い女を見つけたらしいな」頭の禿げた五十代の小太りで、小さい男が店の奥から、二人を手招きして呼んだ。
藤井は持田支店長を紹介すると「共和住宅の支店長さんか?我が家も共和住宅で建てたのだよ!もう十五年に成るがね」そう言って笑った。
昨夜の話を詳しく語る藤井の話を聞いて「藤井先生の代わりに強姦したのだね!良かったか!」と尋ねると頷く持田の顔を見て「それで我々の会に入りたいと成った訳だな」そう言って微笑む院長。
「その通りです、今後ともよろしくお願いします」と軽く会釈をした。
「麻紀とか云う女がこれまで妊娠の経験が有るとか、婦人科に何度か通院していたら中々難しいと思うが、どちらも未経験なら罠に落とせる」
「それを調べさせる為に女を近づけます、先生推薦の弓子です」藤井は院長の案に便乗して計画を作った。
「弓子か?看護師で薬の扱いにも慣れているな!容姿も悪くないから潜入できるだろう」
「はい、例の先生に貰った薬を飲ませれば、生理が遅れますのでタイミングを見計らって弓子に言わせる段取りで、服部産婦人科を紹介されたら安心して診察に行くでしょう?」
「えっ、あの国道に面した大きな病院ですか?」驚く持田支店長。
「そうですよ!服部荘次郎先生です」
昨夜の十二時頃に別れてから、これだけ色々な事を決めてしまう藤井先生は何者だ!と思う程の行動力に呆れる。
今頃に成って、麻紀の着物姿の写真を服部に見せて、中々の美形だなと言わせて他の写真は一切見せる事が無い。
この世界の暗黙のルールの様で、服部は全くそれ以上の写真を要求する事は無く「弓子君に目を付けたのは正解だ!彼女劇団員の経験も有るので、芝居は上手だ」その様に言って笑う。
一度診察に来れば、もうまな板の鯉状態で、病気は作る事が出来ると付け加える服部。
持田は話を聞きながら、この世界は異質のものだと感じたが、麻紀の顔に被せられたアイマスクと猿轡姿が忘れられない。
一方危険を感じた米山桐子は芸能事務所を辞めて姿を消したが、麻紀が桐子の裏切り行為と直接客と取引を行った事実を告げたので、直ぐにその道のプロに連絡がされた。
警察よりも早く、事前に資料が残っているので捕まるのは時間の問題だ。
国内の暴力団から、海外のマフィアに人身売買として売り飛ばされてしまうのかも知れない。
勿論覚醒剤中毒にされて、売り飛ばされても年間数万人の行方不明者の一人に成るだけだった。
この日を境に米山桐子の消息は闇の中に消え去った。
桐子の友人菅野と喜子には、闇の組織が行動を起こす事は無いので、藤井にお金を貰って普通に生活をしている。
藤井に陵辱された事実は麻紀が言わないので、芸能事務所に知られる事は無い。
微かに残っている煙草の臭いと、体臭だけが麻紀の記憶に残っているが、中々特定は困難だと思った。
新たな危機
36-032
翌日持田支店長は昼過ぎ麻紀に「以前から良い女子が居たら紹介して欲しいと言っていたね」と電話をした。
「支店長さん!良い女性を紹介して下さるの?」
「看護師さんで、夜勤明けの日に週三日程働きたいらしいのだ!今夜一緒に連れて行って面接と店の雰囲気を見せても良いかな?」
「看護師さんって、お給料良いのでしょう?」
「一人暮らしで色々物入りらしい」
「お幾つ?」
「三十歳だったと思う」
「支店長さんの推薦なら安心だわ!お願いします」
「同伴は出来ないので、九時に店に連れて行くよ!頼んだよ!」で電話が終わった。
一昨日自分を強姦した人間だとは考えても居ないが、持田は声を聞いただけであのシーンが蘇り興奮していた。
麻紀はあの藤井を連れて来たのは、持田支店長だ!全てはあの男が原因だ!あの藤井からどの様にして写真を取り戻すか?昨日からその事を絶えず考えている。
いつ呼び出されるか?それも心配の種に成っているのだ。
電話が終わった持田支店長は急に岸の存在を思い出して、あの二人は良い仲だが、転勤まで我慢出来ないと考え始める。
夜、山木弓子と打ち合わせの食事の時に、岸の存在を弓子に喋ってしまった。
弓子は「その話は藤井先生から聞いたわ、転勤まで待てないなら簡単よ!」
「どうするのだ!」
「転勤まで家庭を壊せば、岸って人も麻紀ママに通えなく成るでしょう?私が奥さんに電話してあげるわ!それで家庭崩壊に成る」
「その手が有ったか?岸も仕事と家庭で手一杯に成って、麻紀に近寄らないか?それは妙案だ」
打ち合わせの後店に向かう二人、出迎えの麻紀の姿に仰天の表情に成ってしまった持田支店長。
「どうしたのだ!その髪は?」
「気分転換かな?」と微笑んだが、持田には直ぐに理由が判っていた。
「若返って美人度が増したね、黒髪は清楚に見えてママには見えないがね」
逆に上機嫌に成ってしまう持田支店長。
その後山木弓子を店の隅に連れて行って履歴書を見て、持田支店長の紹介ですし働ける日から来て貰う事に成る。
弓子は上手に話して、麻紀に絶対に悟られない。
酒も適当に飲めるので、店で働くには全く支障が無いとマネージャー小杉と相談して採用が決まった。
トイレから藤井に採用に成りましたと連絡をする持田。
弓子は早速麻紀のグラスに悟られない様に、薬を混入する事を忘れてはいなかった。
一週間に一度飲ませれば、生理が遅れるか飛ぶので話が進め易く成る。
「山木君の病院は神戸では大きい産婦人科でね、有名人もお忍びで来る程の病院なのだよ!完全看護で入院患者も多いので、看護師さんも多い」持田支店長が戻って来た麻紀に話す。
「そんなに大きな病院なの?服部産婦人科病院って?」弓子に尋ねると、薄いウーロン割を飲む麻紀。
その様子を見ながら「ママもおめでたの時は是非!紹介しますわ!VIP待遇で!」
「それはありがとう!でも先ずは結婚相手から捜さないと駄目だわ!今まで婦人科には縁が無かったけれど、これからは有ると良いわ」そう言って微笑む。
持田支店長は流石に上手に話すと感心してしまい、話題を他の話に変える。
しばらくして持田と山木は店を後にして、来週の火曜日から勤める事に成った弓子。
「中々素晴らしい話術だったな!病院履歴まで聞き出してしまったな」
帰りのタクシーに乗って話す持田支店長。
「院長に今夜報告して置きます」
「運転手さん、私は大阪駅で降ろして下さい、彼女は自宅まで送って下さい」
「はい、判りました」と答えた運転手は石谷で、店の近くで待機していた処に乗り込んで来たのだ。
石谷は持田の顔を知っているが、持田は記憶に残っていないだろうと観察していた。
タクシーの中の会話が、新たな麻紀を陥れる為の話だとは気付く筈も無い。
弓子の自宅マンションは神戸市のポートアイランドだった事は、石谷のチェックに残った。
何故持田支店長が自宅までタクシーに乗らなかったのか?の疑問は多少残っていた。
持田支店長は十一時にダイヤ建託の川瀬支店長と、大阪駅の近くで会っていたのだ。
「遅い時間にすみません!」川瀬支店長が言うと「私も先程までホワイティアに行っていました」
「支店長は良いですね、私は岸が最近行くので行かない様にしています」
「その岸君の事で頼みたいのだが、転勤は聞いたがもう少し早く移動をさせる事は出来ないか?」
「どうしてですか?」
「岸君が最近ママに近づいて、我々の例の事を探っている様なのです」
「えー、それは大変です!彼に知られたら私の首も危なく成ってしまいます」
「何処まで嗅ぎ付けたか、あのママが例の事を喋るとは思えないが、もしもの事が有るので危険だ」
「裏で共和住宅さんと繋がっていたと知ったら、岸の口から社内に広がると会社が危機に陥る」
「私はママの口を封じる手立てをしているが、川瀬さんは岸の処遇を考えて下さい」
「判りました、明日にでも尾藤専務に相談して岸の処遇を急がせます」
まさか麻紀ママを病院送りにしてしまう方法を考えているとは、川瀬も予想もしていなかった。
持田支店長と藤井先生には、一石二鳥の素晴らしい作戦に成っている。
藤井は持田支店長には話してはいなかったが、岸が乱入してきた時から、自分達の仲間の服部荘次郎に麻紀を売り飛ばす事を考えていた。
もう少し遊びたかったが、岸の乱入で短縮され持田支店長は顔を見られていないが、自分は完全に顔を晒している。
岸と持田の関係、そしてダイヤ建託との関わりを聞くと、この方法が得策だと判断したのだ。
自分の予想した通り、逃げた桐子とは連絡が出来なく成ったと喜子からの電話で判断が正しかったと思っていた。
混乱
36-033
持田支店長は麻紀に未練一杯で、自分は顔を見られていない安心感で、その後も以前よりも多く店に通い始める事に成る。
数日後、岸は二重の苦しみに晒される事に成った。
妻の芳美が麻紀との関係を弓子にたれ込まれて、調べ始めてしまった。
会社では川瀬支店長が「岸君!栄転おめでとう!急なのだが北陸福井営業所の所長に大抜擢だ!」
確かに営業所の所長は栄転だが、神戸と異なり規模は小さく北陸支社の傘下の営業所だ。
北陸支社は金沢に在り、北陸の福井、石川、富山の三県の中心に成っている。
福井営業所の社員は五名、現場が有る時は人数が多少増えるが、小規模な営業所だった。
「急に転勤ですか?営業所長って形だけでしょう?」岸は完全に爆発してしまった。
だが麻紀に聞いた譲渡の話は切り札として喋らない岸。
「兎に角、阿部さんのマンションが完成するまで、転勤を拒否します」
「会社の命令を無視すれば、それ相応の覚悟が必要に成るが、それでも良いのか!」
「そうですか、それなら私にも考えが有ります!私の情報を社内に暴露します」
「君の情報って。。。。。。。」と言い始めて口を閉じると、岸に支店長室を出て行く様に命じた。
これは明らかに、知っていると思う川瀬支店長は、尾藤専務に「岸がハピットと共和の事を知っている様です!如何対処致しましょうか?」
「岸は転勤を嫌がっているのか?」
「阿部さんのマンション完成まで留まりたいと申しております」
「阿部さんのマンションでまだ何か有るのか?阿部さんはまだ土地を沢山お持ちなのか?」
「はい、もう一棟建設出来る土地はお持ちで、岸に任せると聞いております」
「それをあてにしているのだな、具体的にハピットの裏取引の話をしたか?」
「いいえ、はっきりとは言いませんでしたが、知っていると思います」
「川瀬君もしかして、共和に何か見返りを貰ったのでは無いだろうね!」
「滅相も有りませんその様な事は致しておりません」
「それなら良いが、共和の持田支店長は荒技を使う事で有名な男だ!賄賂と女は得意中の得意らしい!一度貰ってしまうともう取り返しがつかないぞ!」
その言葉に背中が冷たく成る川瀬、もう一度検討してみると電話が終わったが、自分の事が露見する日が近いと怯え始めた。
岸は転勤の話にムカつき、クラブホワィティアを目指さずには我慢出来ない状況に成る。
麻紀に連絡すると外で会いましょう!とクラブに来なくても食事をしましょうと、何かを察して誘った。
芳美の雇った探偵に尾行されている事も知らずに、夕方岸は指定の小料理屋に向かった。
岸は麻紀が変身してから始めて会ったので、その変貌に驚き声を失っていた。
「若く成ったわ!と言われるのよ」そう言って岸の前でぐるりと一回転をした。
「本当ですね、クラブのママには見えませんね、テレビに出るタレントさんの様ですよ」
先程迄の機嫌の悪さは一気に消えて、顔がにやけてしまう岸。
料理が運ばれて酒を飲み始めると、岸は転勤を言い渡されたと話し出した。
今、阿部のマンションが建設中なのに転勤は絶対に変だと、岸は力説した。
「私達が関係有ると知っている人が、会社の上層部に話したのかしら?」
そう言った時、麻紀は自分を強姦した男を想像していた。
「何故でしょう?僕はまだ麻紀さんに聞いた事は誰にも話してないのですよ」
麻紀は惚けて「別の事が原因かしら?」と言った。
「阿部さんが私を別の担当者に変えて欲しいと言う筈無いし」
「私は、岸さんの転勤は前から決まっていたと思いますよ!自分達が裏取引をした事がやがて聞こえて来ますからね」
麻紀は自分が二人に女性を世話したとは言っていない。
有馬温泉で接待をして、金品の受け渡しが行われていたとまでは教えたのだが、女性の話をすると岸の自分に対する見方が変わる気がしたのだ。
「一応転勤は断りましたが、この後どの様な事に成るのか予想が出来ません」
「阿部さんの事で何か変わっている事は会計士以外に何か有りますか?」
「明日少し詳しく阿部さんに聞いてきます」
「事件は全て阿部さんの建設に絡んでいると思うわ、まだ何か企みが隠れているのではないでしょうか?」
「判りました!麻紀さんに会えて元気が出て来ました!必ず仇を討ちましょう」
岸は嬉しくて飲み過ぎてしまい石谷の車で自宅まで送らせる事に成る。
タクシーに乗る寸前酔っている岸は麻紀に抱きつく!その場面を尾行の探偵が逃す筈も無く撮影されてしまった。
まだ十時にも成っていないのに、少し酔ったたと思いながら先にタクシーを降りて店に入る麻紀。
今夜は弓子が薬を飲ませる為に待ち構えている。
翌日阿部の建設現場に行った岸は、二日酔いの顔で阿部彰次に少しお尋ねしたい事が有りますと切り出した。
岸は自分が転勤に成るかも知れないと切り出すと「えっ、まだ早いだろう?来年の春だと聞いている」と口走ってしまった彰次。
「それって私の転勤を阿部さんはご存じなのですか?」驚いて確かめる岸。
しまったと顔に出ている彰次は「いゃーそのー共和住宅の支店長に聞いたのだよ」
「他社の支店長にですか?どう言う事でしょう?もう少し詳しく聞かせて下さい!僕は昨日聞いたのですよ!」
「いつ聞いたかな?中元の時に聞いた様なきがするな」
「僕はその辞令を断りました!もう少し詳しく聞かせて下さい」
岸に詰め寄られて「岸君が転勤しないのなら、話は変わるな!」独り言の様に言って「実は岸君が転勤だと聞いたので、共和に見積もり貰ったのだ」
「見積もりって?何ですか?」
「向こうの土地にマンションを建設する話だよ」
「えーーーーーーー!あの土地は私にと約束して下さいました」
「それは岸君が転勤、それも栄転だと聞いたので、共和の支店長に頼んだのだよ」
「あの様な悪党の口車に乗ったら駄目です!撤回して下さい」
「だが、会計事務所の偉い先生が中に入って、我が家の相続まで考えて貰っているからな」
「兎に角計画書を見せて下さい、私が検証して阿部さんの為に最善の方法を考えます」
「岸君!栄転では無かったのか?」
「馬鹿な事を、これから寒く成る北陸の山の中ですよ」
「そうか、栄転は嘘か!」呟く様に言う彰次。
マンションは三階部分が終り、四階の工事が始まっている。
十月も下旬に差し掛かっていた。
岸は共和住宅の計画書を借りて、そのままコピーをして社内の誰にも見せずに自宅に持ち帰った。
妊娠か?
36-034
だが自宅には誰も居ない、子供の姿も妻の芳美の姿も見えない。
テーブルの上に(しばらく実家に帰ります)の文字と麻紀に抱きついている写真が置かれていた。
どう見ても飲み屋のママと抱き合っている写真には見えない。
昨日の写真が既に妻の手元に有る事は、以前から芳美は自分の行動を監視していたのか?有馬温泉も知っているのか?それなら修復は不可能?その様な事を考えながら、インスタントラーメンを作り始める。
持ち帰った計画書を見て、今のマンションよりも大きい規模のマンション建設と、他に郊外の数軒のマンションの図面が有る。
藤井の計画書には、離れた場所に土地を買ってマンションの建設を勧めている。
結局五階建てのマンションを二棟建てる計画に成っている。
確かに大きな借金が出来、相続税は皆無だが支払いはこの先三十年続く事に成る。
彰次に相続税は掛らないが、相続した人には建設資金と土地の購入代金で、家賃収入は殆ど消えるのが見て取れた。
妻が自分で探偵を雇うだろうか?の疑問を抱きながら、今後どの様な展開になるのだろう?と平穏だった自分の人生が急に大きな波を感じていた。
近くの桜モータースの攻略をしていた芦田に、桜モータースの社長の娘から連絡が有り、条件次第では貸しても良いとの返事が来たのだ。
本当は家賃月百万程度だったのを百五十万と、芦田は考えられない金額を提示していたのだ。
安西課長の桜モータースを落とせの言葉に、芦田は便乗した様な値段を提示していた。
来年早々には阿部のコンビニ工事が始まるのに、次の計画が水面下で進んでいる。
年内には工事用の資材もコンビニ建設用地からなく成るので、三ヶ月で工事が終了して四月にはオープンの運びに成る予定だ。
芦田の元には中々良い返事が届かない、姉妹の間の取り分で揉めているのは明らかで、娘は嫁いでしまうと自分の子供と亭主の事が重要で、実家は二の次、三の次に成っている。
いつまでも子供だと思っているのは両親だけだ。
嫁いで子供が出来れば既にお互いは赤の他人で、特に金銭が絡むと欲が剥き出しに成る様だ。
親父は自分が作った会社を存続させたいと思っているが、後継者が居ないので困っていた。
姉はコンビニに貸す話に乗り気で、妹はマンションン建設を主張。
妹東紗子はコンビニで被害を受けた人を知っているので、マンション建設を主張。
姉西田陽子は建設資金も殆ど必要無いコンビニ賃貸を主張。
父桜井洋三は孫でも良いから、後継者が欲しいのだが長女の孫は高校生で、全く興味を示さずこれからはパソコンの時代だと、ゲームに明け暮れている。
芦田は賛成の姉に、姉妹で争う構図が有るので、親父を賛成に向ける作戦を考える事にして再三訪問していた。
本部の安西課長の激に焦りを感じているが、最近は姉の西田陽子に信頼されてきたので手応えを感じる様に成っていた。
まだコンビニの建設が始まっていないが、建設が始まるとどの様な事に成るのか見当が付かない。
唯一桜モータースの桜井が「阿部さんの家は凄いね!次々とマンションを建設されて、大地主だから仕方が無いがな!」と呟いた事が芦田の耳に残っていた。
十一月の十日過ぎに成っても、岸の家族は実家から戻って来ない、岸も敢えて迎えに行く事もしなかった。
その後阿部に代案を持って行く為に、自分の懇意の会計士、根岸に頼み計画書の作成を依頼していた。
転勤の話はその後川瀬支店長からは無く、気まずい雰囲気が社内では続いていた。
麻紀は藤井の呼び出しがいつ来るか?その時写真を取り返す事を考えていたが、全く連絡が無い。
持田支店長はその後も二度程、弓子の出勤日に合わせた様にやって来て、毎回以前より清楚に成って美しく成ったと褒め称える。
その麻紀は身体の変調が気に成り始めている。
生理が十日以上遅れて、あの強姦された光景を最近度々思い出す様に成っていた。
その麻紀の様子を絶えず観察しているのが弓子で、薬を数回飲ませているので、そろそろ話すタイミングが近づいていると機会を伺っている。
弓子と麻紀が接客中に、お客様がトイレに立たれた時を見計らって「ママ、お酒は控えた方が宜しいのでは?」と小声で口走る弓子。
「どうして?」
「変な事を言ってごめんなさい!妊娠されているのかな?と思って!」
「えっ」驚く麻紀に「私病院で沢山の妊婦さんを見てきたので、勘の様なものですが、ママも美人だから彼氏の一人位はいらっしゃるでしょう?」そう言って微笑む。
「そんな事が顔で判るの?」
「顔だけでは有りませんよ!立ち振る舞いとか飲み物とか、色々です!心当たりが有るのですね!病院の検査薬持って来ましょうか?市販に比べて正確ですよ」
「えっ、そうね!誰にも言わないでね」急に小声で喋る麻紀。
「勿論です!私も医療に携わる者ですから、患者の秘密は守ります」
そこまで話した時に、トイレから客が戻って話は終わったが、その後の麻紀の姿は心此処に在らずの状態に成っているのを、弓子に見られていた。
二日後弓子は態々電話で「ママ!今夜検査薬持って行こうと思うのですが、もう調べました?」と確認の電話をしたのだ。
強姦されてから四十日以上が経過しているのに、生理が来ないのは妊娠?不安な二日を過したが、弓子の病院の検査薬は確かだとの話に市販の薬を買わなかった麻紀。
それを確かめてから持って行こうと考えている弓子、もし既に検査薬を使っていたら、別の方法を考えなければ成らないからだ。
「弓子さんの持って来られるのを待っています」の言葉が聞きたい弓子。
近くの喫茶店で、開店前に会いたいと麻紀は弓子に言った。
店で戸惑う姿と、誰かに見られると困るので提案する麻紀。
弓子はこれで完璧に罠に落ちたと、院長の服部荘次郎に連絡すると大いに喜んで「VIP待遇だな」そう言って笑った。
悪魔からの手紙
36-035
日が短く夕方の六時は暗く、人の顔も少し見え辛く成る時間に美容院に向かう麻紀。
その麻紀の後を一人の女性が尾行をしている。
岸の妻芳美が麻紀を捜して尾行して、岸との密会現場を押さえて離婚を有利に行おうとしていた。
これまでに数回麻紀のマンションに来たが、セキュリティが万全で中々麻紀に会えない。
先日も尾行したが何事も無く、岸との密会は無かったのだ。
美容院に入った後も近くで待ち伏せ状態の芳美、執念としか思えない。
しばらくして麻紀が美容院を出て来ると、再び尾行を始める。
この女に亭主を取られたと思う芳美は、本当は殺したい気分だが必死で押さえていた。
しばらく歩いて、喫茶店に入って行く麻紀、芳美もそのまま躊躇いもせずに付いて入って行く。
確かに麻紀と芳美を比べれば、どう見ても麻紀が美人で雲泥の差と言うべきだった。
弓子は既に来店して、麻紀を見つけて手招きをして呼んだ。
芳美は麻紀の後に付いて、弓子の直ぐ後ろの席に座ると聞き耳を立てる。
注文が終わると早速小箱を差し出して「これで調べられるのですよ、トイレで調べて来た方が良いですよ!色が変われば妊娠です!変わらなければ妊娠していません」
そう言って手渡されると「そうね、店で調べるのも気に成るから、今知った方が。。。。。」と言いながら、コーヒーが来る前にトイレに向かう麻紀。
どの様にしても色が変わる様に細工がされているのに、と後ろ姿に微笑む弓子。
麻紀が視界から消えると、直ぐに電話で服部に報告をすると、服部が今後は段取り通りに進めるが、公認会計士の藤井の処に写真が有るので、それを頂いて来る様に弓子に依頼した。
藤井の頼みで病院に入院させて、阿部のマンション完成まで、麻紀の自由を奪う計画。
麻紀が抵抗した時に、その写真を盾に口を封じる事を考えている。
「住所を言って」それを書き留める弓子、紙ナプキンに書き留めて、手帳に書き直す弓子。
その時顔面蒼白の麻紀がトイレから戻って来て、弓子は慌てて紙ナプキンを丸めて灰皿に置いた。
「どうだった?」判っていながら心配顔で尋ねる弓子。
「妊娠していたわ、困ったわ」
「彼氏の子供でしょう?この際産んだら?」
「それが、色々有って産めないわ」
充分事情を知っている弓子は心配そうに「いつ妊ったの?」
「九月の終りです、どうしたら良いでしょう?」
「産めないなら堕ろすしか無いわね」
「そうですよね!」放心状態の麻紀。
「私の病院のVIPで手術したら?有名人とか芸能人がお忍びで来ていますよ!大体一泊二日ですね、院長に頼んであげましょうか?」
「。。。。。。。」
「誰にも内緒が良いのでしょう?勿論カルテにも残りませんから、芸能記者に探られても大丈夫です、あっ芸能人では無かったわ」
「素晴らしいのですね、芸能人も多いのですか?」
弓子は適当な関西出身の芸能人の名前を数名あげて、安心させる。
「弓子さん、二三日考えるわ!多分お願いする事に成ると思いますけれど、少し考えるわ!」麻紀が言った後、弓子は急にトイレに証拠品の回収の為に向かった。
麻紀は急に石谷に電話を始める。
聞き耳を立てる芳美は「藤井って会計士は許せない!」と話して涙を流している麻紀を見ていた。
電話が終わった時、弓子が戻って来ると力無く麻紀は弓子と一緒に喫茶店を出て行く。
急いで灰皿の紙ナプキンを拾い持ち去る芳美。
自宅に帰った芳美は高校生の息子芳樹に「お父さんとあの女の密会写真を、この人が持って居るらしいわ」そう言ってくしゃくしゃに成っている紙ナプキンを広げて見せる。
「驚いたら駄目だよ!芳樹の弟か妹を妊娠しているらしい」
「兎に角証拠を手に入れなければ、裁判は有利に進められない、まだ一度もお父さんとあの女が一緒の時が無いからね」
弓子の囁きで別居状態に成り、離婚を考えている芳美は何も証拠が無いので物的証拠が欲しい。
元々お互い唯何となく暮らしていたので、一度拗れると収集が出来なく成る。
藤井の自宅は意外と芳美の実家から近い。
岸の家もそれ程離れていないので、芳樹も学校には近く成っている。
弓子が仕掛けた岸の家族崩壊は意外な方向に進もうとしていた。
麻紀はその日一日暗い。
横で見ている弓子は事情を知っているが、小杉マネージャーは心配顔で「ママ体調が悪いのなら、早く上がって下さい」と声を掛けた。
店の運営、女性の手配等は全て小杉が行うので、麻紀が居なくても店の運営は出来る。
だが、半分以上の客は麻紀がお目当てで来店するので、営業成績には麻紀の存在は不可欠だった。
弓子は帰る時、念を押す様に「早めにした方が良いわよ、日々成長するからね」と言って帰った。
麻紀は自宅に深夜帰ると、ネットで服部産婦人科病院を始めて調べた。
大きな建物に綺麗な外観、産科、婦人科、不妊治療、婦人内科、婦人外科と書いて有るのは、内科も外科も有るが女性専用なのだろうと思った。
大きな病院なので、看護師も多いと弓子も話していた事を思い出す。
小さな記載で、VIP専用病室完備と書いてあるので、有名人芸能人専用なのだろう。
この様な部屋は特別高いのだろうと思うが、知り合いに会う可能性も有ると思案してしまう麻紀。
翌日も憂鬱な時間を過して帰宅すると、郵便物をマンションの管理部が預かって居ると連絡が有った。
書留郵便、宅配便等は管理室で一括受け取りに成っている。
書留郵便を受け取る麻紀は、差出人藤井を見て遂に脅迫か?貴方の策謀で妊娠したのに、今更脅迫に屈するか!怒り心頭の表情で自宅に入ると、勢いよく封筒を開けた。
中身を見て麻紀は、文章を読む以前に呆然としていた。
火災
36-036
中から出て来たのは、小切手で金額は百万に成っている。
文章は、大変申し訳無い事をしてしまいました。
どうしても自分の思いを制御出来ませんでした。
写真は誰にも見せていませんので安心して下さい。
貴女を強姦した男の名前は言えませんが、私と同じ趣味を持つ男です。
罪の大きさに比べれば少額では有りますが、お許し願いたいと結んで有った。
「何なの?藤井って罪の重さを感じたの?」独り言を言いながら、小切手を破ろうとしたが、このお金が有ればVIPに入院出来る?一泊二日なら充分だわと思い直した。
だが謝れば良いとは言えた事では無いと、怒りは収まらないが、誰とも判らない父親の子供を産む訳にはいかない。
明日弓子に頼んでVIP専用病室に入院する段取りに決める麻紀。
荘次郎と藤井が仕組んだ計画に填まってしまった。
翌日、麻紀は弓子にVIPは幾らだと尋ねると、私の顔で普通料金で良いと院長が言って下さったと話した。
普通は前日に準備をして、翌日手術で終わるのだがVIPは前日から入院して、他の検査も行い手術の準備をして翌日手術に成ると話した。
この検査で他の病気が発見される事も多いと、弓子は脅かす。
もし、検査を受けるなら別に二万程度必要だと思うと言って、この際他も検査して貰った方が得よ!時間が無駄でしょう?と微笑んだ。
麻紀は昨日のお金も有るので、二日を無駄に過すのも勿体ないと思い検査も受ける事にした。
弓子が日時は院長と相談して連絡すると言った。
その後麻紀は決断して吹っ切れた様に明るく成って、夜は店の中を軽快に移動して働いていた。
だが日曜日、予想もしていない出来事に再び驚かされる事に成る。
藤井先生の自宅が全焼、焼け跡から藤井先生の遺体が発見されたのだ。
家政婦は通いで、家族は先生一人暮らしで時々知り合いが来る程度。
隣の家とは少し離れているので、全く判らないが変な燃え方をしているので、放火の疑いも有るとテレビが伝えた。
事務所に写真を置いていないから、自宅が全焼なら全て燃えてしまったのだろうか?小切手が換金されたのが金曜日で助かったと思う麻紀。
これが明日なら、疑われるかも知れないと思った。
だが夕方兵庫県警がその小切手の事を聞き込みにやって来た。
百万の大金を小切手で貰っているので、何かと尋ねられた。
安住圭刑事と内海刑事の二人が、執拗に尋ねるので「お貸ししていた物を返して頂いただけです」
「新地のママはお金持ちですね、百万もお客に貸すのですか?」
「時と場合によりますが、それ位の金は貸す事有りますよ!付けも百万程貯めている方もいらっしゃいます」
安住刑事は三十代半ば、内海刑事は二十代だろうと見えた。
マンションを出ると、二人は声を揃えて「美人ですねー!」と顔を見合わせていた。
「水商売には見えなかったですね!」
「本当だ!黒髪で清楚だったな!新地のクラブは流石だな!」
「先輩通ったら如何ですか?独身の様ですよ」
「俺達の給料で通えるか!」
二人は麻紀に一目惚れして帰って行った。
麻紀はその日、入院の為の細々とした物を揃える為に半日を過し、夕方祖母の老人ホームに向かった。
半分惚けている祖母に「麻紀!何か身体の調子が悪いのか?」と尋ねられてドキッとした。
何かが違うと判るのだろうか?妊娠している事が祖母には勘で判るのか?帰り道その様な事を考えていると、弓子が「日程決まったわ!今週の土曜と日曜よ」
「えっ、病院休みなのでは?」
「VIPの方は休みの日が多いのよ、他の患者さんが居ない日の方が都合良いでしょう?」
そう言われて納得する麻紀は、土日なら一日休めば月曜には店に復帰出来ると思って、直ぐに「お願いするわ」と返事をしてした。
藤井が焼死した事が服部荘次郎には、麻紀を自分主導でどの様にでも出来る様に成った。
過去にも芸能人の堕胎を頼まれて遊んだ事が度々有る荘次郎は、格好の女性を手に入れたと喜んでいた。
卍の仲間には医療プレーの好きな人が居るので、藤井が亡くなったので今度は自分が仲間に売る荘次郎。
持田支店長も藤井先生の焼死は、計算外の出来事だった。
藤井に取り入って、自分の将来の出世と変態趣味の世界を教えて貰い、これからと思っていた矢先の出来事に、ショックは隠せない。
藤井が居なく成って、卍のグループも持田から遠くに成ってしまった。
藤井先生の焼死は阿部の自宅でも、華子が良い先生で頼りにしようと考えていたのにと残念がった。
岸には朗報で阿部の計画書に文句を言う会計士が消えた事に成る。
頼んでいる会計士に資料の作成を急がせて、マンション建設を勝ち取ろうとしていた。
妻芳美はその後も連絡が無く、岸は既に離婚も視野に入れ始めていた。
妻と別れて麻紀と結婚?しかしそれは親父達が反対するだろう?それより麻紀自身が自分と結婚は考えて居ないと思う。
麻紀も自分の卑猥な画像が灰に成ったのは嬉しいが、自分を強姦した人間と男女二人の正体が全く判らない。
持田支店長は、藤井先生に代る会計士の先生の準備を急いで、福永に阿部のマンション建設とマンションの用地購入を迫れと命じていた。
金曜日には持田支店長が店に来て、藤井先生の自宅が火災で先生も亡くなられたと話した。
麻紀は自分の卑猥な画像と、強姦をさせた人物が藤井だとも言えずに、驚く仕草を見せた。
持田支店長は、流石は新地のクラブのママだ!微塵も素振りを見せないと感心していた。
もう一度あの様なレイプをしてみたいと、麻紀の洋服姿を舐める様に見ていた。
「支店長?どうかなさったの?」急に麻紀に言われて驚く持田は、その後の病院の話がどの様に成っているのか知りたかった。
監禁病棟
36-037
「ママの顔を見ていたら、今までと少し違う様に感じたから」
適当に誤魔化した持田の言葉がこの先麻紀の判断を狂わせて、地獄に突き落とされてしまう引き金に成ってしまう。
「そうなの?髪が短くなった以外何も変わってないわよ!」
そうは言ったが、緊縛、強姦、岸とのSEXと近年では麻紀には大きな出来事が起っている。
そして妊娠、明日は検査と準備で日曜日には手術の予定。
この二ヶ月で劇的に変わった事を噛みしめて、金曜日の仕事を終わった。
その様な麻紀の事を知らずに、岸は翌日会計士の先生に阿部のマンションの新しい計画書を相談に向かっていた。
一方兵庫県警と消防庁の火災現場調査で、藤井先生の部屋から無数の写真の燃え残りを発見して分析を始めていた。
「この先生相当の変態だな!数え切れない程の緊縛写真を持って居るよ!」
「それも有名な女性では無い、素人だろう」鑑識の男が安住に話した。
「それに燃えてしまったが、高級なカメラと現像設備も備えて居た様だ」
「燃えていない写真も相当な数残っているのか?」
「数百枚は残っているだろう?全裸の緊縛も有れば着物、洋服、卑猥な姿の写真が多い」
「それは承諾して撮影しているのかな?」
「違うだろう?女性の目が怒りを表わしているので、強姦の様な感じだな!分析が終わったら、捜査課に廻すよ!興奮するぞ!」と笑いながら電話が切れた。
その頃麻紀は石谷には内緒で、タクシーで服部産婦人科病院に向かっていた。
石谷には強姦されて妊娠したとはとても言う事が出来ない。
誰の子供か判らないが、自分が始めて授かった子供を闇に葬るのは耐え難い事だが、仕方が無いと決意していた。
入院患者の見舞いが有るので、玄関横の小さな扉は開いているので、朝から見舞いの人が二組程入って行った。
受付に一人、案内の様な女性が座って病室等を案内している。
「すみません、今日から検査入院する松山と申します」と言うと「あっ、VIPの方ですね、そこのエレベーターで六階にどうぞ!院長がお待ちです」と微笑みながら言った。
時々休みに来院するのだろう?心得た案内だと思って行こうとすると「これをお持ち下さい」鍵の様な物を渡される。
部屋の鍵かと思いながらエレベーターに入ると、六階のボタンが存在しない。
カバーが有ってボタンを押す事が出来ない仕組みに成っていた。
麻紀はここにこの鍵を使うのかと、差し込むとカバーが開いて六階のボタンが表われた。
既に六階では、院長を中心に医療プレーのマニアと看護師数人が待っていた。
勿論弓子もその中に入っているが、あくまで安心させる案内役に成る予定だ。
偽医者で医療プレーの男、松本孝一、松尾尚人、女性の元医師芽野絵里の三人が偽医者で参加している。
松本は元医学部出身だが、国家試験が合格出来ずに断念した男。
松尾は院長と変わらない年齢で、全く医者の経験も何も無いが、医療プレーでは素晴らしい能力を発揮する。
芽野は医療行為で、違法な事をして医師免許を剥奪された婦人科医だ。
その為、完全に三人は医者に見える事は間違い無い。
エレベーターを出ると、前に受付が在り弓子が待っていた。
「ママ、私が案内するわ、鍵貰ったのを貰える?」
この鍵が無ければエレベーターで他の階には移動出来ない仕組みに成っている。
麻紀は今後この六階から、脱出をする為にはこの鍵が必要に成り事実上の監禁病棟に成る事を知らない。
携帯電話が使えない構造に成っている事も今は未だ知らない。
「院長先生の話を聞いてね」
そう言って応接室の様な場所に案内される麻紀。
「おはようございます。よろしくお願い致します」とお辞儀をしながら入った麻紀。
目の前には小太りの禿げ頭の男が座って、眼鏡に手を持って行って麻紀の姿を舐める様に見た。
「どうぞお掛け下さい」麻紀に前のソファに座る様に促した。
「新地のクラブのママさんと聞いていますが、妊娠は初めてですか?」
「はい」カルテの様な物を持って尋ねる院長は、もう一度過去の病歴、婦人科の受診歴の確認を行う。
もしこの時、受診歴が見つかれば方法を大きく変更しなければ成らないので、慎重に尋ねる。
「妊娠されているのは、山木君から聞きましたが、これまでに婦人科関係の病気で診察に行かれた事は有りますか?」
「いいえ、今回が初めてなので、とても心配しています」
「そうですか?次に健康診断の件ですが、当医院は女性の病気と出産を専門にしている病院ですが、本日婦人科関係の検査を同時に受けられると云う事で宜しいのでしょうか?」
「はい、私も三十歳を越えましたので、今まで一度も検査を受けていませんので、良い機会だと思いまして検査をお願いしたいと思っています」
「一応、乳癌、子宮癌、卵巣癌を含めた女性の病気全般の検査に成りますが、宜しいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
「多少、痛い、恥ずかしい部分も有りますが、それは検査だと割り切って下さい」
「はい、心得ています」
「それから、明日の手術の為に、今日の検査中に事前の準備を行いますので、検査等で異常が無ければ明日夕方には帰宅出来ると思います」
「判りました」
説明を終わる時、三人の偽医者が入室して「今回の検査と手術を担当の医者を紹介します」
「よろしくお願いします」麻紀は立ち上がってお辞儀をした。
「先ず女性の芽野先生が、明日手術をされる先生です」
「芽野です、よろしくね」と会釈をした。
「松尾先生が乳癌等の専門です」と言われて会釈をする。
「麻酔等の担当の松本先生です」
「安心してお任せ下さい、麻酔で痛みも無く手術が無事終わる様に致します」
三人は挨拶が終わると直ぐに部屋を出て行った。
弓子が二日間過す病室に案内するが、病室は麻紀が驚く様な部屋に成っていた。
始まる検査
36-038
「何?この部屋一流ホテルよりも素晴らしいのね」仰天の表情で部屋を見る麻紀。
大きなベッドに大きなテレビ、勿論DVDプレーヤー付のセット。
「向こうが風呂場、隣がトイレ!六階は携帯の電波が通じないから、この備え付けの電話を使って下さい」弓子が説明を始めた。
「大きなお風呂でトイレが別に成っているって、ホテルでも少ない」
「ここのボタンでカーテンが自動で開閉するのよ!」
ボタンを押す弓子、カーテンは大きく開いて神戸港の景色が一望出来るロケーションに成っている。
「VIP専用の部屋って凄いのね!こんな部屋に二泊するとお高いでしょう?」
「でも今は空いているから、院長の御好意で特別に使わせて頂いたのよ」
「旅行気分に成りたいのは山々だけれど、明日の手術が気に成ってその様な気分に成れないわ」
「大丈夫ですよ!堕胎をする人はこの病院では一日に数人は居ますから、これからは避妊に気を付けて下さいよ!」
その時ドアをノックする音が聞こえて、看護師の泉則子が検査用の服を持って来た。
「上下に成っていますが、下着を着けずに着用して下さい、検査着の上にその洋服タンスに有るガウンを羽織って頂ければ、寒くは無いと思います」
「冷暖房が完璧だから、検査室も手術室も寒く無いけれどね」弓子が補足した。
則子が出て行くと、弓子も「着替えて準備して待っていて、半時間程で迎えに来ると思うから」
そう言って追い掛ける様に部屋から出て行く。
麻紀は置かれた検査着を持って、どの様な物かと手に取って見ると、タオル地で上着と下着に別れているが、マジックテープで留めるだけの簡単な物。
その時内線が鳴って弓子が「言い忘れたけれど、貴金属は身に着けないでね、タンスの中に金庫が在るので貴重品はそこに入れて下さい」と話して、一方的に電話は終わった。
元々指輪もイヤリングも今日は着けていないが、ネックレスのみを着けたいたので直ぐに外して、財布と一緒に金庫に入れる。
番号式なので、鍵も何も無いので楽だ。
景色の良い窓を閉めて着替えを始める麻紀は、何か視線を感じて浴室からバスタオルを持って来る。
院長室のモニターを見ている荘次郎が「判ったのか?」独り言を口走る。
この部屋には数カ所に隠しカメラが設置されて、録画を二十四時間撮れる仕様に成っている。
何度も芸能人、有名人の裸体を隠し取りして楽しんでいる荘次郎。
今まで感づかれた事は一度も無かったのに、このママは感づいたのか?と思った。
検査は血圧、採血、心電図、乳癌検診に進む。
乳癌検診は問診、視触診、超音波検診、マンモグラフィ検査に成り一時間弱だ。
ここまでが午前中で午後は、子宮癌の検査と明日の手術の準備に成る予定が記載された用紙が検査着の間に挟んで有った。
上着とスカートを脱いでブラウスを脱ぐと、ガウンを着てブラジャーと下着を外すのでモニターには映像が映らない。
検査着のスカート部分はバスタオルを腰に巻付け、マジックテープで留めた様な物で膝までしか丈が無い。
確かに、殆ど全裸に成らなければ検査は受ける事が出来ないが、この検査着は便利に出来ていると思って身に着ける麻紀。
しばらくして内線でAの検査室に向かう様に連絡が来た。
部屋に入ると既に松尾が椅子に座って待っている。
改めて乳癌検診を中心に行う松尾だと挨拶すると、麻紀も軽く会釈をする。
「最初に血圧から測りますね」先程病室に来た泉則子が、上肢台を持って横に来ると、椅子に座る麻紀。
腕をガウンから捲り上げて突き出すと、水銀血圧計を垂直に置く。
マンシェットの中の空気を完全にぬき、そのゴムノウの中央が上腕動脈にかかるように巻く。
巻き方は、ゆるからず、かたからず、きちっと、マンシェットの下縁が肘窩2~3㎝上になるように巻く。
測定の際には肘関節を伸展させ、測定部位の高さは心臓と同じ高さにする。
白い麻紀の腕をじっと見つめている松尾は、早くそのガウンの中の乳房を揉みたい心境に成っている。
偽医者をするだけでも嬉しいのに、患者がこの様な美人!気持ちの高鳴りは抑えられない程だ。
しばらくして「血圧は異常有りません」と検診用紙に書き込む。
今度は採血に、今日初めて見る看護師青木美希が採血様に道具を持ってやって来た。
「血液検査で色々な病気が発見出来ます」と松尾が説明する。
採血を終わると「明日の退院までには血液検査の結果が出ます」と松尾が伝えて、泉看護師が心電図の検査室に案内した。
「そこに寝台にガウンを脱いで横に成って下さい」
七分袖の検査上着に膝まで位の腰巻きの様な姿で、横に成ると先程の青木看護師がやって来て「手首と足首に電極を取り付けますね」そう言うと直ぐに二人で電極を取り付けた。
「胸を開きますね」頷く前にマジックテープを引っ張って麻紀の胸を開く。
白い肌に乳房が飛び出すと、二人の看護師は目を見合わせて(綺麗な乳房ね)と目で言った。
「少し冷やっとしますけれど、アルコールですから心配ないですよ」
本当に冷たく感じる麻紀、必要の無い部分もアルコールで拭き刺激を与えて反応を見ている二人。
その後電極パットを胸に数カ所貼り付けると「五分から六分そのままにして下さい」そう言うとカーテンを閉めて、二人はその場から出て行く。
しばらくして、二人が戻ると「はい、終りました。正常ですね」そう言うと電極を外し始めて、麻紀は手が自由に成ると急いで上着の前を閉じて、マジックテープで留めた。
「今度はトイレに行って、尿を採取して下さい!トイレの中に紙コップが在りますのでお願いします」
麻紀がトイレを捜していると弓子が「トイレはあそこ!」と指を指した。
順調に検査が進んでいると笑みを浮かべる弓子。
歪む乳房
36-039
「どうだね、中々良いペットが見つかっただろう?医療プレーをするには最適だろう?」
「はい、院長先生のお眼鏡に叶う逸材だと思います」松井が言うと松尾が「もう僕は興奮で手が震える気分です」そう言って両手を大きく振る。
「後はサドの芽野女医の腕の見せ所ですね」
「一応は卵巣検査、子宮癌検査と搔爬の準備と云う段取りですね!今日は麻酔を殆ど使わないから、充分恥ずかしい思いをするでしょう」女医の芽野が言う。
「あの女がマゾの性格なら面白いペットに成るのですがね」松井も嬉しそうに言った。
「我々卍愛好会のオナペットに作りあげましょう、元々四月まで四ヶ月入院させる予定で、預かったのですからね」
「そうだったのですね!それは面白い充分調教期間が有りますね」
「だが最初が肝心だから、皆さんよろしく頼みますよ」
時計を見ながら松尾が院長室を出て、乳癌の検査室の方に向かう。
「あのママは検査の方法知らないで、受けると言ったのでしょうね!特に卵巣癌の検査は膣からの内診と直腸の両方から調べ無くては駄目な事を」
「多分知らないと思うな、充分恥ずかしい思いをさせて、明日の夕方には驚かせてやろうと思っています」
「癌の告知ですか?」
「彼女がこの病院入院すれば、サドの先生には最高の玩具でしょう?」
「抗ガン剤治療は大変ですからね!あの綺麗なボブの髪も抜け落ちてしまいますからね」
そう言って笑う芽野は四十代後半の不細工な女性で、美人に対する嫉妬は相当なものだ。
美人を無茶苦茶にして、虐めて楽しむタイプだ。
勿論医者の免許を取り上げられたのも、その嫉妬が原因だった。
美人の患者が一年の間に二度も堕胎に訪れて、自分は全く男性が近づかないのにと、妊娠出来ない様に手術をしてしまった。
結局医療ミスで病院と患者は和解したが、それが原因で他の被害者も現れて結局医師免許剥奪実刑三年の服役をした。
その恐ろしい女医が待っているが、先ずは松尾の乳癌検診の部屋に入った麻紀。
松尾の前に座った麻紀にガウンを脱ぐ様に、指示する看護師の泉。
立ち上がってガウンを脱ぐと、泉が受け取って近くの壁にハンガーで吊した。
松尾は決まっている事を尋ね始める。
月経周期、初潮・閉経時期、未婚/既婚、妊娠・出産歴、病歴、家族歴、気になる症状の有無などを次々と尋ねた。
「今、妊娠しています」と恥ずかしそうに答える麻紀。
「松山さん、上を脱いで頭の上に両手を持って行って下さい」泉が言うと、マジックテープを外して前を開くと、後ろから一気に両手で上着を脱がせてしまう青木。
いつの間にか後ろに来て待っていた様だ。
「あっ」と胸を押さえると「頭の上に!」と今度は泉看護師が手を持って上に上げさせる。
視触診は医師が乳房にしこりや変形、陥没、分泌物、リンパ節のはれがないかをチェックするのが本来の方法だが、松尾は目の前に突き出された麻紀の綺麗な乳房を、下から持ち上げる様に両方の乳房を持って乳首を天井に向けた。
「うぅ」思わず声が出た麻紀に「痛いですか?」と尋ねると首を振る麻紀。
今度は右の乳房を両手で持って、指で乳首を押したり突いたりする。
「乳首が立ってきましたね、痛いですか?乳首の先にも癌が出来るのですよ!そう成ると乳首を切り取らなければいけません、慎重に調べましょう」執拗に弄くられて、右の乳首だけが大きく勃起して来るのが麻紀も判る。
「あっ」と声が出てしまうと「感じ易い体質ですね」と平然と言って左の乳房にも同じ様な事をして「あっ」と声が出るまで止めない。
しばらくして「触診では異常が無い様です、向こうの寝台に横に成って下さい。超音波検査をします」寝台の方を指さす松尾。
超音波検査は、人間の耳には聞こえない音を機械から発し、臓器に音を当てて返ってくる反射の様子を画像にしているものです。
超音波を出す器具を直接乳房に乗せて動かし、写し出された画像を見ながら診断を行ないます。
超音波は数ミリの手に触れないしこりを見つけ出すことができます。
横に成った麻紀の胸に、超音波の器具が乗せられて、松尾が器具を持ちながら、乳房を舐める様に動かし始める。
乳首と乳輪を特に念入りに調べて、刺激を与える。
先程の触診程では無いが、執拗な検査の様に感じるが、初めての体験なのでこの様な事をするのか?と半ば諦め状態で耐える。
「次はマンモグラフィですが、ご存じだと思いますが乳房を器具で挟んでこの超音波で発見出来ない深い部分の癌を発見出来ます。多少挟むので痛いですが頑張って下さい」泉看護師が起き上がる麻紀に伝えた。
今度松尾は付いて行かないで、麻紀を見送った。
これ以上行くと、見破られる恐れが有り、今後の治療スケジュールに支障が有る。
松尾は直ぐに院長室に向かって「院長!身体も最高ですね!色白のもち肌と云うのですね、あの感触は、」そう言って余韻を語る。
「どうなの?マゾの資質は有るの?」
「そうですね、有ると思いますが、断言は出来ません」
「頼りないですね、私が徹底的に調べてあげますわ!顔も身体も良い女は大嫌いです」
院長の荘次郎が「芽野君、そんなに興奮すると顔に出てしまって,逃げられてしまいますよ」
「明日は院長の後、私で良いのですね!一応入札の結果松尾さん、松井さんの順番に成っています」微笑みながら言うと「男性はSEXしか考えないのですか?」怒った様に言う芽野。
「今でもあの乳房の感触は忘れられません」松尾が呆然としながら語った。
「院長!彼女を何故三月末まで監禁するのですか?」
「知り合いに頼まれてね、四月に成ればもう完成らしい!詳しい事は知らないのだが、あの女が自分達の秘密を或る人に話す機会を与えない為らしい」
依頼主が亡くなったとは言わない荘次郎。
もう一人、持田支店長が生きているので、二人の間では既に話が出来ている可能性も有るので、慎重に事を運ぶ荘次郎。
自分が約束を守らない場合、この病院の秘密を第三者に喋る可能性も有るからだ。
だが、あの時以来持田が全く連絡して来ないのは、テレビで報道されている放火の疑いが有るからでは無いのかと考えていた。
荘次郎は持田支店長の携帯番号を知らないので、敢えて連絡をしていない。
乳癌検査
36-040
川瀬支店長は岸の様子を持田支店長に伝えると「裏取引と女の話をしましたか?」と尋ねた。
「いいえ、私の知らない処で、マンション建設の計画書を作成している様です」
持田はそれが直ぐに、阿部のマンションでは?と閃いた。
川瀬支店長には「クラブのママは岸と切り離す事に成っていますので、岸の行動に注意して下さい!命取りに成りますよ」
「心得ています!今夜久しぶりにクラブに様子を見に行こうと、女の子に連絡したら今日は休みの様ですね」
「ママが休みなのですか?岸は会社に来て居ますか?」
「来ていましたね、例の計画書に必死ですよ」
持田はその話で、もしかしたら病院に連れ去られた?それなら岸に情報が入る心配は無いが、好色院長の餌食に成っているのか?少し残念な気分に成った。
しかし今は、藤井先生の焼死が事件の可能性が有るのなら、自分の処にも刑事が来るかも知れないので、迂闊な行動が出来ない。
持田支店長は福永に、岸の動きを話して敏速な行動をしろと再び命じた。
二箇所で十億以上の建設資金に成る大きな物件に、力が入る持田支店長。
「顔が歪んでいるぞ!良い顔だ」荘次郎がモニターの画像に興奮して言う。
芽野も笑みを浮かべて、モニターを見ている。
「院長!明日まで待てません!今日は無理ですか?」松尾が股間を持って訴える様に言う。
「馬鹿な!全てが無駄に成る!明日だ!」そう口走る荘次郎も股間を押さえている。
泉と青木の二人の看護師に指示をしているので、普通よりも締め付けが強く麻紀の乳房が器具に挟まれて表情が歪んでいた。
「我慢して下さい、奥深いがん細胞を写す為です」
「うぅ、あぅ」表情が強ばって我慢しているのが、二人の看護師にはよく判る。
「この表情見て!この女マゾよ!声を出さずに我慢しているわ」芽野は嬉しそうにいう。
「じゃあ、芽野君の検査で喜ぶかな?」荘次郎が微笑むが、男三人は股間が気に成って仕方が無かった。
「ふーー」右の乳房の検査が終わって大きく深呼吸をする麻紀。
「最後の検査ね!左の乳房をここに乗せて下さい」
右の乳房は挟まれた部分が器具の跡形を残しているが、何故か乳首は硬く勃起している様に見えた。
「ほら、右の乳首見て、勃起しているわ!苦痛に耐えて興奮したのよ!マゾに間違い無いわ」
見つけた事を得意そうに芽野は、麻紀がマゾの方が責めるのに楽しいから決めつける様に言った。
同じ様に左の乳房が挟まれて、苦痛の表情が画面に映し出されて、再び画面に食い入る四人。
「はい、これで乳癌の検査は全て終了しました。痛かったでしょう?」
「はい、これ程とは思いませんでした」
「午前中の検査で、血液検査以外は異常有りませんよ」
「血液検査の結果は明日の午後、手術の後で先生から説明が有ります」
二人の看護師が交互に言った。
「午後まで休憩です、食事が部屋に運ばれるので、ゆっくりして下さい!明日は食事が出来ませんから、今日はしっかり食べて下さい」
「おつかれさまでした!また一時に来て下さい」
「ありがとうございました」とお辞儀をすると、検査着の上着を着て乳房を摩りながら上にガウンを着て、乳癌の検査室を出て行った。
昼からは卵巣癌の検査と子宮癌、それと明日の手術の前準備と聞いたけれど、また痛いのかしら?その様な事を考えながら病室に戻る麻紀。
カーテンを大きく開くと、日差しが窓から差し込んで、十一月の神戸港は目の前に波静かに船を浮かべていた。
午後の検査も結構大変だろうが、ここまで来たら検査を行って、安心して月曜日から仕事をして持田と京極を追い詰めたいと思う麻紀。
岸さんもその後阿部さんに色々話をしているだろう?共和住宅に奪われる事が無い様に頑張るだろうと思っている。
もう直ぐ阿部さんのハピットの建設も始まるだろうが、何か裏が有りそうで不安だ!
その時、ドアがノックされて弓子が昼食を運んで持って来た。
「お疲れ様!今日は食事が出来るので食べて下さい!ママ!」笑顔でお寿司を運んで来た。
「弓子さん!検査って結構痛いのね」
「ああ、マンモの事ね!あれは痛い位しなければ見落とすのよ!痛かったのね!寿司でも食べて元気を出して午後も頑張って下さい!検査で初期の癌が発見されて外科的手術をせずに完治した人多いのよ」
「そうなのですか?」テーブルの上に寿司桶と赤だし、お茶が置かれて寿司屋から出前が届いた事が判る。
「新地の銀平に負けないお寿司よ!召し上がれ」
「えっ、病院でこの様な上等の寿司が食べられるなんて思わなかったわ」
「VIPですからね!」
「癌を発見して、外科的手術をせずに治したの?何人か居るの?有名人?」
ここで再び適当な嘘を言う弓子「最近なら有名な歌手のTさん、抗ガン剤と、化学療法、放射線治療で完治してカムバックしたのよ!少しイメージチェンジするけれどね」
「どの様に?」
「ロングの髪が短く成っていたでしょう?あれは鬘だからよ!」
「そうだったのね、イメージチェンジだと思っていたけれど、この病院で治療していたのね」
「抗ガン剤で髪の毛が抜けてしまうから、仕方が無いけれど!身体には傷が無くて喜んでいたわ!でも初期の癌でも、完治まで早くても三ヶ月から半年かかりますからね」
「早く見つかっても大変なのね」
「でも遅いと、開腹手術とか乳房切除ですから、それの方が大変でしょう?開腹しても抗ガン剤も使いますから、身体の回復までに一年も二年もかかります」
充分脅かして、弓子は部屋を出て行った。
その様な話を聞いて食欲は無かったけれど、食べ始めると上にぎりの美味さに箸が進む麻紀。
よく考えると今朝は食事をしていなかった。
牛乳を一杯飲んだだけでやって来たので、空腹だったのだ。
これからサド女医の、恐ろしい検査が待ち構えている事を知らない麻紀だった。
直腸検診の前に!
36-041
一時間以上の休憩時間にに、急に睡魔に襲われていた麻紀。
赤だしの中に薬が混入されていたのだが、麻紀は知らずに飲んでしまった軽い睡眠作用の有る媚薬を飲まされていたので、眠ってしまった。
外部への連絡をさせない為と、午後の検査をスムーズに行う為に薬を調合されていた。
今日から麻紀は薬漬けにされて、雌としての調教を開始される事を知らない。
約三ヶ月で完璧な雌に仕上げて、卍クラブのペットにしてしまおうと考えているのだ。
荘次郎には卍クラブの隆盛の為に、不可欠な人材が手に入ったと思っていたのだ。
有名な芸能人は何名か来たが、後一歩進む事が出来ない。
それは有名人だから、常に他人の目が付きまとい何処で見られているか?の心配が有る。
今回の麻紀の場合、新地のクラブのママでそれ程知っている人が少ないのも魅力だ。
一時前に内線が鳴り響き急に目覚める麻紀。
「疲れていたのかな?寝ていたわ!」独り言を言いながら目覚めるが、身体がまだぼんやりとしている。
「松山さん!時間ですから診察室にお越し下さい」泉看護師の声が木霊の様に聞こえた。
「はい、すみません直ぐに伺います」
B診察室に入る麻紀を待っていたのは、女性三人で芽野、泉、青木、男性の姿は何処にも見えない。
それが麻紀の安心感を誘って、疑う事を微塵も考えない。
「松山さん、先に卵巣癌の検査を行いますが、卵巣癌は非常に発見が困難で直腸診、超音波検査で行います。宜しいでしょうか?」芽野に言われて頷く麻紀。
「泉看護師、浣腸の準備をして下さい」と銘じると麻紀が「浣腸?ですか?」と驚いて尋ねる。
「そうですが?直腸に指を挿入して卵巣の腫れを調べるのですが?何か?」
「今、浣腸と。。。。。。」
「そうですよ、便が腸に溜まっていますと、指で中々判らないのと、超音波検査の時に障害に成り、誤診の原因に成ります、排便をして頂き何も無い状態で調べるのがこの検査の手順ですが?何か?」
「いえ」としか言えない状況を作られてしまう。
「それでは、松山さんはそこの診台に四つん這いに成って貰いましょうか?」
そう言われて、寝台に向かうが躊躇う麻紀。
「ガウンを脱いで下さい」
麻紀がガウンを脱ぐと、青木看護師が受け取ってハンガーに吊す。
ワゴンに載せて浣腸器を運んで来る泉看護師、それを見てしまった麻紀はその大きな浣腸器に驚きの表情に成った。
「早くして下さい!最後まで終わりませんよ!」急かす芽野。
医者に言われて諦めた様に寝台に上がる麻紀は、頭がぼんやりとしているので夢の中の様に思っていた。
「松山さん、頭を下げてお尻を突き出して下さい」泉看護師が言う。
麻紀は言われた様に頭を抱える様にして、お尻を後ろに突き出す。
二人の看護師が直ぐに麻紀の身体を押さえて、芽野が短い布の様な検査着を捲り上げると白いお尻が付きだした様にライトに照らされた。
芽野の指にクリームが塗られて、いきなり麻紀の肛門の周りにマッサージの様に振れた。
「うぅ、うぅ」急に肛門を弄くられて驚きと刺激に声が出てしまう麻紀。
身体が敏感に成っている事に未だ気が付いていない。
「どうしました?肛門に力を入れると痛いですよ!力を抜いて下さい」
「は、はい」
「うぅ、あぅ」麻紀が声を出して頭を上げようとするが泉看護師に押さえられているので、上げられない。
芽野の指が肛門に滑り込んだので、驚いて声を出したが「便が溜まっていますね、これでは判断が出来ません!浣腸器!」の声に誰かが手渡す。
もう一人誰かが居ると思った瞬間、指に代って浣腸器が突き刺さる。
「うぅー」の声と同時に肛門から液体が押し込まれるのが判る麻紀。
気分が悪く成る程の圧迫感を感じて「うぅ、うぅ」と声を出す。
「もう少しですよ!頑張って下さい」後ろからこの様子を見ているのは弓子。
身体から汗が噴き出て、元々便秘に成る体質では無いので浣腸の経験は皆無で直ぐにお腹が排便状態に変わっていた。
「せんせい!もう。。トイレに。。。あぅ、うぅ」苦しそうな声に変わる麻紀。
「はい、終りました」
看護師達が力を緩めると、直ぐに起き上がってお腹を押さえて麻紀はトイレに一直線に走った。
その場の全員が笑い顔で、その後ろ姿を見送った。
院長室でも「面白い!光景だったな」
「でも彼女便秘では無い様ですね、今後浣腸プレーは困難でしょう」
「松本君は浣腸プレーが元々好きで無かったね」
「松本さんは髪フェチでしたよね!あのママのボブの髪欲しいでしょう?綺麗な黒髪だから?」
「あれは毛染めの髪ですよ、黒髪に戻すには元から生えてこなければ駄目ですよ!一度色を抜くと染めても直ぐに茶に成るのですよ!それは芽野さんにも同じ事を言われました」
「おお、彼女がすっきりした表情で戻って来たぞ!これからが面白い」
三人が画面に悔いる様に見始めた。
「松山さん、それでは検査を始めます!もう一度同じ体勢で四つん這いに成って下さい」
「は、はい」躊躇いながらスリッパを脱いで、寝台に上がる麻紀。
「頭を下げて、お尻を突き出して下さい」
麻紀は言われた通りに頭を下げると、二人の看護師が身体を押さえる。
「力を抜いて下さい、力を入れると痛いですし時間が掛りますよ」
指にぶつぶつの付いたサックを着けて、クリームを塗って準備を終わる芽野。
先程は何も無い普通の指サックだったが、今度は異なる。
人差し指、中指の二本の指に装着しているので、両方を挿入させる予定に思われる。
「始めますよ!痛いと思ったら寝台を叩いて下さい!では始めます」
「うぅ、うぅ」挿入と同時に声が出る麻紀に「まだ入っていませんよ」指先が少し入っているがその様に伝える。
診察台にて
36-042
これまでの簡単なあらすじ
クラブのママ松山麻紀は両親に早く死に別れ、祖父母の手で育てられた。
美しい娘に育った麻紀は、祖父の友人安達周造の息子周一の婚約者と成る。
祖父は元々工場を経営していたが、息子の死を切っ掛けに廃業した。
その跡地を狙って関西に進出した大手コンビニ(ハピット)が共和住宅と組んで、触手を伸ばした。
強引な共和住宅の営業持田はハピットの京極と組んで、工場跡地にマンションとハピットの建設に着手した。
だが、ハピット開店と同時に家賃の値下げ交渉に来たハピットに怒りで断る祖父。
その時阪神淡路大震災が襲った。
この地震は建設中のマンションも崩壊させ、麻紀の婚約者の命も奪った。
祖父はハピットと共和住宅に騙されたと言って心労が原因で他界した。
麻紀はその後の調べで、二人が各地で手荒な手口で業績を伸ばしているのを知り、祖父の復讐を誓って、安達の助けでクラブのママに成って、二人の隙を狙っていた。
その様な中、祖父と同じ様な環境に置かれた阿部彰次の存在を知り探り始める。
その後。。。。。。。共和住宅の顧問会計士藤井先生は変態プレーが好きな性的不能者で、神戸支店長に出世している持田に接待されて、クラブの美貌のママ麻紀を知った。
藤井は自分の趣味で有る緊縛をする為に、売春斡旋をする麻紀の弱みにつけ込んで誘拐をして、緊縛写真と自分の代わりに持田支店長に強姦させる。
だがその現場にライバルのダイヤ建託の岸が尾行で乱入してきた。
売春を利用して接待をして、岸の物件を横取りした持田支店長と顔を見られた藤井には、喉に刺さった棘の様な存在に成ってしまった。
変態趣味の愛好会卍に加入している藤井は、麻紀を同じ愛好家の大きな病院の院長、服部荘次郎に譲る条件として来年三月末まで、岸との接触が出来ない様にして貰えるならと持ちかけた。
荘次郎は麻紀の写真を見て興味を持つ、特別VIP病棟に入院させる策略を考える。
麻紀に強姦による妊娠を工作して、自分の病院の看護師山木弓子をクラブに送り込む。
弓子に巧みに薬を飲まされた麻紀は、生理が遅れると弓子が妊娠を仄めかす。
心当たりの有る麻紀は完全に騙されて、堕胎の為に入院の運びと成ってしまった。
だが肝心の頼み込んだ藤井は、自宅で不審な火災で焼死をしてしまう。
藤井が亡くなって自由に出来ると考えた荘次郎は、当初の考えを変えて自分達の仲間に麻紀の調教に参加する様に誘い、変態愛好会卍のペットに育てる作戦に変更をした。
三人の医療プレーマニアを呼んで、服部産婦人科病院の六階VIP医療フロワーで、麻紀は癌検診を受けていた。
今後の麻紀はどう成ってしまうのか?復讐は出来るのか?後半に入って行きます~~~
「あぅーいーた」顔を歪めて耐えている麻紀。
人差し指が深く挿入されて、痛みが多く成った。
「我慢して下さい、少し調べる為に動かしますよ」指を動かして様子を見る芽野。
少し慣れてきたのか、最初程の痛みが無くなった麻紀は変な感覚に成っている。
媚薬の影響も有るのだが、膣の中に入って居るのとは異なる刺激を感じ始める。
「少し楽に成りましたか?」
「は、はい多少!うぅ、あぅ、うぅ」指を大きく動かされて声が出てしまう。
「少し届きませんね、もう少し長い物に変更しますね」そう言って指を抜き取る。
「ふーぅ」と息を吐く麻紀が「ああーーいたーいたー」と身体を大きく動かそうとする。
二人の看護師が力を入れて押さえつける。
中指に装着しているサックには、大きめのイボイボが付いているので、挿入時に痛みが走ったのだ。
「もう少しですよ!我慢して下さい!力を入れないでーーー」そう言うと麻紀の尻を左手で強く叩いた。
驚く麻紀が「ひーー」と言うと同時に指が挿入されて、痛みが遠のいた。
「あぅ、うぅ、うぅ、うぅ」指を動かすと声が同時に出て、膣に刺激が届くので麻紀は無意識に声を出していた。
しばらく動かされて「直腸から調べた結果では、卵巣の異常は有りませんね!内診で超音波にて調べて異常が無ければ卵巣は大丈夫でしょう」そう言って指を抜き取ると、麻紀は腰から寝台に崩れ落ちて立ち上がれない程の衝撃を受けていた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」返事はするが露出した尻を隠そうともせずに、放心状態に成っている。
しばらくして泉看護師が「そろそろ準備が出来た様ですから、向こうの診察室に行きましょうか?」
泉看護師に支えられて漸く立ち上がる麻紀。
部屋に入ると立派な婦人科の内診台が中央に置かれた場所に芽野と松本、そして看護師の青木美希の姿が見える。
麻紀は身近で婦人科の内診台を見るのが初めてで、色々な道具が付いているが不思議には感じない。
「松山さん、内診台でこれから卵巣癌の検査、子宮癌の検査を行いますが一応妊娠中ですので、明日の手術の準備、子宮口を広げる物を入れながら調べましょう」
「はい、お願いします」
超音波検査
超音波を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にする検査です。
より近くで子宮や卵巣を観察するため、腟の中から超音波をあてて調べる経腟超音波断層法検査を行う場合もあります。卵巣腫瘍の性質や状態、大きさをみたり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係を調べたりします。
子宮がんは、子宮頸がんと子宮体がんの2つにわけることができる。
子宮頸がんは子宮の頸部に生じるがんで、比較的外界と近い。
そのため、子宮頸がん検査では、膣を経由して直接、細胞を採取することができる。
ブラシで採った細胞を細胞診にかけて、異常がないかを調べる。
検査は簡便であり、痛みや不快感なども少ない。
もしも異常が見つかれば、精密検査であるコルポスコープ診や組織診が行われる。
コルポスコープ診とは、機械的に膣を開き、膣拡大鏡コルポスコープを挿入して子宮内を詳細に観察する検査だ。
芽野医師が簡単に説明をして、松本医師が今回は痛みを伴うと困るので、軽い麻酔をする為に参加すると伝えた。
先程の直腸検査で痛みを感じた麻紀は、松本に軽く会釈をした。
痛い思いをするなら、麻酔で和らげて欲しい!の願いが会釈に成っていた。
「さあ、そこの踏み台から診察台に上がって、仰向けに寝て下さい」青木看護師が麻紀に言う。
躊躇う麻紀に「初めてで不安なの?恥ずかしいの?あっ松本さんは男だったわね!少し向こうに行っていて下さい!用事が有れば呼びますから」芽野が松本を診察室から出る様に言った。
目で合図をしているが麻紀には見えないので、松本が部屋を出て行くと「さあ、女性だけですし、ここは病院です!恥ずかしがっていたら、治療も手術も出来ませんよ」芽野に言われて、覚悟を決めてスリッパを脱いで診察台に腰を降ろして、足を伸ばす麻紀。
頭上には無影灯が在るが、まだ光を発していない。
「頭をここに置いて、リラックスして下さい」直ぐに胸の辺りにカーテンをして、麻紀の視界を遮ってしまった。
「両手はここを握って下さい」と言われて診察台の横のパイプを握ると同時に、スカートの検査着のマジックテープが外される。
見えないがスカートに成った部分を一気に大きく開かれた。
「足をここに上げて置いて下さい」そう言って持ち上げられると、右足を樹脂で出来た固定台に載せて膝を革のベルトで巻付けた。
「はい、今度は左足ですよ」同じ様に樹脂の上に持ち上げられて、革のベルトで固定される。
「腰を少し上げて下さい」と持ち上げられると、素早く腰から検査着のスカートを取り除く。
「リラックスして下さいね、診察台が動きますからね」
そう言うと同時に上昇を始める診察台、同時に足が左右に開かれて行くのが判って、麻紀は閉じ様との意識が働くがそのまま大きく広げられて停止した。
天井の無影灯が点灯されて、下半身が明るく輝いて光った。
愛好家集団卍
36-043
「先ずお腹に超音波を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にする検査をしますよ」
下腹部に液体を塗り始める看護師の青木、一応信用させる為に普通に検査を始める。
インターネットとかで調べていると、後々不審がると肝心の時にここに来なく成ると困るので、仕方なく進めている。
「松山さんは多いですね」
「は、はい何が?でしょうか?」
「陰毛が濃くて多いと思いまして、今日の検査には支障は有りませんが。。。。。」そう言って股間に座る芽野。
「松本さんに、準備する様に伝えて下さい」
すると直ぐに麻紀の頭の処に、器具を押しながらやって来て「よろしく」と顔の横にやって来て「この器具で軽い麻酔をしますので、準備します」縦型の機械には、酸素マスクの大きい物が付いているのが見えて、横には目盛りが数個有る機械だと、見ているとお腹に器具が這って動き始める。
乳房の検査と同じ様な器具が左右のお腹を移動して「大丈夫の様ですが、最後はより近くで子宮や卵巣を観察するため、腟の中から超音波をあてて調べる経腟超音波断層法検査を行いますね」
「はい、お願いします」
「一緒に、明日の手術の為に、子宮口を広げるラミナリアを挿入します、多少痛みが伴いますので軽い麻酔を行います。幻覚を感じるかも知れませんが気にしないで下さい」
「は、はい」
「洗浄から始めますよ」そう言うと直ぐに陰部に湯水滴が当たり、左手がいきなり陰部を指で広げた。
「うぅ、うぅ」驚く様に声が出てしまう麻紀。
「アワビの剥き身の様に動いている様だな」院長室のモニターを見ながら言う荘次郎。
「陰毛が海藻か海苔の様に見えますな」
「声が出たな?感度も良い感じだ!卍のペットに育てばアイドルだな!卍の調教部屋に連れて行けば、気が狂うまで責められるから、逝き続けるだろうな」
「ハイエナの様な連中が毎日彼女の身体を欲しがりますよ」
二人は自分達が育てて、愛好会に連れて行く段取りを話ながら楽しんでいる。
「松山さん、軽い麻酔をしますよ」そう言うと、麻紀の前髪を触って酸素マスクの様な物を左手に持って顔に近づける。
「ガスがでますから、吸込んで下さい!直ぐに効きますが痛みを抑えるだけですから、意識は残っていますよ!脳に届く痛みを緩和するガスです」
その様なガスを聞いた事は無いが、痛みは困るので抵抗はしない麻紀。
鼻と口にマスクが被せられると、変な臭いがして目眩の様に成った。
「先生!終りました」の声が急に遠くに聞こえる。
「注射!」「はい」看護師の弓子が現れて、麻紀の腕を消毒すると注射針を突き刺した。
「終りました」の声が遠くに聞こえる。
「手首固定します」
診察台に備え付けられた鎖に、手枷で結び付けると動かせない状態に成った。
「クスコ!」の声が遠くに聞こえる。
麻紀の瞳はぼんやりとして、天井を見つめている。
クスコが麻紀の膣を広げて侵入すると「うぅ、うぅ」と声を出して反応する。
院長室で「強烈な媚薬を注射して、感度検査をされているとは、本人は判らないだろう?」
「院長!今からでもSEXされたらどうです?気づきませんよ」
「明日、手術でもう少し強い媚薬麻酔をして、SEXするのだよ!今はその加減をしらべているのだよ!危険な事をしては駄目だ」
「記憶に残ると、危険だと?」
「その通りだ、いつ証言で思い出すかも知れないだろう」慎重な荘次郎は、この様にして過去にも芸能人を強姦していたが、今回はその先が有るから尚更慎重だった。
芸能人がお忍びで堕胎に来て、強姦はしても卍愛好会に連れて行く事は出来ない。
SM調教を出来る今回のママは、荘次郎には最高で格好の女性だ。
あの薬は個人差が有って、記憶に残るかどうかを確かめないと信頼できないと説明した。
「同じSEXをするなら、顔を見て声が出ているのが良いでしょう?」
「勿論です!あの美人の良い声を聞きながら自分も逝きたい」
モニターの画面では、クスコで大きく広げられた膣口に、ローターの棒を挿入仕始める芽野。
「松山さん、今から超音波の器具を入れますが、振動が少し有りますが痛くは無いとおもいますよ」
「はぁーい、お、ねが。。。。」多少の意識が残っている事が判るが、先程の注射で身体が火照って来た麻紀。
「始めます」ローターのスイッチを入れると、クスコにローターが当たって金属音が出る。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」同じ様な声を出して、腕を動かして手で何かを掴もうとしている。
「大丈夫ですか?」
「あっ、あっ、あっ」金属音と同じ様に小刻みに声を出している麻紀。
「きゃー、だめー」急に声が変わって身体を大きく動かそうとする麻紀。
芽野がクリトリスに別のローターをそっとあてたからだった。
「クリトリスはもっと感じるらしいが、あれは包茎では?愛好家に送る時には剝いてしまわねば駄目だろうな」荘次郎はモニターを見ながら言う。
松尾は既に股間を押さえて勃起状態の様で、何も言わずに凝視している。
クリトリス包茎とは?
クリトリス(陰核)とは、小陰唇上部の突起した部分のことで、米粒大から小指先大くらいまでと、大きさは様々です。
男性の亀頭に当たる部分で、女性の感覚を高める神経が集中しています。
その陰核を守るように覆っているのが、クリトリス(陰核)包皮です。
性の場合はこの包皮が邪魔になり、手術をして切除することが多いですが、女性の場合は包皮で守られている状態が正常です。
そのため、包皮があるからと言って必ずしも手術が必要なわけではありません。
包皮の部分はポケット状になっており、恥垢と呼ばれるアカがとてもたまりやすい部分です。
恥垢はデリケートゾーンのにおいの大きな原因になります。
ポケットが深い場合は垢が落ちにくく、清潔に保つことが難しくなります。
クリトリス(陰核)には神経が集中しており、女性の性感を高める大切な役割をしています。
刺激や興奮で男性と同様に勃起症状がみられます。
しかし、包皮が大きいために刺激を受けにくく、不感症の原因になっていることもあります。
クリトリス(陰核)は包皮で守られているため、最低限必要な部分は残して切除します。
切除範囲は、術後の後遺症の可能性を左右するためとても重要です。
余分な皮膚がなくなることでポケットが浅くなり、清潔を保ちやすくなります。
また、陰核への刺激が強まることで不感症が改善されることも期待できます。
卑猥な実験
36-044
桜モータースの姉妹の妹東紗子は、マンション建設に乗り気で土曜日の午後自宅に、共和住宅の営業横田を呼んでいた。
百五十坪の土地にマンション建設の説明を聞いていた。
場所的にはワンルームか、新婚向きのマンションが最適だと横田は紗子に勧める。
紗子はダイヤ建託の家賃保証を建てるか、共和のマンションを建設するか迷っていると横田に言った。
ダイヤ建託の制度を散々批判して帰って行った。
建築の営業は自分の手柄が確定するまで、中々社内でも口に出さない。
その為同一物件で同じ会社が話をする事も時々は起る。
横田は早速、現地の桜モータースを調べに行くと、桜井社長が「君はここにマンションを?俺は一生現役だ!」と追い返された。
その事が、姉の意見の方に傾く引き金に成るのだから世の中判らない。
「ああーだめーだめー」クスコを外されて、バイブを挿入されて仰け反る麻紀。
そのボブの髪を触りながら「大丈夫ですか?」と声をかける松本。
「ゆるしてーーーだめーーいくーー」の声に「松本さんガス!」と指示をする芽野。
慌ててマスクを顔に持って行くが、仰け反って上手に口と鼻に着けられない。
ボブの頭を押さえて漸くマスクを押しつけると、麻紀は一気にガスを吸込んで大人しく成った。
「大体分量が判った様だな、半時間程して目覚めたら尋ねてみればよく判るわ」
愛液で塗れた麻紀の陰部から、バイブを抜き取ると、べっとりと粘液が付いて異様な感じに見える。
同じ女でも男に相手にされない芽野には、皮肉な光景だがこの女のサド気質はこれだけでは終わらないのだ。
気を失って眠る麻紀は、診察台で大きく股を広げて、まだ陰部も完全に閉じていない状況だ。
そのまま無影灯を消すと、麻紀をそのままに院長室に向かう芽野。
「お疲れ様だったね」荘次郎が言うと「中々感度も良く、調教すれば卍のアイドルに成れるマゾ女です」
「予想通りマゾか?」
「どMに成れる可能性は充分有りますね!SEXの回数は少ない様ですね、長期間SEXをしていなかったのでは?最近急に目覚めてしまったのかも知れませんね」
「明日は我々の物を咥えさせて、もっと慣らせてやろう」
「明日、夕方には例の物を準備して彼女に説明しますから、近日中には調教に入れますわ」
「その様だな、計画通り順調だ」荘次郎は嬉しそうに言う。
「この後、色々聞いて睡眠薬で眠らせて明日は、十一時から始める予定で宜しいですね」
「明日が楽しみで今夜は眠れないな」
「まだ五時に成っていませんよ」そう言うと笑う。
その時、四人は運ばれて来たコーヒーを楽しそうに飲み始めた。
しばらく今後の調教スケジュールに付いて話す四人は、時間を忘れて話し合っていた。
「そろそろ、目覚める時間ですが?」そう言って弓子がノックして入って来ると、慌てて芽野が院長室を飛び出して行った。
再び無影灯が点灯されて、麻紀の陰部に明かりが灯る。
「うぅーー」麻紀が起きる頃を見計らって、再びクスコを挿入して目覚めるのを待つ芽野。
「松山さん、麻酔が覚めた様ですね、検査と明日の手術の準備は終りましたよ!お疲れ様でした」クスコを抜き取る。
頭上の無影灯が消されて、診察台が下降すると同時に大きく開かれていた足が閉じられて、固定されているベルトを外す。
腕は元のパイプを握っている状態に戻されているので、バスタオルが腹部に被せられて「松山さんカーテンを開きますので、バスタオルを使って診察台から降りて下さいね」泉看護師に言われて「は、はい」と起き上がる。
「向こうの部屋で先生の説明が有りますので、検査着とガウンを着たら向かって下さい」
バスタオルで前を押さえて、検査着のスカートを受け取りガウンの方に向かう。
ガウンを羽織るとスカートを腰に巻付けて、ガウンを着ると、言われた部屋の方に向かった。
「お疲れ様でした、一応卵巣の検査の方は直腸診、腹部エコー検査、膣からの超音波検査で異常は認められませんでした」
「はい」と頷くが身体の怠さを感じている。
「子宮内部の癌検査は明日出来ると思います、それ以外の子宮頸がんは細胞を採取しましたので、明日退院までには結果が判ると思います」
「はい」
「明日の手術の為に麻酔の状態を尋ねたいのですが?痛みは有りましたか?」
「いいえ、全く御座いません」
「何かが挿入される感覚は有りましたか?」
「はい、それは何度も有りました!器具が動く感じも良く判りましたが、どの様な形の物かまでは判りませんでした」
「もう一つ大変込み入った話に成りますが、器具が入って居る時夢を見る様な感じに成りましたか?」
「夢ですか?」不思議な顔をする麻紀に「単刀直入にお尋ねしますと、女性の患者さんは異物が入って居る時、感じてしまう事が多いのです。特に感じ易い女性は治療中に逝かれる方もいらっしゃいます。松山さんはその様な事は。。。。。」
恥ずかしそうに「夢と言えば見ていた様な気がします。。。。。。。」話し難そうにした。
「恥ずかしい事では無いのですよ、松山さんが何度も逝かれたのを感じましたので、お聞きしたのです、特に放射線治療とか、今回の様に膣からの超音波検査でも同じ様に成ります」
「は、恥ずかしいです」頬を赤くして恥じらう麻紀。
追い打ちをかける様に「手術中の麻酔でも、夢を見られる方がいらっしゃいます、その様な状況が発生していると云う事は、手術がスムーズに行われていると思って下さい」
「は、はい」意味不明の事を言われて、返事に戸惑う麻紀。
芽野は麻酔ガスの状況と媚薬の効果、そして記憶を確かめて、明日男達がSEXをする時の参考にしようと考えて居た。
その後は麻紀が病室に戻ると、大きなお風呂に湯が貯められて居て、弓子が「一時間後に食事だけれど、洋食?和食?中華?」と尋ねた。
洋食でと答えると、嬉しそうに「ゆっくりお風呂にどうぞ!」と言って出て行った。
しばらくしてお風呂を出て髪を乾かしていると、豪華な料理が運ばれて、これが病院かと思う。
一緒に薬が準備されて弓子が「食後この薬を飲んで下さい、明日は朝食も昼食も有りませんので、充分召し上がって、ゆっくりお休み下さい」
「ありがとう、弓子さん!素晴らしい高級ホテルの様な部屋で眠るわ」笑顔で弓子を見送った。
強姦準備
36-045
桜井洋三は、マンション建設に共和住宅の男がやって来たと、紗子の姉西田陽子に夜電話をして愚痴の様に話した。
陽子は妹の強硬な姿勢に対抗して、夜の八時過ぎにハピットの芦田の携帯に事情を話してしまった。
それは芦田には予想外の展開で、持田支店長に自分達が直ぐ近くにハピットの用地を捜している事を教える様な物だと危機を感じた。
妹東紗子をこの件から外さなければ、危険だと思い安西課長に相談を持ちかけた。
「芦田君!それは最悪だ!早急に対策を立てなければ共和住宅で事件に成る、至急東紗子の家族関係を調べて連絡を貰えるか?共和住宅では目処が立たないと社内でも内緒だから、数日は稼げるがいつ進展するか判らない!注意して見守れ」と危機を感じる安西課長。
桜モータースを落とすのに、時間が少ないと安西に言われた芦田は焦っていた。
直ぐに紗子の家族関係を陽子に尋ねる芦田に「どうされたのですか?」驚いて尋ねる。
「実は妹さん!色々な会社に連絡されている可能性が有るのです!私が明日自宅に行って説得しようかと思いまして、御主人の勤め先とか子供さんの事を参考までに聞かせて頂ければ何か説得材料が見つかるかと思いまして」
「経済状態とか、子供の将来ですね!確か上のお姉ちゃんは来年短大出て就職かも、下は今年大学受験ですね!御主人は大阪のエクア工業にお勤めです」
「判りました参考にさせて頂きます、これ以上姉妹で争わないで我社にお任せ願いたいですね」
「本当に妹には困ります!子供の時から欲張りで、子供は私が遅かったので、高校生ですがね!」情報を仕入れた芦田は直ぐに安西課長に連絡をした。
安西はその日の間に、探偵に資料を送って調査の開始を示唆した。
麻紀は食事の後の薬を飲むと熟睡してしまう。
二人の看護師が病室を訪れて、衣服を全て脱がせて身体中の寸法を測り始める。
「本当に綺麗な身体ね!羨ましいわ」
「シミひとつ無い身体って、この人の様な身体なのよね!」
「でも顔も身体も感度も良いから、卍会に連れて行かれるのよね」
「バストトップ、次はアンダー」と次々細かいサイズを測る。
「首の長さって?」
「犬の様に首輪をされるのよ」
「頭の大きさ?これは?」
「マスクを被せるのよ!黒い目の部分が開いた!あれよ!」
そんな事を言いながら、二人は細かいサイズを計測するが、肝心の部分の計測は項目に無かった。
「あそこの計測はあの芽野ってサド女が測るのでしょうね」
「貞操帯って着けられると、一日中何かが入っているの?」
「耐えられない」二人は馬鹿な話をして、計測を終わると服を着せて、何事も無かった様に病室を後にした。
翌朝測った様に九時に目覚める麻紀。
既に自動で浴槽には湯が満杯に成っている。
時間を見て今からお風呂に入って準備をすれば、丁度良い時間に成ると思う麻紀。
湯船に浸かって、カーテンを開くと今日は生憎の雨模様に成っている。
昨日の怠い感じは無く成って居るが、今から手術だと思うと気分が重いが朝の湯船は気持ちが良い。
しばらくして髪を乾かしているとまるで測った様に、弓子がグレープフルーツジュースを持ってやって来た。
「今朝は食事が出来ないから、これでも飲んで下さい」
「ありがとう、今から手術だと思うと気が重いわ」
「これ、今日の検査着よ!」そう言って新しい検査着を机の上に置いた。
風呂上がりのジュースは美味しい、一気に飲み干してしまう麻紀を見て、弓子の仕事は終わった。
約一時間前にこの薬を飲ませる事で、万が一強姦に気づいたとしても、記憶が途切れる状態が起る。
多分麻酔ガスで何をされているか判らないだろうが、万一の用心を怠らない連中だった。
これが医療プレーをする連中の常道手段なのかも知れない。
何も知らずにガウンを着て、昨日の部屋に向かう麻紀。
朝風呂に入って清潔な身体で手術台に迎えるだけ、VIPは違うのだと変な優越感があった。
昨日の経験が有るので不安は少ない麻紀、泉看護師に言われてガウンを脱ぐと診察台に躊躇いも無く座って直ぐに横に成る。
「今日は点滴を行いますので、手をこの位置で固定しますね」
左腕を固定して、近くに点滴スタンドが運ばれて来る。
その間にカーテンで仕切られて、下半身が見えなく成った。
「心音を聴いて下さいね」芽野が青木看護師に指示すると、いきなり検査着の胸を開き聴診器を麻紀の乳房の下にあてた。
驚く間も無く両足が固定されて、腰の検査着がむしり取られる様に腰から取除かれた。
殆ど全裸状態にされると「先生心音大丈夫です」と青木が聴診器を胸から外すが、胸はそのまま開いた状態だ。
「よろしく」と笑顔で松本が横から覗き込む。
両手が動かないので、胸を隠す事が出来ない状態で「よろしくお願いします」と言った麻紀。
綺麗な乳房ですねと言いたそうに見つめられて、目を逸らすしか術が無い。
その様な事を考えていると、いきなり診察台が上昇を始めて、足が左右に大きく開かれてしまう。
当然なのだが、昨日に比べてもの凄く早い様に感じる。
「点滴の針を入れますね」青木看護師が麻紀の腕に注射針を刺した。
手術と言って三人の男が次々と麻紀を強姦するステージが、今始まろうとしている。
妊娠だと言われて手術を受ける様に成り、昨日は薬の効果を試されて万全の準備で、ガウンを着て小さな禿げ男が全裸で横の部屋で待機している。
強姦は荘次郎から松尾そして松本の順番の様だ。
連続強姦
36-046
「院長張り切って居ますね」弓子が微笑みながら言った。
「久々の美人で、これから仕込む第一発目が私のこの息子だと思うと、興奮するよ!」
荘次郎のペニスはゴムを装着して、既に半立ち状態で薬を飲んでいるのが直ぐに判った。
「あの、むね。。。。。」胸の乱れを直して貰おうと思った時、芽野の手が陰毛を左右に開く様に引っ張る。
「点滴始めて下さい」芽野の指示で、点滴スタンドに吊らされた液体が腕に流れ始める。
「松本さん、ガス!」次々指示が飛ぶと、松本が麻紀のボブの頭を押さえてマスクで鼻と口を覆う「大きく吸って!」昨日と少し異なる臭いだと思うと、急に意識が遠ざかり雲の中に入った様な感覚に変わってしまう麻紀。
直ぐに身体が暑く火照りを感じる様に成っているが、麻酔の影響だと思う。
マスクが取り払われて、麻紀は目を閉じているが眠ってはいない。
芽野が指を膣に挿入すると「うぅ、うぅ」と声を出す麻紀。
「松山さん!聞こえますか?」
「は、、は、、い」
「もう少しね、これはどうかな?」親指でクリトリスを刺激する。
「あっ、あっ」と声が聞こえる。
「青木さん、点滴Bを流して」
色の付いた液体が麻紀の体内に流れ込んで行く。
「手術を始めますよ、意識が無く成っていきますよ!クスコ!」
「は、、、、、、、い、おね、、、、」
クスコが膣口を広げても、全く反応が無く成った麻紀。
「カーテンを取除いて、もう無意識の反応に成る筈よ!松山さん!聞こえますか?」
「。。。。。。。。。」
「点滴止めて、もうこれ以上入れると、反応が無く成るわ」
診察台の高さを調節して、荘次郎の身長に合わせると、荘次郎が隣の部屋から入って来る。
「院長、もう直ぐ敏感肌に変わりますので、後数分待って下さい」
「そうか?」そう言いながら診察台の横に行って、麻紀の身体を隅々まで見る。
「画面で見るより、色が白くてもち肌だな、ここは手入れをしていないな、濃い!」そう言って陰部を覗き込む。
「尻の方まで生えているな、綺麗にするのが楽しみだな」嬉しそうに言った。
「院長の趣味にぴったりの女性でしょう?」
「あっ、あっ」いきなり乳首を触る荘次郎に、反応する麻紀。
「良い声を出すな!三ヶ月で淫乱女に変身させて、卍に送り込んでやろうな」
「あっ、あっ、あっ」乳房を今度は鷲掴みにして、短い人差し指で乳首を弄くる。
「院長!どうやら感度が上昇してきた様です」
「そうか、それじゃあ!楽しませてもらうか?いや!楽しませてやるか?」
そう言うと来ていたガウンを脱ぎ捨てると、麻紀の開かれた股間の間に身体を入れた。
荘次郎は腰を落とすと、両手で麻紀の陰毛をかき分ける様に広げて「豆が見えないな、見える様にしなければ駄目だな!これでも感じるのか?」
いきなり禿げ頭が、麻紀の股間の中に吸い込まれる様に入った。
「あっ、あっ、あっ」の声と「ペチャペチャ」と舐める荘次郎の音が、手術室に響き異様な雰囲気に包まれる。
その場の全員が遠巻きにして、その光景を見ている。
芽野は麻紀の微妙な動きを注視して見ているが、反応の良さに若干驚く。
「あっ、あっ、あっ」麻紀の声は続いて、固定されている足先に力が入っているのがよく判る。
「おい!乳首を吸ってやれ!」急に顔を上げて、二人の看護師に命じる荘次郎。
「感度が良いぞ!マン汁が垂れてきた」
麻紀はこれまで陰部を舐められた経験が無かったので、一層感じ方が大きく成っているが、この場の人達は知る筈も無い。
「毛が邪魔だな、舌に絡んで困る」
そう言うと再び「ペチャ、ペチャ」と音を立て始める。
看護師の二人が麻紀の乳房を揉みながら、吸い始めると「ああーーああーーだめ!」と声が大きく変わってしまった。
しばらく続けた荘次郎が疲れた様に立ち上がって「そろそろ入れてやろう」そう言ってゴムを装着したペニスを持つ。
「続けてやれ!」看護師達が麻紀の乳房から離れ様とすると止める。
「さあ、これを食べてみろ!」
べとべとに成っている陰部に自分のペニスを持って行くと、勢いよくグイッと挿入をする荘次郎。
「うぅ、うぅ、ううーー」仰け反る麻紀のボブ。
伸びるつま先、太股を押さえながら腰に力を入れて、一気に押し込むペニス。
「ゆるしてーーーーーー」急に大きな声で口走る麻紀。
「あの許しては、子供に対してかも知れませんね」芽野の横に弓子が来て話す。
「そうかも知れませんね、彼女の中では子供が殺される罪悪感が残っていますからね」と話す。
腰を動かす荘次郎は「良い物を持っているぞ!この女は掘り出し物だな!顔良し、身体良し、道具良しだ」
「ああーああーああー」腰の動きと同時に声を発する麻紀。
「ああーああーーいいーいいー」声が続く。
しばらくして「おおー、締まる!」と口走る荘次郎が、麻紀の身体に倒れかかる様に崩れて「だめーーーだめーーいくーーいくー」の麻紀の声と同時に果てた。
伸びきった麻紀のつま先が逝った事を物語っていた。
しばらくして荘次郎が股間から移動すると、白い肌に岩のりの様な陰部が露出して、今未だ膣口が開いているのが見える。
「院長、お疲れ様でした!私はもう前戯無しで入れたいだけです!もう暴発寸前ですよ!昨日からもう我慢が出来ません」そう言いながらガウンを素早く脱いで、麻紀の開かれた股間に入ると、直ぐに診察台を上げた。
確かにペニスは直立不動状態で、直ぐに自分で押さえて挿入体勢に入ってしまう。
気絶した様に成っていた麻紀が「うぅ、うぅ」と反応を示すと、松尾は腰を動かす速度が速く成って「おおーー締まる!駄目だ!」と言うと天井を見上げて「うぅ、うぅ」と声を出す。
麻紀は殆ど反応が無いが、身体だけが反応して締まった様で、松尾は一瞬の間に終わってしまった。
告知
36-047
「あら、松尾さん終わっちゃった!次松本さんよ!」
芽野が松本を見ると全く準備もしていない状態で「あの、今は無理の様です」と小さな声で言う。
「松本さん、終わっちゃったの?そりゃ無理ね!次回は優先にして貰える様に院長に頼んであげるわ」芽野が微笑みながら言った。
「時間が余ってしまいましたね」弓子も微笑んで言う。
全裸で診察台に大きく股を広げて、眠っている麻紀を見て芽野が「時間が余ったので、貞操帯の為に性器の寸法を測りましょうか?」そう言って股間に戻る。
「ノギス持って来て」
濡れたタオルで股間の汚れを拭き始めると「いゃーん、だめー!」と口走る麻紀。
「物足りないの?変態女に成れる素質大いに有りだわね」
綺麗に拭き取った時ノギスが届いて、クリトリスから膣口までの寸法、尿道の位置、肛門の位置等細かく計測される。
触られる度に、敏感に成っている麻紀は「あっ、あっ」と声を発して反応をした。
しばらくして「これで貴女にぴったりの貞操帯が作れるわよ!時間迄眠らせて下さい」
そう言って芽野は無影灯の明かりを消した。
予定では三時に目覚めさせて、今後の説明をする予定に成っている。
院長室に集った四人は「本当に良い女だ!私のペットに飼いたい程だ!」
べた褒めの荘次郎。
「でも調教して卍に連れて行くのでしょう?」
「もう会には連絡してしまったから、今更中止には出来ないだろう?」
「でも売春を斡旋していた人が、自分が売春婦にされるとは思わなかったでしょうね」
「売春婦ではありませんよ!性奴隷に成るのですよ」
「それも自分から進んで奴隷にして下さいと頼む様に成る」
「身体の全ての細かい寸法を測りましたから、貞操帯、マシンの寸法、衣服に至るまでオーダーメイドで作れます」
「早速卍に連絡して作らせ様!彼女が行くまで三ヶ月有るので、充分時間は有る」
四人の話は食事を食べながら続いて、計画は果てしなく膨らむ。
日曜日の昼過ぎ芦田の元に、安西課長が「簡単な調査報告が入った、東紗子の攻略方法が二、三見つかった」
「流石は安西課長ですね、早さに驚きました」
「先ず娘が今就職活動中で未だに決まっていなく焦っている!希望の就職先が食品会社の様だ」
「食品会社ですか?」
「判るか!私は食品会社には顔が利くだろう?今何処か調べさせている」
「成る程、課長はお顔が広いですからね!」
「もう一つは亭主のエクア工業だが、ここも我社と関係が有るのだよ」
「その様な品物が有りましたか?」
「陳列ケースの関係先だ!手を廻せば調べられる!だが私はもっと手荒い方法を考えている。亭主の東和夫を誘惑させ様と考えている」
「えっ、誘惑ですか?」
「情報では、真面目な堅物の技術者らしい、その様な男は直ぐに落ちる」
「課長の手法は私でも恐い位です、今回の出店用地もまだ建設が始まっていないのに、準備されるのですからね」
「近日中にエクア工業に事務員を入社させる事に成るだろう!君は姉と組んで親父を落とせ」
「はい、頑張ります」芦田は改めて安西課長の怖さを知った。
夕方に成って、病室で目覚める麻紀。
意外と身体に何も痛みとか感じなくて、爽快感さえ感じる。
検査着を着せられて眠っていたので、直ぐに身体を調べるが腕に注射痕が残っているだけで、お腹も痛みは無かったが空腹は襲ってきた。
枕元には(シャワーは大丈夫です。食事も普通に大丈夫です。)と書いて置いて在った。
直ぐにシャワーを浴びると、髪を洗って乾かし始めると、いつもの様に弓子が食事を持ってやって来た。
「元気そうね!身体の痛みとか無い?」
「はい、お陰様で何処も痛みも有りません」
「お昼は鰻にしたわ、食べられるか判らなかったのでね」
「私、鰻大好きです!」そう言って早速食べ様とすると「四時過ぎから、検査結果と術後の説明が有りますので、院長室に来て下さい。もう自分の私服に着替えて頂いて良いと思います」
「はい、ありがとう弓子さんお世話に成りました」
弓子はそれだけ伝えると部屋を出て行った。
監視カメラで、全ての行動が観察されているので、食事のタイミングもベストで届くのだが、麻紀はそこまで考えていない。
食事が終わると着替えて、麻紀は漸く自分に戻った気分で院長室の扉をノックした。
中には院長の荘次郎と芽野が並んで座り、横には泉看護師が立って横には小さなテレビが置かれている。
「お掛け下さい」荘次郎が麻紀にソファに座る様に言った。
「それでは、検査結果と手術の状況についてお話します」芽野がそう切り出した。
「先ず堕胎手術は問題無く終りました。乳癌の検査も問題ありません!そして卵巣癌の兆候も御座いませんでしたが、昨日採取しました子宮頸がんの検査で、極初期の癌が発見されました」
「えっ」麻紀の顔色が変わるのが手に取る様に判る。
「大変初期ですから、開腹手術の必要は無いと思いますが、もう一度精密検査をしてみなければ判りません!若い方に多い子宮頸がんの可能性が高いと思われます」
「早く治療すれば、開腹の必要は無いのですか?」
「多分大丈夫だと思います、抗ガン剤と放射線治療で完治出来ると思います」
「何日程度で完治出来ますか?」
「治療を始めて完治まで三ヶ月は必要かと思います」
「その間仕事は出来ますか?」
「それは無理ですね、抗ガン剤の影響と放射線治療で、とても仕事は無理です!癌は片手間に治る病気ではありません」と強く言う。
顔が強ばる麻紀。
入院
36-048
「開腹手術で子宮の全摘出をすれば、二ヶ月以内に仕事は出来るでしょうが、今の状態で開腹手術は全く必要無いので、転移を押さえてゆっくりと完全に治療する事が、元通りの身体に戻す最善策だと思います」
「先生のおっしゃる通りにすれば、傷も残らず完治するのでしょうか?」
「最近誰かに少し変わったと言われませんでしたか?身近に居る人は少しの変化に気づくのですが?」そう言われて先日持田支店長に言われた言葉を思い出した。
「芽野君がその様に断言しているから、大丈夫だと思うよ!中々初期でこの様に発見されるのは珍しい!彼女は子宮癌では名が通っている名医だよ!或る意味松山さんは運が良かった!桜が咲く頃に成れば完全に治っているよ!」荘次郎が煽てる様に言った。
「唯、手術をした後ですから、一週間程度経過しなければ治療を始められませんから、泉さん例の薬を!」
泉看護師がポケットから、服部産婦人科病院の袋を取りだして芽野に手渡す。
「この薬は癌の進行を遅らせる薬です。あくまで一時的な物で最高でも十日程度の効き目しか期待出来ませんので、その間に仕事と家庭の事を片づけて下さい」
「入院中の外出等は出来ませんか?」
「抗ガン剤が身体に入ると、免疫力が大きく落ちてしまい、簡単な風邪が大病に成ってしまいますから、人混みに出ない方が良いのです!これからインフルエンザも流行しますから、感染すると命を落としかねません」
「松山さんは弓子君がお世話に成っていますし、今回の手術が縁で当病院に来られた経緯も有りますので、特別にVIPの今の部屋を提供しましょう!と言っても無料では駄目ですので一日一万円ではどうでしょう?」
「えっ、院長その様な優遇宜しいのですか?確かにVIPなら、患者との接触は有りませんし、見舞いの人も病院で制限出来ますから、治療が確実です!私としては大変助かります」芽野が先手を打って話してしまい、麻紀は気が動転しているので、押し切られてしまった。
毎日朝夕飲む薬を十日分貰い、タクシーで自宅マンションに帰るが気分は憂鬱そのものだった。
麻紀は翌日から店の事、そして自分の病気の事を説明して、入院の準備をしなければ成らなく成った。
月曜日マネージャーの小杉を少し早く呼んで、事情を説明すると初期の癌で良かったですねと言い、ゆっくり休んで下さいと労った。
特に開腹手術が無い事を、小杉は喜んでいた。
これから忙しい季節に成るので、安達周造に相談するとママの留守を任せる女の子を三、四人程面接に行かせるので選んで欲しいと、安心して養生しなさいと言った。
お世話に成りっぱなしで済みませんと、携帯電話にお辞儀の連続の麻紀。
十日程の間に自分が入院中の事を全て決めておかなければ、と色々な事に神経をすり減らして夜に成ってしまった。
どうしても石谷に連絡して事実を言わなければと、明日美容院に迎えに来て欲しいと連絡をした。
問題は岸に告げるか?一緒に戦おうとしているのに、自分が病気でリタイヤを告げて良いのだろうか?阿部さんの土地で何かが起ろうとしているのに、今この場を離れなければ成らない無念さが麻紀の気持ちを一層暗くした。
その岸は明日阿部彰次に会いに行く準備をして、連絡が無い妻と息子の事を考えていた。
このまま何も言わなくて、妻がいきなり離婚を切り出すのだろうか?確かに生活には困らない財産は実家には有るだろうが、全く音沙汰の無い不気味さを考えてしまう。
一方兵庫県警は藤井の死体の検死結果に、頭部に打撲の跡が残っていた事が判明、何か金属の棒で殴られて倒れた後、火が家屋全体を包んでの焼死だと断定した。
捜査本部は放火殺人事件として、捜査本部を立ち上げ本格的な捜査に乗り出した。
安住刑事と内海刑事は当初から、殺人の可能性が大きいと考えて捜査をしていたので、自分達の読みが正しかったと誇らしげだ。
だが犯人は?と成ると中々絞る事が困難で、安住刑事の頭には亡く成る寸前に百万の小切手を貰ったか?返して貰ったか?麻紀の存在が大きく残っていた。
新地の美貌のママ麻紀の姿は、二人の刑事の脳裏に鮮明に成っていた。
火曜日その刑事二人は、クラブホワイティアを聞き込みに訪れる事にして大阪に向かった。
理由は放火殺人と聞いて麻紀がどの様な反応を見せるか?それが見て見たいのが理由だが、本心はもう一度会いたいだった。
結局岸には何も言えず、夕方美容院に行き少しの間、入院するので店を休むと告げた。
驚く美容院の店主に女の病気だと話して、お大事にと慰められた。
その後石谷が迎えに来ると、同じ様に女性の病気で服部産婦人科病院に入院すると話すと、大きな病院で芸能人も時々入院すると知っていた。
石谷は麻紀の病は気懸かりだけど、危ない今のハピットとか共和住宅に暫くは目が向かないので安心だと思った。
店に行くと小杉マネージャーが、明日二人、明後日一人面接に来られるとメモを渡した。
早速安達が臨時のママさん候補か、助っ人を準備してくれたと喜んだ。
年末に成るので、三人とも採用しても良いと小杉は言うが、年末年始は良いが二月から三月は客足が伸びないのでは?と危惧している。
店のパソコンに略歴と写真が送られてきたのは、九時過ぎに成ってからだった。
小杉が明後日面接の女の子は、中々頭も良い、容姿も良いと一押しだと麻紀に連絡してきた。
その頃、持田支店長が麻紀の様子を覗きにやって来た。
店の女の子に確かめてやって来た様で、服部産婦人科病院に連れ込まれてどの様に変わったのかを確かめに来たのと、岸との動きを調べに来たのだ。
事前に店の女の子に電話で様子を伺い、店に来た時にプレゼントを渡してスパイの様に使っている。
「支店長いらっしゃい、紹介して頂いた弓子さん大変助かっています」そう言って御礼を言う姿を舐める様に見て、何も変わってないな?本当にあの変態医者に?と疑問に思いながら席に着いてしばらくすると、スパイの女の子真理が「実はママさん、月末から入院するらしいわ」と小声で教えた。
成る程、これから捕まるのか?と理解した持田が、岸の事を尋ねると最近は来ていないとの答えで安心して楽しんで早い時間に帰って行った。
不運
36-049
持田の前から消えた麻紀は、兵庫県警の来店を外で話を聞く為に近くの喫茶店に居た。
「今の時間、警察の方に来られると営業に影響します」
「済みません」安住は謝りながら、放火殺人の捜査に成りましたと説明を始めた。
「金属の棒の様な物で頭を殴られて、気絶した時に放火されたと思われるのです」内海刑事が付け加える。
「本当に借金の返済で?」
「本当もなにも、刑事さん達は私が藤井さんを殺したとでも?」
「土曜日の夜は?」
「勿論お店に出ていました、夜一時過ぎに店を出ました。私を疑っていらっしゃるの?」
「その後は?どうされました?」
「勿論自宅に帰って、休みました!三時頃だと思います」
「それを証明して貰える人は?」
「個人タクシーの石谷さんです、これが連絡先です」メモに書いて手渡す。
「それからもう一つ新しい事が見つかりました。藤井先生は変態写真を多数持たれて居た様です」その言葉に顔色が変わる麻紀。
「大半は燃えてしまった様ですが、一部やけ残りが有り分析中です」内海刑事が付け加える。
「藤井先生は店のお客様ですが、趣味までは存じません!」麻紀は慌てて関係を否定した。
自分のあの写真が発見された訳では無いと、心では否定するが動揺は隠せない。
しばらくして、二人の刑事は麻紀と別れたが「写真で動揺していましたね」と内海が言うと「変態写真が恥ずかしくて動揺したのかも知れない!兎に角もう少し彼女の身元を調べて見よう」二人は異なる気持ちで神戸に帰って行った。
麻紀は自分が疑われているのは小切手だけだが、もし写真が出て来た場合は完璧に疑われると思う。
しばらくして、石谷は警察が電話してきましたが、藤井って会計士の放火殺人に何か関係が有るのですか?と尋ねた。
「関係有る別け無いでしょう」と否定をしたが、石谷は不安を持った。
翌日岸は水曜日の会社の休みを利用して、阿部彰次の自宅を訪れていた。
昨日急に彰次は急用が有ると、断ってきたので水曜日にずれ込んだのだ。
昨日、福永が購入する土地の下見に彰次と妻華子を連れて行って、土地を見せて食事をしたのだ。
勿論持田支店長も同席して、食事を振る舞いその後別れて、ホワイティアに行ったのだ。
高級会席料理のコース料理を食べ、マンション用地を見せて、新しい会計士を紹介と持田支店長のシナリオ通りに運んだ。
酒を飲んだ華子は、岸が来るのを断って来ましたと言ってしまった。
持田支店長は、岸君はもう直ぐ会社を追出されてしまう可能性が高いと話した。
驚いた彰次は理由を尋ねる。
持田支店長は「実は今回の阿部さんに対する提案は、会社の許可無しで行っている様ですよ!」と話してしまった。
「それでは、ダイヤ建託が知らない提案を持って来るのですか?」
「多分そうだと思いますので、素知らぬ顔で受け取って私に見せて下さい、阿部さんの損に成る様な事が無い様吟味させて頂き、当社のプランとどちらが良いか、会計士の志水さんに見て貰います」と一気に話していた。
華子はすっかり持田支店長を信用して「お父さん、先程見た土地を買ってマンションを建てましょう?子供達に財産を全て残せるから、みんな喜ぶわ!あのマンションは昭子に、今度建てるのは里子に、今建設中のマンションは彰彦に譲りましょう」勝手に話す華子。
水曜日自宅を訪れた岸に「休みだったのに、申し訳無かったな」
「今日は急用で?」
「親戚で不幸が有って、悔やみに行っていた明日が通夜で、明後日が葬儀だ」適当な嘘を並べる彰次。
自分が作ってきた資料の説明に、殆ど質問もしないで聞く彰次。
判り難い部分も多いが、彰次は殆ど計画書も見ないで岸の説明が終わった。
岸は親戚の葬儀の事で、真剣に聞いていないのかと思いながらも最後に「絶対に共和住宅の案には乗らない様に呉々もお願いします。相続税は無いかも知れませんが、財産も無く成るかも知れませんので」そう話して自宅を後に、建設現場を見に行った岸。
もう殆ど外観が出来上がり、来月中頃で資材も置きませんので、隣の土地は空きますと現場責任者が岸に話した。
いよいよここにハピットが出来るのか、裏取引で盗まれた物件か!と腹立たしい思いで見つめていると、一人の女性が岸に「ここに何か建設されるのですか?」と尋ねた。
本当は話さない岸も、腹立たしさも手伝い「ここにはハピットが出来るのですよ」と教えてしまった。
この聞いた女性は近藤の妻晶子で、急に明るく成って「ここだったのですね」と嬉しそうに空き地に資材が少し置かれて居る土地を見ていた。
自分達の店が何処に出来るのか?その様な心配をしていたが、一気に晴れ晴れとした気分に成った。
「この場所で家賃って四十五万程度は高いですか?」変な事を口走る女に、怪訝な顔をすると、急にお辞儀をして立ち去った。
岸はハピットの家賃を思い出して「普通はその金額が妥当だよ!NOZOMIは破格だった!」独り言を言って立ち去った。
翌日安達の紹介の二人が面接に訪れて、小杉と二人で面接の結果採用に成った。
「明日の片桐志津さんは、申し分ないから三人居たら安心だわね」
「はい、今夜の二人も悪く無かったですね」
「明日の片桐さん関東の女性でしょう?だから敢えて多いけれど今夜の二人採用したのよ」
「それから、真理さんですけれど、持田支店長に金品を貰って店の情報を流して居る様です」
「そうなの?気を付けて見ていて下さい」
翌日その片桐志津は開店前に店の近くに来て時間を潰していた。
細身で二十五歳の清楚系の美人、道行く男性が振り返って志津を見て行く。
時計を見て、未だ早いと思った千津が近くの喫茶店に入った。
この喫茶店に弓子が、病院の看護師泉に送って貰って一緒に入って来た。
「ありがとう、送って貰って助かったわ、出産が長引いて遅れるかと思ったわ」
「逆に早く着いちゃったわね!道路が空いていたからね」
「もう今週で、おさらばだけれど、後二日頑張るわ」と話し始めた。
志津の丁度後ろの席に座った二人、喫茶小鳩で新たな事件が起ろうとしていた。
生理、整理
36-050
しばらくして「もう時間だ!ホワイティアに行かなくちゃ」と立ち上がった弓子に、後ろの席から「すみません!クラブホワイティアの方ですか?」と志津が立ち上がってお辞儀をした。
「貴女誰?」弓子は驚いて尋ねる。
「面接に来たのですが、時間が早くてここで待っていたのです、今日神奈川県から来ました」
横から泉看護師が「ここにずーと居たの?」恐る恐る尋ねると頷いた。
二人はここで、麻紀の今後の事を話していたので、驚きの表情に変わった。
弓子が咄嗟に「面接は近くの事務所でするのよ!車で五分程度の処よ!私達も今からそこに給料を貰いに行くのよ!乗せてあげましょうか?」
「そうなのですか?事務所で面接だったのですね、聞いてなかった!ありがとうございます」赤いキャリーバッグを持って居るのを見ると、泉看護師が「荷物も有るから歩けないわね!一緒に行きましょう!採用されたら同僚だわ」そう言って急かす様に、コーヒー代も弓子が払って喫茶店を出る三人。
駐車場に自分からキャリーバッグを持って歩く弓子。
トランクに直ぐにバッグを放り込むと「乗って!」そう言って軽四の前の座席に志津を座らせる。
弓子が後ろに乗ったのは、荘次郎院長から持たされている緊急用の誘拐グッズのバッグを使う為だった。
麻紀を最悪このグッズを使って、誘拐しなさいと指示されて持って居た物だ。
今夜役に立つとは考えても居なかった弓子は、ビニールのポシェットの中に液体を注ぎ込む。
クロロホルムを充分染み込ませて、密封するとタイミングを測る。
ミラーで後ろの様子を見ながら運転をする泉看護師は、車の多い通りから公園の方に進路を変更して、チャンスを測る。
急に後ろから弓子がポシェットから、クロロホルムの染み込んだ布を取り出し志津の口を塞いだ。
「な、うぅ」の呻き声と同時にそのまま意識を失うと、布を口と鼻を塞いだ状態でマスクをする。
「私達の話を聞かれた可能性が高いわ」
「でも何も知らない様だったけれどね」
「店に入ると、話の辻褄が合ってくるから、必ず感づくと思うわ!この子関東の子だから、少しの間なら、判らないから病院に連れて行って院長に相談して貰えますか?私店に行かないと怪しまれる」
「判った!店に送ってから、院長に説明してみるわ」
泉看護師は弓子を店の前で降ろすと、院長に電話をした。
院長は今、トラブルが起ると麻紀が罠に填まらないから、連れて来いと指示をした。
店に入った弓子は、遅れた事を詫びながら着替えの部屋に向かう。
一方病院に運ばれた志津は、そのまま六階に運ばれて、VIPの病室に監禁状態で眠らされた。
院長は既に自宅に帰り、青木看護師だけが志津の姿を見て「中々美人だわね!院長がどの様に処理するか楽しみね」と言って預かった。
六階には三部屋のVIPの病室が準備されていて、お互いの部屋は完全な密室状態で、患者同士が顔を合わせる事は無い。
幸い今は、三部屋とも空室状態に成っている。
院長が麻紀を調教する為に敢えて断る状態に成っている。
時計を見ながら麻紀が「面接の子遅いわね」小杉マネージャーに尋ねる。
「携帯に連絡したのですが、電波が届かない場所だと言いますね」
「安達さんが紹介する子だから、変な子は居ないと思うのだけれど変ね」
結局深夜まで連絡が付かず、翌日安達に問い合わせをする事にした。
岸の計画書は翌日阿部から、福永の手を経て持田支店長の手元に届く。
根岸会計事務所の爺さんの計画書か?この様な計画書で仕事をしていたら、我々業者は儲からん!と怒る。
「福永君!年内に土地を買う契約をしてしまえ!マンションの建設は今のマンションが完成してからでも良い!別の人から打診が有って迷っているとでも言って急がせろ」
一方の安西課長もエクア工業に一人の女性社員を、期間社員として潜入させる事に成功する。
娘の希望就職先の二社も安西の元に連絡が届き、ハイチ食品の方に重きを置いている事を知り早速頼み込む。
「安西さんの頼みって女性社員の入社ですか?簡単ですよ!結婚までの腰掛けでしょう?」
「まあ、そんな感じで結構です、応募をしたら直ぐに内定を出して欲しいのです」
「おやすい御用です」この様な裏取引で、直ぐに内定が決まってしまう。
ハイチ食品には、ハピットの力は絶大で、女性社員の一人位安西課長の覚えの為なら簡単だった。
東和夫の職場に来週から、新しい派遣の女性社員が入る話は和夫の直属の上司が課内に発表した。
技術の職場に三十歳の女性は、珍しい事で直ぐに話題に成った。
堅物で有名な和夫を落とすには、身近に接していなければ中々話も出来ないと聞いたので、社長直々に安西課長が頼み込んだのだ。
女は安西課長が色々な作戦の為に、準備している契約社員で京極と似た様な存在。
須永千尋三十歳、色気が有って誘惑は得意技と自慢している女性だ。
日曜日に麻紀は老人ホームに祖母を訪ねて、少しの間東京で仕事をするので、会いに来られないと伝える。
「何処か身体が悪いのか?」と麻紀に言うので、祖母の直感に驚きながら老人ホームを後にする麻紀。
だがその日予期もしていない生理が始まり、戸惑う麻紀は弓子に電話で状況を尋ねた。
妊娠中絶手術をして、一週間で生理が来る事の違和感で、異なる病気かと思ったのだ。
弓子は慌てる事無く、携帯に芽野先生から詳しく説明を聞いて下さい。
唯、病院でもその様な事例は時々希に有る様ですと答えた。
しばらくして「この頃少し火照るのも何か関係が有るのでしょうか?」芽野の電話に尋ねる麻紀。
「いいえ、女性としての機能が回復したのだと思います、今回の生理で普通に戻るのでは無いでしょうか?心配は必要有りませんが、治療を一週間遅らせましょう、薬は山木さんに託けます」芽野の言葉に安心する麻紀は、入院が来週の水曜日から、再来週にずれ込んだ。
これが一人の女性を一気に不幸にしてしまう。
兵庫県警
36-051
安達は麻紀に「片桐志津は先週木曜日に関西に仕事に行くと連絡が有ったそうだ!大阪から自宅に電話をしている」
「私も何度か教えて頂いた携帯番号は電波の届かない場所と、メッセージが流れるだけです」
「美人で真面目な女性だから、事故に遭ったとしか考えられない、連絡無しで消える筈が無い」
「会長!私知り合いの刑事さん知っていますから、一度話をしてみます」
「警察は成人の女性の失踪は、殆ど相手にしないぞ!」
「頑張ってみます」
麻紀は一度病院に行って、もう少し詳しく聞きたいと思っていた。
一度電話をしたのだが、VIPの先生には患者様からの電話はお繋ぎ出来ませんと断られたのだ。
水曜日に弓子には会うので、その時薬は持って来るのだろうが、自分から一度芽野先生に会いたいと思っていた。
月曜の朝、兵庫県警の安住刑事に電話をする麻紀に驚き何事なのか?何か供述するのか?内海刑事と二人は聞き込みに行く予定を中止して、署に待機する事にした。
大友捜査一課長が、聞き込みに行かない二人に尋ねると、参考人の美人が署に来ると答える。
「例の新地のママか?今の処タクシー運転手の石谷とかの証言も有るのだろう?」
「まあ、そうなのですが?二人の関係は結構親密ですからね!」
「親子の様な?孫でしょうか?」内海が同じ様に答えた。
「でも新地のママにしては、化粧臭く無い清楚な感じの美人です」
「おい、安住!惚れたのか?」
「課長冗談は辞めて下さい!」
「課長!安住さん惚れているかもです!」と茶化して爆笑に成り、顔を赤くしている安住。
石谷のタクシーで十時過ぎに県警に到着した麻紀。
捜査課の方に案内されて、廊下を歩くと署員の男が振り返って麻紀に視線を送る。
地味な紺色のスーツ姿で、化粧も薄目で控えて来ているが、この場所では一際浮き上がって見える程の美人だった。
スタイル、容姿は女優が警察に来たと表現するより、撮影?と思う程だ。
「態々お越し頂いて、申し訳有りません」安住刑事が恐縮しながら言うと「実はお願いが有ってまいりました」と微笑む。
「お願いですか?事件と関係有るのでしょうか?」
「いいえ、関係無いと思いますが、普通にお願いしても捜して頂けないと思いまして、刑事さんにお縋りしようかと思いましたのです」
「どの様な?」
麻紀は志津失踪の話と、志津の履歴書とパソコンから取り出した写真を見せた。
「これは美人さんだ!」横から内海刑事が写真を見て言う。
「片桐志津さんが、突然消えて携帯は電波の届かない場所ですか?」
「それも変ですね、携帯が切られているのは最近の若い人では考えられませんし、まだ持っていない人も結構居ますからね」
「二十一世紀に成れば、一人で二台は持つだろうと言われていますから、今持っている若者は自慢していますがね」内海刑事が早速携帯に通話してみるが、同じ状態だと首を振った。
「本来はこの様な事件は捜査一課では、取り扱わないのですよ」安住刑事が麻紀に言う。
「判って居ますが、何とか足取りだけでも捜して頂けないでしょうか?」
「まあ、事件性が有るか調べて見ましょう」安住刑事が引き受けてしまったのを、唖然とした表情で見る内海刑事。
麻紀が帰ると「知りませんよ!勝手に行方不明か、失踪の人探し引き受ける何て」内海が困り顔で言った。
「だが、彼女が事件に関連していると考えたら、何か関係が有るかも知れないだろう?」
「それは安住さんの勝手な考えでしょう?この志津さんは美人だから、彼氏と何処かに遊びに行ったのですよ!でも可愛いと美人の中間ですね!僕の好みです」
「だろう?上手く捜して救い出せば内海の彼女に成るかも知れないだろう?」
「そうですか?いいえ!安住さんは松山さんに惚れているから、事件を作っているのですよ!」
「課長には事件性が有ると、話すぞ!松山さんをもう少し詳しく調べると言うぞ!紹介者の安達って男も調べ様」
結局二人は美人に負けた形で、調べる事にした。
安住も麻紀の事をもう少し調べてみたい心境に成っていた。
その後麻紀は石谷と十二時少し前に服部産婦人科病院に到着した。
麻紀は受付で「芽野先生にお目に掛りたいのですが?」と尋ねると、受付の女性が「当病院に芽野と云う医師は居ませんが?どの様なご用件でしょう?」と不思議そうに言った。
「私、先週の土曜日と日曜日に入院していました松山麻紀と申しますが?」
「えっ、土曜日と日曜日は、当病院は救急の方以外は。。。。。」と言って途中で話を切ると、奥に消えた。
受付の女性は直ぐには戻らず五分程度が経過して、戻って来ると「係の者が参りますので、そこでお待ち下さい」と長椅子を指さした。
しばらくして、弓子が驚いた表情でやって来て「ママ!来られるなら事前に連絡して頂かないと、VIPの方はこの受付の女性は知らないのです」
「芽野先生にお会いしたくて、急だったけれど兵庫県警にも用事が有ったので来てしまったのよ!連絡しなくてごめんなさい」
「実は芽野女医は、名古屋の病院と掛け持ちで、今日はここには来てないのよ」
「そうなの?やはり電話をしてから来るべきだったわ」
「これお薬よ!水曜日に渡そうと思ったけれど、折角だから今渡すわ」
弓子は上手に麻紀を追い返したが、兵庫県警の言葉が気にかかる。
水曜日以降に何の用事で、県警に行ったのか聞く必要が有るかも知れないと思った。
荘次郎に片桐志津の事を弓子が詳しく伝えたのは水曜日に成っていた。
荘次郎は出張で北海道に昨日まで滞在して帰って来たのだ。
当初はこの日から、麻紀が入院するので合わせて戻ったのだが、既に一週間延期された事は連絡を受けていた。
既に六日間VIPルームに監禁されている志津は、ここが神戸の病院の様だと景色で感じていたが、病院にしては余りにも豪華な部屋に驚いていた。
時々食事を運んで来る看護師は、何も喋らず出て行くだけで憂鬱な日々に成っている。
入院
36-052
十二月に成って阿部彰次は福永に急ぐ様に言われて、華子の助言も有って土地の取得の仮契約をしてしまった。
その後岸も何度か検討結果を聞いたが、華子が主人は今のマンションの建設が終わらなければ、次の事は考えられないと申していますと断った。
荘次郎は急に思いだした様に「誘拐してきた女は美人か?」と看護師の青木に尋ねた。
殆ど世話は青木が行って、泉と弓子はあの日以来一度も顔を見せていない。
最初の数日は食事も少なかったが、最近では順応したのか、普通に食事を食べる様に成った。
テレビ、DVD、雑誌と時間を浪費する事には支障は無いが、外との電話は携帯も、室内電話も通話が出来ない状態に成っている。
「ここは、神戸の病院でしょう?」青木に話し掛けると「どうでしょう?」と答えるだけで「いつまで私を監禁して置くの?理由は何?神戸に知り合いは居ないのよ!誰かと間違えて誘拐して困っているのなら、早く解放しなさい!今なら警察には届けないわ」と言っても何も言わずに部屋を出る青木。
「院長!中々美人ですよ!一度ご覧に成りますか?」
「モニターには映らないのか?」
「急な事だったので、モニターの無いC室に放り込みましたので、ここに連れて来るか、院長が見に行かれるかです」
「私が診察に行くか!」白衣を着て、青木看護師を連れて病室に向かう荘次郎。
部屋に入ると、バスローブ姿でテレビを見ていた志津が荘次郎の姿に驚いて、バスローブの前を持って部屋の端に逃げる様に走った。
始めて見た男性の姿に驚いた表情の志津「私を誘拐させたのは、叔父さんなの?もう一週間よ!警察が探しに来るわ!何故?ここは病院でしょう?」
「そうだよ、婦人科の病院だ!診察してあげましょうか?」
「要らないわ、何処も悪く無い!帰らせて!」
「残念ながら、帰す訳には行かない!しばらくここに住んで頂こう」
「叔父さんもしかして、神戸の高級婦人科で芸能人にVIPの部屋を。。。。」と思い出そうとする志津。
青木と荘次郎の顔色が変わると「何故知っている?」
「私の知り合いの友人が手術したからよ!確か服部とか聞いた様な」
「そうなのか、それなら尚更帰す訳には行かないな!」
「何故?私は病気では無いし、クラブに勤める為に神奈川から来たのよ!病院と関係無いわ」
「本当は関係無かったが、聞かなくても良い事を聞いてしまった!」
「何の事かさ。。。。。。。」と言い始めて言葉が止った志津。
「もしかして、ママの入院?あの話はママの話だったのね」
「やはり、聞いていた様だな!その通りだ!君が勤めるクラブのママはこの病院に入院させられるのだよ!」
「嘘の病気で、でしょう!」
「中々君は勘が鋭い様だね、美人ママはこの病院に入院して、治療を受けて素晴らしい女性に生まれ変わるのだよ」
「それって?何なの?整形って事?違うわよね、偽の入院だから整形では無いわよね!友達が変な事言っていたけれど、本当なの?」
「何を聞いたのだね、私も知りたい」
「手術の時、強姦された様な夢を見たって。。。。。。」
「そこまで知られて、ここから無事に帰られると思っているのか?ママは私達のペットになれる様調教を行うのだよ!君にはその様子をゆっくり見せてあげよう!当分ここで生活して貰おう」
「いゃーーー」
「嫌なら、君がママの代わりに調教を受けて、ペットに成るか?」
「どちらもいやーーーー」大声で壁際を移動しながら叫ぶ志津。
荘次郎はそれ以上何もせずに、青木と一緒に部屋を出るが「あの女は同じく卍に送り込もう、知りすぎてしまった!身元とか色々調べて支障が無ければだがな!至急調査を始めなさい」
荘次郎は慎重に行動する男で、麻紀の調査は藤井から貰っていたが、自分も調査をして両親が居ない事、子供も結婚を約束している男も居ない。
藤井の調査では芸能事務所の会長の女で、会長が高齢で手切れ金の代わりに店を貰ったとの報告書を鵜呑みにしていた。
東の家では、安西課長の策略で就職が直ぐに内定して上機嫌の長女瑠美は、残り少ない大学生活を友人と年末からスキーに行く段取りで呑気な気分に成っている。
旦那の和夫は会社の忘年会が恒例の課内で行われて、チャンス到来と送り込まれた須永千寿は和夫の誘惑を狙っていた。
普段から堅物で、妻紗子とも見合いで結婚したので、女性に話かける事も皆無の男だ。
容姿はそれ程悪くは無いが、話が殆ど出来ないので浮気は皆無だと紗子も自信を持っている。
酒だけは結構好きで自宅では飲む事が多いが、外では忘年会とか新年会、歓送迎会以外は飲まない。
早速隣に座って、千寿は誘惑の準備は出来上がっている。
睡眠薬まで準備して、今夜は絶対に自宅には帰さないと決めている。
そんな夜、麻紀は店を休んで明日からの入院準備をしていた。
その時、岸から久々に電話が有り、様子を伺う様に近況を話した。
会社では完全に浮いてしまって、居づらいし自宅も変なのだと妻の里帰りを始めて告白した。
「私が原因?」
「よく判らないのですが、何も言ってこないので判らないのです」
「迎えに行かれた方が良いのでは有りませんか?」岸の期待とは異なる麻紀の言葉。
自分の事を好きだと言って貰えると思っていたが、麻紀は自分の病気の事も有るが、他人の家庭を壊す程のめり込む事は無い。
麻紀の味気ない言葉に考えて見ますと答える岸。
麻紀はこの後「実は少し店を離れる予定です、岸さんとも連絡が出来ないと思います。四月に成れば阿部さんのマンションも完成ですね、大きく変わっているかも知れませんね」と言われて「どうしたのですか?何か有ったのですか?」の言葉に「。。。。。。」無言で数秒間経過後電話は切れて、麻紀が岸の電話に再び出る事は無かった。
不倫で崩壊
36-053
翌朝、キャリーバッグに細々とした物を詰め込んで、石谷のタクシーで服部産婦人科病院に朝の十時に自宅から向かった。
事前に昼休みに来る様に弓子に言われていた。
午前の診察が終わると、夕方まで患者が来ないのでVIPの患者は、平日はこの時間帯に入院されると言われたからだ。
弓子はもう直ぐクラブを辞める予定にしていたが、クラブの様子を調べる為にしばらく勤める様に院長に言われて機嫌が悪い。
石谷が一緒にキャリーバッグを持って病院に入って来る。
看護師の泉と弓子が受付で待ち構えて「はい、運転手さんご苦労様でした、後は私達が運びますので、お帰り下さい!」追い返す様に言う。
「石谷さんごめんなさい!もう良いわ!また何か必要な物が有れば、連絡しますからお願いします」
「お大事にして、早く治して下さい」と石谷は丁寧にお辞儀をして麻紀と別れた。
早速エレベーターに入る三人、六階の鍵を開けてボタンを押すと、麻紀は囚われの身に成る事を知らない。
「病室で少し休憩されて、食事は?」
「簡単に済ませました」
「それでは一時から、先生の今後の治療の方法の説明が有ります。多分治療は明日からに成ると思います」
「はい、判りました」
「この病院には、色々な設備が備わっています。以前は一日の入院でしたので説明しませんでしたが、病室以外に女性には欠かせない美容室を完備しています。一般の方は一般用でVIP専用は六階に在ります、コンビニ(ラック)も入っていますので、必要な物が有れば電話で注文すればVIPの方は病室に届きます」
「凄いですね」
「VIPの方は顔が知られるのが一番困られるので、色々対策をしています」
「今、何方か入院されていますか?」
「はい、一名入院されていますが、有名な方ですので松山さんも廊下では気を付けて下さい!見かけても声を絶対にかけない、見ない様にして下さい」
「判りました!気を付けます」
病室に案内されると、全く前回と同じ部屋で或る意味安心するが、この部屋で三ヶ月も過すと思うと気が重く成る。
「それでは半時間後に、院長室で説明をされると思いますのでお越し下さい」
「服装はこのままで?」
「本日は多分何も治療も検査も行いませんので、着替えは必要無いでしょう」
東和夫は須永千尋の罠に填まり、目覚めたのは市内のラブホテルの一室。
それも昼の十二時を過ぎてからの目覚め、下着姿の千尋は目覚めた和夫に抱きつく。
「お目覚めね!おはようございます」
「君は須永君!ここは何処だ!」抱きつく千尋を振り払って室内を見廻す。
「ここは!」と言って起き上がると自分が全裸だと気が付く。
「まあ、もう元気だわ」いきなり和夫のペニスを握って、顔を近づける。
「何を、するのだ!あっ、うぅ」そのペニスを長い舌を出して、舐めると驚くよりも感じてしまう和夫。
妻の紗子には一度もフェラをして貰った事が無かったので、衝撃が走っている。
「僕は、僕は君と、ああーいいーうぅ」話をするよりも息子が勃起してしまい我慢出来ない和夫。
最近妻とは全くSEXが無く成っているので、いきなりの刺激を押さえられない。
「東さん、もう一度抱いて?」自分からキャミソールを肩から外して、乳房を出すと東の右手を持って乳房に持っていく。
結局和夫は完全に千尋の術中に填まり、SEXに没頭しホテルを出たのは夕方に成ってしまった。
だがホテルを出てから、自宅に電話をすると紗子は興奮で「帰らなくても良い!」と電話を切った。
会社には千尋が電話をして、具合が悪いので休むと言ったので、二人の関係が公表された様な事に成ってしまった。
「昨日東さん酔っ払ってしまって、須永さんがタクシーを駅まで送ると言って、一緒に帰ったのに!」
「結局、東さん自宅に帰れなかったのよね」
「二人は出来ちゃった?」
「無理だろう、あれだけ酔っ払っていたら、お役には立ちませんよ」
千尋の朝の電話で会社では大いに話が盛り上がっていたのだ。
和夫に連絡が出来ない紗子が会社に朝電話をすると、昨日飲み過ぎて近所のビジネスに泊まられて、今日は二日酔いでお休みだと聞きました。
元々須永千尋は臨時の社員で、今日は休みに成っているので支障は無いが、社内では完全に噂が広がってしまった。
自宅に帰った和夫は家族に完全にボイコット、特に姉妹には手厳しい仕打ちを受ける事に成る。
麻紀も憂鬱な時間を夕方から過していた。
それは一時からの芽野と院長の治療説明で、完全に滅入ってしまって、食事も喉を通らない状況に成っていた。
一時に院長室に行くと「松山さん今日は一段とお美しいですな!以前は化粧もされていなかったが、今日はメイクも決まって素晴らしい」と絶賛して迎え入れる荘次郎。
罠に上手く填まった喜びが言葉に表われている。
「お掛け下さい、これから松山さんの治療の段取りに付いてお話します」
「はい」
「患者さんの協力が無ければ医者の一存で、治療を進める訳には参りませんので、充分説明を理解して頂き協力をお願い致します」
「先ず以前の検査と手術で言い忘れていた事が有ります、今回の治療の間にそれも治療を致しましょう」
「えっ、子宮頸がん以外に何処か悪いのでしょうか?」
「世の中の女性の大半はこの症状なのですが、支障が無いので放置されていますが、松山さんの場合は若干支障が有りますので、この際手術をお勧め致します」
「先生!何処が悪いのでしょう?」
「松山さんはクリトリス包茎と云う男性の包茎と同じなのですが、包茎の度合いで細菌の繁殖で、臭い、不感症、子宮の病気に感染し易いのです。今回の子宮頸がんもウイルスが原因だと言われています。今回の入院中に手術される事をお勧め致します」
「簡単な手術で、外科医の木村君に頼めば十五分程度で終りますよ」
いきなり異なる手術を勧められて顔色を変えて驚くが、臭いと細菌と言われて嫌とは言い難い状況に成った。
断髪
36-054
「よろしくお願いします」と麻紀は軽くお辞儀をして承諾した。
「明日からの治療ですが、抗ガン剤と放射線治療を始めますが、松山さんの身体に合う薬の分量が把握出来ませんので、明日一度目の治療の後は十日程時間を空けて手術の抜糸をして、身体の様子をみます。それで身体に合った量を決定して、五日後から二週に一度程度の治療を行います」
「はい」
「今、飲んで頂いて居る薬で何か身体に変化が有りますか?」
「はい、微熱と言いますか、火照る様な感じがしています」
「成る程!薬が効いている様ですね!抗ガン剤を使うと色々身体に副作用が有るのはご存じですね」
「はい、吐き気とか頭髪が抜けると聞きましたが、本当でしょうか?」
「はい、本当です!当病院ではその為に患者さんには鬘を勧めています。特にVIPの患者さんには無料で提供致しています。有名人の為イメージを変えられませんので、対策を講じているのです」
「やっぱり、副作用が有るのですね」
「髪は女の命とも言いますから、櫛で梳くと抜けるのは耐えられないそうですから、当病院では事前に患者さんには坊主に成って頂いて、その抜ける気分を和らげます!でも外見は鬘で全く変わりません」
「えっ、坊主に成るのですか?」
「はい、そうすれば髪が散乱しませんし、不安も解消されて気に成りませんから精神的には楽です」
「は、はい」とは言うがいきなり坊主に成るのは憂鬱な気分の麻紀。
追い打ちをかける様に、テーブルに写真のファイルを出して麻紀に見せる。
それは無残に部分的に抜け落ちた姿の写真で、麻紀には凝視出来る物では無かった。
「この様に成るので、私は事前に坊主にする事をお勧めしています」
「。。。。。。。。」無言で頷く麻紀は、完全に明日からの治療が憂鬱な気分に成ってしまった。
顔を見合わせて、目で笑う芽野と院長。
「それでは、明日九時半に看護師が部屋にお迎えに参りますので、美容院に行って頂いてから治療ですから、検査着のみにガウンでお待ち下さい。食事は普通で大丈夫ですよ!明日の治療の後は十日程度空きます、それから明日クリトリスの手術もしますので、明日のお風呂はお控え下さい!シャワーは大丈夫です」
麻紀は憂鬱な気分で夜を迎えた。
鏡に向かいながら、明日から坊主に成っちゃうのか?そう思いながら首が丁度隠れる程度のボブの髪を見つめていた。
東紗子はその日の間に父親の自宅に行って「今夜泊めて!」そう言って機嫌が悪く「どうしたの?」と母親の言葉に「あの堅物が浮気で朝帰りしたのよ!」と強い言葉で罵った。
「子供達は?」
「二人共友達の処で泊まると話していたわ」
「友達って?女の子でしょうね?」
「多分そうだと思うわ!」
「そんな無責任な!男だったらどうするのよ!妊娠でもしたら大変よ!」
母親の予感は的中で、次女は日頃から付き合っている大学生、堤章二のアパートに転がり込んでいた。
「お父さん不潔で、一緒に暮らせない」と泣きながら抱きつくが、自分も全く同じ事をしている事に気が付かない。
九州から神戸の大学にマンション住まいの堤、東の家は次の波乱が待ち構えていた。
安西の放った矢が、東家の崩壊を導き出した。
誰も居なく成った我が家で、コンビニの弁当を寂しく食べる和夫は、生まれて始めて女に好意持ってしまった。
その日の間に姉の陽子に連絡が届くと「マンション建設より自分の家族を見張ってないからよ!」と嫌みを並べた。
陽子は今がチャンスだと、コンビニ建設に力が入る。
翌日覚悟を決めて麻紀は迎えの看護婦を待つ。
その頃、千津も院長に「今から面白い物を色々見せてやろう、捕まえて連れて来い」
「いやーーーー」大声で壁際を逃げるが、看護師三人に捕えられてしまう。
「口を開きなさい!大声を出されると困るからね」
両手を後ろに廻すと、手錠をしてしまい口には革の猿轡を填められて、声が出せなく成った千津。
「院長これで大丈夫です!」
「連れて行け!大人しくしなければ、ママと同じ様な事に成るから、よく見て置く事だ」
片桐千津が連れて行かれた部屋は、小さな小部屋に成っていてガラスの様な物が左右に有る様に見えた。
中央の柱に後ろ手の手錠の縄を引っかけると、青木看護師を残して他の看護師は出て行く。
「ここはね、両方の部屋が見える見学用の部屋なのよ!もう直ぐ両方の部屋で面白い物が見られるわ」そう言った時に荘次郎が入って来る。
「右側の部屋に明かりが灯ると、散髪屋の様な設備?美容院?が見えて、千津は何が始まるのか?意味が判らなかった」
しばらくして、その部屋に泉看護師に連れられて麻紀が入って来た。
自分と同じガウンを着ているのを見ると、それがこの人達が話していたホワイティアのママだと思った。
「美人だろう?これからマゾ調教を始めるのだよ!今日から彼女は奴隷だ!先ず奴隷の儀式から始めるぞ!見ておきなさい」
「うぅ、うぅーーー」首を振るが何が始まるのか?千津には想像も出来ない様だ。
セミロングの黒髪の千津が見ると、気絶する様な出来事が目の前に展開され様としていた。
美容師をしているのは、松本で今日一番興奮しているのは、松本かも知れない。
大きなマスクに眼鏡をかけているので、前回のイメージは全く無いので麻紀は判らない。
美容室の椅子と云うより、理髪店の椅子と云った感じの方に座る様に指を指す松本。
頭を剃り上げる時にリクライニングの方がスムーズで便利だから、ここにこの椅子が特別に準備されたのだ。
椅子に座ると正面の鏡に綺麗なボブの黒髪が映って、思わず目を閉じてしまう麻紀。
「これもマゾ調教の一つだよ!判るか?」千津に話す荘次郎。
松本が目を閉じている麻紀の身体にカットクロスの布を被せる様にすると、目を開けて「本当に。。。。」と口走る麻紀。
松本は何も喋らずに、首に巻付けて紐で強く首の隙間を締める。
「これから、マゾ調教の一歩が始まるぞ!」荘次郎が千津に言う。
青い頭
36-055
櫛で麻紀のボブの髪を、梳き始める松本には至福の時だ。
しばらく髪を触って楽しむと、ワゴンの上から電気バリカンを持ち上げてスイッチを入れる。
「どうしても坊主に成らなければ駄目でしょうか?」松本に尋ねると、横に居る泉看護師が「先生がおっしゃったでしょう?毎日髪が抜けて憂鬱に成るより、さっぱりしていた方が気分的に楽に治療に専念出来るのですよ!VIPの方の癌治療は全員坊主です!」と強い調子で言った。
麻紀の身体が一瞬硬直する様な感じに成るが、スイッチを入れて脅かしただけだ。
松本は怖がらせて、虐める様に刈り上げてしまう事を考えているので、簡単には刈り始めない。
首が見えない程の長さの黒髪、松本は徐々に恐怖を与え様と楽しく予定だ。
ハサミを手に持つと、襟足の付近に櫛を入れて「ジョキ、ジョキ」と切り始める。
クロスカットに切られた髪が散乱し始めた。
麻紀には後ろで全く見えないが、切られているのは判る。
白い襟足が見える状態まで、切り上げた時、松本は気分が変わっていた。
もう覚悟は決めたのだから、早くして欲しいとじれったく思い始めた時、いきなりバリカンの音が耳元で聞こえる。
襟足から、バリカンの刃先が入って後頭部を刈り上げ始めた。
頭の上を押さえられて、襟足から上に何度もバリカンが移動する。
後頭部の髪が床に落ちて、白い地肌が見え始めると「何をするか判った様だな!」千津の顔を見て荘次郎が言う。
「お前のその長い髪も坊主にしてやろうか?あのママはこれから身体中の毛を剃り落とされるのだよ」
「うぅ、うぅーーー」驚きの表情に成る千津。
「マゾ調教をして、従順な雌に仕上げるのだ!お前もその様に成りたいか?」そう言うとガウンの胸の間に手を入れる荘次郎。
「そこそこ、胸は有るな!顔も美人だ!お前もママと同じ様に調教してやろうか?明日から暇だからそれも良いな」そう言うと笑いながら、再び麻紀の様子を見る。
麻紀は目を閉じて身を任せている状態で、今日からの治療には仕方が無いと諦めているのだ。
だが、急に頭を持たれて額にバリカンが近づくと「いゃー、やめてー」と小さく叫ぶが、横からいつの間にか看護師の青木と泉が「直ぐに終りますよ!我慢して下さいと一緒に身体と頭を持つ。
「ガーガーガー」一気にバリカンが額から入って、無残にも刈り取られて黒髪が白いクロスにこぼれ落ちて散乱した。
麻紀の抵抗の気持ちが消えたのを確認すると、頭を持って松本が次々と刈り取って、直ぐに長い髪は麻紀の頭から消えてイガグリ頭の美少年の様に成った。
麻紀の瞳には涙か?光っている。
「おお、綺麗に成ったぞ!お前もしてやろうか?」
「うぅ、うぅーーー」首を大きく振って、涙目に成っている千津。
麻紀は刈り取られて終りだと思っていると「これから、剃りますからね」と泉看護師が言う。
「えっ、剃るのですか?」
「そうですよ、このままだとベッドにも短い毛が一杯付いて、シーツも枕も汚れますから、つるつるに剃り上げて、髪の毛が落ちない様にします」
青木看護師が、シェービングクリームを泡立てて、麻紀の頭に乗り始めると、蒸らすタオルの準備を泉看護師が始める。
いつの間にか松本はその場を離れて、満足した表情で煙草を吸っている。
荘次郎は放心状態の千津に「こちらはあの女を手術する場所だ、見せてやろう」スイッチを入れると、先程の散髪の部屋が暗く成って反対側に明かりが灯ると、この前の婦人科の診察台の部屋が見える様に成った。
自分がモニターで見るより生で見る為に、急遽作らせた秘密の場所の様だ。
「お前もあそこに股を広げて寝るか?」と言われて大きく首を振っている。
小部屋は三人が入ると一杯の大きさだが、向こうには声は聞こえない様にしている様だ。
「あの様に成りたく無かったら、今から私に奉仕をするのだ!そうすれば許してやろう、どうだ?」
返事をしない千津に「嫌なら、先に坊主にしてやろうか?」
大きく首を振って、漸く承諾をする千津。
荘次郎は千津の縄を持って、前を歩かせて誰も使っていないBの部屋に入って行った。
「猿轡を外してやるから、口で私の物を満足させてみろ!出来たら許してやろう」
千津の方が、少し背が高いのでは?と思う程小さい荘次郎。
その間に麻紀は頭をクリームで真っ白にされて、蒸しタオルで蒸らされて、再びクリームを塗られて、日本剃刀で「ジョリ、ジョリ」と後頭部から剃られて、青い頭が出来上がっていった。
後頭部が終わると、散髪台が倒されて今度は頭頂部から、額に向かって綺麗に剃り上げられて青い尼さんの様な頭が出来上がった。
千津は荘次郎のペニスを舐めて元気にさせなさい!出来なければお仕置きが待っていると言われて、必死に舐めているが、薬を飲んでいない荘次郎が完全に勃起する事は無い。
時計を見ながら「もう良い!よく頑張った!」そう言うと、千津を元の病室に戻して、自分は院長室に戻り勃起薬を飲む。
「薬が頼りに成るとは情けない」と独り言を言いながら、先程の散髪の部屋を覗く。
丁度剃髪が終り、青々とした頭の麻紀が立ち上がった時だった。
「おお、坊主頭も似合うじゃないか?」独り言を言う。
「それでは治療に行きましょうか?」
「寒く成った気分です!火照りが消えました」麻紀は自分の頭を手で触ってそう言った。
泉看護師と青木看護師の二人が麻紀と一緒に、美容院を出て行く。
床には麻紀の刈り取られた髪が、散乱して惨いシーンを物語っていた。
自分が騙されている事には全く気づかず、癌が早期に治る事だけを祈っている。
数週間前にここで手術を受けたのだと思いながら、診察室に入る麻紀。
芽野医師が既に待っていて「すっきりしましたね、美人度が引き立ちます」と微笑んで言う。
「治療が終われば元に戻りますかね?」
「勿論ですよ!来年の暮れにはベリーショートには成っていますよ!髪は月に約一センチ伸びるのですよ、ですから一年で十二センチですね、個人差が有りますので年に十五センチ伸びる方もいらっしゃるそうです」
「十五センチも伸びるのですか?」
「特に女性で、短く切ると早いそうですよ!」
その言葉を聞いて急に元気に成る麻紀は「来年の今頃鬘は必要無いですね!」と嬉しそうだ。
芽野は麻紀を見ながら来年の今頃は卍の性奴隷で、楽しんでいるわよ!と心で話している。
「ガウンを脱いで、診察台に上がって下さい」泉看護師が麻紀に言う。
麻紀はガウンを脱ぐと泉看護師に手渡し、自分から診察台に腰を降ろして、直ぐに足を伸ばして仰向けに成った。
「今日の治療は、放射線治療でピンポイントの小さな癌を攻撃しますので、身体が少しでも動きますと、正常な細胞を破壊してしまう事に成りますので、拘束を完璧にさせて頂きますので、誤解の無い様にお願いします」
「はい、よろしくお願いします」完全に騙されている麻紀は、素直に返事をする。
これがマゾ調教の二歩目に成るとは考えてもいない。
燃える陰部に!
36-056
「松山さん、今日は頭の上のパイプを握って下さい」
「はい!」両手でパイプを握ると「治療が終わるまで、動きませんから我慢して下さい」
「判りました」と両手が上がると「今日は心音等も聞きながらの治療に成りますので、カーテンの代わりにタオルを掛けますよ」
頷く麻紀の目にフェイスタオルを畳んで、視界を遮ると直ぐに検査着のスカートのマジックテープを外して、腰を浮かせると引き抜き下半身を露出させる。
直ぐに胸のマジックテープも外して、左右に大きく広げると、両肩に僅かに布が残っているだけだ。
無影灯が点灯されて、足を持ち上げられて固定の場所に膝を置く。
もう一人がお腹の部分に革のベルトを巻付けて、身体が動かない様に固定する。
三人の看護師、青木、泉、そして弓子が手際よく作業を進める。
弓子も麻紀の視界が遮られているので、安心して参加しているのだ。
小部屋では松本と院長荘次郎がこの様子を見ているが、松本は先程の散髪で満足したのかSEXを今日は望んでいませんと言った。
松尾は仕事の関係で、今日は参加を出来ずに悔しそうに、電話で十日後お願いしますと話していた。
「もう完全にマゾ調教に入っているが、本人は全く気が付いていない」
「いつ頃変だと思うのでしょう?」
「そうだな!十日後以降だろう?徐々に過激に成れば自然と判るが、その時は身体が欲しがる様に成っているだろう」
「その後は卍に連れて行かれる訳ですね!あの若い女はどの様にされるのですか?」
「今、あのママの調教が手術で十日程間が空くので、その間に遊んで先に卍に送り込む予定だ」
「同じ様に坊主にしますか?」
「今度は大人しくしないが、大丈夫か?」
「それもまた楽しいのですよ!」
「本当に変な趣味だな!女の坊主が好きとは、私には判らない世界だが、卍には結構好きな奴が居るから不思議だ」
そう話している二人の目に、麻紀の黒々とした股間が飛込んで来た。
足を大きく広げられて、膝、太股をベルトで固定されて、動くのは膝から足先までの部分のみに成っていた。
「松山さん、痛く無いですか?」顔の近くに陣取り、今後の対応をする泉看護師が尋ねた。
「大丈夫です!」顔の大部分がタオルで隠れて、口と青く光る頭が少し見えているだけだ。
「それでは、抗ガン剤の注入と放射線治療、並びにクリトリス包茎の手術も同時に行います。少し痛みを感じると思いますが、我慢出来ない痛みでは有りません」
「はい、よろしくおねがいします」と小さな声で言う。
「少しちくりとしますが、ここに器具を取り付ける為に注射をしますよ」陰部を触った。
注射器を持つと、左手で麻紀の陰毛をかき分ける芽野。
「いたー」の麻紀の声と同時に注射針が突き刺さる。
「はい、我慢して下さい、数カ所に注射していますよ」泉看護師が言う。
「いたー」の声と同時に注射針が突き刺さり、薬が少しずつ膣口を中心に注射をされてしまった。
泉看護師が「はい、今度はガスを吸って下さい」マスクを持って、鼻と口を覆うと麻紀は一気に吸込んでしまう。
荘次郎が「直ぐに陰部が強烈に敏感に成りますよ!陰毛を少し触れても感じてしまう程ですよ!今のガスで理性が無く成って、雲の上に居る様な気分に成ったでしょう」
「新地の美人ママも、院長の手に掛れば哀れな雌豚ですね」
「今から、感じて何回逝くか数えていても面白いぞ」
「男は一回で中々回復しませんのに、女はそれ程何回も逝くのですね」
「まあ、見ていなさい」
泉看護師が「抗ガン剤でマンコの毛も抜けてしまいますから、今から綺麗にしますね」と耳元で囁く様に言う。
「えっ」
「今、どの様な感じですか?」
「空を、違います雲の上を歩いています」
洗面器にお湯を入れて、タオルを浸ける青木看護師。
シェービングクリームを泡立てている弓子。
泉看護師が「手術で邪魔に成りますし、放射線治療でも邪魔に成りますからね」もう一度確認の様に言った。
「。。。。。。。」今度は何も反応が無い麻紀。
先日何年振りに持田支店長に強姦で挿入され燃えてしまった麻紀は、続けて岸ともSEXをした。
次には騙されて中絶手術だと言われて、荘次郎と松尾に連続で犯された。
今は癌だと言われて坊主にされてしまい、今度は陰部に注射を打たれて燃える程敏感にされて遊ばれ様としていた。
マゾ調教の一環で、この様に陰毛の多い女には剃毛プレーを行って、癖をつけて喜ぶ様にするのだ。
「始めましょう」芽野が言うと、シェービングクリームのカップを持った弓子が股間に入って、刷毛に一杯のクリームを浸けると、下腹部に落とした。
「きゃー」思わず刺激に口走る麻紀。
黒い陰毛の密集した部分が白く成って、コントラストが無影灯に輝いて光る。
落とした刷毛先を押しつけて、ぐるぐると廻しながら広げる。
「うぅ、うぅ」と声を出す麻紀、クリームの中にはハッカ液が混入されているので、肌に染み込むと、すーすーとした刺激が伝わる。
敏感にされた陰部は、ハッカ液で一層刺激を与えるので敏感に成っている。
再び刷毛にクリームを浸けて、同じ部分に塗り込むと「いゃーん、だめー!」と大きく身体を動かそうとする麻紀。
クリームが伝って、クリトリスから膣口の方に流れて落ちた様だ。
横では蒸しタオルを準備していた青木が「少し熱いわ!」と言いながら洗面器から取り出して、両手で冷やす様に軽く絞っている。
再びクリームを浸けて、今度はクリトリスから膣口、大陰唇に刷毛を持って行った。
「ああーーああーーだめ!だめーゆるしてーー」足をバタバタさせて、頭を動かす麻紀。
慌ててタオルを押さえて「大丈夫ですよ!我慢して下さい」と言う泉看護師。
弓子は構わずもう一度クリームを浸けると、今度は毛先をクルクルと回して、クリトリスを刺激した。
「やめてーーゆるしてーーもえるーーーだめーー」大きな声で動く部分を全て動かして騒いだ。
「面白いだろう?あの注射とハッカ液で、刺激が強い様だ」そう言って、荘次郎が小部屋を出る時間が近づいていた。
全身剃毛
36-057
「もう少し台を上げて」弓子が刷毛を持って、真っ白く盛り上がった陰部をもっと上に上げる様に指示した。
足の部分が上に上がると、麻紀の肛門が見えて来た。
「ここにも生えているじゃないの?」刷毛にクリームを浸けると、肛門を中心にして膣口の方に刷毛を動かした。
「いゃーーやめてーー」意識朦朧の中で感じて叫ぶ麻紀は足をバタバタと動かす。
弓子は面白そうに、肛門に毛先を入れて廻す様にすると「ああーーああーーだめ!変になるーー」と再び騒ぐ。
散々遊ばれた陰部は真っ白にクリームが盛り上がって、殆ど陰毛が見えない。
弓子が股間を離れると、青木が蒸しタオルを綺麗に畳んで、その白く盛り上がったクリームの上から一気に押さえて蒸らし始める。
「あつ、あついー」再び大きな声を上げて、足をバタバタさせる。
泉看護師がタオルと頭を押さえて「もう、大丈夫でしょう?我慢出来ますね」と言いながら押さえつける。
こんどはが青木はタオルの上から、指でクリトリスから大陰唇の割れ目を刺激する様に擦りつける。
「あっ、あっ、あっ」今度は感じるのか?変な声を出す麻紀。
しばらくして蒸しタオルを陰部から取除くと、岩のりの様に白い肌に縮れて貼り付く陰毛。
今度は股間に芽野が入って、日本剃刀を手に持って「これから、剃毛を始めますからね」と少し大きな声で言う。
「聞こえましたか?今から芽野先生が、松山さんのあそこの毛を丁寧に剃って下さる様ですよ」
「よ、、ろ、しく、、おね、、がい、、します」辿々しく答えるので、多少意味は判っていると判断する芽野が「ガスAの準備をして下さい」と指示をする。
ガスも二種類用意して、最初のガスとは効果が異なる様だ。
「シェービングカップ貸して」お尻を大きく上げて、肛門が無影灯の光に輝いてひくひくしているのが判る。
刷毛にたっぷりとクリームを浸けると、いきなり麻紀の肛門に毛先を持って行く。
「キャーー」驚きの声を出して、足を大きく動かす麻紀。
執拗に肛門を攻撃して「だめーーーだめーー」と言い始める麻紀。
肛門から大陰唇の下までクリームで白くすると、日本剃刀を広げて麻紀の尻を広げる様に引っ張り、剃刀の先が肛門の周りを剃り始める。
「あっ、いゃーいゃー」の声を無視して、産毛を白いクリームと一緒に剃り取っていく。
ハッカ液の刺激が肛門を刺激して、ひくひくが多く成っているのが見て取れた。
しばらくすると、麻紀の肛門から膣口までの間が綺麗に剃り上げられて、産毛が白いクリームと一緒に半紙に載せられた。
剥き出しに成っている麻紀の陰部を見て芽野が「一応説明をしましょうか?」
「これが女性の外性器ですが、大陰唇だいいんしんとは、女性器の外陰部における、脂肪組織に富んだ左右一対の襞のことで、内部にある生殖器と尿道口を保護する役割を持っています。
左右大陰唇の間に有り、縦に裂けた溝を「陰裂」と言います。
左右の大陰唇が前方で合うところを「前陰唇交連」、後方で合うところを「後陰唇交連」と言う。
また、大陰唇の内側にあるひだを「小陰唇」と言う。
大陰唇は、発生上は男性の「陰嚢」と同じであり、陰嚢の中央に縦に走る縫線は、左右大陰唇が癒着した痕跡とも言える。
思春期が始まると、大きく丸みを帯び始め、後に皮下脂肪が多くなり膨隆し、やや黒くなる。初経の1年前から3年後の間に達した頃から大陰唇(陰裂)に沿って陰毛が発生するが、最初に大陰唇(陰裂)の内側から陰毛が発生し始めるため、発生し始めは足を揃えた状態では見えにくいが、年齢と共に陰毛は陰裂以外にも拡がってこの様に多く生える女性も多い。
松山さんの場合は恥丘から、この大陰唇の割れ目に沢山生えていますね!これから恥丘から剃りましょう」
麻紀の上がっていた腰の部分が下げられて、普通の状態に戻されると、シェービングカップを持って刷毛でクリームを浸けると、下腹部に落とした。
その刷毛を一気に廻しながら、下腹部から恥丘全体に塗り広げていく。
二度、三度とクリームを浸けると、恥丘からクリトリスの方にクリームが流れて「ひぃー」と声を上げる麻紀。
ハッカ液の入ったクリームがクリトリスを刺激したので、声が出てしまった。
下腹部と恥丘が真っ白に成ると、日本剃刀を広げて上の方から「ジョリ、ジョリ」と音を立てて剃り始める。
お腹の皮を引っ張りながら「ジョリ、ジョリ」「ジョリ、ジョリ」大きな音が聞こえるのは、芽野の腕に集音マイクがセットされて、麻紀の頭上からその音が流れている。
剃られた陰毛はクリームと一緒に剃り取られて、新しい半紙に載せられている。
「ジョリ、ジョリ」「ジョリ、ジョリ」と軽快に剃り上げて、見る見るうちに青白い地肌を露呈している。
この色を見ただけでも濃い陰毛だった事が判る。
「陰毛が濃く広範囲に生えている人は「情が深い」と言うから、松山さんは情が深いのね」半紙を見て言う芽野。
これからがハッカ液と、媚薬で狂う程染みるのよとクリームを泡立てながら微笑む。
そこにいつの間にか荘次郎が横にやって来て、芽野の肩を叩いて「そろそろ、薬が効いてきた」とガウンの前を開いて勃起状態を見せる。
微笑みながら「泉さんガス準備出来ていますか?」と尋ねる。
頷く泉看護師はいつの間にか乳首が立っている麻紀の乳房を見ていた。
乳房を触っていないのに、もうこりこりに成っていると思う。
感度が良いのに、薬で一層感度が良く成って、クリトリスも勃起しているのだろうと、想像を巡らせると、自分も股間が湿っている。
泡立てたクリームを刷毛に浸けると、いきなりクリトリスを中心に刷毛先を落とすと「ひぃーーー」と大きな声を出して足をばたつかせる。
「いゃーーやめてーー」「だめーだめーあついーー」と次々声を発して、頭を大きく振る。
「泉さん、アイマスクに変更して」芽野が刷毛の手を止めて言った。
胸の処をカーテンで仕切って、荘次郎の姿が見えない様にするとタオルを外す。
眩しいのか、目を細くしているが、直ぐに革のアイマスクを着けると、耳に引っかけて視界を奪った。
タオルが無く成ると、直ぐにカーテンを開くと青白い頭とアイマスクが異様な感じで不気味に見える。
「ああーだめーーかんじる」の言葉が大きく診察室に響き渡る。
刷毛が大陰唇を上から下に向かって、二度三度と走っていた。
失神治療
36-058
「もうゆるしてーー燃える!燃えている!」頭を大きく振って、足先をバタバタさせている。
白く盛り上がるクリームも、股間の中央は雪が解ける様に、クリームが消えて膣口が浮き出る。
芽野はそれが流れ出る愛液が原因だと判っている。
日本剃刀を広げると恥丘の下から「ジョリ、ジョリ」と剃り始めるが、刃先が感じる部分を触ってしまうと「ああーーああーーだめ!」と突然大きな声を出す。
「そろそろ、ガスお願い!」の指示で、泉看護師が麻紀の口と鼻をマスクで覆う。
「はい、吸って下さい!記憶が消えて雌に成れますよ!」意味不明の事を言う。
一気に吸込む麻紀はマスクを外されると「ああーーああーーだめ!感じる」「だめーだめーあついーー」と次々声を出すが、明らかに先程とは異なって、感じている言葉の連発に成った。
「ジョリ、ジョリ」クリトリスの周りから、大陰唇の左側を剃刀が滑る様に走る。
殆どの白い部分が無くなり、半紙の上に山の様に黒い陰毛が載せられている。
「さあ、もうここだけだわ」膣に指を入れて皮膚を広げて、大陰唇の陰毛を「ジョリ、ジョリ」と剃り上げると「うぅ、だめーー」の反応。
少し前までの黒々とした陰部は青く光ってつるつるに成った。
明らかにクリトリスが勃起しているのが判るが、赤い豆は露出していない。
「毛が無く成るとよく判りますね!これが臭いのよ!」そう言って剃刀の背で突く。
「いゃーーだめーー」勃起したクリトリスを弄られて、大きな声をだす。
「治療を始めますよ!」泉看護師が言うと、股間にガウンを脱ぎ捨てた荘次郎が入ると、いきなり乳房を掴んで揉み始める。
「ああーああー」左手で既に勃起しているペニスを持つと、麻紀のクリトリスに擦りつけて、小陰唇をペニスでこじ開け様と上下に擦りつける。
「ああー、だめーー、いれてーー」の言葉が口から漏れてしまう。
「雌に成った様だわ」横で見ている芽野が興奮しながら言う。
荘次郎のペニスが吸い込まれる様に、麻紀の膣口に入っていく。
「あぅ、うぅ」仰け反る光る頭、腰に力を入れると一気に奥まで挿入する荘次郎。
「ああーいいーーいいわーー」
「そうか、いいか?」始めて声を発した荘次郎だが、既に麻紀には判断能力は無く。
荘次郎のペニスに吸い付く様に膣の襞が変わっている。
「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の声が出始めたのは数秒後で、薬の効果で直ぐに絶頂を迎える様だ。
麻紀の足先に力が入り、青い頭が大きく仰け反り、パイプを握る手に力が入っている。
腰の動きを早くする荘次郎「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の声と同時に、一層仰け反ると荘次郎も締め付けが強いのか「うぅ」と声を出すと射精をして果てていた。
「良い道具を持っている」と額の汗を拭きながら、股間を離れる荘次郎。
「少し休ませて、このバイブと電気治療をしてやります」芽野が嬉しそうに、緩んだ麻紀の膣口を見て言う。
「クスコ下さい、このまま開けて置きましょう」そう言って麻紀の膣が閉じるのを防ぐ様に、クスコを挿入して広げて止める。
麻紀は放心状態で、何も言わずにぐったりとしている。
「半分寝ていますが、この電流を膣に流せば急に目覚めて、ガスの効果は消えてしまうでしょうね」
そう言いながら広げたクスコの中に、小さなローターの様な物を二個放り込んで、その先には長いコードが付いて、機械に接続されている。
「これで弱電流が流れて同時に振動が伝わり、膣内が痙攣する程の刺激が起ります。卍では、この装置で失神する子が続出します」
そう言いながらセットを終わると「始めてだから弱で始めて」と指示する。
「あっ、あっ、あっ、何、なんなの?」急に大きく頭を振って、今度は足をバタバタさせる麻紀。
放心状態で雲の上を歩いていたのに、一気に現実の世界に引き戻されてしまう麻紀。
「今放射線を局部に照射しています、我慢して下さい」泉看護師がつるつるの頭を撫でて優しく言う。
「先、先生――中が。。。だめーーーだめーーやめてーーーいくーーいっちゃうーー」
電流を中に変化させると、振動も大きく成り電流により刺激が伝わり、耐えられなく成る麻紀。
「ああーーーだめーーーうぅ、うぅ」
「ぎゃーーーーーーーー」強に目盛りが移動すると、痙攣を起こして口を半開きにして、失神してしまった。
「始めてだから、強にすると一瞬で気絶でしたね、慣れた人でも三分程で天国行きですからね」
「お漏らししていますよね、この感じは?」
「少し臭うから、漏れてしまいましたね!十日後からは尿道調教も取り入れますから、垂れ流しは日常ですよ」
芽野が笑いながら、器具をクスコから引き抜き「木村医師もう来ていらっしゃる?」と言いながら扉の方を見る。
「もう来られていますよ、今ここに来られるそうです」弓子が電話を聞いて答えた。
木村医師は、服部産婦人科病院の整形と外科の両方を受け持つ医師で、勿論芽野の様な偽医者では無いが、荘次郎に看護師との不倫を見られて弱みを握られて、時々荘次郎の依頼で手術を行う。
今回の様なクリトリス包茎の手術が多く、感度を上げる事が目的の為、完全に剝いてしまえとの指示が多かった。
荘次郎は麻紀とのSEXの後シャワーを浴びて、飲み物を飲んでようやく落ち着いて戻って来た。
殆ど木村医師と同時に診察室に入って来た。
「木村君、またいつもの様に頼むよ!驚くなよ!今日の美人は既に身体中の毛を剃り落として有る!SEX奴隷の調教を始めた初日だよ」
そう言われて麻紀の顔を見ると、革のアイマスクに青い頭が見えて、気絶しているのが判った。
木村はこの人達の趣味が理解出来ないと思うが、院長に一度弱みを握られると逃げられない。
一度不当な手術をさせられて、その現場を撮影されてしまい、それ以降は院長に逆らう事が出来ない木村医師。
この病院では破格の待遇を受けているので、今は半ば諦めて従っている状況だった。
クリトリス包茎手術
36-059
「この女性は、知ってこの様な坊主に成ったのですか?」
「騙したのだよ、この女は新地のクラブのママをしている美人だ!」
「どの様にすれば、この様な坊主に素直に成るのですか?新地のママが坊主では仕事が出来ないでしょう?」心配顔で言う木村医師。
「大丈夫だ、この病院を退院する頃にはママは辞めているよ!我々愛好会のペットに育てるのだよ!」
「私はいつもの様に、この女性のクリトリスを剝くのでしょうか?」
「そうだ!歩くだけでも漏れてしまう様に、全部を剝き出してくれ!」
「はい、判りました」
「それでは、頼んだぞ!泉と青木は手伝ってくれ!私は少し眠る!疲れた」
荘次郎が次回遊べるのは早くても二週間後だ。
クリトリス包茎とは?
男性のペニスとの比較から、陰核亀頭が包皮に覆われ完全に露呈していない状態を包茎と呼ぶ場合がある。成人女性では通常、陰核亀頭は包皮や陰唇によって保護されており、性交時などの場合にのみ露出する、いわゆる仮性包茎の状態であることが多い。
しかし、一部の女性は陰核の露出が極めて困難な、いわゆる真性包茎の状態である場合がある。
性交時に痛みを感じる場合や不衛生になり炎症を起こしやすい場合、不感症気味の場合などは、包皮切除手術等の治療が必要である。
股間に入った木村の目に、麻紀の綺麗な裸体が目に入る。
先程は横から眺めていただけで、それ程間近で見ていなかったが、乳房の美しさ色の白さ、腰、腹、足どの部分も木村の理想としている女性の姿だった。
その時泉看護師がアイマスクを外した。
「何と美しい尼さん?」と口走っている木村医師。
木村の脳裏に、この女性にクリトリスの全露出は、するべきでは無いの考えが芽生え始めた。
見ているのはこの二人、一人は患者の顔の処だから、カーテンをすれば全く手先は見えない。
「カーテンで遮って貰えるかな?」
「はい」泉看護師は木村医師と何度か手術を一緒にしているので知っているが、青木は今日初めてだと記憶に無い看護師だった。
泉看護師が麻紀の胸元を綺麗に整えて、カーテンをして見えなく成った時、目を覚ます麻紀。
「癌の治療は終わりましたよ、今から整形の先生が包茎手術をされます。局部麻酔をしますので、最初麻酔の注射で少し痛いですが、直ぐに麻酔が効きますから大丈夫ですよ」
「。。。。。。。。」何も喋らない麻紀、まだ身体が起きていない。
「それでは、始めます」の木村医師の声。
「いたー」注射の針がクリトリスの近くに突き刺さって、麻紀は正気に戻った。
二箇所目に成ると痛みは軽減、三箇所目以降は何処に刺されているかも判らない。
クリトリスの皮膚をメスで表面を切開し、その後、ラジオナイフ(高周波メス)を使用して、傷をもっともきれいにかつ出血を最小限に抑える。
その後、何層にも分けて形成外科縫合しますが一か所ずつ細かく、さらに糸の跡が残らない方法で縫合していった。
そのため、手術後の傷跡はほぼ消えて無く成り自然に見える。
手術の時間は二十分、木村医師はクリトリスが勃起した時に、皮膚からはみ出て赤いピンクの豆の様に形を整えた。
普段は少し皮膚を引っ張らなければ見えないが、勃起すれば大きくはみ出て、SEXでは最高の快感を得られる様に整形を終わった。
看護師に見られない様にガーゼをしてしまえば、十日後抜糸の時まで誰も気が付かない。
本人は麻酔が切れた時から、刺激が伝わるが我慢出来ない程には成らないと思っていた。
手術の途中から完全に目覚めていた麻紀は、変な夢を見たと思いだしていたが、この様な治療が何度も行われたら我慢出来るだろうか?と思う程、余韻が残る治療の様な気がしていた。
しばらくして「今日の治療と手術は全て終りました!お疲れ様でした」そう言うと、腕を固定していたベルト、身体から足、太股と次々二人の看護師が外して、ようやく起き上がる麻紀。
下半身をバスタオルで覆い、持って来たガウンを羽織ると、立ち上がるがよろける。
長い時間ベルトで動けなかったので、足に力が入らない。
病室に帰って、ベッドに倒れ込みそのまま眠ってしまう麻紀。
身体中から疲れが出たのか、それとも治療で身体が燃えたからなのか?それは誰にも判らない。
翌日兵庫県警の安住と内海両刑事の元に鑑識から、焼失を免れた写真が段ボールで届いた。
中を見た二人の刑事が、目を丸くして「これ、今から見るのですか?」
「えー、独身の我々には毒ですよ」
半分程度は女性の裸を縄で縛った物、服を着ているが縛られている物が多い。
同じ女性が続けて数百枚揃っている物は、洋服姿から全裸まで色々な縛り方で撮影されている。
どの写真も苦痛に歪んで、女性の目は怒っている様に見えるか、恐怖心が滲み出ている。
「この写真だけなら、何処の誰か判りませんね」
「あの藤井って男、共和住宅の公認顧問会計士だろう?変な趣味を調べてから公認しろよ!」
「絶対素人もいますね!」
「この女丸見えですよ!」そう言いながら真剣に見てしまう内海刑事。
次々ほじくり返して、机が一杯に成り灰が付着している物、半分燃えている物の箱に二人の目が向かってしばらくして「この顔何処かで見た気がします」と内海が言う写真は、殆ど焼けて顔の部分にのみが残っている写真だ。
「この美人、何処かで見たと思うのですがね」そう言うと安住に差し出す。
アップにした茶髪が綺麗にセットはされているが、睨み付ける様な目。
安住は顔だけの写真を見ながら、誰だったのだろう?何処で見たのだろう?と思い出そうとしていた。
そこに婦人警官が一人入って来て「何!これ?凄い」と言いながら写真を見て「この人とこの人同じ人ね、黒髪を染めているから、撮影の日にちが違うのだわ」と言う。
「あっ、この顔!あのママだ!」二人が同時に叫んだ。
捜査の矛先
36-060
「茶髪で全く違うから判らなかったけれど、松山麻紀に間違い無い」
「そうですね!麻紀は藤井と接点が客以外で有ったのですね」
「松山は重要参考人に浮上だ!それに彼女が態々探して欲しいと依頼してきた片桐千津も、何か関係が有るのかも知れない」
「これで捜査一課長に片桐千津の捜索も堂々と依頼で来ますね」
二人は直ぐに大友捜査一課長に進言して、捜査員の増強、片桐千津捜索に大阪府警の協力を依頼した。
放火殺人事件は意外な展開を見せ始めた。
二人は麻紀を呼ぶ前に、色々裏付けを捜査して証拠を固めてから自供を引き出す。
夕方麻紀のマンション近辺に聞き込みに行き、行きつけの美容院を聞き出し向かった。
先ずは茶髪から黒髪に変わったのがいつなのか?それを調べればこの写真が大体いつ頃なのかが判明すると思った二人。
藤井に卑猥な写真を撮影されて、自宅に写真を取り返しに行き殺害!もしかして共犯の可能性も残されている。
美容院に聞き込みに行くと、店主が「いきなり髪を短くして、黒く染めて欲しいと言われた時は驚きました、確か九月の末だったと記憶しています。何か事件に巻き込まれていたのですか?」興味有りと露骨に尋ねる。
「何が有ったと思いますか?」
「男女関係のもつれでしょうね、美人のママさんですから言い寄る男も多かったと思いますよ!でも腰の辺りまで伸びた髪をあそこまで切って、黒くするのは相当な事が有ったと思いますね」店主は入院の話を敢えて警察に言わなかった。
もう少し様子を見てからの方が良いと思った。
病気で入院しているのに、警察に事情を聞かれると治る病気も治らないと思ったからだ。
二人は九月の末に藤井に誘拐されたか、何か罠に填められて卑猥な写真の撮影をされたと考えた。
藤井の自宅が放火されて殺されたのは、十一月の第二日曜日の早朝だった。
麻紀は寝ていたと供述したが、深夜に抜け出した形跡は無いのか?二人はマンションの防犯カメラの検証に行ったが、外出の証拠は発見出来ない。
「松山さん、二日前からしばらく留守にすると、大きなキャリーバッグで行かれましたよ!海外旅行でしょうか?」管理人室の話を聞いて車に戻ると「今の時期に旅行にはいかないでしょう!忘年会シーズンでかき入れ時だから、神奈川?」
「そうだな!変だな」二人は麻紀が留守にしている事に疑問を持った。
「逃亡かも知れませんね!我々の動きを察しているのかも?」内海刑事が言う。
「俺はそうは思いたく無いが、事実は藤井に弱みを握られていた事は確かだ」
その時大阪府警から、片桐千津らしき女性がクラブホワイティアの近くの歩道を歩いている姿が防犯カメラの映像に残っていましたと連絡が届き、府警に急行する事に成った。
府警に行くと、新幹線の改札の監視カメラの映像の時間と、ホワイティアの近くの監視カメラの映像時間を考えると、駅から直接タクシーで来た事に成る。
「松山さんの話は本当だった!」映像を見た安住は安心した様に言った。
二人はもう少し詳しく分析したいので、録画で映像を持ち帰った。
「クラブの開店の時間には多少早いな」
「面接は別の場所で行う予定だったのか?」車に乗った二人は、現場を見てから県警に帰ろうと、防犯カメラの現場に向かった。
現場に到着した二人は、防犯カメラの映像の方向に喫茶店を発見!直ぐに向かうと片桐千津の写真を店員に見せて、日時を言って確かめる。
交代制で働いているので、その日の時間の店員は河西美鈴さんが入っていますが、今日は休みですと店主が話した。
明日来ますので、連絡させましょうか?と言うので、また明日来ると言って帰った。
店主には片桐千津の記憶は無かった。
もっとも注文が入って厨房に入る時が多いので、お客様は常連の客以外は殆ど覚えていないと言って笑った。
確かに店は小さくカウンターとボックス席が数席、充分二人で成り立つと思った。
「話は変わりますが、この女性はご存じですか?」麻紀の写真を見せた。
「ああ、良く知っていますよ!ママさんでしょ?美人ですよね!でも変な写真ですね?」
上半身だけで微笑んでいない顔、睨み付ける様な目、店主は不思議そうに見ていた。
「店の従業員さんは時々来られますよ!今も一人来られていますよ」
奥のボックスに視線を送る店主。
二人は悟られては不味いと、直ぐに店を飛び出して帰って行った。
麻紀は暇な時間を過しながら、クリトリスの刺激を感じて、今までと異なる自分に驚いていた。
昼間は今後、自分が退院した後の事を考えていた。
持田支店長が、新たな標的としている阿部さんの土地で何かが起ると思っている。
祖父と同じ様に騙されて、巻き上げられてしまうのかも知れない。
部屋から電話を掛ける事は出来るが、今何処だと聞かれても答えられないので、中々かける事が出来ない。
石谷と小杉には一度電話をして、治療が始まったと伝えていた。
電話は全てチェックされて、相手先によっては通話出来ない状況に成る。
翌日喫茶店に再び向かった二人の刑事は、店主から意外な言葉を聞いて愕然とした。
「急に辞めると電話で言って、今日は来ていないのです」と困惑の表情。
二人は美鈴の自宅を聞いて向かう事にした。
新大阪の次の駅、東淀川駅の近くのマンションに住んでいる大学生、バイトで勤めていた様だ。
小さなワンルームマンションには、鍵が掛っていて誰も居ない。
両隣も留守で、数軒離れた家に聞き込みに入ると、昨日から戻って居ないと思うと話した。
時々貸し借りをする間柄で、同じく大学生で彼女は徳島で自分が愛媛だから仲良く成ったと話した。
携帯は持っていないと聞いて、二人は連絡の方法に困ってしまった。
十二月も中旬に成って、阿部の資材置き場が綺麗に撤去されて、いよいよハピットの建設の準備が整った。
持田支店長は、高額な土地を購入して貰いリベートが不動産会社から手に入るので、上機嫌で阿部に接していた。
阿部の自宅に伺う度に手土産を持って、マンションのパンフレットを持参して急かす様に言う。
水死体
36-061
持田支店長は暇に成ると、麻紀との強姦SEXを思い出す。
変態医者に捕えられてしまったのは、店の女の子からの情報で保々判っていた。
入院されたと聞きましたよ!の言葉は、即ち捕らわれてあの変態医者の餌食に成っていると思うが、一度どの様に調教されたか見たい気持ちも大いに有った。
岸は自宅と会社の板挟みで完全に窮地に立っていた。
毎日自宅ではコンビニの弁当、妻からも息子からも何も連絡が無い。
離婚の用紙も届かないので、一体何を考えているのだろうと思うが、尋ねる気分にも成らない。
翌日兵庫県警の二人は捜査に進展が無いので、クラブに乗り込む事に成り向かった。
開店の八時に店に入る二人、お客と間違えて応対した黒服が手帳を見せられて、直ぐに小杉を呼びに奥に行く。
小杉は冷静に二人を招き入れて、用件を尋ねる。
その様子に聞き耳を立てているのが弓子で、話している近くに行こうと絶えずトイレに行く。
「松山さんは今どちらにいらっしゃいますか?兵庫県警にここの店で働く予定の片桐志津さんの捜索を依頼されたのですが、その事で寄せて頂きました」と異なる事を言う。
「何か情報が入りましたか?」
「面接の当日この近くの喫茶店小鳩に彼女は新大阪からタクシーで来たのは、確認が出来ましたが、その後忽然と行方が判らないのです。多分到着が若干早くて喫茶店で時間を潰していたのだと思います」
「面接に来たのですね、何故ここに来なかったのでしょう?」
「喫茶店での事情を知っている女の子が居るのですが、この子も忽然と消えてしまったのです。大学にも出ていない、実家にも連絡が無いのです」
「その子って、河西さんでしょう?私も昨日小鳩で聞きました。明るい子でしたね」
「ご存じでしたか?」
「はい、店に早く来た日には時々行きますから、知っています」
「しかし、ママさんも忽然と消えて、次々消えるので捜査が難航しますよ」内海刑事が周りに目を配らせる様に立ち上がって見廻した。
慌てて物陰に隠れる弓子は、そのまま店内に戻って行った。
「ママは病気で入院されています、少し長引く様です」
「入院?何処が悪いのですか?」
「詳しい事は判りませんが、女性の癌だと思います」
「入院先はご存じですか?」
「私は聞いてはいませんが、石谷さんなら知っていると思いますよ」
「個人タクシーの方ですね、以前お聞きしました」
二人は意外な結果に驚いて店を出ると、石谷の携帯に電話をした。
近くに居る様で、直ぐに行くと石谷は話して指定のレストランで会う事に成った。
「警察は麻紀お嬢様を何かの事件で疑われているのですか?この前の藤井会計士の焼死事件ですか?」
来るといきなり石谷は怒った様に言った。
「石谷さんが自宅マンションまで送られた事は聞きましたが、その後は判りません」
「真夜中まで働いて疲れているお嬢様が、わざわざ神戸に行きませんよ!何をする為に行くのですか?それに今は病気で入院中ですよ」
「その入院ですが、どちらの病院でしょう?」
「刑事さんでも、会えませんよ!抗ガン剤で体力が弱くなっていますので、面会謝絶ですからね」
「電話では聞けるでしょう?どちらの病院ですか?」
「服部産婦人科病院のVIPに入院されています」と怒った様に教える石谷。
「えっ、あの服部産婦人科病院のVIPですか?」
「ご存じでしたか?」
「勿論です、地元の大きな病院ですから存じています」
二人は石谷に松山麻紀の人柄等を聞いて別れたが、何か理由が有って夜の商売をしているのだと悟った。
それが何なのか?石谷は口を閉ざしたが、安住には麻紀が水商売をする女性では無い様な気が一層大きく成っていた。
車に戻ると「あの若さで子宮癌に成るとは?手術をしたのだろうか?」
「私が聞いた話では、子宮を全て摘出すると聞きました。下手に残すと転移の危険が有り転移すれば命の危険が有ると言いますからね」
「あの病院のVIPって芸能人とか有名人が入院しているのですよ!流石新地のママですね」
「そうは言っても、藤井会計士の殺害放火の疑いが晴れた訳では無い!病院に向かうぞ!今日は無理だが明日面会をして事実を掴もう」
だが翌日意外な事件の進展を示し、麻紀の事情聴取は急遽中止に成った。
神戸港で若い女性の水死体が釣り人によって発見され、県警は新たな事件として捜査を開始した。
持ち物等は無く、乱暴された形跡も無く、年齢は十八歳から二十五歳と発表された。
「この仏さん年齢的に、大阪の行方不明の河西さんに当てはまりますね」
「確かにそうだが、自宅を捜索してDNAを調べられる物を手に入れて来るか?」
安住と内海は自分達の勘だけで大阪に走る。
「もし、河西さんなら?これは一体どう成っているのでしょう?」
「我々が捜しているのを先回りしたのか?それとも別の何かが有るのか?」
「でもこのタイミングなら、間違い無く我々の動きでしょう?実はホワイティアで聞き込み中、誰かに聞かれていた様な気がしたのですよ」
「その様な事が有ったのか?益々怪しいな、片桐千津も殺されている?兎に角水死体の身元確認だ」
二人は東大阪のワンルームマンションの河西美鈴の部屋から、歯ブラシとブラシを持ち帰って鑑識に廻した。
翌日検死解剖の結果が発表されて、歯ブラシとDNAが一致、身体の中に微かにクロロホルムの成分が検出され、意識の無い状態で海に投げ込まれての水死と断定された。
殺人容疑
36-062
「神戸港で女の水死体か、物騒だな!身元が判ったと書いて有る」院長室で新聞を読みながら、婦長からの報告を聞いている荘次郎。
昨日シンガポールの学会から帰って、留守中の報告を聞いているのだ。
婦長の柳田も「本当に目の前ですね、恐いですね」と荘次郎に話を合わせる。
VIPの部屋でテレビを見ていた麻紀も「この子、小鳩の子だわ」と興味津々で見ている。
テレビ、雑誌は直ぐに見る事が出来て、世の中の動きは手に取る様に判る麻紀。
同じ様に片桐志津もテレビを見て「この女の子、もしかして私が誘拐された喫茶店の子?」と思い出していた。
あの日から、何事も起らないのだが、この事件は自分に関係が有ると思い始めて、自分も殺されると危機感を持ち始めていた。
九時過ぎ兵庫県警が服部産婦人科病院に電話をしてきた。
「院長!兵庫県警の刑事が入院中の患者さんに面会したいと言われていますが?」
「誰だ!」
「それが松山麻紀さんとおっしゃるのですが、当病院にはその様な方は入院されていませんが、どの様にお答えすれば良いでしょう?」受付の女性が困惑して電話を廻した。
「私が代る、電話を廻しなさい」
何が起ったのだ?自分の留守中に?そう思いながら電話を聞いた。
「院長の服部だが用件は何だ!」
「或る事件の捜査で、松山麻紀さんに事情を聞きたいのですが?VIPに入院されている方ですよ」と言われて、嘘は言えない!この刑事は相当調べてから電話をしていると思った荘次郎は「癌の治療中で、免疫が極端に落ちていますので、簡単に感染するので短時間なら許可しますが、事件って何でしょう?」
「ご存じでしょう?神戸港の水死体の女性と松山さん面識が有るので、お聞きしたいと思いまして」
「彼女は何も出来ませんよ!先日から当病院に隔離状態ですからね」そう言って笑うが、午後一時に場所を準備する事で落ち着いた。
電話を終わった荘次郎は落ち着かない、今後の調教の日程に影響が出ると思い始めた。
だがあの水死体の女性とどの様な関係なのだ?自分の関知していない何かに怯える荘次郎。
その後麻紀に泉看護師が兵庫県警の人が、聞き込みに来られるので一時に五階の応接室に行く様に言った。
刑事が病院まで尋ねて来る事に驚きと同時に、自分が依頼した片桐千津の事が何か進展したと思った。
頭にはニットの帽子を被って、青い頭を隠しているが今は鬘が無いので仕方が無い。
泉看護師に付き添われて、マスクとニット帽で五階の応接室に入る麻紀はガウンを着た病人スタイルだ。
麻紀が前に座ると「入院中申し訳有りません」安住が化粧の無い素顔の麻紀を正面に見て言った。
「この様な場所まで済みません」
「これ、お見舞いの印です。部屋に飾って下さい」紙袋から花の鉢を取り出してテーブルに置いた安住。
その様子を見て、内海が俺知らないのに!と変な顔をした。
「気を使って頂いて済みません、シクラメンですね!私の好きな花です」と花に手を持って行く。
「実は先日も店に行ったのですが、片桐千津さんは店の近くの喫茶小鳩に来ていたのです」
「えっ、小鳩って喫茶店の女の子今朝のニュースで。。。。。。」
「松山さんも河西美鈴さんご存じですか?」
「はい、何度かお会いしましたけれど、何故殺されたのでしょう?」
「我々が喫茶店に聞き込みに行った翌日失踪して、水死体で昨日見つかったのです。我々が伺ったのは、片桐志津さんが小鳩に立ち寄ったかの確認に伺ったのです」
「それでは、片桐さんの失踪と関係有るのですね」
「片桐さんと接触が有ったと考えられます」
「もしかして片桐さんも既に、殺されている?」
「多分、それは考えられません!誘拐された可能性が高いと我々は考えています」
「最後に、これを見て頂いて説明して欲しいのですが?」内海刑事がポケットから、上半身だけの写真を撮りだして麻紀に見せた。
麻紀の顔色が大きく変わって「これは、藤井会計士の先生の焼け跡から見つかった物ですが、他には貴女の写真は発見されていませんが、これは他の写真の一部です」と緊縛写真を数枚テーブルに並べた。
麻紀は認める事が出来ないので「何故私の写真がその様な中に紛れ込んだのかしら、藤井先生に写真を差し上げた記憶は無いのですが?」
「この髪型は随分前ですよね、九月末に美容院で黒のショートにされる前ですよね」
「はい、九月の末に髪を切りましたが、それまで一年程はいつもこの髪型でしたから、いつか判りませんわ」と惚ける麻紀。
「私は藤井先生を巡った事件と、今回の事件が同じ根っこだと考えています、全てをお話頂けませんか?」
すると麻紀は「もう私がこの様な髪型をする事は有りませんわ!お帰り下さい!」そう言うとニット帽を手でむしり取る様に外した。
「あっ」「えっ」二人の刑事は唾を飲み込む程驚きの表情に成ってしまった。
「癌の治療の為に剃りました!今後も治療が続きます!早く犯人を見つけて片桐さんを
救い出して下さい!藤井先生の火災は、本当に私は何も知りません」と言うと、その場を立って部屋を出て行った。
慌ててシクラメンを持って追い掛ける安住刑事。
「これお忘れです」と追い掛けて手渡すと、麻紀の目に涙を見てしまった安住は自分が麻紀を疑った事を、間違いだと悟った。
「すみません、松山さんを疑った事を恥じています」とお辞儀をした。
「ありがとうございます、シクラメン大切にします」と言ってエレベーターに向かった麻紀。
この部屋での話は直ぐに荘次郎の元に、伝えられて事情が飲み込めた。
あの水死の女性が、片桐志津と面識が有ったのか?だが誰が殺したのだ?藤井先生と私との接点は警察には判らないが、誰か身近の人間が河西美鈴鈴を殺害したのだと思い始めた。
解放
36-063
安西課長の作戦は成功して、東の家族はばらばら状態に成ってしまい、体裁だけで紗子は自宅に戻るが、和夫とは口もきかない状態。
勿論子供二人も不潔だと言って話しもしない。
姉の瑠美は就職が決まって遊び廻って、自宅に居る時間が極端に少なく成る。
妹の高校生薫は大学生堤と一度一線を越えてから、度々関係を持っていた。
だが十二月の中旬過ぎ、生理が遅れている事に気づいて堤に相談をした。
本来なら母親に言うのだが、とてもその様な事を話せる環境では無かった。
薫は姉の瑠美より可愛い感じで、中学生の時から男子には付きまとわれていが、堤が最初の男性だった。
困った堤は直ぐに検査薬で調べる様に買って来た。
怖々検査をすると完全に陽性反応が出て、二人は目の前が真っ暗に成った。
中絶するにも金が無い堤と薫、堤は自分の知り合い数人に事情を話して対策を捜した。
その中で、服部産婦人科病院に勤めて居る看護師に知り合いが居た男が存在した。
それが泉看護師で、話を聞いて「高校生が避妊に失敗して妊娠したの?馬鹿じゃないの?」と鼻で笑った。
「お金が無いので困っているらしい、何か方法は無いかな?」
「その子美人?可愛い?それなら何とか成るかも?一度私が話を聞いてからね」
そうは言ったが、今二人の女性を監禁しているので、あの院長が喜ぶか?過去には高校生とのSEXも喜んだが今は美人の調教に力が入っているので興味を持つか?が問題だ。
過去の荘次郎なら、高校生の強姦は大好きで、病院の経験も少ないので自由に出来る利点も有るので触手を伸ばす事が多かった。
麻紀で遊べない間に千津で遊ぼうと思っていた荘次郎だったが、少し段取りが変わってしまった。
それは警察が片桐千津の行方を捜している事と、神戸港の水死事件で片桐千津と関連が有る事が大きくのしかかっていた。
下手にこの病院に置く事は自分の身に危険が及ぶと思い始めた。
殺す程の度胸も無いので、千津を卍愛好会に売りつける事を考えていた。
泉看護師から高校生の堕胎の話を聞いた荘次郎は、身元を調べて支障が無ければ遊ぶかも知れないと触手を伸ばした。
そんな頃、麻紀の包茎手術から十日が経過して抜糸の日が来た。
麻紀の陰部には既に短い陰毛が生えて、木村も少し陰毛が伸びるのが早いと思う程だ。
股間を広げて恥ずかしそうにしている麻紀が、クリトリスを木村に触られるだけで「あっ、あっ」と声を発してしまう。
「直ぐに終りますからね」顔の処で青木看護師が言う。
「あっ、だー」と言いながら自分で口を塞いで声を殺す麻紀。
以前に比べて強烈に脳に刺激を感じてしまうので、我慢が出来ない。
必死でかみ殺して、抜糸が終了するが、木村医師はこの麻紀の事が忘れられなく成っていた。
木村医師は抜糸後「手術の後の状態が良くないですね、年内はSEXを控えた方が宜しいと思います」と荘次郎に報告した。
荘次郎は「少し剝きすぎたのが原因か?だがあの女の悶える顔が堪らんからな!今まで以上に悶えると思うと興奮する!だが早くクリトリスを刺激し過ぎて、嫌いに成るとか使えなく成ると困る!家族旅行から帰ってからだな!」ハワイ旅行に家族で毎年行くので、その後だと自分で決めて納得している。
木村は自分の手術が、荘次郎の要求と異なっているので、露見するとどれ程怒るか計り知れないが先送りに成功した。
そう成ると、年末年始自宅に帰しても別に支障は無いと思い始める荘次郎。
媚薬を飲ませて身体を作らせて、正月明けに本格的な調教を始めるのが良いと身勝手な事を考える。
変に刑事に再び来院されるのも困るし、何処から漏れるかも知れないからだ。
年末を迎えるのに、一向に戻らない妻芳美と息子の芳樹に岸は遂に爆発寸前に成り、今度の休みに実家に行こうと予定を立てたその日に、離婚届けが印鑑を押して送られて来た。
手紙には慰謝料として、預貯金全て頂きますと書いて有るのみだった。
実家に帰る時に既に通帳は全て持ち出されて、岸の手元には無かったが、家の要求も無く近日中に自分の物と息子の物を整理に行きますと記載されている。
それも丁寧に岸の仕事中に来ると書いて有った。
自分と麻紀の浮気が原因だとしても、不思議な離婚劇だと思う岸。
確かに実家に帰る時、相当沢山の物を持ちだしているので、生活には当面は困らなかっただろうが、仕事人間の自分の知らない世界で家族は暮らしていたのだと改めて思った。
一方麻紀は山木弓子の策略で、この様に成ったとは知る筈も無い。
この弓子によって騙されて病院に連れ込まれて、マゾ調教の麻紀は全身の毛を剃られても気が付かない。
片桐千津も弓子に誘拐されて、病院に囚われの身に成っている。
言葉巧みで、度胸が良いので荘次郎は弓子を高く評価しているのだ。
その弓子に荘次郎が、年末までに千津を卍に引き渡すと言ったのは翌日の夕方だった。
刑事が先日麻紀を訪ねて来た事と、神戸港の水死体の関連が気に成るので、解放すると言って卍の人に拉致させる段取りを話す荘次郎。
弓子が車で新神戸駅まで送るが、途中で卍の人に連れ去られると云った筋書きに成っている。
翌日「片桐さんを解放する事に成ったわ!但し絶対に病院で見た事、聞いた事を口外しないと約束して欲しいの」弓子が話す。
「えっ、解放して頂けるのですか?ありがとうございます。絶対に誰にもこの病院の秘密は喋りません」大喜びに成る千津。
毎日いつ坊主にされて麻紀の様に犯されるのかと不安だったが、荘次郎のペニスを一度舐めさせられただけでそれ以上の事が無かった。
夜に成って非常通路から弓子の車に荷物を積んでこっそりと、服部産婦人科病院を抜け出した二人。
だが途中で警察の検問の様な車両に止められた弓子の車。
刑事の姿を見て「何も言っちゃ駄目よ」と言われて「はい」と頷く千津。
「あっ、捜査中の片桐さん」と車内を見た刑事が言う。
「はい」と頷くと「君には警察に来て貰おう」と弓子に言った。
千津は安心顔に成って「この人達に誘拐されていました!」と言うと「あの車に乗って下さい、荷物を持って覆面パトです」と言うと弓子に免許証の提示を迫った。
卍愛好会
36-064
千津が車に荷物を載せるのをもう一人の男が手伝う。
運転手がもう一人乗っていて、千津が乗り込むのを待っている。
「良かったですね、情報が県警に流れていたのですよ!早く乗って下さい」
荷物の積み込みを手伝う男が千津に言った。
「ありがとうございます」千津が御礼を言って乗り込むと、赤色灯を車の屋根から取り込むと直ぐに発進した。
「一応県警で事情を聞かせて下さい」
車は神戸の町を通り抜けて、有馬の方向に走り始めていたが地理が判らない千津は、刑事が喋らないので何も話せなく成った。
桧旅館では、卍愛好会の北見会長を初めとして、五人の会員が集り千津の到着を待っていた。
「院長!今無事引き渡しました」弓子が連絡すると荘次郎は「ご苦労だった」と労った。
「随分遠くの警察に行くのですね?」千津が不思議に成って尋ねる。
「実は片桐さんの捜索願いが有馬の警察署から出されているのです。それで今有馬警察署に向かっています」
「有馬って有馬温泉の有馬ですか?」
「そうですよ!今六甲山を越えていますのでもう直ぐです」
「今夜はどうすれば良いのでしょう?実家にも電話をしたいのですが?」
「旅館を準備していますので、今夜はそちらにお泊まり頂いて明日ゆっくり事情をお聞きする予定ですから、旅館に到着したら自宅に連絡して下さい」
「温泉に泊まれるのですか?」急に嬉しい顔に成る千津。
悪魔達が待っている桧旅館に到着すると、暗くてよく判らないが「それ程綺麗な旅館では無いですね」と微笑む。
「立派な旅館で無くてすみません、税金ですからね!」そう言いながら車を駐車すると、一緒に荷物を降ろして旅館に入って行く。
玄関で靴を脱ぐとフロントに「楓の間だ!」と告げると、そのままスリッパで千津のキャリーバッグを持って先を歩く。
楓の間に到着すると、扉を開き「遅く成りました!」と告げると、千津に入る様に引っ張った。
千津は何か変な気配を感じて、手を振り払おうとするが男は力を入れて部屋に引っ張り込む。
「いゃーーやめてーー」の言葉と同時に中に居た女が出て来て「可愛い子ね」と言うと扉に鍵をしてしまう。
「貴方達は警察では無いわね」手を離されて、男を睨み付ける千津。
「こちらへ連れて来い」奥の部屋からドスの効いた声が聞こえる。
「会長さんがお待ちかねだよ!」女が千津の肩を押す。
「貴方達は何者?あの看護師さんはどう成ったの?」
「騙されたあの看護師の事か?知らないよ!」そう言って笑う。
背中を押されて奥の部屋に入って、千津の貌が強ばって「帰ります!」ときびすを返す。
「お姉ちゃん!ここに来たからには簡単には帰られないのだよ!我々は卍の会と言って女を虐めて楽しむサド集団なのだよ!今夜は腰が抜けるまで可愛がってやるよ」
「いゃーー」と逃げだそうとするが、直ぐに身体を掴まれて「大人しくしなければ、着る服無く成るわよ」
「大丈夫ですよ!このバッグに入っています」女が直ぐにバッグを開くと持ち物を確認している。
手に持っていたセカンドバッグは既に取り上げられて、女が携帯の電源を切っていた。
部屋の中央にはパイプで造った診台の様な物が置かれて、天井にはライトが煌々と中心部を照らしている。
「今からお姉ちゃんには、あの診台に載って貰って会長の検査を受けて貰うのだよ」
「いゃーー、変態の爺さんの趣味に付き合う程暇じゃないのよ!帰らせて下さい」
「よく判って居ない様だな、もうお前はここから帰れないのだよ!俺達グループのペットに成るのだよ」
「そうよ、数日経てば欲しくて、欲しくて堪らなく成るわよ」
「貴方達もあの変態院長と同じ仲間なの?」
「関係無い!院長が捕えた女を偵察していたら、お前が見つかったのだよ!それで横取りしたのさ!院長にはどの様な事をされたのだ?正直に話しな!」
「何もされていません、ホテルの様な病室で過していただけです」
「えー、あの院長がお前の様な可愛い子に手を出さないとは不思議な事だな」
院長から聞いた話と辻褄が合うが「何故院長はお前に手を出さなかったのだ?」
「それは綺麗な女性が居たからです!院長はその女性に惨い事をして楽しんでいましたから、私には興味を示さなかったのです」
「惨い事って、どの様な事だ!君も充分可愛いと思うがな!」
「私より数段美人の女の人、髪を刈ってしまって丸坊主に剃ってしまったわ!」
「そうか!噂は本当だったのか?いずれ頂く事にするが、今日は君で我々は我慢するか?」
如何にも服部産婦人科病院とは関係が舞い様に話す。
お互いが危険に晒された時、逃げる為の手段として関係を否定している。
「病院とは私関係有りません!帰らせて下さい!」
「咲子!このお姉ちゃんにそこに立って貰って我々の責めに感じなければ、帰らせるのはどうだ!」
「そうですね、不感症の女性は必要無いですからね」
「私を強姦する気なの?SEXで感じない女って居ないでしょう?卑怯だわ!」
「誰がSEXをすると言った?君の性器に直接触れたら我々の負けを認めて、素直に帰してあげよう!だが服を着た状態でお前が複数回逝ったらお前の負けだ」
「服を着たまま逝く別け無いわ!叔父さんエロビデオの見過ぎじゃないの?あれは演技なのよ!知らないの?女は演技が出来るのよ!私も演技は得意よ!水商売で働く女には演技も必要なのよ!」
「よく判った!今夜演技は必要無い!我々が使うのはこの電気按摩器を一人一台だ!ルールは肌には触れない!それでどうだ?時間は半時間」
「半時間で私が逝かなければ帰らせて貰えるのね!」
「約束しよう!ここも有馬温泉の旅館だ!別の部屋でひとりゆっくり休んで、帰って頂いて結構だ!そうだ!負けても勝ってもこれはお姉ちゃんに差し上げるよ」
北見会長が札束の封筒を千津の前に置いた。
「今夜の駄賃だ!百万入っている!お前が負けても勝っても持って帰れ」
「えっ、お金が貰えるの?クラブで働く予定で来たのに、収入が無かったので助かるわ!本当に逝かなくて帰るかも知れないわよ!」
「それは一向に構わん!頑張る事だな」
天井から垂れ下がった縄の先に手枷が付いている場所に移動させられる千津。
電マ地獄
36-065
夜、荘次郎の元に探偵から電話で「例の高校生を調査しました!結構可愛い子ですが、大学生も本人もお金が無いのと、家庭が揉めている様で子供達も夫婦も口もきかない状態です」
「すると、妊娠の事実も、家族は知らないのだな?」
「はい、全く関知していません!母親の実家は桜モータースと云う自動車の販売と修理をしている会社を経営しています。姉妹で財産争いを少し前までしていた様ですが、主人の和夫が会社の女と関係を持ってしまってから、妹の家庭は崩壊状態に成っています」
荘次郎はこの探偵社を時々使って、遊ぶ前に調べるのだ。
麻紀の事もこの探偵社に調べさせて、大体は知っていた。
探偵社との電話が終わると、直ぐに電話で泉看護師に東薫の堕胎を引き受けると連絡した。
年末千津が消え、麻紀とも遊べない荘次郎は、ハワイに行く前に遊ぶ相手を捜していたのだ。
桧旅館の楓の間に、千津は上着を脱がされて手枷をされて天井からの縄に引っ張られ、足は足枷で両方に少し広げられて、所謂仁王立ちで立たされている。
セーターにスカートスタイルで、千津は安心状態で半時間我慢出来れば、百万丸儲けで神奈川に帰れると考えている。
SEXでも逝く事が殆ど無かった千津は自信を持っている。
「喉が乾くだろう?一杯飲んでから始めるか?酒か?ジュースか?」北見会長が尋ねる。
「お酒を飲んだら、酔うからだめよ!ウーロン茶下さい」
「中々思慮深いな!咲子持って来て飲ませてやれ」
奥の部屋に行って、しばらくして缶に入ったウーロン茶を持って来て、目の前で態とらしくプルトップを引っ張る咲子。
既に注射器で媚薬が注入されているウーロン茶、咲子が千津の口に注ぎ込む様に飲ませる。
「どう?美味しい?」セーターを着ていると暖房で少し暑いが、脱ぐと不利に成るので我慢していた千津。
一気に飲み干して、男達もビールを飲んで「さあ、この時計が十時に成ったら始めるから、十時半まで我慢出来たら、お姉ちゃんの勝ちだな!」そう言いながら、座敷机の上に置き時計を置いた。
時間は十時五分前に成っている。
目の前に四人の男と一人の女、北見は座敷机の向こうに座って見物する様だ。
「負けたら、向こうに在る診台に乗って貰う事に成るが、それもOKだな」
「判ったわ!負けたらどうにでもして良いわ!覚悟は出来たわ!」と強気の千津。
「よし、時間一分前だ!みんな頑張れよ!」
「はい、会長」「はい」「はい」「判っていますよ!」「私が落としてあげるわ」最後に咲子が答えて、十時に成った。
一斉に電マにスイッチが入ると、少々五月蠅いが、身構える千津のお尻にいきなり電マが押し当てられた。
もう一人は脇腹、背中、胸と各所に押し当てられるが、平気な顔をしている千津。
「素肌は駄目だぞ!だから首、顔、手は禁止だぞ!」と言う北見会長。
部屋に響き渡る音が五月蠅いだけで、済ましている千津を見て「会長セーターを脱がせても良いですよね」咲子が言う。
「セーターの下が素肌では無いだろう!百万も払ったのだ!セーターの一枚位問題では無いだろう?切ってしまうか?捲り上げたらどうだ!」
咲子は会長の言葉と同時に、セーターを捲り上げて、千津のキャミソール姿を露出させた。
「ブラジャーでは無いのか?」そう言うとキャミソールの胸の部分に電マを押し当てる男。
一瞬「うぅ」と声を発する千津だが、我慢が出来る振動で平気な顔で天井を見つめる。
尻に電マを押し当てていた男が「スカートの生地が厚いので、会長脱がせても良いですか?」
「それは当然だな!着替えは有るから好きにさせて貰いなさい」
男は遠慮無くスカートのジッパーを降ろして、ホックと同時にベルトも抜き取った。
どちらかと云えば長目の丈のスカートが、膝の部分までストンと落ちて、パンティストッキング姿のお尻が飛び出した。
「さあ、これで感じるか?」再びお尻に電マを押し当てる男、無視して天井を見つめる千津。
咲子が今度はハサミを持ちだして、落ちたスカートを切り始める。
千津は天井を見つめて、乳房の刺激と尻への刺激を耐えているが、媚薬の効果で乳房への刺激に声が出てしまいそうに成って、目を閉じたり開いたり激しい動きに変わっていた。
「お姉ちゃん、少し息が荒く成っているのか?まだ七分だよ!」と時計を指さす。
その時咲子がスカートを切り取り、膝の部分から取り去って下半身はパンスト姿に変わった。
咲子はそのまま今度はキャミソールの肩紐にハサミを入れると、腰の処まで一気に落ちてブラジャー一枚に成る。
「うぅ、うぅ」ブラジャー一枚に成ると流石に、電マの振動が直接乳房に伝わり声が出る回数が増加した千津。
「何!するのよ!」急に怒り出す千津。
パンティストッキングの腰の部分を引っ張って、ハサミに刃先を咲子が入れたので驚いたのだ。
「これは布ですから、関係無いですよね!会長!」
「まだ素肌に電マは触れていないから、大丈夫だ!ルール違反では無い!太股に直接電マが当たれば我々の負けだ!」
ハサミは一気に千津の肛門の辺りまで走って、今度は両手で引き破る。
足枷の処まで破り、千津に遺されたのは首の下まで捲り上げられたセーターと、ブラジャーとパンティのみに成った。
その時、電マの先に突起物が装着され、三台の電マが股間から肛門まで連結した様に千津を襲った。
「ああーーな、な、いゃー」急に大きな声と同時に身悶えを始めて動き始めた。
パンティが突起物と一緒に押されて、膣に食い込み、もう一台がクリトリスと下腹部に振動を与える。
「ああーーああーーだめーだーー」完全に媚薬の効果が身体中に充満している千津は、二十分で完璧に我を忘れて、痙攣を始めて「ああーだめーーいくーーいっちゃうー」の言葉を口走る。
そして身体の力が一気に抜ける様に、逝ってしまった。
「お姉ちゃん!もう逝ってしまったのか?まだ十分も残っているよ!パンティに凄いシミがついてしまっているよ!もう一度逝ったら負けだが、頑張れるのか?」北見が意地悪く尋ねる。
股間を覗いて「お毛毛がはみ出しているが?手入れをして無いのか?」
「。。。。。。。。。。。」放心状態の千津だが、直ぐに再び電マが一斉に動き出して、気を失うまで今度は何度も逝かされて終わった。
腰が抜けて
36-066
千津の気が付いた時、既にパイプで造った診台にブラジャーとパンティ姿で固定されていた。
「お目覚めかな?約束通り我々の自由にさせて貰うよ」
「。。。。。。。。。」両手も両足も固定されて動けない事が判る千津は、まだ身体が何度逝かされたのか判らない脱力感で殆ど反応をしていない。
「今から今宵の記念写真を撮ろうと思っているのですよ!渡辺さんこの子を綺麗に撮影して上げて下さい!奥の奥まで残さず撮してあげて下さい」
頷く中年の男は渡辺と云うらしいが、他の男もパイプで作られた診台の周りに集っている。
両手は診台の下に手首同士で結ばれているので、絶対に外れる事は無い。
「撮影は辞めて!」
「それは出来ません!今夜の記念に残さなければ会員さんが納得しません!」
両足はパイプに結ばれているので、投げ出した形で床に僅かつま先が触れている程度だ。
足首には足枷がそのまま付けられて、縄がその足枷に結ばれている。
「もう負けたから、この様な物を着けている意味ないわね」
咲子がハサミを持って、ブラジャーの谷間に刃先を入れると「ジョキ、ジョキ」と切り裂いてしまった。
中央で切られてしまったブラジャーの肩紐にもハサミを入れると、完全に千津の乳房は飛び出して乳首が立っている。
先程の余韻が残っているのだろうか?乳房は少し小振りで乳首も小さい。
早速男二人が変な手袋を履いて、左右から乳房を刺激仕始める。
「あっ、あっ」一度燃えてしまった千津の身体は止る事無く、直ぐにスイッチが入ってしまう。
渡辺は早速その様子をビデオカメラで撮影している。
「この汚れたパンティも要らないわね」
咲子が不造作にハサミを入れると「ジョキ、ジョキ」と片方を切り、もう一方も引っ張って「ジョキ、ジョキ」と切ってしまうと、お尻の下から布切れに成ったパンティを引っ張り取った。
少し茶色がかった縮れた陰毛が、膣口の上部に生えて毛先が少し長い。
大陰唇には短い毛が少し生えている程度で、それ程毛深い感じは無い。
「別嬪さんにしてあげるわ?口髭が生えていると不細工だからね」
咲子が向こうの部屋から、シェイビングの缶を持って来るとプッシュして千津の陰毛を白く変えた。
「なに、するの?その様な事しないで!」
「お前は勝負に負けたのよ!何をされても文句は言えないの?長い髪を切られないだけまだ助かったと思いなさい」そう言うと手でクリームを陰毛に広げて、早速剃刀を持って来て「ジョリ、ジョリ」と剃り始めた。
「いゃー、やめてー」とは言っても、全く無視で剃り続ける。
「ジョリ、ジョリ」しばらくすると、直ぐに剃り終わってタオルで拭き取ると「別嬪さんに成ったわ」そう言って微笑むと、両手で大陰唇を持つと左右に大きく開いて「さあ、撮してあげて!奥の襞まで映るかな?」
「いゃーーそんな事しないで!撮さないで-」の声も虚しく渡辺のビデオカメラが、無毛に成った千津の膣口を大写しで撮影をした。
「今度はゴールドフィンガーの異名を持つ坂本さんに、指で逝かせて貰いなさい!足を広げさせろ!」
北見の指示で、両足首の縄が左右に引っ張られて上に上がると、千津の股間は容赦なく大きく広げられ腰の上がった状態で固定された。
「丸見えだな!坂本さんお願いします」
坂本と呼ばれた男が、股間に入るといきなり千津の膣に中指を挿入して来る。
濡れているので、全く抵抗無く滑り込んだ中指。
そしてゆっくりと動かし始めると、二人の男の手袋が乳房を刺激し始める。
「ああー、ああー」指の動きと同時に、声が出てしまい抵抗も何も出来ない状況で、早くも声が変わって「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の大きな声が止らない。
「ああーああーーああーーだめ!」と言うといつの間にか薬指が添えられて、抵抗無く膣に吸込まれてしまう。
「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」仰け反る頭。
「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の声が連続して、痙攣を起こして吊り上げられた足先が完全に伸びきると数回連続で逝く千津。
ぐったりとして意識を失うと漸く診台から解放されるが、隣の部屋には布団が敷かれて既に二人の男が、全裸で千津を待っている。
二人が交互にSEXを行って、もう殆ど無抵抗で反応も無く成った千津の股間に、歪なペニスを挿入して失神を何度もさせた。
「星野さんのペニスは大きい、中村さんの物は曲がって太い!こんな物で突かれたら腰が抜けるだろうな」北見が笑いながら、見物して終わったのは深夜の二時前に成っていた。
千津はもう全く動けない状態で、全裸で大股開きでも閉じる事も出来なく成っていた。
翌日兵庫県警の二人は、大阪府警から喫茶小鳩の近くの駐車場の防犯カメラの映像を手に入れて検証をしていた。
片桐千津が喫茶店から何処に行ったのか?クラブに行くには最初のカメラにもう一度姿が捕えられた筈だが、一度小鳩の方に向かっただけで戻って居ないなら、車に乗った可能性が高いからだ。
コインパーキングには、盗難用に入出時の車の写真が残っているからだ。
当日の片桐がカメラに映った一時間から二時間の間の車を点検する二人。
軽四の車が一台、普通車五台がこの二時間に出て行った車だ。
この駐車場は小鳩の専用では無いので、車で片桐が喫茶店から移動していない時は意味は無いが兎に角捜す二人。
普通車は全てナンバーまで映っているが、軽四の一台は位置の違いでナンバーが半分切れていた。
「この軽四は女が運転していますね!」
「そうだな!乗り込む時にハイヒールが映っている」
「駐車場から出てから、片桐さんを乗せたなら、茶店の前まで来たか?」
「神奈川から始めて来た女が、面接の前に知り合いに偶然会うとは考えられないな」
「小鳩で何が有ったのだろう?それを河西美鈴は見てしまったか?聞いてしまった!」
「でも時間が経過しているのは?何故でしょう?」首を捻る二人。
その時、神戸港の岸壁で不審な乗用車の目撃情報が入った。
聞き込み捜査
36-067
水死体が発見された前日の夜半、白の普通乗用車が目撃された。
遠くからしか見ていないが、女性が運転して走り去ったと証言した。
直ぐに白の乗用車が、コインパーキングのモニターに残っていたので、普通乗用車で白の車は二台、早速陸運局に問い合わせて持ち主の照合に入った。
しばらくして、一台は男性所有で奈良の在住の為論外、もう一人は女性だったが小鳩に行った事は無い事が判明。
近くの洋品店に来店の客だった事が判り、神戸港の不審車と繋がる事は無かった。
「勘は外れたか?喫茶小鳩に片桐千津と謎の女、そして河西美鈴が偶然出会った!片桐と河西美鈴は喫茶小鳩で初だったが、河西美鈴が謎の女は良く知っていた?謎の女は言葉巧みに片桐を連れ出した?」
「兎に角軽四の持ち主を捜しましょう」
「該当者が多い、陸運局の資料の分析だけでも随分かかるよ!」
二人はナンバーから持ち主のリストを貰って、該当者を捜す作業を始めた。
片桐千津が消えた日、喫茶小鳩の近くのコインパーキングから出た軽四に二人は賭けた。
神戸港の不審な乗用車とは、基本的に異なるが河西美鈴が消えたのは、喫茶小鳩では無いので切り離して考える。
「神奈川からホワイティアの就職にやって来た片桐千津は、面接時間より早く到着したので、喫茶小鳩で時間を潰していた!ここまでは正解だな」
「片桐千津はこの喫茶小鳩で、謎の女に会った?そして何処かに連れ去られた?」
「何故?」
「この連れ去りを知っていた河西美鈴が、数日後同じ犯人に連れ去られて、今度は神戸港にクロロホルムを嗅がされ気を失っていた状態で投げ込まれた」
「何故数日間間が空いた?」
「そうだ!私達が聞き込みに行ったから、それですよ!」
「あの時居たのは、交代の店員のバイトと店主!客が居た様な?」
「客?俺達の聞き込みで不安に成って、先回りして殺害してしまった?」
「じゃあ、片桐千津の誘拐犯人があの時喫茶小鳩に居た可能性が高い!だから軽四の持ち主を捜せば辿り着く」
「では安住先輩は何故初対面の片桐千津が誘拐されたと考えていますか?」
「美人だから?違うな?片桐千津が喫茶小鳩で、何かを聞いてしまった!でも赤の他人に聞かれても関係無いな!」
「そうですよ!神奈川からあの日初めて来たのですよ!知り合いと喫茶小鳩で待ち合わせ?」
「自宅に尋ねても、ママに尋ねても知り合いが居るとは言わなかったから、喫茶小鳩で知り合いに会ったのは考えられない」
二人がこの日から資料を分析して、翌日夕方「安住先輩!この軽四の番号の該当者に近畿地区特に神戸、大阪の女性が五人見つかりましたが、この中に犯人に結び付く人が居たら良いですね」
「そうだな!職業を調べてヒントに成らないか?」
「泉則子四十歳、神戸市伊川谷のマンション住まい!本人に電話しますか?」
「犯人なら逃亡するぞ!聞き込みに行こう」
「尾形明代六十歳、神戸市長田、草部美子二十五歳、大阪府吹田市この三人だな!後の二人は和歌山と奈良、特に奈良の女性は七十五歳だから該当はしないだろう?」
「明日この三人を調べてみよう」二人は軽四の三人に的を絞って捜査を進めていた。
服部産婦人科病院のVIPでは、麻紀にボブの鬘を渡して、年末年始を自宅で過して下さいと伝えていた。
薬とマスクは絶対で、外出は極力控える事の条件付きでは有るが、来年の十日までの帰宅を許可した。
理由はVIPの維持する看護師が不足しているのが、一番だが荘次郎がハワイに家族旅行に行くから、この間は遊べないので薬を与えて充分熟すのを待つ作戦だ。
木村医師からの手術の結果が思わしくなく、時間が必要との助言も有ったからだ。
その代わりに、今年最後の荘次郎の楽しみは女子高生東薫を辱めて、手術する事に変わっていた。
今回は偽医者連中には声をかけずに、自分が楽しむ事にしているので、泉則子、山木弓子、青木美希の三人の看護師のみが参加する。
荘次郎は三人を呼んで、細かい打ち合わせを行い手術の日程は年末の二十六日に決定した。
泉看護師が知り合いに連絡すると、当日家族が来られないので彼氏の堤が付き添いで来るとの返事に困惑の荘次郎に成った。
麻紀を自宅に帰らせる日を二十六日の午前中にして、VIPルームでのニアミスを避ける事に変更して伝えた。
麻紀は身体の何処にも異常が無いのに入院させられているので、病院を出れば完璧に普通に戻る事は確実だが、一時帰宅にしたのだ。
伊川谷のマンションに聞き込みに行った二人が、管理会社で職業を尋ねて驚いた。
「これは、どう言う事でしょう?あの松山さんが入院されている服部産婦人科病院の看護師?」
「偶然か?泉則子が服部産婦人科病院の看護師?」
「面接に行ったホワイティアのママが、入院しているのも服部産婦人科病院!」
「偶然にしては少し出来過ぎですよ!」
「確かに変だ!泉則子に聞きに行くか?」
二人はそのまま服部産婦人科病院に向かった。
二人の質問に泉看護師は笑いながら「同僚の山木さんがバイトでクラブに週に三日働いているので、送って行ったのよ!早く到着したのでコーヒーご馳走して貰ったのよ!それが何か?」
「クラブホワイティアに就職される予定の片桐千津さんが、丁度同じ時間に喫茶小鳩にいらっしゃったと思うのですが?この方です、それとこの方先日神戸港で、水死体で発見された女性ですが、喫茶小鳩でバイトをされていました。ご存じ有りませんか?」写真を見せる。
少し見ると直ぐに「大きく無い喫茶店ですから、見ていたら覚えていると思うのですが、存じません!それに私はあの日初めて行きましたので、従業員の方は知りませんね!山木さんにも聞きますか?一緒にコーヒー飲んでいたので、覚えているかも判りません」そう言うと内線で弓子を呼び出す。
しばらくして弓子が玄関先にやって来るが、示し合わせた様に知らないと否定した。
泉看護師は殺人事件の捜査のついでに失踪事件も尋ねたと思い、殺人は身に覚えが無いので安堵した。
不幸な家族
36-068
病院を後にした二人は車に戻ると事件の整理を始める。
①片桐志津は神奈川からクラブホワイティアに就職にやって来た。
初日に喫茶小鳩で時間調整を行った。
②その当日、ホワイティアにバイトで働いていた山木弓子を、泉則子が送って来た。
同じく喫茶小鳩に入っていた。
③泉も山木も服部産婦人科病院の看護師で、夜勤明けに山木はバイトを始めた。
④ホワイティアのママ松山麻紀は、子宮癌で服部産婦人科病院のVIPに入院している。
⑤片桐志津の就職はママの入院で、人手不足解消の為元の持ち主安達の紹介だ。
⑥喫茶小鳩にバイトで勤めていた大学生のバイト河西美鈴は、神戸港で水死体にて発見された。神戸港で不審な白い車に乗った女性が目撃されている。
「こんな感じだが、藤井会計士の焼死と、今回の事件は全く関係が無いのだろうか?」
「接点はクラブホワイティアの客程度で、藤井の変態趣味と今回の殺人と失踪は関係無い様ですね」
「車が喫茶小鳩の近くのコインパーキングに置かれていただけでは、弱いなあ!動機が無いからな!看護師の二人。。。。。。看護師って給料良いのだろう?バイトするのかな?」
「そうですね、山木の家庭環境を調べて見る必要が有るな」
「泉看護師は四十歳でしょう、山木はもう少し若いし、そこそこの顔だからクラブに?」
「とにかく、山木弓子が何故クラブにバイトに行ったか?調べて見よう」
二人の調査が山木弓子に向かい始めた頃、阿部彰次の資材置き場だった場所に建設告知の看板が設置された。
それを見た桜モータースの桜井は芦田に「君は私の土地を借りに来たのに、既に阿部さんの土地と契約して、来年四月開店と書いて有る!私を馬鹿にしているのか!」
怒鳴る様に言う桜井に、芦田は「そうでは有りません、桜井さんの土地を貸して頂いたら、その時点で阿部さんの土地から撤退するのですよ!」
「何!それでは阿部さんはハピットに逃げられて、損をするって事なのか?」
「そうです、元々小さな土地で私達の足元を見て、法外な家賃を要求していたのですよ」
「お金持ちだから図に乗っていたのだよ!それなら面白い!私は喜んでハピットに貸すよ!」今までの苦労が一体何だったのかと思う程の変わり様に、電話口で唖然としている芦田。
反対の妹の家族を崩壊させてでも、桜井モータースの敷地を借りる話が一気に解決して、今後は他の数軒の承諾を得ればハピット建設に成る。
その安西課長に家庭を無茶苦茶にされた東の家では、妹薫が堤章二の子供を妊娠して困り果て、服部産婦人科病院の院長の罠に填まろうとしていた。
「章二の知り合いって凄いわ!服部産婦人科病院って芸能人もお忍びで手術するって、云う有名な病院よ!そんな病院のVIPで手術って凄くない!」
「でも二十七日って日曜日、二十六日の午後から入院して翌日手術よ!信じられない」
「聞いたら、VIPの病室ってホテルよりも広くて、豪華だって!」
「俺が一緒に泊まっても良いらしいから、薫も安心だろう?」
「でも凄い友達がいるのだね!驚きだわ!」
二人は連絡を貰って、すっかり舞い上がってしまって、紹介してくれた友人に感謝をしていた。
紹介した友人も、自分の友人の紹介だから、よく意味が判らず事が運んだ状況に成った。
安西課長が姉の就職に、これ以上の介入を中止したので、姉の瑠美には被害は無かったが、計画では年明け就職の内定を取り消して、混乱させる予定だったのだから恐ろしい。
だが起ってしまった家庭内のトラブルには、全く関知しない安西課長。
須永千尋も安西課長の指示で、年末にはエクア工業を直ぐに辞めて消える事に成る。
芦田は桜モータース以外の攻略に来年から着手する事に成り、進展が見られた。
「山木弓子の給料ですが、驚く程貰っていました」
兵庫県警の安住刑事に内海刑事が調査結果を持って、駈け寄って来た。
「幾ら貰っているのだ!片手か?」
「驚きますよ!昨年の年収が八百万ですよ!僕の倍ですよ!」
「凄い金額を貰っているな、夜のバイトは少し違和感が有るな!」
「でしょう!僕も何か他に目的が無ければ働かないと思うのですよ!」
「家でも建てるのか?それとも家族の面倒を見ているとか?」
「もう少し環境まで調べて見る価値は有りそうです」
二人の興味は泉看護師の年収まで調べる事にした。
捜査本部は、この二人とは別の目撃情報とか、監視カメラの映像から白い車の特定を急いでいた。
この二人以外は、殆どが神戸港水死体の犯人を追う捜査陣と藤井会計士殺害放火事件のグループに分かれて捜査を行っていた。
どの様に考えても放火殺人と、神戸港水死体事件が同じ様な根からの事件とは考えられなかった。
二十六日の朝、鬘を被った麻紀が石谷の迎えのタクシーで病院を一時退院して行った。
その二時間後、堤章二に付き添われて東薫が歩いてやって来た。
「大きな病院だわ!紹介された泉看護師さんって、顔知らないのでしょう?」
「知らないけれど!土曜日は休院だから直ぐに判ると電話貰ったよ!」
産婦人科に来たのは二人共初めてで、全く判らないうえに堤は女性ばかりの病院に多少興奮気味だった。
だが患者は殆ど見当たらなくて、二人の存在は直ぐに泉看護師が見つける。
「堤さんですか?泉看護師です!今日は休院なので、殆ど患者さんは居ません」
きょろきょろしている堤に、泉はその様に教えて「VIPの階に行きましょう」
直ぐにエレベーターの方に案内をして、二人には判らない様に六階の鍵を開いてボタンを押す。
「中絶手術に付き添いで男性が来られるのは、タレントの間島響子さん以来だわ」と嘘の話を言う。
「えっ、間島響子さんもここで?」
「そうですよ!彼氏の関口芳樹さんが付き添いで、一泊されましたよ!」
「やはり、二人は関係が有ったのね、噂は本当だったのね!」
泉の嘘に舞い上がりながら確かめる様に堤に「私達も芸能人並なのね」
手術の事より、別の事に感動している二人を見て、{ばか}と心で叫ぶ泉看護師。
入院の病室に入った二人は完全に舞い上がって「こんな部屋に泊まれるなら、毎日でも良いわ!」と叫んで興奮していた。
若いSEX
36-069
「今日は、明日の手術の準備を行います!一応二時からの予定です!堤君はその間暇でしょうから、この部屋でテレビか映画でも見て待っていて下さい。手術は明日の昼から始めます。明日食事は出来ませんので、今日沢山食べて下さい!何か希望の料理は有りますか?」
「えっ、希望の料理が頂けるのですか?」
「はい、出前で取り寄せますよ!VIPの特典のひとつです」
「私は鰻が食べたい!」薫が言うと堤も同じ鰻に成って、鰻重二つに成った。
十二時半過ぎに届けられた鰻重には、堤に与える方には睡眠薬が充分混入されている。
二人が美味しい鰻重を食べ終わるのを待って、泉看護師が「事前の簡単な検査をしますので、東さんは診察室に行きましょうか?」と一時過ぎに迎えに来た。
「血圧、尿検査、血液検査を行います」と言われている頃、既に堤は睡魔に襲われて眠る寸前に成っていた。
「手術の準備に子宮口を広げる物を挿入しますが、痛いので麻酔を行いますので、夢を見ている様な錯覚に成りますが、大丈夫ですからね!」
「はい」恐そうに返事をする薫。
淡々と検査が終わると、院長の荘次郎が診察室に現れて「高校生が妊娠をする様な事をしてはいけませんよ!今後は避妊を忘れない様にね」
「はい、気を付けます」と恥ずかしそうに下を向く薫。
(流石高校生だ!初々しい、彼氏が初めてで妊娠した様だ)心の中で涎を垂らす。
真面目な家庭で育ったが、急に父親が浮気をして家庭が崩壊した様で、根は真面目な高校生だとよく判る。
(私はこの様な真面目な高校生が好きなのだよ!でも松山麻紀の身体は別格だったな!折角クリトリスを剝いて楽しむ予定が、延期に成って残念だ!)思っていると「院長!」弓子に呼ばれて我に返る荘次郎。
「それでは内診室に行きましょうか?」血圧、血液検査、尿検査が終わると弓子が薫に言う。
荘次郎はこの高校生には、麻紀の様な変わった事は出来ないので、SEXをして楽しむ程度を考えている。
何も知らないので、何かする事は出来るが彼氏も一緒だし、最近の高校生はネットで調べる事も有るので危険だと思っている。
幸い彼氏は今頃ベッドで鼾をかきながら夢の中だろう?
荘次郎の白衣の中は既に何も身には着けていないで、勃起薬を飲んで万全の体勢に成っている。
既に検査着しか身に着けていない薫が、内診台の前で躊躇っている。
「今日は準備だけなのよ!明日の手術が心配だわ!内診台に上がれないなら手術は無理よ!」弓子に言われても躊躇う薫。
泉看護師が「そんな事、恥ずかしいと思うなら,子供は産めないわね」と追い打ちをかけると、漸く足がスリッパから離れて診察台に横たわった。
頭上の無影灯を見て両手で顔を覆う薫の足を持って,直ぐに固定台に膝を載せてベルトで結んでしまう。
青木看護師が左足、弓子が右足の固定を終わると「軽い麻酔をするから、手を退けて下さい」と振り払う様に、マスクを顔に近づける泉。
「えっ」驚く薫に「注射の麻酔よりも痛く無いから良いでしょう?」そう言われて両手を顔から漸く横に持って行くと、直ぐにマスクで鼻と口を塞いで「勢いよく吸込んで下さい」と言う。
薫が吸込むと同時に診察台の足が左右に大きく開かれて、無影灯が点灯された。
「あっ」と言うのとガスが身体に廻るのが同時で、直ぐに薫は夢の中に入ってしまう。
「東さん!私の声が聞こえますか?」泉看護師が問いかける。
「は、、は、、い」
「堤君とSEXして楽しかったの?」
「は、、い」
「堤君とSEXしている夢を見て下さいね!」
弓子が腰の検査着を外して、剥ぎ取る様に尻から抜き取ると、下半身は無影灯に照らされて光る。
殆ど陰毛が無いに近い、クリトリスの近くに一撮み程度が密集しているのみで、大陰唇は無毛状態。
だが肌は若々しく、太股にも張りが感じられる。
股間に荘次郎が入ると同時に、薫の顔にタオルが被せられて、両手を横のパイプに固定して動かない様にした。
荘次郎は直ぐに薫の股間を見て「ここだけに生えているな」と引っ張る様に触る。
「あっ、いゃーん」薫が急に声を出して反応した。
「感度は良いのか?」両手で大陰唇を持って左右に広げる。
「いゃーん、だめー!章二!」と口走る。
「よしよし、欲しく成る様に舐めてやろう、若造では中々出来ないテクニックだぞ」
そう言いながら白衣を脱ぎ捨てて全裸に成る。
青木と弓子が胸のマジックテープを外して、薫の乳房を一気に露出させる。
「若いのに、大きな乳首だわ」青木がその乳首を指で摘まむと「いゃー」と声を出す。
今度は股間に顔を沈める荘次郎が、指で大きく小陰唇を開いて膣口を下から上に長い舌を出して、べろりと舐めると「ああーーああーーだめ!そんな事!」と言い始める。
弓子が左の乳房を揉み始めて、青木が乳首を唇に咥えて舌で刺激を加える。
「ああーーああーーだめ!章二!きょう、きょうは凄いわ!」
「本当に彼氏とSEXしていると思っているわ」
泉看護師が動く顔をタオルがずれない様に、軽く押さえて微笑みながら言った。
荘次郎の舐め方が激しく音が「ぺちゃ、ぺちゃ」と室内に響き渡ると「ああーーああーーだめー逝っちゃう-」の声を発する薫。
「よし、そろそろ入れてやろう」立ち上がると、大きく勃起しているペニスを左手で持って、膣口に先を擦りつけ始める。
「焦らしちゃいゃーん」若い堤は速効で終わるのだろう?そう思いながら、ゴムの装着無しでの挿入に嬉しい荘次郎。
腰に力を入れると、勢いよく押し込むと「ああーーーーううー」頭を大きく仰け反らせて反応する薫。
やがて、腰を動かし始める荘次郎の動きに「うぅ、うぅ」「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の声を出す。
若者の様に直ぐには終わらない荘次郎。
問題は体力の方で、腰の動きを早くしてしばらく腰を動かすと「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の大きな声と一緒に膣内発射で終わった。
辿り着く捜査
36-070
疲れた荘次郎はシャワーを浴びてし、らく休憩してから手術の準備をしたので、薫が部屋に戻されたのは夕方に成っていた。
何事も無かった様に、七時には豪華な食事を食べて二人は翌日まで再び眠った。
荘次郎は翌日薫の堕胎手術を平然と行って、遊びのスケジュールを終った。
二人は夕方丁寧に御礼を言うと、何事も無かった様に帰って行、っ、た。
翌日兵庫県警の安住刑事と内海刑事は、山木弓子のホワイティアに就職の経緯を聞く為に、服部産婦人科病院に電話をする。
年末年始は自宅で過していると聞いた二人は、早速自宅のマンションに向かった。
「警察の方って大変ですね!もう直ぐお正月なのに?」お見舞いをったので、邪険に扱わずに招き入れる麻紀。
病人らしくマスクにガウン姿で、応接にコーヒーを運ぶと「お加減は如何ですか?」安住は遠慮して尋ねる。
「全然平気よ!自宅に戻ると、病人には思えない位よ!今日は何が聞きたいの?まだ藤井先生の事で私を疑っているの?」
「違いますよ!もう疑っていませんよ!犯人が左利きだと判ったのと、二人の可能性が高いのです」
「へー、二人組で左利きの人が犯人ですか?」
「それと犯人は写真を捜していた様です」
「えっ、写真?私の?」
「それは判りませんが、二人組で左利き、写真に心当たりは有りますか?」
「私の良く知っている人で、左利きの人は一人ですけれど、全く関係の無い企業の支店長さんですわ」
「そうですか!実は今日伺ったのは、山木弓子さんを雇われた切っ掛けと言いますか?経緯を教えて頂きたいのですが?」
「山木弓子さんが何か?」
「色々な人を調査していましたら、少し気に成りましたのでお尋ねしようと参りました」
「気に成る事、そうですね!今お話した左利きの支店長さんの紹介でした。日頃から良い女の子が居たら紹介してね!と口癖の様に話していましたから、急に十一月支店長の方から看護師で夜勤明け暇だから使って欲しいと紹介されまして雇いました」
「その支店長のお名前差し支えが無ければ教えて頂けませんか、ご迷惑はお掛けしません」
「はい、共和住宅神戸支店支店長の持田さんです」
二人は麻紀のマンションを出ると「持田って支店長を調べる必要が有るな!」
「ホワイティアの常連客とママの関係も気に成るが、山木と持田が何処で知り合ったか?」
「ママさんの入院先の看護師も何か引っかかるのだよ!」
二人はポートアイランドの山木弓子の自宅に向かった。
収入とか家族関係から考えると、看護師以外でバイトをする理由が見つからなかったので、近所に聞き込みに行く予定だ。
その後共和住宅神戸支店に乗り込んで、持田支店長に直接聞く予定を立てた。
藤井会計士が共和住宅の顧問会計士をしていた事も二人に何かトラブルが有ったのでは?の疑問も有る。
左利きの犯人と変態趣味の写真、その中にママの写真が有ったのは、何か三人に共通の事が有るのでは?と疑問が膨らんだ。
「もしも、ママさんを二人が騙して、撮影をしたらどう成る?」不意に安住が仮説を立てた。
「もしもその様な事をしていたら、持田って支店長とは口も聞きませんよ!出入り禁止か警察に突き出されますよ」
「そうだよな!持田が藤井の変態趣味を前から知っていたが、ママを紹介して藤井がママの写真を撮影してしまったので、怒った持田が藤井の自宅に奪いに行った」
「それはあり得る話ですが共犯は誰です?」
「事実として有るのは、藤井は二人組に襲われて、一人は左利きで目的は卑猥な写真で、その中にはママさんの写真も存在した」
「上半身の一部だけだが、燃えてしまった部分は緊縛では?ですよね」
「そうだ!その藤井は持田の会社の公認会計士だ!何か思惑を感じるな!」
その時、山木のマンションの近くに到着していた車。
「あれ!山木弓子では?」運転の内海が指を指した方向に、車に乗って何処かに向かう姿を発見した。
「まてよ!あの車、白のセダン普通車」
「似ていますよね、神戸港の目撃車両?」
「県警に戻ったら、直ぐに調べる様に報告するか!」
「大きく事件が動きそうですね!山木弓子なら河西美鈴を知っているので接点は有る」
二人はそのまま聞き込みをして、共和住宅神戸支店に向かう。
「大した情報は無かったですね、夜の仕事が多いので殆ど知らないが多かったですね」
「もしも、山木弓子と持田が放火の犯人ならどうだ?」
「えっ、持田と山木ですか?理由は何ですか?」
「藤井がママの写真を写したまでは正解として、その写真を二人で取り返しに行って、もみ合いで殺して証拠を隠す為に火を点けた?」
「何故二人がママの為に?」
「持田はママに惚れていた」
「じゃあ、河西美鈴は何故山木に殺されたのですか?」
「二人が喫茶小鳩で相談していたのでは?我々が聞き込みに行った時、ホワイティアの人が居たのは山木弓子だった」
「休みだった河西美鈴に我々が尋ねたら、直ぐに犯人が判明してしまうので先回りで殺した」
「我々が聞き込みに行って数日経過して殺されたから、何処かに監禁されていた可能性も有るな」
「自分から退職を言ったのだから、取り敢えずお金で話を付ける予定だったのだろう?それが拗れて殺した」
「よし、持田支店長に聞けば何か判明するだろう?」
二人は夕方共和住宅神戸支店に入って行った。
持田支店長は兵庫県警と聞いて変な顔をしたが応接に通した。
「今日は県警の捜査一課の方がどの様な用件でしょう?」
「私達は今、神戸港水死事件と藤井会計士宅放火殺人事件の捜査を行っています」
「それが何か?」
「藤井先生と支店長は面識が有ったと云うより懇意の間柄だった」
「クラブホワイティアにも、一緒に行かれていますね」
「はい、お仕事をお願いしておりましたので御礼ですよ!いけませんか?」
「では、藤井先生が変態趣味の方だと知っていましたか?」の質問に顔色が一気に変わった持田支店長。
浮かび上がる犯人
36-071
「貴方と山木弓子さんのご関係は?クラブホワイティアに紹介されていますが、どの様なご関係でしょう?」
「何故,その様な事を答えなければ成らないのですか?」
「答えて頂けないのなら、近日中に署にご足労願わねば成りませんね」
「これは、殺人事件の捜査ですよ!我々は神戸港水死事件と、藤井会計士放火殺人事件を捜査しています。正直にお答え頂かなければ出頭願いますよ!」
「。。。。。。。。」苦しい表情に変わった持田支店長。
「それはもしかして山木君が何か事件に関係していると?」
「それは申上げられません!質問にお答え下さい!」
「我々が調べた範囲では、支店長と山木さんの接点は無いのですが?何方に頼まれてクラブホワイティアに紹介されたのですか?」
「それは。。。。。」困り顔の持田支店長。
「正直におっしゃらないと殺人事件の容疑者として、取り調べを受ける事に成りますよ」
「院長に頼まれたのだ!山木って看護師がバイトを捜していると、それも夜勤明けに働ける処だと言うので、知り合いだったホワイティアを紹介したのだ!ママも人を捜していましたからね」
「あれ程大きな病院の院長が看護師のバイトの世話をするのですか?変な話ですね」
「だが、本当の事だ!嘘だと思うなら、院長に聞いて欲しい」
「判りました!先程の質問の続きですが?藤井先生をクラブホワイティアに連れて行きましたね!それは藤井先生が御社の顧問会計士をされているので?」
「違います!神戸支店の仕事の関係で、或る資産家の計画書の作成で世話に成ったからです」
「差し支えが無ければその資産家の住所と名前を教えて下さい」
持田は自分が殺人事件の容疑者に成っている事に恐怖を覚えて、直ぐに住所と名前を二人に伝えた。
「最後に支店長の1999年11月6日の夜から七日の朝まで何処にいらっしゃいましたか?」
「それって、藤井先生の亡くなられた時間ですよね,その様な時間普通は自宅で寝ているでしょう」
「アリバイ無しですね」
「家族に聞いて下さい!自宅に居ました」と言ったが、当日持田支店長は自宅には帰っていなかった。
その事が後日持田を窮地に追い込む事に成る。
刑事が帰ると直ぐに服部産婦人科病院に連絡をして、院長を捜して貰う。
しばらくして荘次郎が「ご無沙汰しています」とご機嫌で電話をしてきた。
「院長大変です、先程刑事がやって来て、神戸港の水死体事件と藤井先生の放火殺人事件の容疑者のリストに、山木看護師が入って居る様なのです」
「えっ、何故山木君が?」
「刑事が山木さんをクラブホワイティアに紹介したのは、誰かに頼まれたのだろうと執拗に聞くので、仕方無く院長の名前を言ってしまいました。すみません」
「それは確かだが、弓子君が何故?藤井先生は知らないし、神戸港の水死体って喫茶店のバイトだろう?何故?関係無いだろう?警察は何を考えて居るのだ!」と怒るが、電話が終ると荘次郎は不安が募る。
すると直ぐに卍の北見会長から電話が入って「噂の美人ママの調教は進んでいるか?」
「それが、今は休憩状態に成っています」
「そうか?手に負えない場合はいつでも卍で面倒は見るからな!あの女は従順に成ったぞ!何でも云う事を聞く様に成った」
「流石は会長ですね!ママも全身剃毛とクリトリスの皮を剝く迄は、スムーズに進みましたが、肉体的な事で止っています」
「困ったらいつでも連絡してくれ、雌豚に仕上げるのは得意だ!それにあの美人なら申し分ない」
「またその時は直ぐに連絡します」で終ったが、最悪卍に譲る事も考え始めた。
その麻紀は夜に成ると、剝かれたクリトリスの刺激で、オナニーを初めてしまった。
過去には殆ど無かったが、シャワーの水滴がクリトリスに当たり感じたのを切っ掛けに、ベッドに入ると指が向かう。
「あっ、あっ」と声が出る程興奮して、自分で自分の壺が判り始めると尚更だ。
その時思い出すのは,剃毛された時の刷毛の動きとクリームの刺激だった。
放射線治療は夢の中だったので、気持ちは良かったが夢で終っていた。
翌日珍しく店の宇都木真理から、携帯に電話が入り共和住宅の持田支店長が、十一月六日七日のアリバイを証言して欲しいと言われているが、彼氏に露見すると困るのでどうしたら良いかと相談してきた。
アリバイ?六日七日で麻紀は直ぐに藤井の焼死した日だと判った。
真理を情報源にしていた事は知っていたが、身体まで要求していたのには正直驚いたが、自分が左利きで持田支店長の事を警察に話した事が、この様な展開に成るとは考えても居なかった。
「取り敢えず警察に聞かれたら、証言するけれどそれまでは言わないでと答えて、実際聞かれたら知らないと答えれば良いと思うわ」
「取り敢えず持田さんを騙すのね!ありがとう流石ママだわ」
麻紀は面白い事に成ってきたと喜ぶ。
自分の治療が終った頃には、持田支店長は窮地に追い込まれているかも知れないと思うと笑みが漏れる。
荘次郎はその日の夕方家族旅行にハワイに向かって旅立ったが,心は晴れては居なかった。
何故弓子が警察に疑われて居るのか?片桐千津の誘拐なら理解出来るが、藤井先生や神戸港の水死体は全く関係無いと思う。
藤井先生の殺害は持田支店長の方が可能性が高いだろう?自分の罪を逃れる為に変な事を喋ったのか?そう考えると辻褄が合ってきたと笑みを浮かべた。
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捜査会議
36-072
安住刑事と内海刑事は事件の発端が、阿部の土地に絡む何かが存在しているのでは?と考え始めた。
暮れが押し迫った二十九日に阿部の工事現場に向かった二人。
「見て下さい!あのタクシー石谷って書いて有りますよ!」
「ママさんが乗っているよ!驚いたここでも繋がっていたのか?」
「ここのマンション来年の四月完成予定ですが、共和住宅では有りませんよ!ダイヤ建託ですね」
麻紀が歩いて行くのを見て「ママさん、向こう側に行ったけれど、マンションと関係が有るのかな?」
「我々も行きましょう、美人のママさんと会ったのですから」笑みを浮かべて、安住の袖を引っ張ってマンションの裏側の方に向かう二人。
建設の看板を見ている二人を見ると、急にこちらを見て驚いた表情に成った麻紀。
自分が尾行されていると思ったので驚いたが「ママもここと何か関係が有るのですか?私達は共和住宅の支店長に聞いたので、見に来たのです」笑顔の安住刑事を見て「そうだったのですか?ここの看板に共和住宅神戸支店と書いて有りますわ」そう言って指を指した。
看板の前に来て読むと「ハピットが出来るのですか?マンションとこれとは同じ地主さんですね」
「そうですよ!当初はマンションが全て建設予定だったのですが、持田支店長が裏から手を廻して横取りしたのです。藤井先生も片棒を担いでいました。ハピットも共和住宅も悪い奴の集団です」恐い顔で言うと、マスクで隠れた口元が鬼の様に成っている様に感じた二人。
「何故ママがこの土地を見学に?」
「私も知らずに悪事に荷担したので、気に成って見に来ました」
そこまで聞いて、二人の刑事は大体の事が飲み込めていた。
クラブホワイティアで、接待が行われたのだろう?もしかしたら藤井会計士の罠に填まって、卑猥な写真を撮影されたのだろと想像した。
「このハピットを巡って色々有った訳ですね!ダイヤ建託の担当者は何方かご存じですか?」
「はい、ダイヤ建託神戸支店岸昭夫さんですが、社内では冷遇を受けています」
「何故ですか?」
「実は、ハピット、共和住宅、ダイヤ建託が組んでいたのです。気の毒なのは岸さんです、歩合制の給料が知らない世界で減額されてしまったのです。それも身内に裏切られて」
「えっ、それでは岸さんは憎んでいますね」
「でも岸さんは犯人では有りませんよ!私を助けて下さったのですから」の言葉で安住は岸と共同で何か復讐を考えていたのでは?と思う。
「お金が大きく動くと悪い奴らが出て来るものです」
そこまで話して、会釈をすると麻紀は身体を心配して車に乗り込み帰って行った。
「念の為、岸の動きも当日のアリバイを調べて置こう」
火種がこの土地を巡る業者のトラブル?とも考えるが、クラブホワイティアとママが何かに絡んでいる様な気がしている安住刑事。
その日の夜、今年最後の捜査会議が行われる前に、安住刑事が捜査一課長に「合同捜査会議にしては如何でしょうか?」と提案した。
理由は事件の根が同じ処に有ると安住が発言したからだった。
大友捜査一課長も、安住と内海に独自の捜査をさせていたので、彼等の意見に従ったのだ。
冒頭、大友捜査一課長が合同捜査会議に至った経緯を説明して、安住刑事が独自で捜査した経緯を話す事に成った。
内海がその話を白板に書いて行く。
「今回二つの事件が大阪の新地のクラブホワイティアで、交差している事が判明しましたのでご説明致します」
①神戸港で水死体にて発見された河西美鈴は、クラブホワイティアの近くに位置している喫茶小鳩のアルバイト従業員だった。
②そして、この喫茶小鳩にはホワイティアの従業員も時々利用して馴染みだった。
③もう一つの会計士放火殺人事件の被害者藤井は、このホワイティアの客で、共和住宅神戸支店長持田に紹介されて何度か行った様だ。
④藤井会計士は独身で、変態趣味の男で緊縛写真等が多数焼け跡から発見されている。
⑤藤井宅に忍び込んだのは、その写真を捜すのが目的の二人組で、藤井を殴打した犯人は左利きが判明している。凶器は金属バットの可能性が高い。
⑥焼け跡の写真の中に、クラブホワイティアのママ、松山麻紀の上半身だけの写真が発見されているが、藤井の毒牙の犠牲に成った可能性が有ります。
⑦一連の捜査で、持田支店長が出世と業績を上げる為に、自社の公認会計士藤井に近づき藤井の趣味を満たす為に松山麻紀を紹介したと思われます。
⑧明石の地主阿部彰次の土地を巡って、ハピット、ダイヤ建託、共和住宅が争っていた様ですがまだ全容は掴めていません。
「上記の事が事件の発端では無いかと思われます、上記を踏まえて事件の捜査を合同で行いたい理由です」
「もう来年に成ってしまうが、阿部彰次の土地を巡るトラブル、今手渡した重要参考人のアリバイの裏付けを来年早々進めてくれ!」
①共和住宅神戸支店長 持田保 左利き
②ダイヤ建託神戸支店営業 岸 昭夫
③服部産婦人科病院 看護師 山木弓子 白のセダンを所有
④服部産婦人科病院 看護師 泉 則子 喫茶小鳩の近くの駐車場に軽四を駐車
⑤クラブホワイティア ママ 松山麻紀 自分の写真を取り戻す為
「先ず土地のトラブルを調査する部隊と、アリバイを検証する仕事から始めてくれ!今年一年ご苦労だった!」大友捜査一課長の言葉で、簡単な捜査会議が終了した。
せいれき、2000年平成12年、麻紀は殆ど正月も外出せずに,自宅で過し祖母の老人ホームに顔を出したのは五日の午後だった。
石谷のタクシーで移動するが、年始から警察の刑事が尾行をしていた。
大きなマスクにボブの鬘姿で、殆ど化粧もしていないがスタイルの良さ、品の有る歩き方は尾行の刑事を魅了していた。
「流石は新地のママだな、スタイルも抜群だ」
「狙われるのは、判る気がしますね!色気と清楚な感じがミックスされた独特の雰囲気が有りますね」
確かに麻紀は自分でもオナニーをして、SEXに目覚めて色気が出て来たと思っている。
安住と内海は顔が知られているので,異なる刑事が尾行をしていた。
窮地の持田
36-073
一月の六日意外な事が事件解決に大きく前進する。
安住刑事と内海刑事が、山木弓子の行動を尾行していて、弓子の車に配達の車が接触事故を起こしてしまったのだ。
後部のバンパーが大きく破損して、配達のトラック運転手が携帯電話で話をしていて激突したのだ。
警官が来て事故処理をしている間も、二人は絶えず様子を監視していた。
しばらくすると、弓子の車が修理工場へと向かう事に成った。
「あの車を押収すれば何か出るかも知れませんね」内海が言い始めると「そうだな!俺もそれを考えていたのだ。
弓子が車を預けて、代車で帰るまで根気強く待つ二人。
弓子が立ち去ると二人は呼んでいた鑑識に、車をレッカー車に積み込み押収を完了した。
「我々が喫茶小鳩に聞き込みに行った時、中に居たホワイティアの女性は彼女に間違い無いでしょう?」
「もしも彼女なら、我々が見つけた軽四の泉看護師と共謀して、片桐千津を誘拐したのは間違い無い」
「でも何故?片桐千津を誘拐したのでしょう?」
「話を聞かれたのでは?」
「何の話しですか?」
「ママの誘拐!多分ママの誘拐は藤井が絡んでいると思う」
「持田が仕組んだママの誘拐を、喫茶小鳩で話していたのではないだろうか?」
「片桐千津は何処に居ると思いますか?」
「普通考えれば、服部産婦人科病院のVIPに捕えられているのでは?」
「それなら、院長も共犯ですね!」
「車に河西美鈴の痕跡が有れば、病院の家宅捜査に成るな!」
二人は思わぬ幸運に、鑑識の結果待ちに成った。
翌日の捜査本部は色めき立った。
「山木弓子の車から、河西美鈴の毛髪が数本発見された!」
「直ぐに山木弓子に任意同行を求めて事情を聞こう!山木の自宅の家宅捜索も同時に行う!」大友捜査一課長が立て続けに指示を出した。
だが弓子は昨日車の中に手帳を忘れていないかと、車のディラーに問い合わせて、警察が車を押収したと聞かされて逃亡をしていた。
午後に成って自宅に押し寄せる捜査員、同じ頃服部産婦人科病院のVIPにも警察の捜査員が急行した。
丁度関空に降り立った荘次郎の元に、泉看護師から連絡が届き、寝耳に水の荘次郎は何が起ったと大声で言った。
荘次郎も山木弓子が、神戸港の水死体に関わっていた事は全く知らないので、驚く以外に無かった。
幸いVIPには誰も入院患者が居ないので、警察に調べられても何も無いと胸を撫で降ろしていた。
だが数日後には麻紀が再入院でやって来る。
もしも再び刑事が来たら、今度は自分の身が危険だと思い始める荘次郎。
「山木弓子は逃走したと思われる、緊急配備をしているが、院長の服部荘次郎の事情聴取に行ってくれ」
翌日安住と内海、二人の刑事がハワイから戻った荘次郎を尋ねて病院に向かった。
ポートアイランドの山木のマンションにも、河西美鈴の毛髪が発見されて、自宅に連れ込んで数日後クロロホルムで眠らせて、神戸港に投げ込んだと推測された。
その事実を荘次郎は聞いたが、全く意味不明の出来事で判らない。
「その河西美鈴さんと看護師の山木の関係は?」と逆に質問をする荘次郎に、二人はこの院長は全く知らないと判断をした。
「実は喫茶小鳩で誰かと話をしていたのを、河西美鈴さんに聞かれたのでは?と思いますが?共和住宅の神戸支店長持田さんの話は聞かれた事が有りませんか?」
「共和住宅。。。そう私の家も共和住宅で建築したと。。。彼が山木君と密談をしていたのですか?」
「どうやら、その様なのです。藤井会計士放火殺人の可能性が有るのです」
「写真が沢山有るとか、証拠が残っているとか?聞いた様な」
「それはどう言う事です、詳しく教えて下さい」
「藤井さんは変な写真が趣味の方でしょう?」
「はい、その通りです!よくご存じですね」
「私が聞いた話では、藤井さんは緊縛写真が趣味なのですが、不能らしいです!女性を縛って楽しんだり、他人が犯すのを見たり撮したりすると聞きました」
「それは何方に聞かれました」
「山木君がママ狙われていると話していました」
「成る程、興味深い話しですね」
「藤井さんの趣味にママが狙われたのか?実は私は医者ですから患者の守秘義務が有るのですが、殺人事件だから正直にお話します」
「お願いします」
「実はママは強姦されて妊娠してしまったのです、それで堕胎を頼まれてVIPで手術をしました。それを頼みに来たのが持田支店長です」
「えーーー持田が強姦の本人ですか?」
「多分そうだと思います、藤井さんが撮影して,持田支店長が彼女を強姦したと思います。多分証拠の写真が残って居たので奪いに行ったのでしょうか?」
安住と内海は院長の話を唖然と聞いていたが、話の辻褄は合う。
「その手術の時に検査をしまして、癌が発見されて今治療中に成っているのです」
二人は荘次郎の話しに納得して、明日もう一度確認の為麻紀の自宅に行く事にした。
麻紀の証言が確かなら、持田支店長を警察に引っ張れる。
刑事が帰って荘次郎は泉看護師に「山木君から連絡が有ったら、もう逃げ切れない自首するか、自ら命を絶ちなさいと伝えて欲しい」と言った。
何故、喫茶店の女の子を殺してしまったのだ!私に相談すれば何か方法は有ったのにと悔やむ荘次郎。
蘇る強姦
36-074
「予想はしていたが、ママを強姦したのが持田支店長だったとは!」
「顔を隠していたと思うが、写真が残って居ると困るだろう?ママは誰に強姦されたか知らないのだろうな?」
「でも妊娠してしまったのは、全員計算外の出来事だろう」
「明日、松山さんにその事を直接聞いても話すだろうか?」
「判らないけれど、話せば持田を引っ張れる」二人は意外な収獲に事件の解決間近を感じて帰って行った。
翌日麻紀に面会を申し込むと、明日から再び入院なので準備でお会い出来ませんと言った。
安住は大変重大な用件だと言って、強引に昼過ぎに伺いたいと押し切った。
麻紀は二人の刑事を初めて自宅に招き入れた。
忙しいのと、世間の目を気にして、と言うより管理人に変に喋られるのを嫌った。
「今日は時間が無いのですが、それ程重大な用件でしょうか?」
「はい、貴女を強姦した男が見つかりました!」安住の一言に顔が強ばる麻紀。
「何をおっしゃっているのか判りませんが?」
「松山さんがこの写真を藤井会計士に撮影されたのは、もう調べが付いています。彼は緊縛写真が趣味です。この写真では燃えてしまってその実体は判りませんが、予想すると他の女性と同じ写真を撮影されたのでしょう?」
「憶測で言うのは辞めて頂きたいですわ」強い調子で言うが麻紀の動揺は見て取れた。
「私達が今日お尋ねしたのは、藤井は自分ではSEXが出来ない不能者で、第三者に強姦させてその姿と写真を撮影するのが好きなのです。松山さんも例外で無く第三者に強姦されたのでは有りませんか?」
「えっ、益々失礼ですね!もうお帰り下さい!」そう言って立ち上がった時「その強姦した男が共和住宅神戸支店長の持田なのです!」
その言葉に身体が凍り付いて、固まってしまう麻紀。
「今、なんて?」想像もしていなかった人の名前、絶対に身体を許しては行けない男!目の前が暗く成る様な安住の言葉。
「持田保に強姦されたのです!」
麻紀の脳裏に強姦された時の情景が蘇る。
その言葉と同時に四人に抱え上げられて、直ぐ横に在るレザー張りのベッドに運ばれて、べッドの四方に在る固定用の金具に付いている革のベルトに、麻紀の手首を巻付ける。
足は投げ出した状態で、仰向けに寝かされてしまった麻紀。
誰かが部屋に入って来た気配を感じるが、誰なの言葉を発しないので判らない。
声を出さないのは知っている人だからだと感じていたが「さあ、お客様今夜の売春婦をお楽しみ下さい」藤井の声が近づいてくる。
もう一人の客は男だ!煙草の臭いがするので、愛煙家で自分の知っている男?
そう思っていると、いきなり乳房を掴んで揉み始める。
持田支店長は既に全裸で、麻紀の身体を見ると直ぐに興奮状態に成っている。
薬の効果で麻紀を抱ける気持ちの高ぶりが押さえられないのだ。
麻紀が急に身体を動かして暴れ始めるが、両手首が固定されているのでどうする事も出来ない。
男がベッドに上がると今度は女二人が、麻紀の足を抱え込んで持ってしまい全く抵抗が出来ない。
両足を抱え込まれて、大きく広げられると股間に持田の身体が入ってくる。
もう逃れる事が出来ない!自分は誰か判らない男に強姦されてしまうのだと諦めの心境に成る。
今度は乳首を吸い始めると、女の性か自分でも判る位乳首が硬く成ってゆく。
舐めて吸われて、左右を交互に舐めて吸われて、感じる事を拒否出来ない状況に変わる肉体。
今度は陰部に指が向かうと、乳房から徐々にお腹から陰部に愛撫が移動して来る。
相当SEXの熟練者の様だと思う気持ちと、冷静さが持田の愛撫で消えて行く麻紀。
身体が受け入れてしまう環境が徐々に造られてしまう。
持田が麻紀の陰部から確かめる様に愛液を吸い出すと、仰け反る麻紀の頭。
安心した様に挿入体勢に成る持田。
二人の女が足を持たなくても、持田が抱え上げて挿入をしてしまう。
大きく仰け反る麻紀の頭、綺麗にセットされた髪は完全に乱れてしまった。
その時感じた微かに残っている煙草の臭いと、体臭だけが麻紀の記憶に残っている。
「あっ、あの煙草と体臭!」と口走る麻紀。
「思い出された様ですね、正直に話して頂けると持田を逮捕出来ます!強姦と放火殺人の犯人としてね」
だが麻紀は、放火殺人の犯人は持田では無いと知っていたが、警察は完璧に犯人は持田だと決めている。
宇都木真理が彼と居たと証言をしない事は、判っているので持田は確実に警察に逮捕される。
絶対に強姦されてはいけない男に犯されてしまったと云う事実は、麻紀の復讐心に火を点けて「正直にお話します。恥ずかしい事なので隠しておきたかったのですが、持田が犯人なら私は許せません」
「ありがとうございます。松山さんの証言で全ての事件が解決出来ます」
「全ての事件?」
「そうです!神戸港に水死体で投げ込まれた河西美鈴さんは、喫茶小鳩で松山さんの誘拐計画を聞いていたので殺されたのです。犯人は山木弓子です」
「えっ、弓子さんが?嘘でしょう?」
「弓子さんを松山さんの店に紹介したのは、持田では有りませんか?」
「そ、そうです!持田です。でもそれは事件の後ですが?」
「それは妊娠したからでしょう?山木は自分の病院に貴女を入院させて、確実に堕胎させる事を考えていたのです」
「そんな、自分が妊娠させた事を知っていたのですね、服部産婦人科病院も仲間ですか?」
「違います!この事実は服部院長に聞いた事です、その時に癌が発見されて不幸中の幸いでしたが、松山さんには気の毒な事でした」
「何故?持田は藤井を殺害したのでしょう?」
「貴女との写真が証拠として残って居る事に不安を感じて盗みに入った様です!そこでもみ合いに成って殺してしまったと考えられますね」
「弓子さんが本当に犯人なのですか?」持田には完璧なアリバイが有るので、不安に成って尋ねる麻紀。
「山木の自宅と車に河西美鈴さんの毛髪が多数発見されていますので確実ですし、既に逃亡をしていますので間違い無いですね」
麻紀はこのまま弓子が逮捕されない場合、持田は完璧に犯人に成る!復讐は達成されると心で微笑んでいた。
追い込まれた持田支店長
36-075
「これで持田を任意で引っ張れますね」
「松山さんは苦しい立場に置かれたな!裁判で証言しなければ成らないから可哀想だ!」
安住は内海と異なる事を話す。
内海は前から安住刑事が松山麻紀に好意を持っていたと感じていたが、今回の事でより一層気持ちが傾いたと思った。
麻紀は誘拐されて強姦された時の状況を詳しく話し、岸が助けに来てくれた事まで話したが、米山桐子の話は敢えて口に出さなかった。
安達に迷惑が及ぶ可能性が有ったから、話せないが持田の口から警察に漏れ聞こえる可能性は残った。
二人はその後喫茶小鳩に行き持田の話を聞くと、店主は何度か来られましたホワイティアのホステスさんに間違い有りませんと証言したが,それが宇都木真理だとは二人には判らない。
翌日持田支店長の自宅に警察が早朝、任意同行を求める為に向かった。
丁度出掛ける前で、驚く家族と持田自身だったが、先日妻の容子は電話で十一月六日、七日は仕事で留守ですと証言していたのだ。
「私は何もしていない!特に藤井会計士の亡くなられた日は自宅に居たといったでしょう?」
「残念ながら、奥様はその日は出張で留守だとカレンダーを見ておっしゃいました。それに今回出頭して頂く用件は、別の事です!」安住刑事に言われて、口を真一文字に結んでしまう持田。
その頃麻紀も自宅に石谷が迎えに来て、車に乗り込む寸前だった。
メールが携帯に届き、今持田を任意で連行中だと安住刑事のショートメールだった。
(判りました)と簡単な返事を送るが、安住の親切を喜ぶ。
「持田が警察に連行されたわ!」石谷に嬉しそうに言うと「えっ、警察に連行ですか?容疑は何ですか?」
「藤井会計士の放火殺人よ!」
「えっ、放火殺人は罪が重いですよ!死刑か無期に成る可能性が有りますよ!」
「そうなのですか?」麻紀は車の天井に目を移して、祖父に問いかけていた。
その後「今日からまた憂鬱な治療が続くわ」と言う麻紀。
その頃服部産婦人科病院では、荘次郎がVIPに看護師と松尾、松本、芽野の三人に「実は山木君が事件を起こして逃走しているので、今日から再入院の松山麻紀の調教治療だが、二日間で打ち切る予定だ!今日は簡単な検査をして、明日放射線治療と言って強姦するが、その治療で退院させる。警察がまだ何度か来る可能性が高いので危険だ」既に怯えている荘次郎。
「ここまで調教しているのに、残念ですね」
「時期を待って、卍に委ねる様に北見会長に話そうと思っている!明日まで兎に角楽しむ事にするが、大きな変化が有ると本人に判るので、気を付けて行動する様に」荘次郎は注意深い男だから、危ない事は必ず避ける男だ。
県警に拘束された持田の取り調べが始まり「持田さん!貴方の容疑は誘拐強姦罪ですよ!」
安住刑事がいきなり言った。
「何を言っているのですか?誰が誘拐強姦をしたのですか?冗談は辞めて下さい」
「冗談では有りませんよ!藤井会計士の焼け跡から写真が発見されましてね、貴方が強姦している写真が多数発見されたのですよ!」
「冗談は辞めて下さい!仮面をつ。。。。。。」思わず喋る持田。
「仮面を着けて、クラブホワイティアのママ三田麻紀さん、本名松山麻紀さんを強姦したでしょう?松山さんからは事情をお聞きして、告訴されますので今日明日には逮捕に成ります。それから写真を取り戻す為に、藤井会計士の自宅に侵入して殺害したでしょう?」
「言いがかりだ!強姦も藤井宅にも行っていない」
「誘拐の計画を山木弓子と喫茶小鳩で行っただろう?」
「喫茶小鳩のバイト店員河西美鈴に聞かれて、山木が神戸港に投げ込み殺害した事は判明している」
「何の話しか私には判らない!帰らせて欲しい!今日は重要な会議が有るのだ!」
「それは無理ですね!十一月の六、七日自宅には得意先と旅行だと言われていましたね!奥様がカレンダーに御主人の予定を書かれていたのですよ」
「。。。。。。。。。」困り顔に成っている持田。
「嘘を言ったのは申し訳無い、本当はクラブホワイティアのホステス真理と遊んでいたのだ!これは妻には内緒だ」
「今度は別の女と遊んでいたのですか?連絡先を教えて下さい!確かめて見ます」
手帳を出して携帯番号を読み始めた持田。
直ぐに電話をする安住刑事が「相手の人は宇都木真理さん?」と尋ねる。
「そうだ!間違い無い!」怒った様に答える持田。
離れた電話で話していて、戻って来ると「その様な事実は無いと言っていますが?また嘘ですか?」
「そんな事はない!大阪のラブホテル赤い星だ!間違い無いので調べて欲しい」
「一応調べますが、そこのホテルは殆ど顔を見る人も居ないでしょう?誰に聞くのですか?一度調べに行きましたが、顔を知られたら困るカップルが別々に入れるホテルでしょう?無理でしょう?」
「そうですよ!強姦も知らない!ラブホテルに泊まった!意味不明の事を言っていたら死刑に成るぞ!」内海刑事が脅す。
「自白したらどうです!有馬の桧旅館に九月の二十八日松山麻紀さんを誘拐して、藤井と共謀して強姦して写真を撮影した事は、もう裏が取れているのですよ!仕事に帰る事なぞ出来ませんよ!」
「。。。。。。。。。。」
「旅館の人に顔を見られているのです!椿の間に隠れていたでしょう?桔梗の間で藤井が撮影をしている間!ダイヤ建託の岸さんが助けに来て、フロントで揉めた日だから旅館の人も記憶に残って居たのだよ」
「。。。。。。。。。」
「岸さんは気絶させられて、気が付いて松山さんを助けたが、その時は藤井と貴方は逃げた後だった。松山さんは貴方の煙草の臭いと体臭で思い出したのですよ」
「。。。。。。。」言葉無く机に項垂れてしまった持田支店長。
逮捕へ
36-076
院長室で荘次郎は久々に麻紀を前にして「松山さん!体調は如何でしたか?」
「全く悪い感じは有りません、少し身体が火照る感じですが?」
「松山さんには驚かせて申し訳無かった!山木弓子君があの様な事件を起こしていたとは、全く知らなかった」
「はい、よく働いて頂いましたし、この病院を紹介して頂いて良い人だと思っていましたのに、お客様と共謀していたのには驚きました」
「そうですよ!私も警察に聞いて持田支店長が貴女を強姦して、妊娠させた本人だとは思いもしませんでした」
「でもお陰様で初期の癌が見つかって良かったと、感謝しなければ成らないのかも知れませんが、卑怯で卑劣な男です!」恐い顔に成った麻紀。
「放火殺人と誘拐強姦、神戸港の水死体事件にも関わっていたら確実死刑ですね」
「弓子さんの消息は?」
「全く判りませんね」
そこに芽野女医が入って来て、挨拶をする二人。
「今日は午後から癌の状態を調べて、明日早速放射線治療を行いますが、当初から初期の癌だったので一回の治療と抗ガン剤で成果が有れば以外と簡単に治って、退院出来るかも知れませんね」
「えっ、そんなに早く?」
「一回目の治療の後、身体の異常が無い事も治療が上手く出来た証しかも知れません」
「はい、この年末年始も全く異常は有りませんでした」
「部分的な事をお聞きしますが、クリトリスの手術の状態はどうですか?」
恥ずかしそうにして「初めは少し違和感が有りましたが、今は慣れてしまいました」と答えた。
話しが終ると病室に戻った麻紀は、食事の後シャワーで身体を洗って診察に備える。
以前の診察から一ヶ月以上が経過して、陰毛は元の状態に戻り髪はイガグリ頭の様に伸びて、脱毛している様子は全く無い。
一度の抗ガン剤の使用だったから抜ける事が無い様だ。
明日二度目の抗ガン剤で抜ける可能性は有るが、今日の検査結果次第で早期に治る可能性も出て来たと考える。
シャワーの水滴がクリトリスに当たると、直ぐに感じてしまう麻紀。
あれから何度オナニーをしたのか?自分でも数えられないと思う。
兵庫県警では、持田支店長はどんどん窮地に落ちて行き。
数々の証言で、松山麻紀誘拐強姦罪は認めざるを得ない状況に追い込まれて、昼過ぎに全面的に認める結果に成り、県警は逮捕状の請求に成った。
そのまま藤井会計士放火殺人罪、神戸港水死体事件の主犯としての立憲に向けて追い込む事に成っていった。
午後の検査が始まる前に、県警から麻紀に電話が掛って、病室に転送された。
荘次郎は予想していたが、県警が今後何度電話をするか判らないので、明日が限界だろうと早急に麻紀の解放を考える。
そんな時、弓子が荘次郎にお詫びの電話を掛けてきた。
荘次郎は絶好のチャンスだと、弓子に罪を軽くするには今逮捕されている持田に罪を被せるのが得策だと諭す。
持田は藤井会計士を殺害、放火をして逮捕されているから、君が彼にそそのかされて手伝ったと言えば罪は軽く成ると入れ知恵をした。
警察に追われている弓子に、逃げる場所を伝えた。
自分の知人で匿って貰えると、姫路の夢前町の乾と云う人の住所を教えた。
当初から電話が有ればここに行かせる事にしていた荘次郎。
泉に電話が有れば自首か自殺を勧め、自分に有るかは賭けの様なものだったが、これで弓子の始末は出来たと安心する荘次郎。
卍会のメンバーの一人で、逃亡の女とかの始末に使う場所、相当お金は必要だが必ず始末をして貰える。
弓子は直ぐに電話を県警に掛けた。
「私は山木弓子です!共和住宅神戸支店長の持田さんに頼まれて、河西美鈴さんの殺害を手伝いました。すみません!」唯それだけを一方的に言うと電話を切ってしまった。
百十番で一方的に話して切られた通話は録音されて、捜査本部に送られて近藤捜査一課長はこの声が本人の声か、服部産婦人科病院で確認して来いと、捜査員を走らせた。
持田の取り調べは昼の休憩に成って、食事を食べていたが安住達にこの事実が伝えられて、夕方迄には確実に落とせると自信を持った。
荘次郎は今疑われている持田に全ての罪を背負って貰っても良いだろう?藤井会計士を殺すとは考えていなかったが、警察の話しを総合すると、持田は藤井からママを取り戻そうとしていたのでは?と感じていた。
相当ママに入れ込んでいたのは確かだから、自分一人の物にしたかったのだろう?確かに良い女だ!顔も身体も、そしてクリトリスを剝いて、調教を積めば最高に感度の良い雌豚に育つのに残念だ!荘次郎は自分の身の安全の為に手放して、後は卍に委ねる決断を下していた。
「持田!お前の逮捕状はもう一つ増えたぞ!山木弓子がお前に頼まれて河西美鈴を殺害したと自供した!」
「何を馬鹿な事を!河西美鈴の顔も知らない!濡れ衣だ!弁護士を呼ぶ!もう一切喋らない!」口を真一文字に閉じて何も喋らなく成った持田。
この時から捜査本部と持田の根比べが始まった。
今からこのカメラを挿入して、癌の病巣を一緒に見てみましょう?と診察室で膣内に挿入するカメラを見せる芽野。
強化プラスチック製の筒で透明だが、ペニスの太さで長くした様な物で、コードが付いていてモニターに接続されている。
「これを見て下さい」と芽野は自分の手の平をモニターに映し出して見せる。
「よく見えるでしょう?これで今から一緒にモニターを見て、治療の跡を検証しましょう。治っていると良いですね」
微笑みながら「それでは、いつもの診察台にガウンを脱いで、仰向けに寝てから右側にモニターを置きますので、ご覧下さい」泉看護師がモニターを診察台の横に移動させた。
検査バイブ
36-077
年明けからそれぞれの運命が大きく変わろうとしていた。
共和住宅の持田は警察で取り調べを受け、窮地に成っている。
その頃阿部彰次の土地にハピットの建設が始まり、桜モータースの桜井は顔で笑いながら「阿部さん、今度は大手コンビニの建設ですか?次々と凄いですね!」と褒め称える。
「農業をしていた昔が懐かしいですわ!子供達に財産を残す為には、農業では無理ですから仕方が無いです」
「相続税対策ですね、阿部さんは資産家だから色々大変ですね」と微笑みながら、もう直ぐ驚く様な事が起ると心で笑う桜井。
その桜井は、姉妹の姉の西田陽子の思惑に沿ってハピットと内々の契約を行っていた。
妹の東家は日々状況が悪化、夫婦は口も聞かない状況、子供達は好き勝手に遊ぶ。
妹の薫は堤と遊んで,妊娠中絶までして成績は下降線、遂には大学進学を諦めて専門学校のコースに向かう事に年明け決めてしまった。
荘次郎の手での麻紀の調教は断念に成り、今芽野の診察でその事実が伝えられ様としていた。
診察台に横に成って麻紀の足が固定されて「診察台が動きますよ」の言葉と同時に上昇、大きく足が広げられて、無影灯の光に白い肌に黒い陰毛が光り輝いた。
胸の上はカーテンで遮断されて、麻紀から芽野の姿は見えなく成った。
「松山さん、このモニターをご覧下さいね」泉看護師が麻紀の右上のモニターに電源を入れる。
カーテンの向こうで芽野が「それでは先程のカメラを挿入して見てみましょう」
「はい」小さく返事をする麻紀が「あっ」と声を発した。
芽野が陰毛をかき分ける為に指で触ったからだが、自分でも反応の良さに驚く麻紀。
薬がたっぷりと効いているのよ、毎日飲んでいるでしょう?先程も食事の時に飲んだから、身体中性感帯に成っているのよ!微笑みながら指を膣に挿入して、広げる様にする。
「あっ、あっ、あっ」続け様に声が出て、目を閉じたり開いたりする麻紀。
オナニーも充分している様だわ、あれ?クリトリスが全て剥けていない?話しが違う!後ろを向いてカメラに向かい何かを言う芽野。
荘次郎は小部屋で松尾と一緒に見て「何を言っているのだ?芽野君は?」
「院長、クリトリスの部分を指さして何か喋っていますが、声が出せないので判りませんが?」
芽野がバナナを食べる格好をしたので「判りました,クリトリスが剝かれていないと叫んでいる様です」
「何!木村の奴、騙したな!年末に遊べたのに、具合が悪いとか言って、今日まで先延ばしにしたのだな!だがもう間に合わん!もうどうでも良い事だ!調教はしないのだから構わん」
そう言って怒る荘次郎。
芽野は一応荘次郎に伝わったと思ったのか、再び指で膣口を押し広げる為に二本を入り口に入れる。
「あっ、うぅ、うぅ」声を再び出しているが、同時に愛液が流れ出る程に潤った。
「松山さん入れますよ!見て下さい」とは言うが持っているのは、太くて長い黒いバイブだ。
モニターの画面には、子宮頸がんの治療が終った映像を流す予定だ。
「あぅ、うぅ、うぅー」太いバイブを押し込まれて、もう我慢が出来ない状況で「ああー」と声を出してしまう麻紀。
「松山さん、画面を見て下さい」右上に膣内の画像が映るが、視線が安定しない麻紀。
「もう直ぐ、治療の部分に到達しますよ!苦しいですか?もう少しですよ」
そう言いながら一気に奥に押し込むと「ああーーああーーううー」頭を仰け反らせる程の刺激が、麻紀の脳天に突き刺さった。
「見えて来ましたね!これは随分良く成っていますね、本当に初期の癌だったので、一度の放射線治療と抗ガン剤で殆ど完治していますね!これなら明日もう一度治療すればもう心配無いでしょう?」
「は、は、い!治りましたか?」
「他に転移していないか、もう少し調べて見ましょう、少しモーターを動かしてカメラを自動にしますよ!少し振動が有りますが大丈夫ですよ!どちらかと云えば気持ちが良いかも知れませんので、気にせず身を任せているのが良いですよ」
そう言っていきなりバイブのスイッチを入れてしまう。
「ああーーだめーーーああーああーー」「ああーああーーせん、せい!ああーーだめーーーああーああーー」もう何も見ていない麻紀は完全に腰が浮きそうな快感に晒されていた。
だが、逝く寸前バイブのスイッチを切る芽野。
寸止めして、気分を高めて置けば明日もっと燃えるだろう?憎たらしい美人に満足させるかの意地なのか?
「良かったですね、他の場所にも転移していませんので、明日の放射線治療と抗ガン剤治療で様子を見ましょう?五ヶ月後にまた検査をして再発が無ければ完治だと思って下さい」
起き上がって「本当に完治ですか?髪ももう抜けませんか?」
「こんなに簡単に治るとは思いませんでしたね、これなら髪を剃る必要は無かったですね!すみません!私の判断ミスで大切な髪が無く成って申し訳無かったです」
「いいえ、先生の判断と云うか、早期発見のお陰で早く治ったと思っていますので、髪の事は気になさらないで下さい!直ぐに伸びます!私上も下も一般の人よりも早い気がします」嬉しそうに微笑む麻紀に「でも明日の治療では、また綺麗にしなければいけませんよ!」
「ここは、見えませんし、直ぐに伸びますから構いません!明日で治ると思うと元気が出て来ました」そう言って診察台から降りて、ガウンを青木看護師に手渡されて袖を通した。
癌が治ったと言う言葉は、麻紀を一気に元気にして病室に帰った。
すると兵庫県警から病室の電話に「ようやく、連絡が出来ました」と安住の声。
「どうされましたか?」の声に「松山さん明るいですね」と安住が言う。
「実は,癌が殆ど完治しているのです。明日抗ガン剤と放射線治療で退院出来るのです」
「えー、それはおめでとうございます!実はこちらも持田支店長を明日逮捕します。取り敢えずは誘拐、強姦罪ですが、今日山木さんから告白の電話が有りまして、持田に頼まれて一緒に河西美鈴さんを殺したと自白しました」
「持田は持田は認めたのですか?」
「強姦は認めましたが、放火殺人と河西美鈴殺しは認めていません!だが時間の問題でしょう」
「何故認めないのでしょう?」
「誘拐強姦なら死刑には成りませんが、放火殺人、殺人と成ると死刑ですから、簡単には落ちませんよ!でも証拠が集り過ぎていますから無理でしょう!先ずは報告まで!お大事に!」
「来週からなら、協力は幾らでも出来ますから、何なりと!刑事さんのシクラメン綺麗ですよ!」麻紀の言葉に顔を赤くした安住だった。
逃げ道
36-078
「以前に比べて、もの凄く感度が上昇していましたね」芽野が院長室で今日の感想を言う。
「それは良かったが、木村医師は私を騙していたのだよ!クリトリス包茎手術で手心を加えて、私達に調教される時間を遅らせおった!けしからん!面倒を見てやったが首にしてやる!」
「院長、それは少し待たれた方が、今木村医師は数人の患者を持っています!代わりの人材が見つかるまで見て見ない振りをして下さい」泉看護師が口を挟む。
「そうだった!彼は人気が有る!来週も政治家の女が手術に来るから、それが終らないと駄目だった」
「今後、時期を見て北見会長があの女を雌豚に変える調教をされるでしょう?」
「ほとぼりが冷めたら見学させて貰う!芽野君はどうする?折角だから引き続き仕込みたいだろう?」
「勿論です!病院の先生としてでは無く、SM治療をする医者に成って、今度は遠慮無く身体に教え込んでやります」
「明日は私以外にSEXをしたいのは?」
「私は卍での調教に参加させて貰うので、別段構いませんよ!明日は見学で充分です」
「松尾さんと私だな!前回と同じだ!まあ、あの女で楽しめるのは明日が最後だな!今度は雌豚に成っているから、違う感触だろうな」
四人は思い思いに明日のストーリーを描いている様だ。
持田の取り調べは夜まで続いて、共和住宅の本社まで神戸支店から連絡が届いたのは夕方に成ってからだった。
日頃から嫌っていた社員も報告するまで時間が掛った。
それはもしも何事も無く持田が戻って来ると、自分が反撃に遭って左遷されるから怯えて、中々連絡報告が出来なかったが夕方県警から逮捕に成ります!の連絡で安心して本社に連絡した。
「誘拐強姦罪?何と恥さらしな!懲戒解雇だ!直ぐに辞令を!」総務部長の重役は両方から連絡を受けたので独断で指示して、その日の間に持田支店長は業務外だが、共和住宅の社員として考えられない行為で懲戒解雇と発表!全国にFAXで流れた。
逮捕の前に懲戒解雇にしたのは、兵庫県警の上層部から極秘に共和住宅の本社に連絡が届いたからだ。
殆ど神戸支店からの連絡と同時だったので、神戸支店の総務次長は本社から強く注意を受けた。
荘次郎は夜、卍会の会長北見に麻紀を譲り渡す電話を掛けていた。
警察がうろうろしていますので、条件としては一ヶ月以上間隔を開けて欲しいと言った。
北見は当初から四月の予定にして、頂いたデータを元に貞操帯、SEXマシンを製造しているので一向に構わないが、病院での調教が半ばなら方法を考えなければ駄目だと言った。
荘次郎は約束を実行出来ない事を詫びたが、仕込み甲斐は有る女ですと惜しい気持ちを露わにした。
その他の松山麻紀のデータは全て、二十日までにスナックの方に届けますので、自由に使って頂いて結構ですと言った。
北見は余裕を見て、三月から行動に移しますので、それまでに状況が変わったら連絡を入れて欲しいと頼んだ。
「例の女性の処理は明日行いますので、振り込みよろしくお願いします」
「はい、早速処理して頂きありがとうございました」
「私はこの様な仕事は嫌いなので、色気の方をお願いしますよ」と言って笑った。
翌日も九時から取り調べが始められて、冒頭大友捜査一課長が「持田!もう全ての罪を認めて楽に成ったらどうだ!奥さんが着替えを持って来られて、会社から懲戒解雇の電話が有ったそうだ」
「えっ、懲戒解雇?そんな!」
「当然だろう?」と安住刑事が言うと「電話を一本させてくれ!」と急に言い始める持田。
「何処に電話をするのだ?」
「会社に掛けさせて欲しい」必死に頼み込む持田に「自供に協力するなら掛けさせてやる」と即断する大友捜査一課長。
頷く持田に電話の在る部屋に移動させる様に指示をした。
盗聴出来る様にして、一人にさせて誰と話しをするのか?確かめる刑事達。
持田はいきなり「懲戒解雇は無いでしょう?せめて退職金は出して下さい」
「持田君!私も今先程聞いたのだよ!総務の男が独断で。。。。」
「私にも覚悟が有ります!」
「ま、まて!話しが大きく成ってしまったので。。。。。退職金は何とかしよう!約束する!早まるな!」
「判りました!お願いします」それだけで電話が終わった。
別の部屋で聞いていた大友捜査一課長が「相手は誰だ!」
「会社の上司ですね!話しの内容では、退職金の要求でしたね」
「総務のトップが独断で懲戒解雇にしたが、他の重役は知らないと云う事だな」
「話しが短くて、逆探知出来ませんでしたが、携帯電話です」刑事が報告に来た。
「持田程のやり手だったら、会社の情報を沢山知っていますよ!ゆっくり責めれば何が出て来るか判りませんよ!」
「まあ、我々の仕事は二つの殺人を自供させる事だ!早急に自供に追い込もう」
だが,その後の持田は完全に黙秘に成り、弁護士が来るまで何も喋らないと言い始めた。
持田の電話相手は、早速社内、社外に連絡をして持田支店長逮捕の一報を伝えて、前後策の検討を始めた。
新聞社には既に本社から連絡が行き、記事にしない事で取り決めが行われた。
殺人とかの重大事件では到底無理だが、社員の痴漢、万引き、強姦は未然に防ぐ手回しがされている。
その様な動きを他所に、服部産婦人科病院のVIP階では、荘次郎が小部屋に向かう準備を松尾と一緒にしている。
「松尾君もこの薬を飲んでいるのかね?」と勃起薬を見せる荘次郎。
「私はこれです!その薬はどうも私には合わない様で。。。。。」
「私はこれが一番だよ!今飲めば一時間後位から効果が出るからね」そう言うと錠剤を飲み込んでコップの水で流し込む。
「その薬は二時間程度必要だろう?」
「ですから、院長の後ですから丁度でしょう?」そう言って微笑む。
麻紀はこれが最後の治療で完治すると言われたので最後の我慢だと思うが、反面手術前の準備(剃毛を含む処理)で自分は逝くのでは?の不安が有った。
最近オナニーで直ぐに燃えてしまう、特にクリトリスの手術の後はそれが顕著に表われるからだった。
剃毛プレー
36-079
検査着にガウン姿で診察室に入った麻紀。
媚薬漬け状態の麻紀の身体は敏感に成っているのに、陰部に注射をして燃え上がらせ様とする。
麻紀もそれが判っているので、自然と興奮している。
あの内診台に動けない様に束縛されて、目隠しで何も見えない状態にされるのだと考えるだけで乳房の先が立つ気分に成っている。
それが媚薬の効果だとは考えてもいないので、自分は少し淫乱なのかも知れないと最近は思い始めているが、オナニーを我慢出来ない日も多く成っている。
「ガウンを脱いで診察台に上がって下さい」青木看護師がガウンを脱ぐのを待っている。
「今日は、手術は有りませんが、放射線治療の器具を陰部に取り付けますので、陰毛は処理させて頂きますね」泉看護師がガウンを脱いで内診台の側に来た麻紀に伝えた。
「はい、よろしくお願いします」そう言って、診察台に腰を降ろしてスリッパを脱いで足を伸ばす。
丈の短い検査着のスカート、マジックテープで留められただけの簡単な上着、枕に頭を置くと頭上に無影灯が下半身の方向を向いている。
麻紀は頭にはボブの鬘を被った状態で、外せば二センチ以上伸びた髪が生え揃って、とても抗ガン剤で抜けるとは思えないと最近では感じている。
多分今日の治療でも抜ける事は無いと自信を持っている。
今日の治療で抜けなければ、夏に成ればボーイッシュな感じに出来ると期待している。
髪の毛も多くて太い、身体中の体毛は濃くは無いが、腋と陰部、頭は濃いと自分でも思っている。
腋の手入れは週に一度は必ず行うので、伸びるのが早いと思っている。
「松山さん、今日はこのアイマスクを最初から着けましょうか?頭を動かされて落ちてしまいますからね」
「は、はい!お願いします」麻紀も自分が乱れてしまう事を想定しているので、アイマスクの方が助かると思う。
泉看護師が、麻紀の顔の処にアイマスクを持って来ると、麻紀は両目を静かに閉じて待った。
アイマスクの装着が終ると「パイプを握って下さい」と言うのと同時に、マジックテープを外し始める。
腰の小さな布は直ぐに広げられて、尻の下から引き抜く様に取除かれた。
右足を抱えて持ち上げると樹脂の台に固定のベルトで結び付ける。
直ぐに手首の固定を終った泉看護師が左膝を持って、固定ベルトで留める。
腰にもベルトが巻付けられて、診台から身体が動かない様にする。
膝の固定が終ると、太股にベルトを巻付けて動かない様に固定が始まる。
アイマスクを着けられた時に、松本が入って来て固定するのを手伝っているが、麻紀の身体には触れない様に気を付けている。
男の手が判ると変に警戒する可能性が有るからだ。
「身体は動きませんね、少し動かして見て下さい」芽野が麻紀の身体の動きを確かめる。
「動かせません」と麻紀が言うと、上着のマジックテープを毟り取る様に外した泉看護師。
「心音聴きます」聴診器を乳房の下にそっと沿わせるが、何も聴いてはいない。
既に麻紀の乳首が隆起しているのが、泉看護師の目からも確かめられた。
「このママは既に、この治療に興奮していますよ」
松尾が見ながら言うと「マゾの素質が有るので、縛られる事とこれから行なわれる事に身体が反応して乳首が立っているのですよ!もうマンコは洪水状態に成っているでしょう?」
「毛剃りにですか?」
「剃毛の時には意識は有りましたから、身体も頭も覚えているでしょう?この様に何度か行う事によって、好きに成るのですよ!恥ずかしい、快感は紙一重ですからね」
「それが調教ですな!北見会長も同じ様な事を言われます!ここに居たあの若い女は毛が薄くて剃毛プレーは殆ど有りませんが、最近では中村さんのペニスがお気に入りに成りましたよ」
「えー、中村さんのは少し曲がっていると云いますか、変な感じですよね!それがお気に入りだと云う事は、彼女の膣も少し同じ方向に成っているのか、ポイントがそこに有るのかも知れませんな」
「もう半分以上は雌豚状態ですよ」
「女は恐いです!好きに成るともう我慢が出来なく成る!男は出てしまうと終りですが、女は何度でも逝く事が出来ますからね、今からこのママも何回逝くやら判りませんよ」
そう話していると、診察台が上昇して股間が大きく開かれて、無影灯の光が黒い陰毛を照らす。
早速その陰毛を芽野が指で開く様に触ると「あっ、あっ」早速声を出す麻紀。
「院長もう陰毛に何か光る物が見えて居ますよ!」そう言って指を指す松尾。
「予想通り、もう既にマン汁が溢れているのですよ!今日はマンコの周りにはクリームが塗れませんな」
「えー、それ程出て来ますか?」
「多分前回以上に、今日の剃毛は五月蠅いと思いますね」
「また、ハッカ液が入れて有るのでしょう?」
「注射の場所も少し増やす予定ですから、肛門近くまで燃えますよ」
「耐えられますか?」
「SEXに狂う様にするのが目的ですから、本当なら三月までに数回行う予定で、今日はもう正体を明かして尿道プレーを施す予定だったのですが、刑事が出入りしていては我々の正体を明かして調教は出来ませんから、前回と全く同じ過程で少しエスカレートさせたのです」
「本人には殆ど同じ様に感じますか?」
「多分判らないと思います!さあ目を凝らして見ましょうか?」
芽野が注射器を持って、左手で麻紀の陰毛をかき分ける。
針先が左の大陰唇に「いたー」の麻紀の声と同時に注射針が突き刺さる。
「はい、我慢して下さい、数カ所に注射していますよ」泉看護師が言う。
「いたー」の声と同時に注射針が突き刺さり、次々と注射針が針治療の様に突き刺さる。
「いたー」「いたー」刺さる度に声を出す麻紀も,前回よりも多い様な気に成った時に漸く終って、薬が少しずつ膣口を中心に打たれてしまい、最後は肛門の近くにまで打たれていた。
「はい終りましたよ!今度は軽くガスを吸って下さい」マスクを持って、鼻と口を覆うと麻紀は一気に吸込んでしまう。
「はい、気分はどうですか?」マスクを外して問いかける泉看護師。
今日は松本が麻紀の剃毛の係の様で、嬉しそうにシェービングカップで泡立てていた。
敏感陰部
36-080
「は、はーい」間延びした返事をする麻紀。
「今から、マン毛の処理をしますからね」
「お、おね、が、い、します」ゆっくり答える。
「暑いですか?」
「は、はい、あそこ。。。」
「あそこでは判りませんよ!何処が暑いのか答えて下さい」泉看護師が執拗に尋ねる。
麻紀に認識させて、恥ずかしさと一層集中させる為に記憶に残る様に教え込む。
「マ、、、、」
「マ、って何処ですか?」と尋ねた時、芽野が「ここでしょう?」陰毛を数本持って引っ張ると「ああーー、マンコですーー」と声を上げた。
「正直に言わなければ的確な治療が出来ませんよ!この治療は女性の性器が正常に成れば成る程、感じ易く成るので恥ずかしい事では有りませんよ!前回の治療の時より感じ易ければ完治している証拠ですから、安心して身を任せて下さい」
「は、はい」
「声が大きく成る様だったら、何か咥えますか?」泉看護師が尋ねる。
首を横に振って答える麻紀だったが、直ぐに大きな声が出てしまう事に成る。
「これが剃毛プレーの方法なのだよ!自分は剃られると感じてしまうと意識付ける
事によって、毎回感度が上がってしまい条件反射の様に成り、それが進むと自分から剃られる事を望む様に変わってくる。だからこの女は伸びるのを待つ様に成ってしまい。剃毛プレーが好きに成る」荘次郎が松尾に説明をする。
既に松尾は股間に手を持って行く回数が増えている。
勃起薬は未だ効いていないと荘次郎は思っているが、もしかすると暴発してしまう?そう心で思っていた。
芽野に変わって股間に入った松本が、泡立てたシェービングクリームを刷毛に浸けて、いきなりクリトリスの上に被せる様に,塗りつける。
「ああーーーーーだめーー」大きな声が診察室に響き渡り、麻紀が足先をバタバタと動かした。
「大きな声が出たわね!どうしたのですか?我慢が出来なかったの?」
泉看護師が額に吹き出た汗をタオルで拭き取りながら、呼びかけた。
続けて刷毛にクリームを浸けて、同じ部分に塗り込むと「いゃーん、だめー!」と大きく身体を動かそうとする麻紀。
クリームが伝って、クリトリスから膣口の方に流れて落ちた様だ。
ハッカ液が入っているクリームは、膣に強烈な刺激を与えて居る様で、身体を大きく動かそうとするが、全く動く事は出来ない。
横では蒸しタオルを準備していた青木が洗面器から取り出して、両手で冷やす様に軽く絞っている。
再びクリームを浸けて、今度はクリトリスから膣口、大陰唇に刷毛を持って行った。
「ああーーああーーだめ!だめーゆるしてーー」足をバタバタさせて、頭を動かす麻紀。
「ほら、五月蠅いでしょう?これを咥えるのよ」小さなタオルを筒状にした物を麻紀の口に咥えさせる。
「うぅ、うぅーーー」首を振るが、股間の刺激にタオルを噛みしめている。
意識は有るが,ガスの影響で殆ど他の事は考えられない麻紀。
剃毛プレーを一層刺激的にさせているガスの効果だ。
しばらく松本に弄ばれて、麻紀も脱力感を感じた頃、青木に場所を譲る。
青木が蒸しタオルを綺麗に畳んで、その白く盛り上がったクリームの上から一気に押さえて蒸らし始める。
青木はタオルの上から、指でクリトリスから大陰唇の割れ目を刺激する様に擦りつける。
「うぅ、うぅ、うぅ」今度は感じるのか?変な声を出す麻紀。
しばらくして蒸しタオルを陰部から取除くと、岩のりの様に白い肌に縮れて貼り付く陰毛。
今度は股間に芽野が入って、日本剃刀を手に持って「これから、剃毛を始めますからね」と少し大きな声で言う。
「聞こえましたか?今から芽野先生が、松山さんのあそこの毛を丁寧に剃って下さる様ですよ」泉看護師が口のタオルを外しながら尋ねる。
「よ、、ろ、しく、、おね、、がい、、します」辿々しく答えるので、多少意味は判っていると判断する芽野が「もう少し台を上げて」と指示をした。
足の部分が上に上がると、麻紀の肛門が見えて来た。
お尻を大きく上げられて、肛門が無影灯の光に輝いてひくひくしているのが判る。
刷毛にたっぷりとクリームを浸けると、いきなり麻紀の肛門に毛先を持って行く。
「いゃーーやめてーー」意識朦朧の中で感じて叫ぶ麻紀は足をバタバタと動かす。
芽野は面白そうに、肛門に毛先を入れて廻す様にすると「ああーーああーーだめ!変になるーー」と再び騒ぐ。
肛門から大陰唇の下までクリームで白くすると、日本剃刀を広げて麻紀の尻を広げる様に引っ張り、剃刀の先が肛門の周りを剃り始める。
「あっ、いゃーいゃー」の声を無視して、産毛を白いクリームと一緒に剃り取っていく。
ハッカ液の刺激が肛門を刺激して、ひくひくが多く成っているのが見られた。
しばらくすると、麻紀の肛門から膣口までの間が綺麗に剃り上げられて、産毛が白いクリームと一緒に半紙に載せられる。
麻紀の上がっていた腰の部分が下げられて、普通の状態に戻されると、シェービングカップを持って刷毛でクリームを浸けると、下腹部に落とした。
その刷毛を一気に廻しながら、下腹部から恥丘全体に塗り広げていく芽野。
二度、三度とクリームを浸けると、恥丘からクリトリスの方にクリームが流れて「ひぃー」と声を上げる麻紀。
ハッカ液の入ったクリームがクリトリスを刺激したので、声が出てしまった。
下腹部と恥丘が真っ白に成ると、日本剃刀を広げて上の方から「ジョリ、ジョリ」と音を立てて剃り始める。
お腹の皮を引っ張りながら「ジョリ、ジョリ」「ジョリ、ジョリ」と音が部屋中に聞こえる。
剃られた陰毛はクリームと一緒に剃り取られて、新しい半紙に載せられている。
「ジョリ、ジョリ」「ジョリ、ジョリ」と軽快に剃り上げて、見る見るうちに青白い地肌を露呈している。
残すのはクリトリスの付近と,大陰唇、膣口の周辺が口髭の様な形で残っている。
燃えるSEX
36-081
「これからが見物だぞ!芽野はクリトリスを弄くり、膣に指を入れて皮膚を伸ばして剃るから、媚薬とハッカ液の刺激で狂うだろう?私はもう直ぐだから、生で見るとするか?」
「院長良い女も今日が最後ですよ!頑張って白目を剝くまで突いてやって下さい」
「変な激励だな!松尾さんも誤爆に注意ですよ!」そう言われて股間に手を持って行く松尾。
残りの部分に刷毛で、何度も何度も弄くる様にクリームを塗り込まれて「もうゆるしてーー燃える!燃えている!」頭を大きく振って、足先をバタバタさせている。
白く盛り上がるクリームも、股間の中央は雪が解ける様にクリームが消えて膣口が浮き出る。
芽野はそれが流れ出る愛液が原因だと判っている。
日本剃刀を広げると恥丘の下から「ジョリ、ジョリ」と剃り始めるが、刃先が感じる部分を触ってしまうと「ああーーああーーだめ!」と突然大きな声を出す。
直ぐ横に荘次郎がやって来て、半紙の上の陰毛の山を見ながら覗き込む。
荘次郎を見て「そろそろ、ガスお願い!」の指示で、泉看護師が麻紀の口と鼻をマスクで覆う。
「はい、吸って下さい!記憶が消えて雌に成れますよ!」意味不明の事を言う。
一気に吸込む麻紀はマスクを外されると「ああーーああーーだめ!感じる」「だめーだめーあついーー」
明らかに先程とは異なって、感じている言葉の連発に成った。
「ジョリ、ジョリ」クリトリスの周りから、大陰唇の左側を剃刀が滑る様に走る。
「さあ、もうここだけだわ」膣に指を入れて皮膚を広げて、大陰唇の陰毛を「ジョリ、ジョリ」と剃り上げると「いゃーん、だめー!だめー!」と口走り、完全に雌に変化している。
少し前までの黒々とした陰部は青く光ってつるつるに成った。
明らかにクリトリスが勃起して赤い豆が大きく飛び出している。
タオルで綺麗に拭き取ると、芽野は股間から退いて荘次郎が、ガウンを脱ぎ捨てて中央に陣取る。
荘次郎が股間に顔を近づけると、いきなり勃起している赤い豆を長い舌でべろりと舐める。
「ああーああーーだめーーーーだめー」大きく頭を動かして足先に力を入れる。
その舌が愛液の溢れる膣口まで、そのままペロペロと音を立てながら移動すると「だめーーーーーーたすけてーいくー!」仰け反る頭、伸びるつま先。
「ぺちゃ、ぺちゃ」大きな音を立てながら、舐められ舌をねじ込まれ、クリトリスを吸われて「だめーーいくーーいっちぅーー」身体が痙攣を起こす。
「舐められて逝っちゃったわ」横で見ている芽野が小声で言う。
「もう少しガス!そしてアイマスクを外して」
「大丈夫ですか?」
「もう雌に成っているから、雄を求めるだけよ!誰なのか判別出来ないわ!」
マスクを顔に宛がわれて、ガスを吸込んでしまう麻紀。
マスクを外すと、同時にアイマスクを取り去ると、直ぐに芽野が頭の処に行って手を翳す。
殆ど反応が無いので、アイマスクを外された事も理解していない様に成っている麻紀。
診察台を調節して荘次郎の位置まで降ろすと、荘次郎が大きく勃起したペニスを持って、麻紀の膣口に擦りつけ始める。
「ああー、だめーー、いれてーー」の言葉が口から漏れてしまう。
「雌に成った様だわ」横で見ている芽野が興奮しながら言う。
荘次郎のペニスが吸い込まれる様に、麻紀の膣口に入っていく。
「あぅ、うぅ」仰け反る頭、腰に力を入れると一気に奥まで挿入する荘次郎。
「ああーいいーーいいわーー」
「そうか、いいか?」始めて声を発した荘次郎だが、既に麻紀には判断能力は無く。
荘次郎のペニスに吸い付く様に膣の襞が変わっている。
「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の声が出始めたのは数秒後で、薬の効果で直ぐに絶頂を迎える様だ。
麻紀の足先に力が入り、片間が大きく仰け反り、パイプを握る手に力が入っている。
腰の動きを早くする荘次郎「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の声と同時に、一層仰け反ると荘次郎も締め付けが強いのか「うぅ」と声を出すと、休憩する様に動きを止める。
しばらくして、再び腰を動かし始める荘次郎、麻紀との最後のSEXを楽しむ様に、腰を動かして「美人の逝く顔は最高だな!これはどうだ!」腰に力を入れて早くすると「ああーああーーいくーーいくわーいっちゃうーーー」の声が大きく出て、締め付けが強く成って、今度は荘次郎が終りを迎えてしまった。
「うぅ」と言うとそのまま射精をしてしまい、白い麻紀の身体に抱きつく様に倒れ込んだ。
「タオル」と指示すると、直ぐに麻紀の顔にタオルが被せられて視界を遮った。
「松尾さんは?」と入り口を見る芽野。
しばらくして、松尾が入って来て「暴発してしまいました!」と恥ずかしそうに股間を触る。
同じ様に松本も既に暴発をして、終っていた様だ。
「注射で眠らせましょう、今日は調教をしても無駄ですから、夜まで麻酔で眠らせましょう」
青木が麻酔の注射を持って、麻紀の固定された腕に注射して眠らせる。
ようやく麻紀の身体から離れた荘次郎が「記念にこの綺麗な身体を撮影して置け」とカメラを持って来る様に指示した。
「上着を全て脱がして、足を開いてマンコも開いたSEXの痕を撮しておこう」
手首を外して、上着を身体から取り去ると腰のベルトも外して、全裸の写真の撮影が始まる。
「本当に素晴らしい身体だ!締まりも良い、愛液の量も感じ方も最高の女だ!譲るのが本当に惜しいが警察が来るから、危険だ!」残念そうに何度も何度も麻紀の身体を手で撫でる。
「院長もう充分でしょう」芽野が言うと「俺が撮影する!マンコを広げろ」と指示すると、カメラを麻紀の股間に焦点を当てる。
芽野が両手で左右に広げて、襞が見える程指で広げて撮影をして、荘次郎は嬉しそうに部屋を後にした。
「あれ程アップにしたら、誰のマンコか判らないでしょう?」と泉が笑うと「院長は自分だけ判れば満足なのでしょう」と笑った芽野。
診察台から降ろされると、ストレッチャーに全裸の状態で載せられて、病室に運ばれて行く麻紀。
白い全裸に,下腹部だけが青白い剃毛の跡を残している。
「この女、剃毛プレーだけは身体に染みついたと思うわ、卍でも喜んで剃毛は受け入れるでしょう」芽野が微笑みながら、またの再会を楽しみにしていた。
女弁護士氷室
36-082
翌日麻紀は昼過ぎ、薬を貰って石谷のタクシーで退院に成った。
「お嬢様、良かったですね!最初の予定では三月末だと言われていましたのに!」
「そうなのよ、一昨日の検査で癌が殆ど消滅していたのよ!だから昨日抗ガン剤と放射線治療をして貰ったから、もう六ヶ月後の検査まで来なくても良いと言われたわ」
「身体の具合はどうなのです?」
「そうね、怠い感じかな?特に腰ですね」本当は陰部がむず痒いと言いたいが、流石に恥ずかしくて言えない。
「数日自宅で休んでから、店に戻る事にするわ!」
「来週の月曜日ですね!」
「共和住宅の支店長の事ニュースで何か出ていた?」
「いいえ、何もニュースに成っていませんね」
「変ね!安住刑事逮捕したと言ったのだけれど、休みの間に阿部さんの工事現場も見に行きましょう」
退院に成って急に元気に成っている麻紀。
SEXをした事で、身体も軽く成っているのだろうか?それは本人にも判らない。
持田の電話で共和住宅では専務自ら、持田の退職金を支払う話しを進めると同時に、ダイヤ建託の尾藤専務、東京から急遽山下部長と安西課長が関西に飛んで来て、極秘の会合をしていた。
共和住宅の五十嵐専務は平謝りで、今後の対策を話し合う。
「しかし、誘拐強姦をするなんて、持田君にしては考えられない失態だな」
「それが当社の顧問会計士の藤井先生が少し変な趣味が有りまして、その先生に付き合わされたのですが、焼死してしまいまして焼け跡から多数の卑猥な写真が出て来て、それが発端の様です」
「まあ、捕まったのは仕方が無いが、彼が我々の談合を警察に話すと、官公庁への賄賂、接待の実体を喋ると芋づるで大スキャンダルに発展してしまう!どうにか成らないのか?」
「方法は一つです、訴えているクラブのママに告訴を取り下げて貰う事です」
「えっ、強姦したのは飲み屋のママなのか?何故金で解決を出来ない!変な話しだな?」
「それが、ママは今病気で入院中らしいのです、昨日も電話をしたのですが連絡が出来ないのです」
「強姦が原因でか?」
「違う様ですが、兎に角示談にして告訴さえ取り下げれば丸く収まる」
「もう、社内で処分が出てしまいましたので、持田君の復帰は無理だと思います」
「それなら充分なお金を出して、次の就職口も探してやれば、我々の事まで喋らないだろう?」
「ダイヤさんも持田君の就職口が有れば頼みますよ!彼はやり手ですからね」
「五十嵐さん弁護士は準備したのかね?」
「はい、この様な女性問題は初めてで適任の弁護士が見つかりません!困っています」
「安西課長!君は顔が広いだろう?誰か適任は居ないか?」
「はい、今事情をお聞きしまして、一人心当たりが有ります。氷室弁護士は如何でしょう?」
「氷室さんか、彼女なら適任かも知れないな!早速呼んで君から頼み込んで、そのママを口説き落とせ、お金は幾らでも使え!持田君を助けるのだ」
「新地のクラブホワイティアのママで、三田麻紀で本名は松山麻紀です」
安西課長は自分達が有馬温泉で、女性を抱いた時に準備した女だと直ぐに思い出していた。
顔は見ていないが、持田支店長の話では美人だと聞いていた。
前からこのママにはご執心だったが、強姦をしてものにしたとは馬鹿な男だと心では、笑っていた安西課長。
ハピットは安西課長を残して、山下部長は夜遅い新幹線で東京に帰って行った。
安西課長はこの機会に新店の状況を見学して、氷室弁護士が来週来阪するのを待つ事にした。
持田支店長が強姦してまで手に入れたかった女性を、見たい気持ちも安西には有った。
数年前関西進出の先兵として、大阪地区の開拓に京極達契約社員と次々と無謀な出店をした昔が懐かしい気持ちも有る。
その実績が認められて出世をした安西課長、泣かした地主も多かったと思い出す。
持田、京極、安西は当時、ラックに恐れられていた精鋭部隊、ハピットのVロード戦士とか、ゲリラ部隊の呼び名が付けられていた。
五十嵐専務に連れられて、大阪の町に繰り出す二人。
「あの店が、クラブホワイティアです」五十嵐が事前に調べていたのか指を指す。
「大きな店ですね!ママ三田麻紀さんの持ち物ですか?」
「その様ですが、裏では別にオーナーが居るとか?オーナーの女だとか噂が有る様ですね!私も本人は見ていませんので、なんとも言えませんが?持田君がそこまでするのだから、相当な美人でしょうね」
「まあ、来週氷室さんが来たら偵察に行きましょう」
「氷室って弁護士さんは女性とのトラブルに強いのですか?」
「はい、女性の目から見た意見の鋭い方ですね、まだ四十手前だと思うのですが、女性なのに男性の味方をする変わった方です」
「えっ、女性の方だったのですか?私は男性だと思っていました」
「まあ、男の様な女でしょうね」安西課長と五十嵐専務は夜の新地の雑踏の中に消えた。
兵庫県警は完全に黙秘に成った持田に手を焼いて、証言と供述の裏を確定する為に、持田の会社、十一月六日から七日のラブホテル赤い星に一緒に行った宇都木真理、九月二十八日に強姦の現場に成った有馬温泉の桧旅館、そしてダイヤ建託の岸の証言の裏付けを改めて調査を始めた。
だが翌日、持田支店長には不利な事件が再び発生した。
逃走中の山木弓子が自殺、車の中で練炭を。。。。。
夢前川の上流での自殺、兵庫県警は現場に急行して現場の状況を調べたが、先日の警察への犯行告白、逃亡に疲れた自殺と断定された。
死体が発見される前に、荘次郎には「処理が完了しました」と一報が入っていた。
昼過ぎに成って、服部産婦人科病院と麻紀には警察から自殺の連絡が届いた。
麻紀は、これで持田は益々逃げられなく成ると微笑んでいた。
初対面
36-083
土曜日、石谷のタクシーで阿部彰次の工事現場に行くと、マンションは内装工事に入っているので外観がもう部分的に見える状態に成っている。
相変わらず寒いのに、彰次は火に廃材を入れて暖を取りながら麻紀を迎えた。
「久しぶりに別嬪さんの見学だな!少し色っぽく成った様な気がするが、恋でもしているのか?」そう言って彰次が麻紀をからかう。
「隣のハピットも進んでいますね!何か変わった事有りました?」
「何も無いけれど、毎日ここの店を任されている夫婦が見に来るよ!もう来る頃だ!」といつもの方向を見る彰次が「ほら、今日は夫婦で来た」そう言って指を指す。
向こうから軽く会釈をして、こちらに近づく近藤夫婦。
彰次は麻紀の紹介を、高槻の方でコンビニ経営を考えられている松山さんですと適当に紹介した。
麻紀は、その言葉に乗ってまだ何処のコンビニにするか決めていないので、教えて欲しいと敢えて切り出した。
近藤夫婦は自分達が先輩だと自慢の様に話し始めると、彰次は自宅に戻って食事をして来ると言って帰った。
来年の四月に開店すると、この地区では地域一番店に成れるから頑張りたいと近藤夫婦は張り切った。
麻紀はこの店の家賃はどの様に成っていると尋ねると、月四十五万だと答える近藤は妥当な価格でしょう?と嬉しそうに話した。
麻紀は自分が彰次から聞いた価格との差は本部が負担するのだろうか?と思ったが、祖父の時と同じなのでは?フランチャイズのオーナーには適正な価格を伝え、家主には法外な金額を提示する?それが事実なら開店と同時に値下げ交渉が始まる。
全く祖父と同じ状況が始まると、この店の開店後が恐い状況が待っていると思い始めた。
話しが終ると麻紀は、近くに空き地で貸し付けそうな土地を見て回る。
石谷が「あそこの桜モータースの土地はここと似た広さですが、条件は良いですね」と指を指した。
確かに幹線道路に面して、二方向が道路で、コンビニの立地には良いと思うが、小さいので今の場所から変わる価値が無い様に思えた。
帰りの車内で、岸に電話をするが繋がらない状況に成っていた。
岸は会社では疎外者扱い、妻と子供には逃げられて、麻紀とも連絡が無くなり、肝心の阿部にも迷惑がられ、四面楚歌状態で昼間から漫画喫茶で寝ている時間が多く成っていた。
川瀬支店長も、そんな岸には腫れ物に触る様に相手にしないで、四月のマンション完成を待っている状況に成っている。
今日も岸は漫画喫茶で寝ていたので、麻紀の電話には出なかった。
岸は夕方に成って慌てて電話をしたが、今度は麻紀が月曜日から店に出る為に、鬘を二種類程準備する為に、鬘専門の美容院を訪れていた。
「病気の治療で大変でしたね!この鬘なら殆ど地毛と同じ様に扱えて、簡単には外れません」と最新技術の製品を勧められた。
「来月に成ればこちらの商品に出来ますよ!」と別の商品も勧められる。
もう少し地毛が伸びると、一本一本編み込みが出来るので、もう地毛と変わりませんと言われて、取り敢えずボブの鬘を購入してセットを頼んだ。
以前と殆ど変わらず、麻紀の髪質に合わせているので違和感が全く無かった。
着々とカムバックの準備を進める麻紀は、来週からの復帰を復讐の第二ラウンドの開始だと決意を新たにしていた。
月曜日、麻紀は開店時間の一時間以上前に、喫茶小鳩を訪れてマスターに自分の使っていた山木弓子の事を詫びた。
マスターは逆に病気で休んでいた麻紀の事を心配して、バイトの河西美鈴も小遣いに目が眩んで付いて行ったのですから、本人にも非が有ると思いますと言った。
本人から店を辞めると急に言って来た時に、良いアルバイトが見つかったと電話で話したので、その様に思ったと教えてくれた。
持田の話しをすると、真理さんとここには時々来ていましたから、美鈴は持田さんの事を知っていたと思うと話した。
安住刑事からの連絡では、持田は一旦麻紀の強姦誘拐は認めたが、河西美鈴と藤井会計士の殺害には関与していないと言い、その後は強姦誘拐も弁護士に委ねると言って黙秘に変わったと連絡が有った。
安住は持田の事を麻紀に包み隠さず教えてくれるので、状況は良く把握出来ている。
その弁護士が大阪にやって来たのは夕方で、安西課長と五十嵐専務が出迎えて氷室は会うと同時に「女に会いに行きましょう!」と言った。
ボーイッシュなスタイルでスラックスに皮のジャンバーで、女らしさは何処にも感じられない。
胸は小さく髪は短髪で、本当にもう少し髪を短くすれば男かも知れない。
「早速ですか?」
「店に入っているか判りませんよ?病気で休んでいたらしいので」
「食事が終れば、乗り込みましょう」安西は氷室の性格を知っているので、逆らわずに行く事を即決した。
行動的な氷室淳子は、明るい場所で見ると結構美人で、女らしさが少ないだけで、化粧もしているし、服装も女性の物だと思う五十嵐。
身長は百六十八センチだと云うので、ヒールを履くと殆どの男性より背が高い。
歌劇団の男役って感じだと五十嵐は食事の最中も絶えずそう思って見ていた。
九時過ぎに「そろそろ行きましょうか?持田支店長が強姦した女性を早く見たいです」
「我々の素性は明かしますか?」
「私は別に構いませんよ!」氷室淳子は堂々と言う。
確かに直ぐに交渉に入って告訴を取り下げる交渉をしなければ成らないので、隠しても仕方が無い。
「五十嵐さんは頼まれる張本人ですから、隠すのは変でしょう?」
「私は直接関係有りませんが,今日はプライベートで飲みに来た!で入りますよ」
安西課長も堂々としている。
三人は揃ってクラブホワイティアに入ると、黒服が直ぐに「どちら様の紹介でしょうか?」と低姿勢で応対した。
「共和住宅の持田さんの紹介ですが?」名刺を差し出す氷室弁護士。
レズ,サド?
36-084
小杉の処に黒服が名刺を持って尋ねに行った。
麻紀は既に接客中で、小杉は直ぐに持田の弁護士が来たと悟と麻紀を呼んでくる様に指示をした。
麻紀は直ぐに戻って来ると「早いわね!」と小杉に話した。
事件を知っているのは小杉だけなので、他の従業員には全く判る筈も無いが、黒服の一人秋田仁だけは事情を知っていた。
この秋田は卍会が潜り込ませた男だったからだ。
麻紀の様子を探り、誘拐をスムーズに運ぶ為に色々な情報を北見会長に送るのが仕事で、自ら何かをする事は無い。
行動を開始するのは当初の約束通り、三月に成ってからに成っている。
データに基づいた各種の道具も出来上がりは、三月に成っているので急ぐ事は無い。
色々な備品、貞操帯、SEXマシン、疑似ペニス、特殊なブラジャーも含めて全て麻紀の身体に合わせたオーダーメイドの品物を製作していた。
三人をテーブルに案内をして、しばらくして麻紀が挨拶に向かった。
「初めまして、三田麻紀と申します」と名刺を差し出す。
「貴女が麻紀さんですか?」急に改まった様に姿勢を直して名刺を差し出す氷室淳子に、安西は先程迄とは何か異なる雰囲気を読み取った。
「私は持田君の上司で専務の五十嵐です」
「私は、ハピットの安西です」と名刺を差し出すと、麻紀が安西の顔を数秒見つめた。
「今夜は仕事抜きで飲みに参りましたので、次回は仕事でお会いしたと思います」氷室が麻紀に冷静に成って話しをした。
多分この店では誰も事件の事は知らないと思っているので、何もその様な話しはその後お互い言わない。
麻紀にはこの弁護士より、安西課長の存在が大いに気に掛る。
祖父を陥れた三人の中の一人が目の前に現れて、興奮を隠しきれない麻紀。
以前に持田支店長に頼まれて、有馬温泉に女性を派遣したが、実際に顔を見るのは初めての麻紀。
次の標的はこの男?京極は近くに居ないので、時を待たなければ成らない。
「私、安西課長さんの会社の京極さんって存じていますわ」
「えっ、京極がこの店に来たのですか?」驚く安西課長。
「違いますわ、少し前明石、神戸方面を担当されていたでしょう?」
「はい、その時お知り合いに?」
「ええ、まあ!」
「京極さんも中々ですね!」と笑顔の成る安西課長は、持田が強姦したのが判る気がしていた。
二人の会話に「楽しそうですね!」と口を挟む氷室。
「弁護士さんは東京の方でしょう?関西にはいつまで?」
「貴女に納得して頂く迄帰れません!」そう言うが二人は全く別の事を考えていた事を、この場の誰も知らなかった。
結局三人は店の最終まで居座って、三人とも随分飲んでしまい帰りに、酔っ払った氷室が麻紀に抱きついて頬にキスをして帰って行った。
この様子を見ていた秋田は翌日北見に報告をした。
翌日携帯の履歴で岸が久々に電話を掛けて来て、現在の状況を話した。
麻紀は持田支店長がもう共和住宅には居ないと伝えたが、岸はもうどうでも良いと戦意喪失状態に成っていた。
一時は共に戦おうと思った相手だったが、これ程落ち込むともう難しいと思う。
確かに自分も病気で岸を見放したが、完全に持田の術中に填められた様だ。
岸の話しの内容から考えれば、阿部さんは何処かに土地を買わされている事に成る。
そこにマンションを建てたら、大変な事に成ってしまう。
麻紀は早急に調べ無ければ、阿部さんが窮地に追い込まれると思った。
益々持田への憎悪が増大してしまう麻紀。
水曜日、店に一人で安西課長がやって来て「明日東京に帰るので、もう一度ママに会いに来た」と話したが、既に酔っ払っている事は明白だった。
安西は麻紀に耳打ちで「持田さんは好きでは無いのでしょう?だから告訴したのでしょう?」と言った。
「勿論ですわ!」恐い顔で言う。
「僕は?」
「考えて居ませんでした」
「じゃあ、考えて下さい!それからあの氷室弁護士は切れ者ですよ!お気を付けて下さい」
「はい、ご親切に!」
安西は自分のプライベートの携帯だと、番号を書いた名刺を麻紀に渡して、しばらく飲むと帰って行った。
安西課長も麻紀の魅力に負けてしまった様だ。
もう一人、氷室淳子も麻紀の魅力に負けた女だったが、安西は敢えて謎の様に言ったのだが、麻紀には伝わっていなかった。
氷室淳子はレズでサド気味の弁護士で、麻紀の魅力に填まってしまった女だった。
木曜日氷室は麻紀に持田の件でお会いしたいと連絡してきた。
殆ど女性同士なので、安心してしまうのだ。
麻紀は土曜日の昼間なら、時間が作れると氷室に言うと、新大阪のホテルに自分は宿泊しているので、そこのロビーで会って食事でもしましょうと誘った。
麻紀は予定を手帳に書いて、ロッカーにしまって居るのを、既に秋田は知っていた。
土曜日新大阪のホテルに向かった麻紀、本当は弁護士が来るのだが、麻紀は敢えて自分から出向いて行った。
「ご足労申し訳有りません、お食事でもご一緒しながらお願いしたいと思いまして」
「態々お越し頂いても私は告訴を取り下げる考えは御座いませんので、お言葉に甘えて参りました」
二人は和風レストランの個室に入って、懐石料理を食べる事に成った。
冒頭麻紀は「氷室さん!持田さんが強姦、誘拐だけで逮捕されているとお考えですか?」と言い放った。
女、男?
36-085
「まあそう焦らずに、ゆっくり食事を楽しみましょう」
「女性の弁護士さんだったら判るでしょう?男のSEXの道具にされた気持ちは?」
「確かに!男は嫌いですから、ママさんの様な美人の方が狙われるのは許せません」
意味不明の事を言いながら、お気に入りのワインだと白のワインを勧める氷室。
「私、ワインが一番好きなのです!ママさんワインはお好きですか?」
「お酒は全て飲めますが、強くは有りませんので。。。。」そう言いながらワイングラスに注がれたワインに口を付ける。
「私は赤が好きなのです」そう言って自分は赤ワインを注いで飲み始める。
しばらくして「告訴を取り下げて貰えませんか?」の声が遠くに聞こえる様に成ってきた麻紀。
「氷室さん、ワインが廻って来た様です」麻紀が注がれるワインを断ったが、睡魔が直ぐに襲って来る。
料理は半分程度食べた時に、麻紀は完全に酔っ払った状況に成ってしまった。
「彼女少し酒が弱い様ですね」料理を運ぶ男性に微笑みながら言う氷室。
「少し部屋で休ませてから、帰る様に言います」
「そうですか?お手伝いさせますので少々お待ち下さい」レストランの係りが、寝てしまった麻紀を運ぶ為に車椅子を用意して運んで来た。
予め氷室は酔っ払うとどの様な対応に成るのかを確かめていたので、筋書き通りだと思った。
食事を適当に終ると、車椅子を押しながら自分の部屋に向かって歩いて行く氷室。
「こんなに、自分好みの女だとは思わなかったのよ!」独り言を言いながらエレベーターに乗ると、慌ててボーイの様な男が一緒に乗り込み「悪酔いされましたね?後で冷たい水をお持ち致します」と氷室に声をかけた。
「済みません、ご親切に」とは言ったが,部屋の番号を伝えていないのに、部屋に入ると数分後に水が届けられた。
氷室は深く考えずにチップを渡して、ボーイを送り出すと車椅子から麻紀を降ろして、ベッドに放り投げる様に寝かせた。
ダブルベッドに眠る麻紀に「理想の相手なのよ!楽しみましょう」と言いながら、俯きに身体を回転させると背中のジッパーを外し始める氷室。
「私がレズの楽しさを教えてあげるわ」
ワンピースの服を脱がせて、下着姿にした時に「待っていてね、シャワーを浴びてくるわ、臭いがするでしょう?」独り言を言いながら、氷室は風呂場に入って行った。
淳子は鼻歌を歌いながら、久々に手に入れた理想の女性に満足していた。
しばらくしてバスタオルを巻付けシャワールームから出て来た淳子は、キャミソール姿で寝ている麻紀の背中を見て「綺麗な肌ね、男が放っておかないよね」と呟き、汗を拭き取りながら、暖房の目盛りを見て「何故こんなに温度を上げるのよ!」と目盛りを下げて、置かれた氷の入った水をコップに入れて飲み干す。
「ああー美味しい」そう言うと「貴女も暑いでしょう?脱ぎなさいよ」
背中のブラジャーのホックを外すと、身体を回転させて仰向けにした。
「本当に理想的な女ね、一目惚れしたわ!」麻紀の唇に自分の唇を合わせる。
しばらくすると「私も暑さでふらふらするわ」そう呟くと麻紀の横にそのまま俯せに眠ってしまった。
数時間後目が覚めた麻紀は起き上がると、ブラジャーが外れて居るのに気づくが、隣にバスタオルを巻付けて寝ている氷室に気づいて、酔っ払って自分が倒れたので部屋に連れて来て介抱してくれたのだと解釈した。
そんなに飲んだ記憶が無かったが、元々ワインは弱いと思っていたが、これ程だったとは?自分に呆れたが起き上がって衣服を整える麻紀。
起こして御礼を言おうと思ったが、氷室を見ると熟睡状態だったので、メモを残して帰る事にする。
秋田からの連絡で、見張っていた卍が先回りして氷室の麻紀誘惑を阻止していた。
部屋には盗聴マイクを仕掛け、最終的には隣の部屋から飛込む予定に成っていた。
麻紀が部屋を出るのを確かめると、男達は部屋を引き払って消えてしまった。
氷室は麻紀が帰って二時間後に長い睡眠から目覚めて、自分が薬で眠らせた筈が自分も眠ってしまった事に怒りを感じたが、何処で何を飲んだのか?記憶を辿って「水!」と叫んだが、テーブルには何も残っていなかった。
仕掛けた自分が仕掛けられたと思うが、麻紀以外の誰かが同じ様に狙っているのだろうか?それなら眠った麻紀を連れて行くだろうが、そうではなく麻紀は自分の判断で部屋を出て行った様だ。
氷室には不気味な出来事として残ったが、夕方に成ると麻紀に連絡して様子を伺った。
麻紀は自分が酔っ払って迷惑を掛けたと、平謝りに成ったので明日持田の事でもう一度話し合いたいと申し入れた。
麻紀がカムバックの後客足は一気に伸びて、小杉は流石にママの力は凄いと褒め称えた。
翌日の昼間今度は麻紀の近くの喫茶店に、氷室淳子はいつものボーイッシュなスタイルで現れいきなり「持田さんへの告訴を示談にして貰えない?」と切り出す。
麻紀は平然と「私の告訴は取り下げても、持田さんには殺人罪と殺人幇助の罪が有りますから、意味ないですよ!」と言った。
氷室は驚いた表情で「殺人?殺人幇助?」と尋ねた。
「氷室さんはご存じ無いのですか?藤井会計士放火殺人と神戸港水死体の事件?」
「新聞で読みましたけれど、私の専門は強姦とかで、殺人の弁護は殆どしません!今の話しは本当ですか?」
「本当ですよ、兵庫県警でお聞きに成りませんでしたか?」
「持田さんが逮捕されているのは、貴女に対する誘拐強姦ですから、それ以外は特に聴いていませんよ」
「藤井会計士と持田が共同で、私を拉致強姦した事は?」
「それは勿論知っていますが、藤井会計士を放火殺人したのが、持田さんだとは思えませんがね!明日もう一度その事も本人に聴いてきます」
「詳しい話しを県警の安住刑事に聴けば教えて頂けますよ」
「もし、殺人、放火なら別の弁護士を至急準備しなければ、対応は出来ませんね」
「先生は女性ですのに、男性の強姦とか性犯罪専門に?」
「そうですよ!私は女性が男性を誘惑して、犯罪を助長していると思っていますからね、松山さんもその一人でしょう?先日偶然身体を拝見しましたが、女の私でも惚れ惚れする美しさだった」と意味不明の褒め方をした。
片思い
36-086
「私の仕事は松山さんに告訴を取り下げて貰えれば、それで良いのでお願い出来ないでしょうか?」
「大変残念ですが、そのお話にはお答え出来ませんね、殺人罪の行方次第で私の取り下げは無意味でしょう?だから結論が出るまで応じられません!もし殺人罪が無罪なら、私も取り下げる事をお約束しましょう」と麻紀は氷室の弱点を突いた。
卍会の尾行は麻紀に絶えず代る代る付いているので、当然この氷室の行動も監視されている。
氷室は夕方兵庫県警を訪ねて事件の経緯を尋ねるが、殺人事件の事はお話出来ないと拒否された。
その後持田本人に面会して確かめると、天地神明に誓って二つの事件は全く関係が無いと氷室に伝えて、ホワイティアのホステス宇都木真理が、事実に無い事を話していると話した。
今、警察は物的証拠と事実の確認をしているのだが、確証を得ていないので逮捕に踏み切れないのだと説明した持田。
県警でも山木弓子の死によって、持田と山木の関係に疑問点が多少有り、弓子の部屋の所持品の中にも持田との関連を示す物、指紋等が全く検出されていない事が大きな疑問に成っていた。
少なくとも河西美鈴を自宅に監禁していたのなら、一度は持田が自宅を訪れていても不思議は無い。
神戸港に眠らせて殺したとされる日の持田のアリバイは完璧で、一緒に神戸港に運んだ事実は絶対に無いのだ。
放火殺人も本人は否定して、宇都木真理とラブホテル赤い星に行ったと言う。
勿論宇都木真理は否定したが、逆に宇都木真理のアリバイが無いのだった。
その為、物証探しに必死の捜査本部に成っている。
一月の下旬に成って、再び氷室淳子は関西にやって来て、今度は弁護士仲間の岩井を連れて殺人事件と水死体の事件の状況把握に来た。
岩井紀代美は氷室淳子の良き理解者で、レズでサドの性癖が有る事も知っていて付き合っている五十代の弁護士だった。
共和住宅から多額の着手金を頂いているが、内密にはダイヤ建託からもハピットからも着手金と成功報酬が提示されている。
県警に来たとの情報は安住刑事が麻紀に伝えていた。
麻紀はいよいよ対決の時が迫っていると感じ、初めて安達周造に伝えた。
周造は「麻紀さんの執念の実時が遂に来ましたね!寅夫も喜んでいるでしょう?早速弁護士の素性を調べて対抗策を考えましょう!」と協力を惜しまない姿勢を示した。
数年前「店をやらせて下さい!祖父の仇を討ちたいのです!あの地震の時祖父が周一さんを関西に呼ばなければ、巻き込まれる事は無かった」
祖父は周一にハピットと共和住宅のやり方に疑問を持って、相談しようと周一を呼んだのだった。
そして地震は周一の命を奪い、祖父の土地も奪う結果に成ってしまった。
安達は翌日には、二人の弁護士を調べて麻紀に連絡して来た。
二人共ハピット関係の仕事をしているので、ハピットが準備した人間の様だと安達は伝えて、対抗の弁護士を準備したので近日中に麻紀の処に行くだろうと言った。
吉村と云う年寄りだが、役には立つから色々使って欲しいと伝えた。
安達も慢性の糖尿病と年齢的な衰えで、関西まで来る事は無いが色々麻紀を娘の様に面倒を見てくれる。
持田は宇都木真理とラブホ赤い星に泊まったと主張し、真理はその様な場所には行ってないし持田との関係そのものを否定していた。
弁護士二人はこの宇都木真理が何か理由が有って、嘘を言っているのなら原因を探ろうとしていた。
当然真理の勤め先クラブホワイティアにも、二人の弁護士はやって来た。
勿論目的は氷室には麻紀を自分のレズの相手にする事、自分の直感では麻紀はマゾで自分には最高のパートナーだと決めている。
「今夜は客として来たのよ!弁護士の岩井先生!」
「この店のママをしております三田麻紀と申します」と名刺を出して挨拶をした麻紀。
「噂通りの美人さんですね」岩井は麻紀を一目見て、氷室の好みだ!と云うより男なら誰でも好きに成る程、美人で色気も有ると思う。
確かに年明けからの麻紀は、今までの美人に加えて色気が出ているのは店の誰もが認める事に成っていた。
勿論それは薬と、服部産婦人科病院で受けた手術と調教に起因しているが、誰も知らないので彼氏でも出来たと思っていた。
「今夜は特別忙しいので、席に着いてはおれませんので済みません」
「それじゃ、真理さんをお願いします」とリクエストをする。
麻紀は真理を呼んで貰い、席を離れると「良い子だわ!淳子の好みね!物にしなさいよ」とエールを送った。
しばらくして真理が席に着くと、二人は言葉巧みに真理が何故嘘の証言をしているのかを探る。
結局二人は真理に彼氏が居る事を掴んで、もしかしてそれが今回の偽証の原因では無いか?の疑問を持った。
だが、本当に彼氏の存在を確認した訳では無いので、引き続き真理の周辺の調査をする事にした。
逆に氷室淳子は益々麻紀に惚れてしまい、どうしても関係を持ちたいと思う様に成ってしまい困り果てる。
一方芦田は桜モータースには目処が付いたが、付随する土地を集めるのに苦労をしていた。
老夫婦稲垣三十坪、若い夫婦と子供二人小菅五十坪、小宮山の畑が三十坪、以上がターゲットで既に話しが出来そうなのが小宮山の畑。
小菅は近くに実家が在って名義はその両親の物に成っていた。
芦田はこの三軒には決して、ハピットの名前は出さないで交渉を始めた。
どこから漏れ聞こえて、阿部の耳に入るかも知れないからだが、桜井は小菅さんの実家は良く知っているから私が話せば同意すると思うと言い始めた。
どうやら、阿部の家を良くは思っていない様子で、話しを任せるか?安西課長に打診をした。
示談交渉
36-087
話しを聞いて安西課長は、桜井さんに任せてみよう!地元の事は地元が一番だ!と言って、老夫婦の資料を送ってくれと意味深な事を言った。
二月に入って安達が準備してくれた吉村弁護士が、麻紀のマンションを訪ねてやって来た。
六十歳を既に過ぎている吉村は、安達さんから話しは聞いておりますので、当分近くにビジネスホテルを借りて住むと言い出した。
麻紀は阿部のマンション建設に絡んで、祖父の時と同じ様な事が行われるのではと詳しく自分の知っている話を教えた。
すると吉村は、住み込むホテルは阿部さんの近くが良いかも知れませんねと言った。
もう妻とは死別で、一人なので何処で住んでも同じだと微笑む。
子供は既に独立して、孫も居るので自分は気楽に仕事をしていますと麻紀の心配を一掃した。
二月に成ると、阿部のハピット建設現場は、基礎工事が終って本体の建設工事に入って居る。
五階建てとは異なって基礎が小さいので、超高速で工事が進んでいる様に思える。
共和住宅は持田支店長の後任に、荒木と云う支店長が就任して阿部の自宅に挨拶に訪れた。
持田支店長とは全く異なり、温厚そうで全く覇気のない感じで、華子はこの後どうすれば良いのか悩む事に成った。
「買った土地はどう成るのかしら?持田さんが居なく成って困ったわ」
その持田の拘留期間が残り僅かに成った時、麻紀の呼びかけに、氷室弁護士が麻紀に最後の願いに五十嵐専務を連れてやって来た。
逮捕後23日間の勾留期間が過ぎるまでに、逮捕された被疑者は検察によって起訴・不起訴の判断がされるからだ。
起訴されると、その後刑事裁判によって、有罪・無罪と刑罰の判断がされますが、ご説明のように、強姦罪では懲役刑しか法定刑にありません。
更に、強姦罪での起訴率は他の犯罪と比較しても比較的高いものとなっています。
起訴されてしまうと、実刑判決を受ける可能性も非常に高くなっています。
強姦罪では、逮捕後23日以内の迅速な対応が非常に重要になってきます。
強姦罪では懲役刑しかなく、さらに法定刑でも3年以上とされているため執行猶予付きの判決を受けることはほぼありません。
なぜなら執行猶予付きの判決を受ける条件に3年以下の懲役と言うものがあるからです。
これはどういうことかを簡単に言うと、強姦罪で刑事裁判まで進んでしまうと、3年以上の懲役刑を受けて直ちに刑務所に収監されてしまうのです。
冒頭でもご説明したように、強姦罪は親告罪となっています。
つまり、被害者からの告訴を取り下げてもらえれば、その後刑事事件としての手続きを進められることはありません。
そのような場合、被害者と示談交渉をすることが一般です。
示談交渉とは、簡単に言うと示談金(賠償金)を支払い、被害者に謝罪することです。
しかし、例え家族であっても事件の当事者同士で示談を進めても交渉が成立するとは考えにくいでしょう。
そもそも強姦罪では、被害者との接触を禁止されるケースがほとんどです。
そこで、強姦罪での示談交渉を行う場合は、必ず弁護士に間に入ってもらうようにしましょう。
弁護士なら法的知識はもちろん、交渉力にも長けていますので示談交渉が成立する可能性も高まります。
麻紀は吉村と相談して、持田を刑務所に送るのは簡単だが、もっと大きな罪に問う為には野に放つのも一つの方法だと説いた。
五十嵐専務は「ここに好きな数字を書いて頂いて結構です!持田君を助けて下さい」と麻紀に跪いて頼み込む。
何故ここまで共和住宅の専務がするのか?理解に苦しむが氷室弁護士が「五百万程度が上限だと思いますが、その十倍を出しても良いと専務は申しております。ここは裁判に成って恥ずかしい証言をするより、実を取られた方が宜しいかと思いますが?」と言い説得をする。
「判りました、その倍なら示談致しましょう!如何でしょう?」麻紀は足元を見て高飛車に出た。
「えっ、一億?強姦で?」驚く氷室弁護士。
「無理なら法廷で戦いましょう、色々なお話が出て面白いかも知れませんね!ダイヤ建託の岸さんにも証言をお願いしなければ成りませんね!」
その言葉に五十嵐の顔が強ばると「良いでしょう!一億で示談にしましょう!」と言い放った。
驚きの表情に成ったのは氷室より麻紀の方だった。
五十嵐は直ぐに小切手に、一億円と記入して「この示談の書類にサインをお願いします」と差し出した。
吉村弁護士の野に放つ作戦がまさかの一億円に変身した瞬間だった。
翌日驚いた男がもう一人いた。
県警の安住刑事が驚いて麻紀にメールでは無く、電話で何故今に成って示談にするのですか?と怒っていった。
麻紀は安住刑事に、一度会って話がしたいと伝えた。
店が始まる前に食事でもご馳走しますと言うと、ご馳走に成ると賄賂に成る可能性が有りますと断る。
割り勘で食事をする事に成って、マンションの近くの小料理屋で会う事に成った。
「今日は非番ですから、これはプライベートです」と改めて言い出す安住刑事に微笑みながら「それなら、私がご馳走しても大丈夫でしょう?」と笑顔で言うと「そうかな?」と照れ笑いする安住。
「シクラメン元気で育って居ますよ!」微笑みながら言う麻紀に「まだ育てて下さっているのですか?」嬉しそうな安住刑事。
「勿論ですわ!男性からのプレゼントは久しぶりですから大切にしていますわ」
「本題に戻りますが何故今頃示談にされたのですか?」
「裁判所での証言が恥ずかしくなったの?と言えば宜しいですか?」
顔を赤くして「確かに強姦の裁判は女性には耐え難い事です」と真面目そうに話す安住。
「本気になさったの?これでも夜の商売でクラブのママをしていますのよ!男と女の事で、恥ずかしいは有りませんわ!」
「でも、松山さんは何処か普通のママとは違う気がしています」
「えっ、どの様に違うのでしょう?」微笑みながら首を傾げる麻紀。
デート
36-088
「僕が刑事でなかったら、デートを申し込んでいますよ!」
「あら、喜ぶ事かしら?でもこの鬘を外すと坊主頭の変な女ですよ!」
「その様な外見では無く、何か松山さんには引かれる物が有るのです!」
「嬉しいわ!最近男性から素面でその様な言葉を聞いた事が有りませんでしたから、新鮮です!本題に戻りますが、示談にした理由は大金を貰ったからです」
「えっ、大金を貰われた?それで示談ですか?」明らかに失望の表情の安住刑事。
「はい、大金を貰いましたので、示談に致しましたが、いけなかったでしょうか?」
「私は、松山さんは最後まで戦われる方だと思っていましたので、百万程度のお金で示談にされたのに失望致しました」
料理が運ばれて、ビールを飲みながら話し始める二人。
腹が立っているのか、安住は麻紀の注いだビールを一気に飲み干してしまった。
「まあ、一気飲みですね」微笑みながら二杯目を注ぐ麻紀。
「でも百万では有りませんよ!」
「例え一千万でも示談にするべきでは有りませんよ!」
尚更怒る安住に「もう少し多かったので、示談にしましたの」と微笑む麻紀。
「一千万よりも多い?奮発しましたね!」
「でしょう?ですから示談にしたのですよ!」
「でもそれは正儀に反します!」そう言いながらグラスを差し出す安住刑事に「一億でも?」と微笑んだ麻紀に「一億=!」と声が変わってしまった安住刑事。
「私の身体一億の値打ちが有るのですよ!一度抱いてみますか?」
「うぅー」と飲みかけのビールを喉に詰まらせる安住。
「じ、冗談は辞めて下さい」と驚き顔の安住刑事に「だから示談にしたのです!余りにも大金でしょう?何か裏が有ると思いましてね」
「確かに、強姦の罪を消すのに一億は多すぎます!」
「そうでしょうか?安住さんに判る筈無いですよね!ご覧に成っていませんから」そう言って微笑むと顔を真っ赤にしている安住刑事。
麻紀の尾行をしている卍の男も流石に刑事とのデートの場には近づけない。
「私は持田がもっと大きな秘密を握っているので、法廷に出したくないのだと思ったのですが?」
「それなら、持田を泳がせるのが目的ですか?」
「はい、私の弁護士の発案です」
「成る程、私達警察もそのチャンスを逃さない事ですね」
元々麻紀に好意を持っている安住刑事と、シクラメンを貰った事で親しみを感じている麻紀はお酒の力も手伝って意気投合していた。
時計を見る麻紀は店に出る時間が近づいていた。
「このまま、お別れですか?寂しい気分です」
「あら、口説いていらっしゃるの?このまま同伴で店に来られますか?」
「いゃー新地の高級クラブに行く程の給料は貰っていませんよ!」
「一億の女ですから、無理ですわ」そう言って微笑む。
結局タクシーに乗ると、安住刑事は「店まで送ります」と言って小料理屋の支払いを自分で払って、タクシーに載せた。
「ご馳走様でした」御礼を言った麻紀は自分が先にタクシーに乗り込んで、安住刑事が後から乗り込んだ。
タクシーの中で「安住さんって、刑事さんらしくないですね!刑事さんって恐いイメージと、弱い者の味方では無いと思っていましたから」
「松山さんは昔から水商売なのですか?」
「違いますよ!まだ一年少々ですわ、それまでは全く異なる事!芸能人の卵です」
「綺麗な筈だ!芸能人!女優さんですよね!好きな方とか勿論いらっしゃったのでしょう?」
「はい!でも彼はもう亡くなりました」そう言うと沈む麻紀。
「すみません、嫌な事思い出させてしまいました」
慌てて慰める様に言ったが、麻紀の瞳に光る物を見てしまいハンカチをポケットから取りだして手渡す安住。
「彼が亡くなったのも、水商売に入る切っ掛けです」と意外な事を言ったが、安住にはそれ以上の事を聞く事が出来なかった。
しばらくして、車は店の前に到着すると「一杯だけ飲んで行かれませんか?」
「こんな高級なお店は無理です!ご馳走に成ると賄賂に成ります!」
「それじゃあ、付けで宜しいわ!それも出世払いか夏の賞与で払って下されば!」
結局安住が降りなければ、麻紀が降りられない状況で、無理矢理店に連れ込まれる安住。
小杉が安住を見て麻紀に「また取り調べですか?」と尋ねると麻紀は微笑んで「私が取り調べるのよ!」と言ったので、ボックスの奥へ案内した。
驚いたのは秋田で、刑事だと聞いてなるべく近づかない様にしていた。
顔を覚えられると、今後の行動に影響がある為危険を感じる。
少し酔った麻紀はしばらくして、安住の席にやって来た。
何故か宇都木真理が席に付いているので「また取り調べなの?」笑いながら言う。
「ママが来られたので私は退散します」会釈をして立ち去る真理。
「何を取り調べしていたの?」
「あの真理って子の証言の裏付けが中々決め手に成らないので、持田の放火殺人が確定していないのですよ」
「でも彼女、持田さんとは付き合っていないのでしょう?」
「それが聞き込みに行った刑事が別のホテルでの目撃証言を得たので、信憑性が無くなって逮捕に踏み切れないのです。松山さんの示談で持田は釈放に成ります」
「持田の釈放後の動きが注目ですね」
「勿論県警では彼を徹底的に尾行する予定です」と話した時、黒服が麻紀を呼びに来て話しが中断すると麻紀が「誠次さん、待っていてね!帰ったら駄目よ」と言った。
驚いたのは安住の方で、初めて名前で呼ばれて変な気分に成っていた。
「貴方ママさんの彼氏?初めて見る人ね!でもママとはお似合いだわ!」座った紗代子と謂う女性が言った。
「ママって彼氏居るの?」
「あれだけの美人でしょう?でも店の彼氏は沢山居るけれど、プラの彼氏は居ないわ!タクシーの運転手さん位かな?でも八十歳前だよ!」そう言って声を出して笑った。
告白
36-089
「噂では若い時に彼氏を亡くしたって聞いたわ、確か阪神淡路の大震災って!」
「あの震災ですか、私も知り合いが一人亡くなりました。一階に寝ていて一瞬に圧死だった様です!長田に居ましたからね」
「あの震災で、直接亡くなった人は多いけれど、間接的に亡くなった人は数えられないと思うわ!」
その時麻紀が戻って来て「何が間節なの?足が痛いの?」と尋ねた。
「違いますよ!阪神淡路の震災で間接的に亡く成った人は数えられないって、話していたの!安住さんの知り合いも長田で即死だったらしいわ!」の言葉と同時に麻紀の表情が見る間に変化して、急に立ち上がると目頭を押さえてトイレの方向に走って行った。
「あれ、何か悪い事言ったの?」唖然としてしまう紗代子。
安住はタクシーの中での涙ぐむシーンと、先程の麻紀の姿で彼氏は震災で亡くなったのだと悟った。
しばらくして麻紀は化粧を直して戻って来て「ごめんなさい!震災で知り合いを亡くしたので、思い出してしまって」と言うと紗代子を別の席に移動させた。
「今夜は暇の様だわ、ゆっくりして下さい」
「電車の有る間なら?」そう言って時計を見ると、そのまま店内に目を移して、黒服の秋田と目が合う安住。
安住が「あそこに立っている黒服の人、昔からの人ですか?」
「いいえ、最近入った秋田さんですが、何か?」
「刑事って職業柄ですね、直ぐに勘で判るのですよね!この場所に合ってない人がね」
「えっ、秋田君が?」
「いいえ、気にしないで下さい!刑事の勘も時には狂います。特にお酒も飲んでいますからね」そう言って微笑むと、再び秋田を見る安住。
麻紀は安住のその動きを全く見ていなかった。
小杉が呼び出しの信号を送っていたので、そちらに気を取られていたのだ。
「お客様が帰られるので、お見送りしてきます」と席を立つ麻紀、ブルーのドレスが光線に輝いて神秘的にさえ見える美しさだ。
今まで気が付かなかったが、いつの間にあの様なドレス姿に?
食事の時は上着を着ていたので安住は気が付かなかっただけで、店内では最初からドレスだったのだ。
その後客が増えて、麻紀が安住の席でゆっくりする事は無く、時間に成ったので帰ると告げる。
麻紀が慌てて戻って来て「どうしてもお話したい事が有ったのですが、もうお時間ですよね」
「まだ何か?有るのですか?」
「先程の涙の理由をお話した方が良いと思いましたので。。。。」
そう言われて、さようならと言えない安住刑事は「聞かずに帰れません!」と言い切ったのは酔いの効果かも?
麻紀は石谷を呼んで!十二時前に自分は店を出ると小杉に告げた。
麻紀を監視している秋田には、知りたいが近づけないジレンマに襲われていた。
石谷が到着すると、麻紀は他の客に隠れて石谷のタクシーに乗り込み、安住刑事が来るのを待った。
岸が腑抜けの様に成っているので、誰か自分を助けてくれる人を必要としていた麻紀には、相手は刑事だが持田達を窮地に陥れる為なら、藁にも縋りたい気分だった。
タクシーに乗ると同時に「あの?今日の勘定って八千円だったのですが?それで良いのですか?」不思議そうに訪ねた。
「サービス料を貰っていませんから、酒代のみならそれ位でしょう?」と微笑みながら乗る様に急がせる。
「安住刑事は何処ですか?お住まい?」
「は、はい!舞子です」
「石谷さん舞子までお願い!」
「えーー、舞子まで送って頂けるのですか?」驚きの安住刑事だが、車は深夜の北新地の町を走り出した。
「お店まだ終ってないでしょう?」
「大丈夫ですよ!今夜はアフターも有りませんから」
「アフターって?」
「店が終って何処かにお客と行く事ですよ!」
「えっ、ホテルに行くのですか?」
「何を言っているのですか?刑事が恐い事を!夜食を食べに行く、スナックに行く事ですが、ホテルに行く人も居るでしょうね」
「松山さんも?」
「はい、時々誘われて行きますよ」
「ホテルにですか?」
「まさか、安住さんが誘ってくれるのなら行っても良いかも?いいえまだ駄目です!治療の跡が万全では有りませんから駄目です」
「冗談でしょう?」と笑う安住と、麻紀はまだ陰毛は生え揃ってないので、変に誤解されると思っていた。
車が高速に入って「先程の話しですが、私の婚約者が阪神淡路大震災で亡くなったのです」
そう切り出した。
「僕もそうじゃあ無いかと思っていました」
「彼は東京の人間ですが、祖父が相談の為に東京から呼んだのです!私は当時東京住まいでしたので、地震は知らなかったのです」
「東京から来られて、災難に。。。。。」
麻紀は婚約者の周一が何故祖父に呼ばれたのかを説明した。
そして今の店のオーナーは周一の父親の安達周造で、自分は持田の不正を暴く為に水商売の道に入ったと話した。
その仇に強姦された屈辱は殺しても許せないと、涙を浮かべて話す麻紀に安住刑事は優しく肩を抱いて話しを聞いていた。
殺人とかでは無いが、老人を騙して財産を巻き上げる行為は許せないと安住は怒る。
安住は麻紀の心の中まで見た気分に成っていた。
こんな気持ちなのに、自分を強姦した持田を釈放した気持ちはどんなに苦しい事だろう?
いつの間にか安住の頬にも一筋の涙が流れ落ちていた。
石谷はミラーで見ながら、これで良いのかも知れないと思う鏡の中の二人は、唇を合わせていた。
複雑な罠
36-090
「石谷さん、あれで良かったのよね」
「お嬢様が誰かに頼られるとは思いましたが、刑事さんには驚きました!でも一番確かかも知れませんし、彼は良い人です」
「ありがとう、石谷さんにその様に言われたら心強いわ」
舞子で安住刑事を降ろして、大阪に戻る石谷と麻紀は今後の展開がどの様に成るのか?自分達にも判らなかった。
翌週持田が解放されたと安住刑事がメールで連絡してきた。
既に持田は共和住宅を退職した形に成り、会社からは退職金が支払われる事が決定していた。
しばらくして麻紀の店に嫌がらせに行くかも知れないから、もしもその様な事が有れば即刻連絡を頂ければ逮捕すると、今度は電話で連絡をしてきた安住刑事。
先日の事が二人の心に残っているので、気に成るが恥ずかしい気持ちも有る。
その持田は恥を忍んで服部産婦人科病院に電話をして、麻紀の状況を尋ねた。
院長に取り次がれた電話で、荘次郎は私の病院では何もしていない、卍会に聞いて欲しいと関与を否定して持田と関わるのを避けた。
藤井が卍会の話しを持田にしているので、荘次郎はその様に逃げるしか方法が無かった。
持田の思惑と弁護士氷室の考えは別の意味で合っている。
氷室は麻紀とレズの関係、それも女同士のサド、マゾプレーに麻紀をどうしても巻き込みたい。
持田はもう一度麻紀を強姦したい、それも復讐として犯したいが、近づくと警察の目が有るので店にも行く事が出来ない。
持田は絶えず代る代る刑事が尾行して居るのを知らない。
既に服部産婦人科病院に連絡した事も、兵庫県警に掌握されていた。
取り敢えずは持田を警察から救出した氷室弁護士には、安西課長から別の指示が出ている。
五十嵐専務に連絡をした持田に、あの女は高く付いたぞ!一億も強請り取られたと言われた事も持田は麻紀を一層憎む要因に成っていた。
翌日氷室弁護士は麻紀に前回書いて頂いた示談書の正式な書類が出来ましたので、ホテルに来て頂きたいと電話を掛けてきた。
印鑑と領収書を持参下さい。
宛名は共和住宅神戸支店でお願いしますと言った。
先日は領収書を頂いていませんので、法的には収入印紙を準備頂いてお願いしますと話した。
咄嗟に言われても一億の領収書に幾ら貼れば良いか判らない麻紀に、二万円の印紙が必要ですと伝えた。
小切手は既に現金かされて、麻紀の口座に入っている。
祖父が失った財産を少しでも取り戻した気分だが、まだまだ許す事は出来ない麻紀。
翌日夕方印紙を準備して、氷室弁護士が宿泊しているホテルに向かう麻紀。
その数時間前、既に持田が氷室が宿泊のホテルに来ていた。
兵庫県警の内海刑事と若手の刑事が今日の持田尾行の担当に成っている。
「持田は一人で702号に入りました」
「連れは?」
「一人ですが、誰か来るかも知れませんね」フロント横のロビーで待つ二人。
氷室弁護士が宿泊している事は、全く知らない二人。
「あっ、あれは?」麻紀の姿に驚く内海刑事。
「美人ですが?先輩知り合いですか?」
サングラスにコートを着てマフラーを巻いているが、内海には直ぐに麻紀だと判る。
「何階に?」
「七階です!」
「えっ、まさか持田の部屋?」慌てて次のエレベーターに乗る二人。
氷室弁護士の部屋は703号で、麻紀が入ると淳子が「ご足労ありがとうございます」と既にコーヒーを準備して待っていた。
麻紀は先日このホテルで介抱して頂いた事の礼を言って、領収書を差し出した。
「示談書の作成をしたので、内容に依存が無ければここに署名捺印お願いね」
コーヒーを早速飲み始める氷室弁護士に、麻紀も飲み始めると薄笑いを見せる淳子。
麻紀のコーヒーには強い睡眠薬が混入されている。
麻紀が眠れば、ここで縛り上げて楽しむ予定にの氷室淳子。
三ページに及ぶ示談書を読みながら、コーヒーを飲む麻紀に「どうそんな感じでしょう?」と言う。
しばらくすると大きな欠伸が出る麻紀。
「そろそろ、印鑑を押して貰えるかな?」
「は、はーい」と言いながら、項垂れてしまう麻紀。
「流石によく効く薬だわ、でも私の用事はこれからなのよ」と独り言を言って、麻紀をベッドに横たえた時、チャイムが鳴る。
「ボーイさん?呼んでないわ」と扉の近くに行く氷室。
覗き穴から見ると男が二人立っているのが見えて、一人がホテルマンに見えた。
「松山さん!松山麻紀さん!」遠くで自分を呼ぶ声に聞き覚えが有る。
ゆっくりと目を開けると間近に安住刑事の顔が見えて「あっ、誠次さん」と口走る。
「ここは?」
「病院です!何故?持田の処に行ったのですか?」いきなり尋ねられて、周りを見廻す麻紀。
警察の人だろうか?医者も数人居る様だが、何が何だか判らない麻紀。
「ここ病院ですか?氷室弁護士は?」
「氷室弁護士って誰ですか?」
「持田の女弁護士ですが、大阪のホテル703号室に。。。」
「貴女は702号に眠っていたのですよ!氷室って弁護士は居ませんでしたよ」
「702号室って何方が?」
「持田が泊まって居たのですが、亡くなりました」
「えっ、持田が死んだ!703号には何方が?」
「安村さんって男性ですよ」
「貴女は持田殺しの重要参考人に成っていますよ!でも僕は麻紀さんでは無いと信じています」
「ありがとう!持田はどの様にして亡くなったのですか?」
「睡眠薬を飲んでいました!貴女も同じでしょう?でも死因は絞殺です」
時間を見ると翌日の朝の十時に成っている。
夕方の五時にホテルに行ったのは記憶に有る。
「内海刑事が、麻紀さんを見ていたので、五時にホテルに入られています。持田は四時にホテルにチェックインしています」
「氷室弁護士は?」
「来られていませんよ!数人の男が七階に行った形跡は有るのです。内海刑事がその男達を追い掛けた時に何かが起ったと思うのですが、まだよく判りません」
麻紀は断片的に昨夜の出来事を思い出そうとしていた。
捕らえられた女弁護士
36-091
麻紀は安住に昨日の話しを順序立てて話し始めた。
五時に持田の弁護士氷室に呼び出されて、領収書と印鑑を持ってホテルに行った。
703号室で、コーヒーを飲みながら示談書を読んでいると、睡魔に襲われて眠ってしまった。
持田が隣の部屋に居る事は全く知らなかったと話した。
内海刑事の証言と一致する。
内海刑事の証言は、四時に持田を尾行してこのホテルに到着、チェックの名前も持田で702号室に入ったのが、多分10分後程だろうと証言、五時少し前に松山麻紀がホテルに到着、七階にエレベーターで行ったが、どの部屋に入ったのかは不明。
その後しばらく702号を見張っていたが、何事も無いので再び一階のフロアーで見張ると五時半前に二人の男が七階に行ったので、尾行したがどの部屋に入ったのか不明。
気に成って702号の前まで行ったが、物音も聞こえないので再び一階に戻った。
六時前また不審な男が三人変な行動をしたので、尾行して離れて戻ったのは六時過ぎだった。
この間女性は一人も見ていないと証言していた。
「これは、何でしょう?」安住刑事が登山ナイフを見せる。
「それは?登山ナイフですね」不思議そうに言う麻紀に「ご存じ無い?でしょうね!麻紀さんの指紋も無いので変だと思っていたのですが、麻紀さんのバッグに入っていたのです」
「えーー、私全く知りません」驚く麻紀。
「事実だけお話すると、麻紀さんは睡眠薬で眠らされていた、バッグには登山ナイフが入っていた。持田は睡眠薬で眠らされ首を絞められて亡くなった以上ですね」
「でも確かに氷室弁護士に会いました!氷室弁護士は見つかりましたか?」
「これから捜しますが、我々が氷室弁護士と麻紀さんが会われたのを聞いたのは今ですからね」
これから麻紀の証言の裏付けを調べる捜査本部。
薄暗い部屋で
「ここが何処かお判りですか?」
両手を縛られて、天井の縄に結び付けられているのは氷室淳子その人だ!
「貴方達は何者!私をどうするの?私は弁護士なのよ?誘拐は犯罪よ!」
「貴女が私達の前をうろうろと邪魔をするので、会長が怒られてこの様な処に来て頂きました」
「何を言っているのか意味不明!」
「貴女が遊ぼうとした女性は我々の大事なオナペットなのです!貴女の様な変な男か女か判らない人に汚されたら困るのです」
その時部屋に北見会長が入って来て「この女か、邪魔な事をしているのは?」
「貴方が親分!私は弁護士なのよ!誘拐は重罪よ!」
「そうかね、これはどうだ?殺人は重罪ではないのか?」
目の前のテレビのスイッチを入れると、ワイドショーがL&Sホテルでの持田の事件を特集している。
「えっ、持田さん殺されたの?」
「驚いた様だな?眠らせただけだろう?」
「何故?知っているの?何者なの?」
「お前は麻紀が好きでレズの相手に考えて、ホテルに呼び出して薬で眠らせたのだよな!持田もお前が眠らせた!何度も狙うから、もう我慢出来なく成って来て頂いたのですよ!」
「あの時も?」
「麻紀の服を脱がせた処までは覚えているでしょう?」
「持田さんを殺したのは?貴男方ですか?」
「私達は貴女をここにお連れしただけですよ!」
「じゃあ、持田さんは誰が?」
「さあ、麻紀か?第三者でしょうね!その様な心配はしなくても良いのですよ!氷室淳子さんにこれから、女を目覚めさせてあげ様と思いましてね!自分が女だと判れば、もう彼女を狙う事は無いでしょう?」
「何言っているの?変態!この縄を解きなさい」
「短い髪が好きな様だな、麻紀と同じ様にされたいのか?」
「麻紀と同じ?」
「知らないらしいな、麻紀の頭は坊主なのだよ!お前の相手をする前から調教は始まって、マゾ奴隷にする最中なのだよ!今更お前が現れて異なる事を覚えさせたら、今までの事が無駄に成る」
「えっ!既にマゾ調教をされていたの?しかも坊主!究極のマゾ調教を受けていた」
「お喋りはこれ位にして、お前も女を蘇らせてやろう!」
「いゃーーやめてーー」大きな声を出す氷室淳子。
「静かにして貰いましょうか?」
皮の猿轡を持って男が近づく「いゃーー」と口を開いた時に間髪を入れずに口に放り込まれると、後頭部で強く結んでしまった。
そこに白衣を着た芽野が現れて「この注射をすれば素直に女に戻れるのよ」
「うぅ、うぅ」驚きの表情で注射器を見る氷室。
「身体を押さえて頂戴!」男が暴れる氷室の身体を押さえて、芽野が腕を捲り上げる。
消毒綿で腕を消毒すると、直ぐに注射針を突き立てる。
「うぅ」恐い顔で睨み付ける氷室に「今の薬はね麻薬の成分から造った媚薬だから効果有るわよ!」
しばらくして、目に精気が無く成るのを待って「ほら、これが貴女の乳房なのよ」と鷲掴みにする芽野。
「うぅ、うぅーーー」首を動かして反応するが、男が直ぐに電マを持ってやって来る。
スラックスの股間にいきなり押し当てると「うぅうー」猿轡の端から涎がこぼれ落ちて、天井を向く淳子。
「後で調べてあげるからね、感じる様に幾らでも身体を変える事が出来るからね!」
「うぅ、うぅ」電マが股間を刺激して、上着のボタンをハサミで切られて、ブラウスの上からもう一人の男が電マを乳房に押し当てる。
芽野がスラックスのベルトを外すと、今度はハサミを持って裾から切り裂き始める。
「うぅ、うぅ」氷室の気持ちは、二台の電マで責められてスラックスに気づかない。
足がはみ出して、初めて気が付いて足を動かしているが、容赦ない芽野は反対側も切り裂き、
腰の部分も切り裂いたので、支えを失って膝まで落ちてしまい。
「男のブリーフかと思ったが、パンティを履いているな!脱がせて女か調べてやれ!」
北見会長の指示で、足元からぼろ切れに成ったスラックスを抜き取る。
「さあ、これも脱いで!見せてご覧!」腰に手を持って行くと、パンティを一気に降ろしてしまった。
女に成ってゆく
36-092
「内海刑事の話しですと、女性の出入りは麻紀、松山さんだけなのです!他は男性の二人と三人のグループが七階に出入りしているのです。内海刑事が引き続き監視カメラの映像をL$Sホテルで調べています」
「でも不思議ですね、持田が隣の部屋に居て私が入った部屋は、全く関係の無い安村って人?調べられましたよね」
「勿論です、その方は二連泊で当日五時頃はお留守だった筈です」
「帰られたのは?」
「七時前に食事をされて、奥様と帰られたそうです!六十歳の熟年夫婦で、関西に旅行に関東から来られていたので全く変な感じは有りませんでした」
「その方にお会いできませんか?」
「もう帰られましたよ」
「そうですか、何故私のバッグに登山ナイフが入っていたのでしょう?」
「麻紀さんが持田を殺そうとして、部屋に入ってどの様にして眠らせたのか?まず眠っていなければ殺す事は不可能です。誰かが持田を眠らせて麻紀さんも眠らせた。そして持田のみ殺した!殺したい奴は誰?」
「私は殺した程難い男ですが、示談にして泳がす道を選んだのに殺す筈有りません!」
「はい、それは絶対に無いと思います!何故貴女を呼び出した氷室弁護士が居ないのでしょう?氷室弁護士が貴女にコーヒーを勧めたのなら、貴女を眠らせたのは氷室弁護士に間違い無いですよね」
その時内海刑事が「何度も七階のエレベーターの乗り降りを見ましたが、女性は松山さんと掃除の叔母さんだけで、男性は七人が該当の時間出入りしています」と話すので病室を出て話しを聞いた。
「掃除の叔母さんって、年寄りか?」
「五十歳かな?よく判りませんが、クリーニング用の荷物を押してエレベーターに乗り込みました」
「その入れ物って大きいか?人間が入れる程か?」
「小さく成れば人間は入れる大きさでしたね」
「それだ!そのクリーニングの入れ物に、氷室弁護士は入れられて居たのだよ!ホテルで詳しく聞いてみてくれ!その掃除の叔母さんが怪しい!」
安住刑事は麻紀の話しと辻褄が合ってきたと思って、安村夫婦の連絡先に電話をした。
だが、その番号は該当の無い電話番号だった。
住所も調べたが、全くの出鱈目で該当の場所は大きなビルの工事現場だった。
麻紀は婦人警官に守られているのか、管理されているのか判らないが、ベッドを出る事が許可されていない。
電話が終ると安住は大友捜査一課長に、麻紀の無実の状況を話して解放する準備に入った。
大阪府警と兵庫県警の合同捜査本部が立ち上がり、本格的な捜査が開始されたのは、2000年2月12日だった。
兵庫県警が捜査している神戸港水死殺人事件、会計士放火殺人事件の二つと合同捜査に成った。
府警の捜査一課長土井は、兵庫の山は容疑者死亡で決定では?と言ったが、水死体事件は既に自殺した山木弓子と持田保の可能性が高いのですが、まだ断定は出来ませんと答えた大友捜査一課長。
氷室淳子は麻薬系の媚薬が身体に廻って、電マの刺激を乳房と股間に受けていたが、芽野にパンティを脱がされてからは、渡辺と坂本に両足を持ち上げられていた。
「さあ、女か男か先生が調べてあげるわ!サドの女も意外とマゾに変身出来るのよ!知っていた?」
持ち上げられて「あぅ、うぅ」と驚く仕草を見せるが、目は焦点が定まっていない。
「どれどれ、手入れしているわね」ペンライトで陰部を照らすと、大陰唇の陰毛は綺麗に処理されて、恥丘からクリトリスの部分に生えているが、綺麗に逆△に成っていた。
「何処におちんちんが有るのか、よく捜してあげないと、小さいのが在るかも知れないぞ!何しろ女が好きだと云うのだからな!」北見会長が微笑みながら覗き込む。
「会長!これでしょうか?」陰毛の下を指で広げて言った。
「それがこの女のおちんちんかも知れないな、皮を剝いてみなさい」
「はい、調べて見ましょう」
そう言いながらペンライトを北見に持たせて、両手でクリトリスの部分を広げて皮膚を引っ張る。
「うぅ、うぅーーー」首を大きく振って反応を始める氷室。
「会長!どうやらこの小さいのが彼女のおちんちんの様です!」
「松本!」と呼ぶと、後ろで「カリカリ」と音を立てて何かを噛んでいる。
「フェラをして、大きく成れば男に成るのか、試してやれ!」
松本はフリスクを噛み砕きながら、股間に立て膝状態で入ると「ペパーミント味ですよ!」
そう言いながら、綺麗に整えられた逆三角形の先の部分に舌を伸ばす。
べろりとクリトリスを指で剝きだして舐めると「ひぃーーー」と猿轡の口から声が漏れて天井を見上げる。
「おちんちんが剥けてひりひりしている様だわね!」
「松本は女の坊主が好きなので、最後まで男なら良いのだが?でも元々男の様な髪だから、関係無いかも知れんな!」北見会長が微笑みながら見ている。
ハサミを持った芽野が今度は上着を切り裂き始めて、袖にハサミを入れて切り裂き、上着が布切れに成ってブラウス姿に変わった。
「うぅ、うぅーーー」首を大きく振って反応をしている氷室。
「ブラウスも切り裂くわ」電マを持った男が横に移動すると、容赦なく切り刻む芽野。
「サドって私の用なブスの女が似合うのよ!貴女は男の格好をした雌豚なのよ!思い知れば良いわ!」
あっという間にブラウスを切り裂き、身体から分離されもう身に着けているのはブラジャー一枚に成っている。
「男なのにブラジャーを着けて居るぞ!そんなもの必要ないだろう?」
もう勢いづいた芽野は、紐にもハサミを入れると直ぐに身体から毟り取る様に引っ張り出した。
小振りの乳房に小さな乳首、まあ女性にしては貧乳に成るが、美しい小さな乳房だ。
「揉んでやれ、男にしては膨らんでいる」
男が今度は背中に廻って、後ろから抱える様に乳房を揉み始める。
手の中にすっぽりと包み込まれる様な乳房、股間を舐める松本、二人の男に両膝を抱え上げられて、いつの間にか氷室は全裸で陶酔していた。
連続レイプ
36-093
大阪府警の鑑識が急遽703号の現場検証を始めたのは、翌日の昼過ぎに成っていた。
安村と言う夫婦が連絡出来ない事が判り、急遽の検証に変わった。
麻紀は三時に漸く病院を退院する許可を医者が出したと云うより、大阪府警が麻紀の証言を認めた形に成った。
安住に送って貰って自宅に戻る麻紀は「持田が誰に殺されたか?と言うより誰が殺したかったかでは無いでしょうか?」
「そうですね、持田を一億も出して示談にした連中は殺さないでしょうね」
「そうでは無いかも知れませんよ!一億も出しても口を封じたかったのかも?」
「成る程、持田が色々と知っている事を喋ってしまうと困る連中ですか?」
「ダイヤの岸さんがやられた事が色々な処で行われていたら、そして持田はその絡繰りを熟知していたなら、それだけでは有りません!行政の人も絡んでいますよ!私一度頼まれた事。。。。。」と言い始めて口を閉ざした麻紀。
「どうしたのですか?」
「持田が役所関係の人を店に連れて来た事が有りました!名前は伏せていましたが役人だと思います」麻紀は誤魔化したが、女性の世話を頼まれて断ったのだ。
桧旅館では、松本に執拗に舐められて、薬の作用も手伝って股間から愛液を垂れ流して放心状態の氷室淳子。
今度はその股間に入った芽野がクスコを持って「これは女性の性器を調べる道具だと知っているでしょう?」クスコを「カチャ、カチャ」と音を立てて聞かせると、そのまま先を膣口に挿入させてしまう。
「ここをこんな物で開かれた事は有るのか?男では無いだろう?」北見会長が覗き込む。
クスコを簡単に挿入すると、ネジを廻して広げ始める。
「涎が沢山流れているから、痛く無いでしょう?」
大きく広げられた膣の中に長いノズルの付いた棒を挿入すると動かし始める。
「あぅーうぅーうぅーー」身体を大きく動かして反応を始める。
「気持ち良いのか?」覗き込む北見会長。
「この道具はね、ピンポイントで貴女の感じる所を刺激する道具なのよ!今は弱だけれど、ここら辺りで強にすると!」
「ああーーーーううー」首を大きく振って反応をする。
「Gスポットに?」
「ああーーーーううー」
「そろそろ、女を感じて来た様だな、みんな順番に使ってやれ」北見の指示が出ると、芽野が直ぐにクスコを抜き取る。
持ち上げていた足を降ろすと、順番が決められていたのか、渡辺がいち早くズボンを脱ぐと、淳子のかた足を抱えて、未だ完全に閉じていない膣口にペニスの挿入を始めてしまう。
「うぅ、うぅ」待っていたのか、勢いよく押し込まれるペニスは直ぐに奥まで届いて、腰を動かし始める。
「うぅ、うぅ」もう完全に咥え込んだペニスに、満足の表情を浮かべている氷室。
「女が蘇った様だな、一番SEXが好きな年齢だろう?楽しませて、腰が慣れるまで突いてやれ」そう言いながら微笑むと、芽野と北見は隣の部屋に移動して酒を飲もうとしていた。
「インテリの女程、狂うと面白いだろうな?それより麻紀の段取りと道具は順調か?」
「この旅館では出来ませんので、今我々の地下の調教場を改良しています」
「客を呼んで、公開調教をするのだな?」
「毛責め好きな会員が十五人程いらっしゃいますので、有料でも宜しいかと思います」
「いつ頃に成る?」
「工事には後一ヶ月は必要だと思いますが、それまでに少し調教をしませんと、感覚が開きすぎて、また最初からに成ってしまいます」
「そうだな!いきなり公開調教は少し無理が有るから、色々道具が出来上がって、寸法が異なっていたら大変だ!芽野君が計測しているから間違いは無いだろうが、肝心の麻紀の身体が肥えたり痩せたりすると合わないからな!」
「はい、その為には一度貞操帯は履かせて見る必要が有ると思いますね」
「その段取りで行こうと思うが、あの連中と警察には気を付けなければ墓穴を掘るぞ!」
「警察は予測していましたが、あの連中は殺し屋だから始末が悪い!」
「会長のルートとは異なるのでしょう?」
「全く知らない連中だ!警察も今頃意味不明の事件に戸惑っているだろう?」
「まさか、氷室弁護士が麻紀を手に入れる為に、持田は麻紀に復讐する為にレイプしようと考えてホテルに来て、自分が殺されるとは思っても居なかっただろう」
「判らないのは、睡眠薬を飲まされた持田だ!氷室が飲ませたのなら殺害を知っていた?」
そこに渡辺がバスタオルを腰に巻付けてやって来た。
「今、坂本さんが突いていますよ!もう良い声だしまくりですよ!」
「女に成りきったのだな!咲子は来たのか?」
「まだ来てない様です!」
「松本は今日もSEXより散髪を考えて居るのか?」
「その様ですが、許可するのですか?」
「インテリ女に諦めさせるのには、良いかも知れないが、しばらく調教して効果が無ければと云う事にしたらどうだ!松本には志津の方が喜ぶだろう?長い髪を狙っているからな!二人共、麻紀の前座をさせるから、その時だろう」
「卍会のビデオには既に志津は登場させたから、次回の会報の目玉は麻紀ですね」
「勿論彼女だが、今の姿も次の会報に載せると効果が高いだろう」
「卍会の会報購読者は二千人も居るから、知っている人も居ますよね」
「新地のクラブのママだから知っているだろう、VIPの会員は五十人程度だから、この人達が口外しなければ大丈夫だ」
「クラブのママがSMビデオに出演した程度で終りですね」
「そうだ、今の時代女優も直ぐ脱ぐ時代だから、変でも無い!それに裏には成っていないから、警察に持って行ってもポルノビデオだ!志津のビデオも何も無かっただろう?」
「会員の方は口が堅い紹介者のみですから、中々表には出ませんね」
「使い古した女は、会員に払い下げか海外に売られるので恒に新鮮だ」
その様な話しをしていると、最上咲子が鞄を持って漸く部屋に入って来た。
「警察が、掃除の入れ物に隠して氷室淳子を連れ去ったと、感づいた様です」
「何、咲子の顔を見られた可能性が有るのか?」
「でも変装して、叔母さんに成っていましたから、大丈夫だと思います」
北見会長は珍しく胸騒ぎを感じていた。
新たな証拠
36-094
氷室淳子は三人の男に連続で強姦されて、完全に気絶してしまい。
咲子の調教は中止に成り、卍会の連中も朝には桧旅館を退散して消えた。
北見会長は兵庫県警の刑事が麻紀の周辺に最近多く居るのが気に成って、前にも桧旅館に聞き込みに来ている事も気に成った一因だ。
麻紀に判らないのは何故自分と持田に、氷室弁護士が睡眠薬を飲ませたのか?これが全くの謎で、バッグに登山ナイフを入れていたので、自分に罪を着せて持田を殺したかった?でもそれも違う様で、真実は警察の捜査を待つしか術が無かった。
宇都木真理も持田が亡く成ったので、漸く落ち着きを取り戻していた。
阿部彰次の自宅でも持田が殺された事は、大きな話題に成っていた。
支店長を急に辞めた事以外、警察に逮捕された事については報道されていないので全く知らなかった。
大阪府警が703号室の現場検証を行った結果が発表されたのは、事件から一週間後だった。
土井捜査一課長が大友捜査一課長に、冒頭「申し訳無かった!最初からクラブのママの話しを信用するべきだった」と謝って、報告書と703号室の慰留物を数品兵庫県警に送ったので、該当する人物が居るか検証して欲しいと伝えた。
最後に「安村って男だが、前科が有る男だった!指紋がヒットしてね!でも前科が有るだけでは引っ張れません!他に何か兵庫さんで出れば助かるのですが?女性の長い髪が二本見つかって居ますが、クラブのママの物か?氷室弁護士なのか?それとも全く関係の無い客の物か見当が付きませんでした。後はよろしくお願いします」
「土井課長!そのヒットした安村の前科って何ですか?」
「十年以上前の万引きですよ!とても殺人とかの男では有りません」
「万引き?常習でしょうね!」
「コンビニで雑誌を盗んだだけですよ!警察に突き出されたのは一度ですが、何度も有ったのかも知れませんがね!」
「関東ですよね!」
「勿論ですよ!ハピットの横浜駅前店、1989年4月に成っていましたよ」
大友捜査一課長は、大阪府警からの連絡を捜査会議で捜査員全員に配布した。
「これって、偶然ですかね!」安住刑事が安村の事を不審に思い尋ねた。
「だが、関東にはハピットはポストの数より多いらしいから、偶然なのでは?」
安住の脳裏には、麻紀の言った持田殺害の動機が、知りすぎた数々の裏情報だと考えれば、偶然では無く必然も有るのかもと思い始めていた。
夕方703号室の資料が大阪府警から届いて、鑑識の方に廻される。
鑑識の富田が安住刑事に「この少し長い髪は、あの美人ママの物でしょうかね?」微笑みながら尋ねる。
「それは有り得ない、あのママは癌で入院していて、髪を短くしている」
「あの髪は鬘?」驚いて尋ねる富田は「氷室弁護士も男性の様な短髪でしたから、第三者の物ですね」そう言って自分で頷くと自分の部屋の方に歩いて行った。
行方不明者が、氷室淳子弁護士、片桐志津の二人。
安住達が再び桧旅館を訪れたのは、事件から八日後に成っていた。
氷室の写真を見せても、フロントでは勿論見た事も無いと答える。
客を見ないのがこの様な旅館では常識だから、仕方が無い返事だが気に成った安住と内海刑事。
氷室淳子の消息が判らずに困っていたのが、五十嵐専務と安西課長の二人だ。
特に氷室弁護士には、直ぐにでも連絡して関東に帰る指示をしたいのに連絡が出来なく成って、不安が募る一方だった。
鑑識から重要案件だと、捜査員全員が招集されたのは二十一日の夕方だった。
鑑識課長が「緊急事態が起りましたので、遅い時間からの発表と成りました」と冒頭話して、ざわめく会議室の刑事達。
「富田係長から発表します」
「先日大阪府警から頂いた大阪のL&Sホテルの703号室の慰留物件、複数の指紋、女性の毛髪二本が提供されました。指紋の中に前歴の有る安村恭司の指紋が判明していますが、今日新たに毛髪で該当者が出ました!と申しましても誰とかは判りませんが、夢前川で自殺した山木弓子の練炭の底に付着していた髪の毛と一致しました」
「えーーー」大友捜査一課長が驚きの声を最初に出した。
「その髪の毛は山木弓子の物では無いのですよね!」
「はい、違います!この結果山木弓子も他殺の疑いが考えられます」
「富田君!考えられるのでは無く!他殺だよ!氷室弁護士を誘拐したのか、持田を殺害したも考えられる!これは最初から捜査のやり直しだ!」
一気に捜査本部は混乱に陥った。
自殺の山木弓子が他殺なら、これはまだまだ事件は終らないと捜査員全員が振り出しに戻る捜査を明日からする必要が出て来た。
その服部産婦人科病院では、木村医師に荘次郎が麻紀の手術で勝手な事をしたと憤慨していた。
木村医師も荘次郎に対して、自分はもう貴方の方針について行けませんと反旗を翻して決裂状態に成った。
だが木村はこれまでの事は口外しませんが、松山麻紀さんにこれ以上変な行為をすれば黙っては居ませんと釘を刺した。
荘次郎は、もう彼女がこの病院に来る事は無いと強い調子で断言した。
木村医師は心の中で麻紀に淡い気持ちを持っていた。
木村医師と決別した直後、兵庫県警の二人が荘次郎を尋ねてやって来た。
「今度はどの様な用件ですか?大阪のホテルで殺された持田さんの事なら、殆ど知りませんよ」
「いいえ、今日伺ったのは、山木弓子さんの件です」
「山木弓子は夢前川の上流で、練炭自殺をしたのでしょう?」
「いいえ、新たな証拠が見つかり、もう一度最初からの捜査に成りました」
「それは、自殺では無くて他殺?殺人ですか?」安心していた荘次郎に、新たな火の粉が降り掛かろうとしていた。
卍会のアジト
36-095
「どう言う事ですか?先程刑事が来て、山木弓子は殺人の疑いが有るので再捜査だと聞き込みに来ました。既にお金は振り込んだはずだ!」
「院長!警察は再捜査の理由は言いませんでしたか?」
「大阪のホテルで遺留品が発見されたとか?ホテルって持田が殺害された件ですよね!あれも会長の仕事ですか?」
「違いますよ!持田を殺しても何も得は有りませんよ!関係無いですよ」
「兎に角火の粉は困ります!」ご立腹の荘次郎。
吉村弁護士が麻紀に、泳がす筈が溺れ死に成りましたねと久々にやって来て話した。
「示談にして、持田が自由に成ったのを狙っていたのですね」
「どうやら、その様です!犯人は共和住宅か?ハピットでしょうね!阿部さんの建設現場の近くでも面白い動きが見られましたよ」
「えっ、もう完成間近でしょう?」
「ハピットなのかは判りませんが、土地を集めている様ですね!それと阿部さんを嫉んでいる人も居ますから、益々変な方向に進むかも知れません」
「持田の後釜は?」
「どうやら、近々交代する様ですよ!噂では五十嵐専務の懐刀と言われている後藤と云う男が関東から来る様です」
「後藤、持田より始末の悪い男なのでしょうか?」
「社内では後藤ではなくて強盗だと、部下の手柄を横取りするかららしいです」
「笑えないあだ名ですね!その強盗が来てから、また事が起りますね」
「県警の動きでひとつニュースです!山木弓子は殺人らしいです」
「えっ、自殺では?持田の紹介で店に来て、私は色々助けて貰ったのに、殺されていたのですか?」
「山木弓子に助けて貰ったのですか?」
「はい、病気で服部産婦人科病院のVIPに入院した時に世話に成りました」
「そんな女では無い筈だけどな!」
「えっ、そうなのですか?」
「服部産婦人科病院に来る前は、相当な悪い看護師だった様です!仲間の間では相当嫌われていた」
「そうなのですか?私の店にバイトに来ていましたよ!」
「えっ、ママの店にバイト?益々変だな?」と吉村は話したがそれ以上は喋らないで、マンション建設の話しに変わった。
年寄りの弁護士だと思っていたが、流石に安達が付けてくれた男だ!情報が早いと感心した麻紀。
北見会長も荘次郎の電話が気に成り、兵庫県警の情報を手に入れようと試みていたが、再捜査の理由は聞き出せなかった。
卍会は京都にライブハウスを経営して、その会館の地下に秘密の会場を持っている。
VIP五十人が客として見学出来るが、毎回は二十人未満の会員のみに見せる。
ライブハウスに来る客に紛れて来るので、外見は全く判らない仕組み。
滋賀の山奥に、住居兼調教場が在るが一般の人の目に触れる事は無い。
例え脱出したとしても、山中でのたれ死に?冬場なら凍死、崖から転落して永久に発見されない事も有ると教え込まれる。
事実片桐千津もSEXの虜に成り、今では抱かれる事に楽しみを見いだしている。
テレビを見る事と、掃除、料理、洗濯程度しかする事が無く、逃げるなら逃げれば良いと言われたが、方向も判らなければ、今何処に居るのかも判らないので、諦めているのが実情。
そこに氷室弁護士も連れ込まれたが、今はまだ鉄格子の部屋に全裸で放り込まれている状態だ。
「貴女の世話は私がするのよ!千津って云うのよ!よろしくね!逃げ様と考えている間は、服も自由も無いのよ!諦めて生活する事よ」
「貴女も誘拐されて来たの?」檻の中から尋ねる氷室。
「私は弁護士なのよ!それを誘拐するなんて、厳罰が待っているわよ!この連中!」
「貴女もまだその様な事を考えている様では、中々服も着せて貰えないし牢から出られないわ!諦める事よ!」
「馬鹿な事を!貴女こそ自由なのだから、逃げなさい!」
そんな話をしていると、咲子がやって来て「諦めが悪い男?女?」と檻の中の氷室淳子に言う。
「さあ、今から男達が来るから、たっぷり突いて貰いなさい!静かに寝られるからね」
檻の処に松尾、坂本、星野の三人がやって来た。
檻の中には大きなダブルベッド、トイレ、シャワールームが在るので、生活には困らない。
「いゃーーー」氷室がシャワールームの方に走って行く。
三人の男が檻の中に入って行くが、三人とも既に全裸状態で氷室を追い詰めて、直ぐに抱え上げてベッドに放り投げる。
「いゃーーやめてーー」と叫ぶが直ぐに足を抱え上げられて、手を持たれてしまうので抵抗も何も出来ない。
乳房にいきなり顔を埋める松尾、股間に指を持って行く坂本。
「星野さんは最後だよ!星野さんの後は抜けない程緩むから駄目だ」
笑いながら言う坂本が、もう既に挿入体勢に成っている。
しばらくして、檻の中に氷室淳子の喘ぎ声が聞こえ始めて、最後は星野の特大ペニスを咥えて昇天してしまった。
勿論千津も松本のペニスを咥えて、同じ様に喘ぎ声を響かせていた。
千津は既にアナルも開発されて、両方の穴で感じる事が出来る様に調教されて、残るは松本の趣味を待つだけなので、最近は松本とSEXの回数が増加しているのだが、千津はその様な事は全く知らない。
麻紀と共演させられる事、そして不気味なレズの世界も京都のステージでは演じさせる予定に成っている。
千津と麻紀、千津と氷室、氷室と麻紀三様の組み合わせを考えて、VIPの客を楽しませて、そのビデオを会員にも提供する。
卍会のVIPは医者、俳優、弁護士、政治家、企業家、スポーツ選手等著名な人々が名を連ねていた。
会員二千人の中にもその様な人が多いが、この人達は名前が出るのを極端に嫌う人が多い。
荒手の支店長
36-096
有名な女優とかをこの様な場所に出演させる事は絶対に不可能だから、荘次郎は病院に来た時に手術の名目で過去に数人強姦していた。
その時のスタッフが、泉、山木、青木の三人の看護師で、前回の様に芸能人で無いクラブのママの場合は卍会に譲って喜ばれるが、殆ど当てはまる美人で素人は来院する事は無い。
元々卍に譲るから、芽野、松本、松尾の三人が病院にやって来て調教を始めたのだ。
当初の予定では三月末までの予定だったが、次々と予期せぬトラブルが発生して、早々に麻紀を手放した荘次郎。
卍会では次の地下でのイベントの目玉に麻紀を考えていたので、時間が充分に開いてしまった事に成っている。
当初は四月初旬病院で調教の終った麻紀の仕上げを卍会で行い、五月にイベントでデビューの運びに成っていた。
兵庫県警では鑑識の富田が、藤井会計士放火殺人の犯人が持田では無いかも知れないと、新たな意見を投げかけていた。
それは焼け跡から採取された毛髪、指紋、足跡等に持田に繋がる物が何一つ発見出来なかった事が理由だった。
持田の遺体の検死で、今まで判明していない数々の持田の事が判ったので、結論付けた発表に成った。
その話しは安住刑事から直ぐに麻紀に連絡が届き、麻紀は当初から犯人では無いと知っていたが、驚きの声をあげて安住刑事の連絡に感謝した。
宇都木真理と持田がラブホテルに行っていた事が有力に成ったが、今ではもうそれもたいした事では無く成った。
では藤井を放火殺人で殺した犯人は誰なのか?県警は三つの事件の内、二つが振り出しに戻った事に成った。
三月に成って、共和住宅神戸支店には後藤憲一支店長が就任、前任の荒木は小さな支店に移動、穏やかだった神戸支店に殺気が走る様な緊張感が職員に広がった。
本社の総務部長は重役でも平の取締役、五十嵐専務の力は絶大で早まった持田の処遇の発表で、左遷されて九州の福岡支店長に格下げ人事も同時に発表された。
神戸支店に着任した後藤が真っ先に尋ねたのは、持田が手がけていた阿部彰次の新たに買った土地の開発だった。
担当の福永は後藤に尋ねられて、土地は買って貰ったがその後の計画は宙に浮いていますと説明すると、直ぐに計画を持って同行を指示した。
もう完成間近のマンションを横目に、コンビニハピットも近日開店の看板が主要な道路に看板が設置されて準備が着々と整っていた。
相変わらず覇気の無い岸は、川瀬支店長からの四月一日の転勤辞令を簡単に受理していた。
マンションの引き渡しが三月三十一日と決定したのも、岸が辞令を受理した最大の理由に成っていた。
岸が全く覇気を失ったのには、大きな理由が隠されていた。
麻紀との事、妻との離婚、阿部彰次に相手にされなく成った事、それ以外に一人息子芳樹が妻に付いて行った事も原因だ。
実父昭輝に聞いてはいけない事を聞いてから、仕事も全てが手に付かなく成っていたのだ。
大阪府警は持田殺害にはプロの殺し屋が関係しているのでは?の発表を三月初旬の合同捜査会議で発表した。
702号室の検証と、監視カメラ等の映像から、数人の男性が入退室をしたと決めたが、判らないのは持田を眠らせた人間がこの集団では無い事実。
兵庫県警の主張する氷室弁護士が、松山麻紀と持田の二人を眠らせたが正しいのでは?の結論に成った。
この時兵庫県警は、山木弓子殺害の話しを発表しなかった。
何処から犯人グループに漏れるかが心配だったからだった。
その兵庫県警の判断は正しく、北見会長とのパイプを持っていた男が大阪府警に居たのだった。
勿論卍会の会員で情報を絶えず流しているので、これまで卍会が捜査される事は無かった。
後藤支店長は挨拶を兼ねて阿部彰次宅を福永と訪れて「マンションはもう完成ですね」
「はいお陰様で、竣工日は四月の八日の大安なのですが、実際は今月には完成です!持田さんがあの様な事に成って、後任の荒井支店長は大人しい方で心配していたのです」
「大丈夫ですよ!今日は二箇所同時に着工する案を持って参りました」
「えー、二箇所同時の着工ですか?」
「持田の口利きで買って頂いた土地は、早急に建築した方がお得ですし、二棟同時に着工頂きますと、今キャンペーン割引きで建築費が安く成るのです」
「キャンペーンですか?」
「そうですよ!我社の創立六十周年記念で建築費が五億以上の物件が対象に成りまして、二割引きに成るのです!今日お持ちしたのは二棟で六億ですから、一億以上の値引きに成ります」
「えっ、五階建て四億台で建築出来る?」
「お父さん、今のマンションより安いですね!」華子が口を挟む。
「そうだな!ダイヤ建託は下請けに丸投げだったから高いのか?」
阿部夫妻は上機嫌で、計画書を受け取って早急に見当すると言った。
今月中の契約が二割引きの条件だと、後藤支店長が言ったからだった。
福永は阿部の自宅を出ると「支店長!六十周年のキャンペーンは一戸建ての住宅でしょう?マンションの話しは初めて聞きました」と言うと「本当だが?どうした?」と言う。
「福永!急いで立てさせるには、あの様な事を言わなければ進まないだろう?」
「でも二割も引けませんが?」
「君は馬鹿か!素人は資材まで判らない、適当に手抜きをすれば値段は下がる!外観を変えずに値段を下げる検討を始めなさい」
「でも地震とか?」
「馬鹿か!建築基準法ギリギリにすれば、安く出来る!地震は天災だ!時の運だ!」
そう言って大声で笑った。
「ハピットを見に行こう」二人がハピットの現場に行くと、桜井が同じく見学に来て眺めていた。
魔の手
36-097
三月の十日過ぎ麻紀は予てからの予定に成っていた新しい鬘に変更に向かった。
今の鬘は取り外しだが、今度の鬘は完全な編み込み式で殆ど地毛と変わらない。
三センチ以上の髪に成れば、この鬘が着けられると以前に言われたので予定通り早朝からやって来たのだ。
「この鬘にすれば地毛と全く変わらずに切る事も出来ますが、大変高価で時間も女性の場合は二日に別けて行います」と聞いていた。
男性用も有り、俳優も使っていると説明されていた。
「植毛では無いので、髪が伸びれば同じ様に伸びますが伸びすぎると結び目が引っかかりますので、精々三ヶ月しか使用出来ませんが宜しいですか?」
「今、四センチ程度は伸びていると思いますが?」
「この前は一月の下旬でしたね!それなら早いですね」
担当の女性は驚きながら、麻紀の鬘を外して「本当だわ!長いのだと五センチ位には成っていますよ!この髪質に合った髪準備していますから持って来ます」
「人毛ですよね!」
「勿論です!予約頂いていましたので、揃える事が出来ましたが少し長いかも知れませんね」
「短いより良いですわ」
「でも少し違和感が有りませんか?急に伸びた感じに成りますよ」
しばらくして髪を持って来ると、セミロング程の長さに成って背中まで届き、今日まで着けていたボブの髪より十センチ以上長く成った。
「これなら、二日に別けても触らなければ判りませんよ!」
百万以上の鬘を簡単に購入してしまう麻紀、一億の示談金が大助かりだと思い鏡の中の姿が変わるのを嬉しそうに見つめていた。
土曜、日曜で鬘の装着が終ると、月曜日から新鮮な気分で店に行けると嬉しそうに、髪を靡かせて帰って行った。
ストレートの黒髪で、月曜日に颯爽と店に行くと小杉が驚きの表情で「どうされたのですか?」と真っ先に言った。
「良いでしょう?鬘を変えたのよ!少し伸びたのでね」
そう言って髪を指で掻上げるが、全く違和感が無いので益々驚く。
「アップにして着物を着て来るから、もっと驚くわね」上機嫌の麻紀。
今の鬘の技術に驚きの小杉と石谷だった。
だがこの様子を逐一報告していたのが潜入している秋田で、卍からの指示を待っている。
その待ちに待った貞操帯が完成して、芽野の手元に届いたのはその週の後半だった。
「この素材はハサミでは絶対に切れない、ガスバーナーで数分間焼き切らないと難しいので一度履かされると、この鍵が無ければ脱ぐ事が出来ない」北見会長が誇らしげに言った。
「取り敢えずこのサイズで狂いが無ければ、後二枚造る予定でしたよね」
「その通りだ、後の二枚は二穴調教が出来る物と、クリトリスと挿入出来る構造の物だ」
「これはこの部分が振動する構造ですね」
芽野が貞操帯を指で触りながら、調べて言った。
「この貞操帯はリモコンで振動をさせられる、麻紀のクリトリスにフィットする様に造られているが、その開いている部分が膣口に合って居たら他の物も大丈夫だ」スイッチを入れる北見会長。
持っている芽野の指に振動が伝わって、微笑みながら「これを履くとオナニーもSEXも出来なく成りますね」と言った。
「だから貞操帯だろう?生理の時は不便で困るだろうがな」
「まあ、色々有りますから大丈夫でしょう?」
「それじゃあ、早速麻紀を捕えて履かせるか?秋田と連絡を取って確実にな!」
「はい、判りました!距離的に桧旅館ですね!」
「そうだな!別に調教はしなくても良いが、少し遊んでやっても良いかも知れん!私も彼女を間近で見たいからな」
「会長は初めてでしたね!中々の女ですよ!服部院長が手放すのに躊躇していましたからね」
そう言って微笑む芽野は、久しぶりに麻紀を虐める事に楽しみを持っていた。
唯、自分の顔は麻紀に見られては困るので、今回は全員仮面着用に決めていた。
夜のアフターの無い日で、石谷が迎えに来る日が決行の日と決めている秋田。
石谷の自宅も既に調べている卍会は、麻紀の誘拐を六人で行う予定だ。
石谷は麻紀を迎える日は、十二時過ぎに近くのファミレスの駐車場に待機して、クラブの前に行く事は既に調査されている。
ファミレスでコーヒーを飲んで、連絡が入ると時間に合わせて向かう。
五分以内にはクラブに到着出来る距離に成っている。
チャンスが意外と早くやって来たと秋田が連絡して来た。
麻紀は髪が長く成ったので従来の美容院を予約して、久々に和服を着たい願望が芽生えていた。
石谷のタクシーに仕掛けている盗聴器で会話を聞く卍会は、秋田と連絡を密にして今夜の予定を探る。
夜八時美容院に迎えに行く事、店ではママがアフターの場合は連絡ボードに記載が有るので、直ぐに店の人間は知る事が出来る。
秋田達は開店時間の八時よりも一時間以上早く来て、掃除片付け等開店準備をする。
勿論閉店後も片付け等をしてからの帰宅に成るので、早くても二時近くに成るのだ。
女性は何もしないで、客のご機嫌を取り飲むだけで帰って行く。
所謂媚びを売るのが仕事で、鰹節の様な職業だと思われる。
自分の心を削ってお金に変えているので、長年この仕事をすると心が痩せてしまい修復不能に成る。
ソープ嬢は身体を売るが、水商売は心を売るので有る。
麻紀もその事を承知で足を踏み入れてしまった。
新地のこのホワイティアの前身、スワンに持田支店長が時々顔を出している事を聞きつけたので、自分がこの店を経営させて欲しいと安達に交渉したのだ。
麻紀の美貌に直ぐに人気を博し、店は以前より三割以上売り上げが増え、安達自身も驚いた程だった。
だが麻紀の美貌を狙う藤井と持田に罠に填められ、服部産婦人科病院では淫乱治療を施され、今度はSM集団卍会の魔の手が迫っていた。
クロロホルム
36-098
「ママさん久しぶりね、凄く長い髪に成っているけれど?地毛では無いわよね」
美容院の店主が和服に、長い髪を纏めている麻紀の髪を見て言った。
「これは鬘よ!治療で殆ど無く成ったので鬘を被っていたのだけれど、これは地毛に結び付ける鬘なのよ!」
「えー、でも凄い本数でしょう?聞いた事有るけれど高いのでしょう?」
「まあね!でも地毛の様に扱えて洗髪も出来るし、普通に扱えるから便利よ」
「着物が着たく成って今夜はここに来たのね」
「そうですよ!沢山着物有るのに最近は洋服が多かったので、以前の様にしたくなったのよ!」
「秋は腰近くまで伸びて居たからね、あの時切ったのには驚いたわ!今日は染めないのよね」
「この鬘が毛染めに強いか聞かなかったから、辞めておくわ」
そう言いながらシャンプーから始める店主が「全く判らないわね!これなら高い筈ね!」
「車一台買えますよ!」と言うと手が止る。
しばらくして、アップに纏められた髪を見て満足そうに「鬘には見えないわね」
「美容師の私が判らないのだから、普通の人には絶対に判らないわね!引っ張れば普通に痛いから、地毛そのものね」
「また時々来ますね!この髪はカットすると勿体ないから、切れないのよ」
「そんなに高いなら、私でも切り難いわ!」
しばらくして石谷の迎えが来て、麻紀は食事の為に石谷と一緒にレストランに入る。
艶やかな着物姿にレストランの人が見つめて「女優さん?」「タレント?」「ここで何か有るの?」口々に言う程だった。
「久しぶりに、驚く程美しいお嬢様を見ました」一緒に歩く石谷も視線に驚いて小声で麻紀に言う。
確かに最近は色気が加わって、以前とは異なる雰囲気に成っている麻紀だったが、着物を着ると一層顕著にその様に思えた。
九時に店に入った麻紀を見た小杉達が「今夜のママは輝いていますね」と褒め称えて、早速客のボックスに挨拶に廻り始めた。
客の中にはアフターを誘う客も居るが、麻紀は上手に断って従業員を優先させて話しを纏めてしまう。
真理もその一人で、持田からの収入が減ったので稼ぎたいのだ。
秋田が卍会に、今夜は十二時半に迎えを頼む様ですと連絡をしたので、数人の男と咲子が動き始めた。
十二時迄にファミレスに駐車して、簡単軽食を食べるのが石谷の日課に成っている。
咲子達は既にファミレスの駐車場で待機して、石谷が車を離れるのを待っていた。
咲子と坂本がポシェットの中に、クロロホルムを流し込んで布を湿らせると密封した。
息を止めて作業をすると、窓から顔を出して大きく深呼吸をする二人。
マスクを取り出して準備をすると、時計を見て石谷が二階のレストランに入るのを見届けると、車の鍵を取り出して乗り込む三人。
予めスペアーのキーを準備されていたとは、石谷は知らなかった。
一ヶ月前、秋田に車を移動させると鍵を預けた事を覚えてはいない。
石谷のタクシーは三人が乗り込み走り始める。
もう一人の男が乗ってきた車でクラブの近くまで行くと、路地に停車して誘拐するのを待つ。
有馬温泉の桧旅館では、北見会長と芽野が貞操帯を準備して、カメラで撮影も用意をしていた。
VIP会員用に発送する案内に同封して、盛り上げて高額入場料の会員から人数限定で、ライブハウス地下に入場の権利を与える。
「ここに誘拐された事を教えないで、今夜は私達だけがママを拝ませて貰おう」
「一応ガスは準備していますので、会長がお楽しみに成っても大丈夫ですが?」
「今夜は着物を着ていると聞いたので、誰も着せられないだろう?」
「はい、無理ですね!本人が着て帰るのでは?」
「それでは駄目だ!それにここは来た事が有るので、警察の捜査が及ぶ事に成れば旅館にも迷惑がかかる」
「確かに!服部院長も警察が近づいて手放しました」
「全てが揃ってから、誘拐調教をしなければ中途半端は駄目だ!今捕えている弁護士の調教もまだ進んでないのに、本命を連れては行けない」
「今日はあくまで寸法を確かめる!ですね」
「高価な品物だが、寸法が少し違っても没に成る」
その頃石谷のタクシーはクラブの近くに停車、二人が降りて走り去る。
石谷はレストランで軽食を食べて、ゆっくりと二階から降りると、駐車場の自分が止めた場所に行くが車が見当たらない。
俺もいよいよ惚けたのか?場所を間違えたと思い順番に見て歩く。
その頃麻紀が「お疲れ様でした」と小杉に見送られて少し早めに店を出て来た。
秋田が「石谷さん少し早く着かれた様です」と耳打ちしたからだった。
停車も数分しか止める事が出来ない場所だから、いつも自分が先に出て石谷のタクシーが来るのだが、急がないと行けないわと急ぎ足で通路に出ると、既に車が止っている。
ドアを「トン、トン」と叩くと扉が開く。
乗り込みながら「石谷さん!待たせてごめんなさい」と言った時、携帯がバッグの中で鳴り響く。
車は直ぐに発進して、麻紀はバッグの中から携帯を取り出すと「石谷さん」と携帯の番号を見て言って「貴方は何方?」と初めて石谷より若い男と確認した。
「石谷さんに何か有ったの?」若い運転手が石谷の代わりに来たと解釈した麻紀。
「石谷さん大丈夫!」携帯に話し掛ける。
「お嬢様!すみません車が。。」と言った時、車が急に停車して扉が両方から開いて「貴方達は何者?」と言う間に身体を押さえられて、咲子が手に持ったクロロホルムのハンカチを麻紀の顔に押しつける。
「何をするの!」顔を背けるが,身体を持たれて腕も動かせない麻紀の鼻と口が、変な臭いを感じた時、急に意識が無く成って抵抗が終った。
「これを付けて、マスクをしましよう」
「石谷さん!車を少し借りるわ!」麻紀が持っていた携帯にその様に言う咲子。
「君は誰だ!」
「ママも少しの間借りますよ!朝には帰しますよ!車と一緒にね」で電話は一方的に切られた。
着物の麻紀
36-099
麻紀の口にマスクを着けながら「みんなが熱心に成るだけの事有るわね、美人さんだわ」
「着物姿が最高に色っぽいですね!卍のスター間違い無いです」
「さあ、会長がお待ちかねだ!急ごう」
石谷タクシーを前に二台の車が有馬温泉の桧旅館を目指して走って行った。
石谷はその後、兵庫県警に電話をして安住刑事を捜して貰う。
しばらくして安住が石谷の携帯に電話を掛けてきて「何か有りましたか?」
「お嬢様と私の車が誘拐されました」と支離滅裂の話しをした。
落ち着いて話した石谷の話を飲み込めた安住刑事が、女性が車とママを何処かに連れて行ったと理解したが、明日の朝には両方帰すの意味が判らない安住刑事だ。
既に深夜の一時、朝まで七時間から八時間、捜すにも方法が思いつかない安住刑事は、取り敢えず朝まで待って見ましょうと、石谷に答えるしか術が無かった。
「もし帰って来たら連絡貰えたら、そのままタクシーを警察に預けて下さい!鑑識で遺留品を捜します」
明日の朝には帰すの言葉と女性だったので、若干は安心かと思うが目的が判らない。
何処に車を帰すのか判ればそこに張り込めば逮捕出来るが、全く判らないので対応が困難だ。
「会長!連れて参りました」
「ガレージに入れて、判らない様にして置け!警察が見回りをしているかも知れない」
北見の勘は的中、数分違いで警官が桧旅館を見回りに来ていた。
安住刑事が地元の交番に連絡して、桧旅館に石谷タクシーが駐車していないか見回る様に指示をしていたのだ。
藤井はもう亡くなったが、同じ様な人間が居るのでは?以前連れ込まれた時には男がもう一人と女が居る事を聞いていたので、可能性が無いとは言えないと思った。
警官はガレージを開ける事は無かった。
タクシーで誰かが来て居ると考えての問い合わせだと思い、フロントに「タクシーの深夜着いた客は居ましたか?」とまでは尋ねて帰って行った。
二人の男に抱きかかえられて、鈴蘭の間に運び込まれた麻紀。
「その台の上に置いてくれ」北見が座卓より少し大きな台の上に麻紀を寝かせる様に指示をした。
「予想通りの美人で、色っぽい!マスクを外して撮影を始め様」
「直ぐに気が付きますが?」
「ガスを持って来ていただろう?それを吸わせば夢の中から目覚める事は無いだろう?服部がその様に言ったぞ!」
「確かに、彼女の記憶はタクシーで捕えられた時で止っています」
「お前達はカメラマンになれ、芽野を咲子は手伝ってやれ!今夜の目的はこれが正しい寸法なのかを調べるのが最優先だぞ!SEXは誰にもさせない」
そう言われて残念そうな男達だが、北見会長の指示は絶対なので逆らう事は無い。
マスクを外すと、芽野が小型のボンベからホースを繋いでマスクを取り付ける。
「何回も吸っているから、効果は判るわね!」そう言うと麻紀の鼻と口を覆って、ガスを吸わせる。
「少し多かったかも知れません!」
「どう成る?」
「記憶が全く残らないと思いますね」
「感度は良く成るのか?」
「それは良く成ると思います、過去の実験結果では記憶は残りませんが、感度は上昇していたと記録に残っていました」
「変態医者は色々と実験したのだな!」
「個人差が有りますので、この女がどの様な反応をするか判りませんがね」
しばらくすると「うぅ」と声を出して、顔を動かし始める。
全員が仮面のマスクで目を隠しているので、顔を見られても大丈夫だが警戒はしている。
ゆっくりと目を開くが焦点が定まっていないのが直ぐに判った。
「撮影を始めるぞ」
そう言うと北見会長が上半身を起こして、着物の脇から手を入れ始める。
両手を着物の脇から入れると、直ぐに麻紀の乳房に届くので両方の手で揉む様にする北見。
「ああー、ああー」声を出す麻紀に「反応が良いな!良い形の乳房だ、揉んでいても気持ちが良いぞ」
「ああー、ああーー」声を出して天井に顔を向けて、表情が変わっている。
「良い表情だ!気持ちが良いのか?」両手の動きが早く成る。
「この顔を写してやれば、ファンが増えるだろう」
「流石会長!着物を脱がさなくても壺は心得ていらっしゃる」
着物の前を開かなくても、簡単に乳房を弄る事が出来る。
「着物を捲りあげて、準備を始めろ!」
咲子が麻紀の着物の裾を持って広げ始めると「ああー、何するの?」と言うが抵抗では無くて、期待感が有る様な顔で見る。
机の上から身体を抱えて畳の上に引きずる様に降ろすが、北見に乳房を掴まれて居るので腰が砕けた様に力が入っていない麻紀。
裾を一枚一枚横に広げて、裾よけを左右に広げると白い足がカメラに飛込む。
「会長もっと写しますか?」
「それ位で良いだろう」そう言うと自分も腋から手を抜き取る。
「良い鬘だな?これは外れるのか?」
「未だ短い髪しか生えていないと思いますが?」そう言うと綺麗にセットされた髪を触る芽野。
「えっ、これって?生えているのでしょうか?凄い技術ですね」そう言って驚き触って「生えている様ですね」
咲子は両膝が着物からはみ出して、畳の上に寝かせる様に北見会長に頼んだ。
「捲り上げて、これを履かせる準備を始めなさい」
今度は麻紀の身体を反対に向けて、俯せ状態にすると一気に着物を捲りあげて帯の上まで着物の裾を持って行く。
和装用の下着が見えて、手を差し入れて脱がす。
完全に和装用のパンティを脱がされてしまうと、黒い陰毛が白い肌に際だって黒く見えた。
闇に舞う桜